《原本》がある世界で抗い続けろ!―原本が猿の始まり― 作:ぐぐぐああ
冒険者の皆が足を踏み入る所にやっと踏み出した―――。
起きてみるとベットの布も汗をかいたためか、びちょびちょに濡れていた。奴隷商からの飯をかっ食らい、服を着替える。
「ちょっと素振りするか」
昨日の戦闘を思い出しながら、本番と練習ではどれだけぶれていたかを考えて振るった。全部で十三回だけの素振りだったが、シンリーが待っているので、早く向かう。
不思議と疲労感と筋肉痛は無かった。
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速く走ったと思ったはずだが、シンリーの方が早く着いていた。かなり嬉しそうであり、何かあったのだろう。
「何があったの?」
「新しい技覚えたんですよ!」
どうやら、昨日の闘いにより何かが目覚めたようだ。
「迷宮からもなんですし、今使いましょう」
「ここで大丈夫か?冒険者ギルドの中だから、有料の場所使ってでもそっちの方が良いんじゃない?」
「これは、大丈夫。『相称《シンメトリー》』」
急激に内側から縛り付けられてでもいるかのような不快感を感じ、原本も収納してるはずがシンリーに引っ張られている。しかも、思考が二重になったりで吐き気を催す。
「なんか軽いですね」
ただ、シンリーの場合は大丈夫なようだ。
「わっ、顔色悪いけど、大丈夫ですか」
気分悪いし、大丈夫じゃない。そう言いたいのだが、吐き気を押さえることに集中すだけで精一杯だ。
「やっぱり、気分悪いですよね。能力解除します」
「なんか、一瞬で楽になったぁ」
「たぶん、能力的に強い人を弱くして弱い人を強くするっていう能力ですね。思考も私からは受信出来ていたので、一人に近づける?ものなのかな」
さっき、ザンゲは思考が二重になっていたが、シンリーの思考が入っていたのだろう。
「そっちは、力が目覚めましたか?」
「見てみる」
ザンゲが原本を取り出すが、まず見た目から変わっていた。
質素な皮の本から少し皮が破れた古びた本になり、表紙には鎖が描いてある。
「中身は、《罪人》?ふふふ、タイトル詐欺でごめぇんね」
ザンゲはその中身を見て驚愕する。
《罪人》
殺した人の能力を使う事が出来る。※ストック三
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「クソすぎて草」
「何が出たんですか?」
「殺した人から能力奪う能力」
「え?殺しませんよね。私の事」
かなりシンリーは困惑をしていて、少し距離をとった。
「それ、自己強化じゃないんだから奪ったところで使い道無いし、パーティに人気が無い奴隷だぞ。俺」
「あ、そうなんですか。まぁ、原本を戻した方がいいですね」
「原本戻せんの?」
「戻せますよ。魔物とかのようにまず外見から変わるような能力だとキツイらしいですけど、戻れって念じるんです」
そんな簡単にいくことなのか?と疑問に思いながら、戻れと念じると突然原本が収納され、再び原本が出た。見てみると、外見も戻っていた。
「あ、新しい能力。『猿知恵』か」
彼らは今、一階層の深い所にいる。初めての二階層への進出を目指している。この迷宮では一階層が初心者、二〜四階層がアマチュア、五階層からがプロのように扱われているので、とりあえず、初心者を卒業しようとしているからだ。
ゴブリン戦士《ウォリアー》が現れた!
「それじゃあ、いくよ」(ここから原本『猿』の能力を使う描写はしません)
「分かりました」
『猿知恵』と書いてあるが、意外にも有力な能力だった。
知恵というが、実際には思考のアシストをしてくれる。
「三秒後に僕の後ろに回り込んで撃ち込んで!保険で八秒後に撃てるようにもね」
ゴブリン戦士は盾を持っているが、力はザンゲがちょい上程度だ。
秒数を数えて二秒の時点でシンリーの回り込んでくる方向とは、逆に回り込もうとする。シンリーを警戒していたゴブリン戦士ではあったが、流石にこの挙動は完全に目で追うしかない。
「三秒」
ゴブリン戦士の背中に矢が刺された。装備を着ているとはいえ、皮装備であり防ぐことが出来なかったようだ。
すかさず、首を狙うも盾で防がれてしまった。
―――五
「おっと」
―――六
勢いがついてしまったため、ゴブリン戦士の方を向きながらも転んでしまう。
「ギャア!」
ゴブリン戦士が叫び声を発しながら、刺そうとしてくる。
―――七
ザンゲが瞬時に手と腰の動きで、身長の低いゴブリン戦士の首へと倒れながら蹴った。
「八秒」
矢がゴブリン戦士の目を貫いて脳に刺さった。
痙攣しているが、後もう少しで死ぬだろう。
「やりましたね」
「いやぁ、『猿知恵』は時間調整しやすいかったからね。ナイス精度だったよ」
ゴブリン戦士の魔石を取り出して奥へ向かった。