《原本》がある世界で抗い続けろ!―原本が猿の始まり― 作:ぐぐぐああ
こういう魔法のような特殊なバフを掛けていく原本はとても希少であり、凄まじい性能をしていることが多い。
あんな村の皆を殺した魔法よりも、ずっと―――。
効果は予想以上だった。《助っ人》は単純に身体能力強化らしいが、強化倍率が1.1から1.2程度、《猿》は力が1.2から1.3なのでかなり強い。ただ、自分には使えないらしい。
「この能力、凄いよ。全然他所でもやっていける。それどころか、君と組んじゃって申し訳なくなってきちゃうよ」
「いやぁ、私自身、体力が無い体質なのかな?鍛えてもパーティやクランの基準に届かなくて……足手まといだって、言われて」
冒険者が集まって作られた組織であるクランにも入ろうとしたのだ。ようするに、ザンゲは残り物というところだろう。
スケルトンが現れた!
「カタカタカタカタッ」
「割り込んで来やがって!」
「えっ、逃げないんですかぁ!?」
棍棒ではなく剣を持ったスケルトンだ。ザンゲは即座に原本を使った後、剣を引き抜いて切り合いに持ち込む。差があった身体能力が互角になったようで、意外にも接戦だ。金属が擦れる音が周りに響く。
「援護します」
シンリーが取り出したのは、クロスボウ。そして、それには使い古した金属が先っちょの矢が装填してあり、撃ち出した。
撃ち出された矢は命中し、頭蓋骨の一部が砕ける音がした。
反射なのかは知らないが、一瞬だけスケルトンがシンリーの方へ振り向いた。
「ナイス」
ザンゲが剣の先を首の骨に突き立てて、一歩踏み出すと同時に剣を突き上げるとスケルトンの頭が吹っ飛んでいった。そして、念のためにスケルトンの剣を掌底で弾く。
完全に動かなくなり、脊髄から魔石を取り出す。
「ようし、やったね」
ザンゲがさり気なくハイタッチのポーズを取ると、いぇいと言いながらハイタッチしてくれた。
「スケルトンはシャドウよりも上の魔物じゃないですか。スパっと切れないですしぃ」
「いやぁ、シンリーの技がさぁ、魔法みたいで凄いなぁと思って早く試したかったんだよ」
「あれ?魔法じゃなくて魔術の方が近いですよ?」
「え、そうなの。知らなかった」
―――説明をしてもらうと、大勢で軍事用に使ったりするもののことを魔法というようで、いくら人を殺せるものでも一人で発動可能なら魔術だという。
知識もさるけとながら、《助っ人》の能力も凄いので断ったクランやパーティが無能だとしか思えない。しかも、大勢で遠征出来るクランだからこそシンリーの持ち味をいかせるので、どんな考えをもって足手まといを判断したのか理解しかねる。
シャドウが現れた!
「おっ、本命のシャドウが現れた!いくぞ」
シャドウの武器は鋭利な爪であり、二本の腕を上手に動かして戦ってくる。
何回も振り回すと、刃こぼれした部分が爪に引っかかった。
「いっ?!」
剣を掴もうとしてくるので、刃こぼれして止まった方向とは、逆にして剣を取り戻す。が、左胸から腹にかけて斬られてしまう。
「クロスボウまだか?」
「まだです!」
シンリーの様子としては、なんの問題も無かったが、悲しきかな筋力が無さすぎて装填に時間をかけてしまったのだ。
ザンゲに疲れがどっとくる。
「うっ、重いぃ」
おそらく、『増える鼓動』の時間切れにより、力を維持するため思ったよりも早く体力を使ったようだ。
「出来っ、たぁ!」
クロスボウに矢を装填したシンリーが、シャドウに向けて標示をつけて撃ち込めば、見事腹に命中。シャドウが悶え苦しむ動作をしだすと、ザンゲはシャドウの腹に剣を突き刺し、ザンゲ自身が倒れ込みながらも壁に押し当て倒した。
「ふぅ、ふぅふぅ」
血を大量に見て、立ってみると気分が悪くなってくる。
「大丈夫?」
「うん」
そう言って、すぐにシャドウから魔石を取り出した。こんな作業をしてるのに情けないと愚痴を思わずこぼした。
その後は、これ以上は無理ということで帰還した。
端的に表すと驚きだった。たった二体にしか少ないのにゴブリン五体に匹敵する銅貨一枚を得られたからである。逆にシンリーはこれでも足りなさそうにしていた。
ちなみに硬貨は、鉄銭、小銅貨、銅貨、大銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、金貨の八つである。