《原本》がある世界で抗い続けろ!―原本が猿の始まり―   作:ぐぐぐああ

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 心が知らない誰かと溶け合っていく。苦痛、悲哀、後悔、懴悔、憤怒、強欲、怠惰、あらゆるものが混じっていく。
 名前なんかも変わっちゃって、記憶とかも変わっちゃって、自分の知らない自分が形成される。ただ、相手は許容していて、理解していて、望んでいて、自分のことは考えていなかった。


輪廻

「おえっぷ……『増える鼓動(アウグメントビート)』に副作用があるなんてな」

「すみません、もしかしたらこのデメリットのせいで入れてもらえなかったのかもしれません」

 

 ただ、少し気持ち悪いと言っても、視界が二重に見えるといった程度で情報などは正確に伝わって生活にはなんの支障もきたしていない。

 

「今日は依頼で赤ちゃんの世話をするぞ」

「冒険者に頼むなんて世も末ですね」

「まぁ、安いからな」

 

 依頼の場所まで向かって、赤ちゃんを受け取りにいく。

 

「もう、なんで私達を向かわせるんでしょうかね」

「どうせ依頼人の家で過ごすんだし、報酬に剣術指南書とかもらえるんだからさ」

「私は遠距離で攻撃をするんですよぉ」

「歩法もあるから、それを学んだらいいんじゃないかな」

 

 二人で会話を続けていると、依頼人の家があるであろう場所に着いた。そこには広い庭に小さい館がある。そこらの家と比較をしてみれば、かなりの差があった。

 

「誰だ。お前達は」

 

 そこの館の門番の兵士が立ち塞がる。ザンゲの奴隷商ほどではないが、警備をつけていて金に困ってはなさそうだ。

 

「依頼を受けて来た冒険者です」

 

 すかさず冒険証を見せる。

 

「そうか、通れ」

 

 冒険証をしまって家の門に入ろうとした時、兵士から「坊ちゃまを怒らせるなよ」と声が聞こえてきた。それは二人に言ってるようにも独り言のようにも聞こえた。

 その言葉が二人の不安を煽ってくる。

 

「……なんなんでしょうか」

「分からん」

 

 家の玄関を開けると執事が待ち構えており、挨拶をしてきたので挨拶をしかえすと案内をしてくれた。

 

「ここでございます」

 

 執事が案内してくれた部屋は非常に質素な木製の扉であり、開けてみるとそこには赤ちゃんがポツンと眠っているのが見える。

 おかしい、二人は心の中でそう考えた。赤ちゃんがいるところまではいいが、多少の血が飛び散っており、それはもう固まってしまっていてどうしようもない状態だからだ。

 しかも、主人どころかその妻もいない。

 

「あの、依頼人は?」

「旦那様方のことなら、あまりお答えすることは出来ませんが、外出中であることと正午にお戻りになられることはお答えしておきます」

「了解です」

「では、なるべく怒らせないように………」

 

 執事はそう言いながらも扉を閉めた。

 

「なんか同じこと言われましたね」

「そうだな」

「オギャアオギャア!」

 

 急に赤ちゃんが泣き出した。どんどんと叩いて大きな音を出しながらも声量はとどまることを知らない。急いで赤ちゃんを抱いて寝かせようとするが、異常な重さに加えて暴れてくるので非常に厄介だ。

 

「ベロベロ、バァ〜」

 

 シンリーが変顔をしながらベロベロバァをしてくれたのか、キャっキャっと声を発して喜んでいる。

 

「ははっ、可愛いですね」

「そうですね。赤ちゃんって見てると幸せ」

 

 それからは積み木をしたり、ボール遊びをした。

―――――――――――――――――――――――――――――

「そういえば、時計ありますけど装飾とか綺麗ですね。館とかあるから時計があることは予想出来ましたけど、コンパクトだし」

「確かにそうだね。これはうちの奴隷商も縦に長いやつだったし、凄いな」

 

 少し赤ちゃんに目を離すと泣き叫びだした。

 

「えぇ、どうして」

 

 シンリーが赤ちゃんを抱っこして揺さぶると、さらに勢いが増していく。ザンゲが急いでシンリーから赤ちゃんを取り上げて、落ち着かせようとする。

 

「バッカ、赤ちゃんは首が据わってないから揺さぶるな」

「ご、ごめんなさい」

「キィィイィイイイ!」

 

 バチッと衝撃が流れると赤ちゃんが浮かびだし、周囲に攻撃をし始めた。血痕が残っていたのはそのためだろう。ただ、部屋のものは頑丈で中々壊れないようだ。

 

「もしかして、『ギフテッド』……いや、『神悟福体(祝福の加護)』ですかね」

「確か、物質体ではなく魔力などで体が構成されている精霊に近いやつだったっけな。こりゃまずい」

 

 赤ちゃんに掴みかかろうとするが、すべて見えない壁によって防がれてしまう。シンリーとの挟み打ちをしてみても、効果は出ずに続いてしまう。

 

(くそ、剣で外側を削るか?いや、赤ちゃんはまだ攻撃をしてこないが剣を取り出すと攻撃しだすかもしれない。それなら――)

 

「体に包んでやるだけだ」

 

 接触部分が熱くなり、火傷をするかもしれないが、攻撃はしてこなかった。

 

「成功〜!取ってくれ!中の子!」

「はい!」

 

 中の赤ちゃんを取り出そうとすると、攻撃判定と見なされるのかかすり傷程度ではあるが攻撃をしだした。シンリーも同様で攻撃を受けている。

 

「うおりゃっ」

 

 赤ちゃんを取り出すと、力を使い果たしたのか眠りについた。

 

「はぁっはぁっ」

「正午になりましたね。ご苦労さまでした」

「うわぁっ!」

 

 目の前に現れたのは執事と二人組であり、おそらくは旦那さんと奥さんだろう。この後は、回復をしてもらって剣術指南書をもらって安静にすることにした。




 闘技場の前の話です
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