ダイヤの原石   作:浜の小さな大魔神

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ドラフトが近づいてきて日々予習がはかどるはかどる
今年はやっぱり大学生ドラフトが趙豊作年
個人的に東都なら常広。それ以外なら名城岩井君
野手は上田君に期待。とはいえ上田君は外れ一位か二位で消えそう
何ならいっそのこと前田君(大阪桐蔭)行けばいいのに
彼は大エースになる気がする。今年費の高校生ドラフト候補の中で現時点でわかるポテンシャルならダントツ一位。
渡会がどこに行くのかも含めて楽しみ沢山なドラフト会議をみんなも楽しもう
それでは本編、、、どうぞ


初登板と初打席

さぁ,今日は記念すべき有藤帝の高校生初登板だ。

自分の心の中でそんなことを思いながら

実際のところは淡々と目を覚まして

日課になった朝のランニングと軽いストレッチを行う。

今日は先発で長い回を投げるから

距離は短くスピードはやや遅めで

ランニングというよりジョギングぐらい

で体をゆったり目覚めさせるという感覚を大事にする。

リトルの時から,この方法が1番いい。

いつもよりやや軽い負荷を与えることで,

心身ともに心地よく体にスイッチが入る。

その後,ストレッチを入念に行う。

体をほぐすことで段々と覚醒した意識が

筋肉の細やかな出来や調子を確認してくれる。

 

(悪くない。というよりいいな。ここ最近なら一番体がスッキリしている。筋肉も緩んでいるわけでも硬直しているわけでもない。ジョグも押さえ気味に行くほど体が軽かった。こういう日は大体ボールが行き過ぎちゃう。少し叩くくらいでよく伸びる。スライダーは,横,斜めだな。縦と高速は曲がりすぎたりキレが良すぎて多分序盤の制御がうまく効かない。まぁ,シュートとチェンジ2種でどうとでも騙せるだろ。)

 

体の調子,指先の感覚と自分の今までの体験

それをもとに自分の今日の調子を分析していく。

自分の体を朝一番で掌握すること

これこそがその日のベストパフォーマンスにつながる。

それをよく知っている帝にとって朝のこれは最重要な行為だった。

寮に戻ると,同室の先輩である川上憲史から声をかけられる。

 

川上「帝はもうアップしてきたの?随分早く起きたんだな。ちゃんと寝られた?寝違えたりしてない?」

 

帝「心配くださりありがとうございます。大丈夫ですよ,いつもの日課をいつもの通りにこなしただけですから。それに、今日はなんか調子いいんです。普段通りできれば大丈夫だと思います」

 

川上「お前すごいな〜。俺なんて初めて投げる日の前日とか怖くて寝られなかったよ。」

 

帝「投手の臆病は時に短所ですが,普段の場面なら長所にもなり得ます」

 

川上「なんでだ?」

 

帝「危機察知能力。これは投手が最も磨いておかなくてはならない能力です。相手に1発もらったらまずい場面,先頭に対する入りが大事な場面,もちろん押せ押せで行けるのは強みですし,それで抑えられれば大きなアドバンテージをうみます。その反面、勢いが削がれた時は格段に脆い。だからこそ,投手として少し落ち着いたものの見方をしつつ,冷静に自分と相手の打者の力量を察知する。それを先天的に、それも直感でできるというのはすごいことです。夏の大会,思わぬところで流れが変わってしまう高校野球。大学やプロのようなリーグ戦。毎年在籍していればチャンスのある都市対抗の社会人などと違い,3年間で5回しかない僅かな全国へのチャンス。それを逃さないために,全員が張り詰めた緊張の中行う大会では必ず先輩が持つ臆病さいや,慎重さと言い換えてもいい,それが必要になります。だから自分をあまり卑下しないでください。先輩は既に十分素晴らしい投手です。後必要なのは一握りの自信だけ。それは実践を積み重ねていくと自然とついていくものですよ」

 

川上「,,,すごいな」

 

帝「何がです?俺は事実を言っただけですよ」

 

川上「今までそんなこと言われたことなかった。中学の時も,小学校の時も,逃げるな。立ち向かえって言われるばかりだった。でも,そんな風に見ることもできるんだな。ありがとう!帝」

 

帝「お気になさらないでください。小生意気な後輩が初先発に舞い上がって,調子に乗って講釈を垂れただけです。それより,自分の後にもし何かあれば,お願いします」

 

川上「後輩にここまで言われて燃えないわけにいかないよ。途中からしっかりと準備してるから,安心して思いっきり行ってこい!」

 

帝「はい!自分の全部を出してきます」

 

川上「頑張れよ」

 

帝「それと,俺もこれからノリ先輩とお呼びしてもいいですか?」

 

川上「もちろん」

 

それを聞いて帝は笑いながら,

 

帝「ありがとうございます」

 

そんな朝の一幕もありながら,時間はゆったりと過ぎていく。

 

 

 

 

軽くシャドーをやってから

シャワーを浴びて食堂に行こうと

室内練習場に向かうと

 

「おいしょー!どうっすか?今の!」

 

「足の上がり方がバラバラだ。もっと落ち着いてなげろ。今日は俺もお前もスタンド組だ。ベンチ入りは早くても次。今はしっかり固めたフォームを意識して再現性をより高めろ」

 

「はい!師匠」  

 

 

そんなやりとりをしていたのは

 

帝「沢村とクリス先輩でしたか?」

 

クリス「あぁ,お前が有藤か。改めて,俺は滝川・クリス・優だ。シニアの時一度対戦したことがあるんだが,おそらくお前は覚えていないだろうな」

 

帝「2年の春先の関東大会の準決勝でしたか?お互いにいい試合したことも覚えてますし,すごくいいリードなさってた記憶がありますよ」

 

クリス「まさか,覚えていたとはな。」

 

帝「しかし,故障していたなんて驚きでした。」

 

クリス「まぁ,な。お前も色々あったみたいだがもう大丈夫なのか?」

 

帝「はい。自分で信じる人間は選んでるつもりです。」

 

クリス(なるほどな。こいつにとってあの有名な事件は影を落としながら人格ではなく心の門戸を狭める要因として作用したというわけか)

 

クリスはこの時彼に対する不信感よりも

不安や同情を覚えた。これがいつか

大きな爆弾になるのでは?とすら思ってしまった。

しかし,それを口に出すべきが自分でないことを悟り

言葉に詰まって閉口していると

 

沢村「なぁ、帝。お前クリス先輩と知り合いなのか!?」

 

帝「あぁ。前いたシニアの時に,な。」

 

そうこう話しているうちに時間になる

 

御幸「おい,有藤!いくぞ!」

 

帝「はい!!今行きます。」

 

バスに着くと,先輩方は既に準備して待っている。

 

伊佐敷「うぉい!有藤。テメェ遅れてくるとはいい度胸じゃねぇか!」

 

帝「すみません。クリス先輩にアドバイスもらってました。」

 

結城「準備はできてるな?」

 

帝「もちろんです。」  

 

結城「行くぞ!!」

 

一同「「「「おお!!」」」」

 

 

バスに揺られながら

関東大会の一回戦の会場である球場に到着する。

そこから各自が荷物を置きアップを始める。

今日の相手は神奈川県私立の強豪,横浜港北高校。

毎年神奈川でベスト8からベスト4には入る高校だ。

しかし,それでもここ数年は横浜学園と紅海大相良に甲子園を独占されている。

そんな強豪もどきに負けるつもりは毛頭ない。

集中力を高めていく。

 

そんな中,試合前に片岡監督に呼ばれる。

 

片岡「今日はお前にあえてリミッターをつける。」

 

帝「リミッター、ですか?」

 

御幸「要するに使う変化球を制限するってこった。」

 

帝「なるほど。夏までに手の内をさらさないでおくことも必要ですし,意味合いとしては理解できます。」

 

片岡「その上,お前はあの事件はさほど取り沙汰されず,一部ではけがによるフェードアウトと思われている。怪我の要因で変化球。特にあの頃のような高速スライダーや変化の大きなスライダーは投げられなくなっていると思わせた方が自然だ。」

 

帝「なるほど」

 

片岡「ただ,こちらもそれなりの要求をしているのはわかるのだが,俺はあえて今日のお前へのハードルを上げさせてもらう。」

 

帝「なんなりと」

 

片岡「今日はスライダーを一球種のみ。ノーマルな横曲がりのスライダーだけに絞らせてもらう。つまり,縦,高速,大変化は使うな。次に,チェンジアップ。これについては落差の大きなチェンジアップではなく,サークルチェンジのみを使うこと。

すなわち、お前の使える変化はカット,シュート、サークルチェンジ,スライダーということになる。いいな?」

 

御幸「俺からの条件は,今日を7回2失点。要するにハイクオリティスタートを切れってことだ。行けるか?」

 

帝「監督と扇の要である御幸先輩がおっしゃるなら,私は投手として期待に真っ直ぐ正直に答えてご覧に入れましょう。」

 

それに、と言葉を続ける

 

帝「別に抑え込んでしまってもかまわないんですよね?」

 

御幸「ッハハハ。どうやらいらねー心配だったみたいだな。思いっきりこいよ!俺がお前を輝かせてやる。」

 

御幸先輩が楽しそうに笑みを浮かべる

 

片岡「やれるものならやって見せろ。言葉にした以上これ以上は聞かん。全力でぶつかってこい」

 

片岡監督も俺の言葉に満足したのか,嬉しげな顔を浮かべて俺を送り出してくれた。

 

帝「はい!!」

 

こうして,俺は初登板となる関東大会のマウンドへ上がる。

 

 

試合前,全体ノックが終わり

球場が開始を待ちわびる独特の緊張に包まれていく。

相手が先攻なので,今回は俺たちが先に守備。

つまり俺が最初に投げるわけで

普通は緊張するもんなんだが

正直この程度の相手に苦戦する気はないので

そこまで緊張してはいない。と思い込むことにしている。

 

 

すると

 

 

結城「有藤。思いっきりやってこい。点を取られても打たれても俺たちが全て取り返して守ってやる。安心して投球に集中しろ」

 

帝「はい。ありがとうございます」

(この人は多分本心から言ってる。だからこそここまで気持ちよく心に刺さる。)

 

伊佐敷「お前も松木も一年だ。思いっきりやれや!」

 

小湊亮介「まさか賭けの件は忘れてないよね?」

 

帝「確か,俺がノーノーしたら御幸先輩が坊主でしたっけ?」

 

御幸「おいおい!聞いてないぜ」

 

小湊亮介「ハハハッ。そんだけ余裕あるなら上等じゃん。」

 

倉持「ヒャッハ!おい御幸,お前も引くに引けなくなったな」

 

御幸「勘弁してくれよ」

 

増子「有藤ちゃんも松木ちゃんも思いっきりやれよ」

 

川上「いつも通り,ブルペンから準備してる。全力で行ってこい!」

 

丹波「フン。不甲斐ない投球をしたらいつでも変わってやるから安心しろ」

 

帝「みなさん。ありがとうございます!全力で,皆さんのご期待に応えてご覧に入れますよ」

 

アップが終わり,アンダーシャツを変えて

スイッチを入れて行こうとすると,奥から呼ぶ声が聞こえる。

 

歌菜「帝くん!」

 

帝「歌菜?」

 

歌菜「さっき,貴子先輩がみんなにスポーツドリンク配ってたんだけど,御幸先輩と帝くんの分だけ監督と話してて渡せてなかったから渡しておくね!」

 

帝「おう!ありがとう。あ,そうだ。昨日言ってた応援,期待してるよ?」

 

歌菜「うん!私もスタンドから声出すから。だから頑張ってね!」

 

真っ直ぐな,まるで花も綻ぶような笑顔を向けられる。

 

帝(うーん。やっぱり女の子の応援は力になるな!それに歌菜に言われるとなんだか余計に力が出てくるから不思議だ。しっかりしてる上に仲良い子だから割と寛容に受け入れられてんのかな?俺も)

 

帝「楽しみにしてな。」

 

そう言ってグラウンドへ歩を進めていく。

 

そして,

 

「両チーム整列!」

 

結城「行くぞぉ!!」

 

「礼!」

 

「「お願いします!」」

 

両チームがそれぞれベンチ

グラウンドへ散っていき

審判の声がグラウンドに鳴り響く

 

「プレイボール!!!」

 

審判の甲高い声と聴き慣れたサイレンの音

今日、俺の高校野球の本当の第一歩が踏み出された。

 

 

 

 

 

御幸(さぁ,お手並み拝見だな。)

御幸としても投手が大崩れしなければ

勝ち筋は十二分にあると考えている。

ゆえに楽しみなのは、先発の有藤の出来だ

初めて見たあの日から受ける日を心まちにしていたのだ

 

対照的に港北ベンチは緩んだ雰囲気が流れているb

 

相手監督「フン!所詮はまだケツの青い一年生。おいお前ら!あの生意気にも俺たちとの試合をデビューに選んだ一年生に高校野球の洗礼を浴びせてやれ!」

 

「「「おぉ!!」」

 

しかし,すぐにその自信は打ち砕かれることとなる。

 

初回,1番打者が打席に入る。

 

打者「へへっ。あいつ一年だろ?緊張でこっち見れてないぜ?」

 

御幸「心配なく。」

(眼中にないだけなんで)

 

いつも通りのルーティンから

掌の上で軽く2・3回ロジンをはねさせて

指先に残った余分な粉を軽く息ではじく

 

サインにうなずき、プレートの左右の横幅を

目いっぱい使うように一塁側に立ち

肩の力を抜いてセットポジションの状態を作る

 

帝(さぁ、いこう)

 

そうして,帝が投げた初球は,

 

ズバァァァァン!!

 

「ストラーイク!」

 

136キロ。決してとんでもない球速じゃない。

このレベルならむしろよく見る球速。

しかし,手が出なかった。

 

続くストレートにあっさり詰まらされてワンナウト。

 

2番打者にもアウトローの直球3球でショートゴロに打ち取りツーアウト。

 

帝は未だストレートのみしか投げていないが,その質が大変高いということを知らしめられた港北は少し慎重に見始める。

 

2ボール2ストライク

 

ストレートを慎重に外に投げて最後のボールは

 

ギュンギュン!

ガッ

 

港北3番(な!?ここでシュート!?しかも何てキレだ)

 

インコースのシュート

これを詰まってボテボテのピッチャーゴロ。

初回は3者凡退で抜群の立ち上がり

帝は何事もなかったかのようにベンチに帰る。

 

倉持「ヒャハハ!やるじゃねぇか」

 

伊佐敷「ナイスピッチングだこの野郎!!」

 

帝「あざっす!」

 

御幸(コースもキレも球威も抜群。これなら立ち上がりはストレート主体で全然いけるな)

 

そして,初回の攻撃だったのだが

 

倉持「グッ!」

 

小湊亮介「うーん」

 

伊佐敷「ダァー!クソッ!」

 

なんと,あっさり3人で終わってしまった。

 

先頭倉持先輩が詰まって内野フライ。

小湊亮介先輩は引きつけて打つもファースト正面

そして伊佐敷先輩の打球はフェンス手前で止まるセンターフライ。

 

しかし,2回にも帝はストレートとシュートを合わせて0に抑える。

 

そこからは試合が加速していく。

と誰もが思った。意外にも投手戦なのでは?

という声も上がり始めていた。

 

 

しかし、、、

 

 

 

 

 

 

キィぃぃィン!!

 

 

打った瞬間に、外野が追うのをやめる

レフトスタンドの中断に突き刺さる

弾丸ライナーのホームラン。

 

先制点は青道高校4番の結城哲也の一振りから飛び出した。

 

 

帝「流石っす」

 

結城「一年生の力投に応えただけだ。」

 

3回,先頭討ち取った後の8番。

ちょうどよく左打者だったので,これを見せておく

 

ギュン!

 

 

インコースのボール球に詰まってファーストゴロ。

 

続く打者にも外に逃げるように切れるように曲がるカットボール。

これには相手ベンチも驚く。

 

「なんだ!今のボールは!?」

 

「か,カットボールか?」

 

相手監督「こ、コイツァすげぇ一年かもしれんな。気合を入れなおさなきゃならんのはこっちのようだ」

 

結果,3回をパーフェクト。

ここで帝は御幸にとある提案をしていた。

 

 

 

 

3回,8番から始まる打線。

打席には,先頭の8番レフト,松木秀悟

 

春乃「秀悟く〜ん!!頑張ってー!!」

 

少女の声に、グラウンドの彼らが答えることはない。

ただ,その声は届いていると信じて声を出し続ける。

 

帝「多くは求めてないよ。普通にゆっくり帰ってこい。せっかくあんなに声張って応援してくれてる子がいるんだ。カッコつけとかなきゃ損なんじゃない?」

 

秀悟「それはホームラン打てってことか!?ハードル上げすぎだろ!まぁ,応援には答えたいと思ってるけど。それにしてもお前なぁ?」

 

帝「できないやつには言わねーよ」

 

こいつにはこの言葉だけで十分。

 

秀悟「それ言われたら燃えるじゃねぇかよ!」

 

そう言って打席に入る。

相手投手は左の140キロ近く出る左の本格派。

その初球を見てストライク

続くボールが2球,そのあとファールで2ー2

 

秀悟(確か,この投手の決め球は外に逃げるスライダーだったはず。それなら,それを引き込んで曲がり際からから逆方向へ!)

そして,決め球の外のスライダー

 

キィん!

 

逆らわずレフトに運んでヒット。

 

帝(高校初打席からレベルの高い打撃。相手投手の決め球に狙いを絞って打ち砕くあの強かさ。圧倒的なセンスだな。)

 

続く打席はこれまた初打席の帝

 

帝にはサインが出され,バントの構え

その初球のストレートを

 

 

ダッ!

 

キィん!

 

「うぉぉぉ!初球からバスターエンドラン。見事の決まって1.3塁」

 

 

逆らわず右方向へ運んだ。

 

(初球は外で様子見。そう簡単にパカスカ一年の打たれたくない。そんな感じが溢れ出てる。この手の相手はやりやすい。)

 

続く倉持倒れてツーアウト。

向かえるは小湊亮介

初球を捉えるとセンターへ!

 

しかし、

 

ショートの好プレーに阻まれ,二塁フォースアウトで2死一塁。

結果この回も一点止まり。

 

そして4回のマウンド,

 

1番打者は,違和感を感じていた。

 

(なんだ?フォームが明らかに違うっていうよりかはタイミングに違和感を感じる?さっきの打席でしっかりタイミングは計ったはずなのに立ち遅れる。)

 

 

そう,なんとこの男はフォームチェンジという

プロでもほとんどがやらない超高騰技術を

高校生の身でやってのけていた。

 

足の曲げ方と振り子足の引き方のタイミング

グローブの出す位置を巧みに変えて

打者の目線とタイミングを完全に惑わし切った。

 

4回はこれに騙されであっさり三者凡退。 

 

御幸「こんだけフォームいじって大丈夫なのか?」

 

御幸はこれからの彼のためにもフォームを崩しすぎじゃないかと心配するも,

 

帝「あくまでベースは同じなんで,なんの問題もないっすね」

 

彼にとってこれらは基盤となるフォーム

そこからの派生でしかないので

ほとんど感覚は変わらないから問題などないのだ。

 

その裏,結城を敬遠気味の四球で

益子が倒れるもその間に二塁に進塁すると打席には

 

スタンド「「「「「「ね〜らい打〜ち〜」」」」」」

 

大歓声に押されて,チャンスに強い男御幸である。

3ー1のカウントから,ストレートを思いっきり引っ張ると

 

カキィィン!

 

観客「うぉー!一塁線鮮やかに破った!」

 

スタンディングで悠々二塁打。

タイムリーツーベースでこの回待望の追加点

 

3ー0と点差が広がる

 

白洲セカンドゴロで倒れて2死3塁からの秀悟の2打席目は

高めのボールを打つとライトフライ

 

秀悟「くっそー!打ち気にはやったー!!」

 

本人は大変悔しそうにしていた。

 

5回

 

先頭の4番に

 

キィん!

 

レフト前ヒットを許すと,続く5番にもポテンヒットで

無死1.2塁のピンチ

打席には6番,バントの構え

 

コツン,

 

あっさり決められて1死2.3塁

 

7番と下位打線に入っていくところだが,油断はできない。

ここで御幸はタイムを取る

 

御幸「不運な二本目のヒットもある。まぁそこは仕方なしだな。ここは1.2点取られてもいいから確実に一個ずつ取るぞ。コース間違えんなよ」

 

帝「御幸先輩,何をおっしゃっているんですか?試合前に話したでしょう?ゼロで抑え込むにきまっているじゃないですか。」

 

俺はあえて退路をたつ。

こんなところで、こんな相手に

立ち止まっている暇はないのだ。

 

御幸「,,,,,ッハハハハハハ。お前最高だな。いいぜ?ただし,まだ使ってないあれを解禁する」

 

帝「当然。このためにとっておいたんですよね?」

 

御幸「コイツ〜」

 

こうして,話が終わると御幸は再び座る。

そしてサインの交換。

初球は

 

ギュンギュン!

 

「ボール!」

 

インコースへのシュート

打者にインコースのイメージを植え付ける 

続くボールは

 

ギュン!

 

「ストライーク!!」

 

これで平行カウント。

さっき外れたシュートから今度は中にキレてくるカット

次は

 

キン!

 

「ファール!」

 

外の真っ直ぐを打たせてファール

これでここまで全ての球種を見せておくことで,

既に手一杯であるかのように振る舞いつつ,続くサインは

 

コクッ

 

1発でサインに頷く。

ここでお互いに決めたい球が共有できるのは

単純にお互いの相性の良さだと思う。

泉以外の捕手でここまで相性の良い人に

すぐ巡り会えたことに感謝した。

そんな思いもせおって投げたボールは

 

フワッ ククッ

 

打者「⁉︎」

 

パシン!

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

観客「「おぉぉ」」

 

サークルチェンジ。

ピンチまでしまっておいた緩急で打ち取る。

 

 

帝(見とけよ栄純、曉。一球で相手をねじ伏せる。それだけの威力を持っているからこその``決め球``なんだぜ?)

 

続く8番打者には

 

フワッ ククッ

 

「ストライク!」

 

チェンジアップで体制を崩す

 

続く2球目

 

ギュンギュン!

 

シュートを見せてインコースを意識させ

 

「ストライクツー」

 

そして,最後は

 

ズバァァァァン!

 

「ストライクバッターアウト!!チェンジ!」

 

観客から歓声が上がる。

最後はアウトローへ今日最速141キロのストレート

抜群のコースに決まって見逃し三振。

 

流れを完全に引き寄せてみせた。

 

 

6回,7回と両チーム無得点で試合は進み

 

迎えた8回は

 

ガッ!

 

7番をセカンドゴロに討ち取った

高速チェンジアップを使って。

本来俺の球種のラインナップにこんなものはなかった

なぜ,急にこんな球種を使っているかというと

 

6回裏ベンチ

 

御幸「さっきのサークルチェンジだが,スピードがいじれるなら高速気味にツーシームっぽい球にできないか?」

 

やっぱり御幸先輩の考えは俺に似てるなぁ。

 

帝「ちょうど提案しようと思ってたっす」

 

御幸「じゃあ,次からサークルチェンジの後,1と2出すから,1は緩い方,2は早い方な」

 

帝「わかりました。基本的には早い方を使うことで,チェンジアップというよりツーシームと誤認させたいですね」

 

御幸「相手がシュートを投げ損い始めたとか思ってくれたらベストだな」

 

帝「ですね」

 

お互いあくどい笑みでたくらむその姿は

三年生たちすら戦慄させ、川上は自分の後輩が実は

都んd目御ない奴なのではないかと懐疑的になったらしい。

 

 

こうして,帝は変化球の曲がりに斜めを加えることで

技巧派として変幻自在に翻弄する。

7回に入ったことで,序盤3回の時のフォームと

中盤3回の時のフォームを織り交ぜることで

格段に打ちづらくする

これによってストレートのスピードは出づらくなるが

130中盤あるなら問題ない。

このフォームの嫌なところは

打者の感覚を無意識下で狂わせるところにあり

相手打者としては自分の間出会っているつもりでも

気づかないとドツボにハマるのだ。

 

結果的に7回も3者凡退であっさり片づけられた。

 

7回裏,先頭打者の8番秀悟

本日三度目のアットバット

彼は今日一番の集中を見せていた

 

秀吾(さっきはらしくも無く打ちに行っちまった。変わったピッチャーは低めに集めちゃいるが全体的に伸びはない。狙うならインコースだ。カウントを取りに来た球を狙い撃つ)

 

外角の変化球と高めの真っ直ぐ

これらの後の1-1の三球目

 

彼の狙いの通り

捕手はさっきの打席を見て

打ち気にはやっていると判断し

インコース低めでファールを打たせようと

ストレートを要求した

 

そして投手から放たれる

若干置きに来たインコース低めのストレート

 

秀吾(狙い通り!!!)

 

ガキィィィィィン!!!

 

肘をたたんでフルスイングで振りぬいた打球は

高々と上がってライトスタンドへ突き刺さるホームラン

右のこぶしを高々と突き上げてダイヤモンドを一周する。

チームとしても嬉しい駄目押しの一発で

4ー0と点差を広げる。

 

続く帝も四球を選び

倉持送って小湊亮がまだ四球を選び

伊佐敷倒れてツーアウト1.2塁で

 

頼れる4番結城哲也

 

ルパン3世のテーマが流れる中

自然体からのフォームで

目にもとまらぬ鋭いスイングが振りぬかれる。

 

キィィン!

 

三遊間を破るヒット

これで帝が帰って5ー0

 

試合が決定的になる。

 

8回は高速チェンジとシュート

カットボールを内外に散らして

6球で相手打線を3者凡退に抑えると

 

その裏にこちらはチャンスをつくるも

惜しくも打球が野手の正面をついて無得点。

 

そして9回にも帝はマウンドへ上がる。

 

伊佐敷「やっちまえオラ!」

 

結城「まずはワンナウトだ。落ち着いていけ」

 

小湊亮介「最後にブサイクな投球しないようにね」

 

秀悟「俺はホームラン打ったんだ,お前も完封くらいして見せやがれ!」

 

御幸「さぁ,終わらせにいくぞ!」

 

帝「うす!」

 

帝がマウンドに上がる。

流石の横浜港北打線も

事ここに及んで理解が及び始める

 

自分達は今,とんでもないやつと試合している。と

 

先頭打者は9番。

初球は低めに制球された高速チェンジ

あっさり手を出しサードゴロ

 

続く1番はストレートで押して

カットを見せつつ追い込むと

 

フワッ ククッ

 

「ぐぅっ!」

 

完全にタイミングを外したチェンジアップ

これにどうにか当てるも

正面ボテボテのピッチャーゴロ

 

ツーアウトをあっさり取ると

2番打者には露骨にシュート,カット,サークルチェンジ

を全て際どく外してストレートのみゾーンに入れて3ー2

最後の要求はアウトローへのストレート。

 

かつて,ID野球でとある球団を優勝に導いき

後の日本を代表するレコードホルダー叩き出した

無敗の投手を育て上げた名将は言った。

 

「投手の基本は外角低めのストレート」

 

困ったらアウトローの真っ直ぐに立ち返るということ

それに倣う投手は多く、帝も例外ではない。

高校初登板で得た結果に浮かれないよう

ここから地に足つけてやっていくためにという意味も込めて

最後は首を振って選んだこのボール

 

ズバァァァァン!

「ストライクバッターアウト!ゲームセット!」

 

構えた御幸のミット

その要求通りドンピシャに投げ込み

最後の打者を空振り三振に切って落とす。

結局最後まで相手に的を絞らせることなく,

許したのは5回のヒット2本のみ

 

9回 92球 被安打2 奪三振3 与四死球0 失点0

 

高校初登板は完封

しかもマダックスという抜群のデビューを飾った

 

打っては

3打数 1安打 1四球 2得点

 

 

松木秀悟は高校初スタメンで

 

4打数 2安打 1ホーマー 1打点

 

守備もそつなくこなしており

片岡監督としても打順を上げることを考えるには

この内容は十分すぎる結果だった。

 

 

 

試合終了後

片岡監督から、今日の総評をもらう

 

片岡「今日の試合,ナイスピッチングだった。正直期待していた以上だ。次の試合以降も登板はあるだろう。準備は怠るなよ」

 

帝「はい!!」

 

御幸「おい,有藤。お前に取材だとよ。今から行ってきてくれ。」

 

帝「アイシング終わったんですぐ行きます!」

 

試合が終わって

キャッチボールとアイシングを終えた俺は

そのままインタビューに向かった。

すると,そこにはもう1人いた。

 

秀悟「どうした?帝」

 

帝「お前もインタビュー?」

 

秀悟「おう」

 

インタビュアー「あ、有藤くんだね。ありがとうきてくれて。それじゃあインタビューを始めたいんだけどいいかな?」

 

帝「はい。自分と松木の2人同時でやりますか?それとも別々の方が都合がよろしいようでしたら松木に先にやらせますけどいかがしましょう?」

 

インタビュアー「心遣いが嬉しいけど,今回は同時だよ。よろしくね」

 

帝「はい。」 秀悟「うす!」

 

インタビュアー「まずはお疲れ様。今日の成績も含めて,一年生としては破格の出来であったわけだけど,まずは松木くん。あのホームランについてどう考えているのか聞かせてもらえるかな?」

 

秀悟「自分は他の打席を加味して見た時にやはりまだまだ甘い打席が多かったと思います。あのホームランは結果的に最高の形になっただけでスイングそのものは満足いくものではなかったです。次の試合ではもっといいスイングといい結果を残したいと思わされると共に,まだまだ未熟だと思わされた打席でした」

 

インタビュアー「おぉ,ホームランで満足いかないなんてストイックだね。じゃあ,次に有藤くん。聞いてもいいかな?」

 

帝「そうですね。まずは今日,チームが二回戦に進出ができてホッとしています。過程はさておきまず、勝利を掴むことができて大変嬉しく思いますね」

 

インタビュアー「しかし,自身としても高校生初登板で初完封だなんて,すごいと思いますし,自分としても自信になったんじゃないですか?」

 

帝「自信になったということはもちろんなんですが,やはり自分のように動かすボールで打たせて取る技巧派としては,いくつか甘い球があったことが反省点ですね。それにしても,こんな法外な結果を得ることができたのはひとえに自分という投手を知らなかった故に手を出してくれて,自分も調子良くなげることができ,打線のみなさんも援護してくださりと全部がうまく転んでくれたことが良かったんだと思います。次回も自分のできる限りを心がけていきたいですね」

 

インタビュアー「ありがとうございました。次回も頑張ってください」

 

 

インタビュー終了後

 

 

秀悟「なーにが技巧派だよ。ペテン師め」

 

帝「嘘は言っていない。ただ,俺は技巧派の投球も剛腕投手のような力押しもできるというだけだよ。」

 

秀悟「スーパーハイスペックが」

 

帝「それにしてもお前のホームラン。あれ狙ってたの?」

 

秀悟「久々の集中できた打席だから絞って内を本能的に捌いてたな」

 

帝「さっすが〜」

 

軽口を叩きながら

静かにそれでも確実に次の試合へ歩を進める

2人の足取りは軽く,そして明るく力強かった。

 

 

 

 




はいオリ主まさかのいきなりマダックス達成です
もう一人も2安打1本塁打暴れっぷり
こんな感じで試合は書いていこうと思うので
皆さんこれからも応援お願いします
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