Final FantasyⅨ-リリカル・クロニクル RE.   作:竜の蹄

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今回は、ジタン達に今後、関わる勢力達の動きが描いてます。
次エピソードは今、執筆中です。
それでは、お楽しみください♪


幕間 動き出す勢力

 次元世界を流れる広大な次元の海……そこを渡航する一隻の戦艦……時空管理局に所属する次元航行部隊、通称「海」。

 そこが所有する二又の特徴的なボディの戦艦の名は「アースラ」。彼等の任務は広大なる次元世界にて勃発する次元犯罪の阻止かつ、それらを引き起こす次元犯罪者達の拿捕であり、人々の安全と平和、次元世界の治安を維持する事にある。

 アースラのブリッジにて緑色の髪をポニーテールにした美しい女性、アースラ艦長のリンディ・ハラウオン提督が、モニターに映し出された映像を見ながら思案に暮れていた。

 映像にはユミール、黒のワルツ1号、コキュートスと言った、過去にジタン達が戦った怪物達の姿があった。

 それと同時に、怪物達を前に立ち向かう者に彼女は興味を寄せていた。金髪で顔立ちは、まだ幼さを残した青年だが、特徴的なのは、長く伸びた猿か猫の様な長い尻尾……ジタンの姿だ。

 

「一体、何者なの?」

 

 リンディは、このジタンと言う青年に不思議な物を感じ取っていた。一見すれば、他の世界から流れてきた次元漂流者なのだが、それとは別な物を、この青年は漂わせている。

 長きに渡り、管理局に中枢に関わってきた彼女からすれば、存在自体がイレギュラーだ。 

 

「艦長?」

 

 眉根を寄せるリンディの姿に、アースラのオペレーターを務める女性、エィミィ・リミエッタが話しかける。

 

「大丈夫ですか? お茶のお代わりですか?」

「ううん、違うの……この次元漂流者の素性について明察していたんだけど……」

 

 そもそも、時空管理局とて、管理局管轄外である地球にアンテナを張り巡らせる程、暇では無い。にも関わらず、ジタンについて考察するのは、理由があった。

 

「やっぱり、あの“とんがり帽子の人”ですよね?」

「ええ……彼の告発が無ければ、地球に流れ着いた次元漂流者を見落としていたわ……」

 

 そう言いながら、リンディは先日、アースラに突然、現れた招かれざる客を思い出した。

 

 

 ー2ヶ月前ー

 

 その日、アースラは何時もと変わらない任務を送っていた。リンディは艦長室にて本部から送られて来たデータに目を通していた。

 

『失礼します、艦長』

 

 入って来たのは、時空管理局の執務官にして、アースラ提督のリンディの息子でもある、クロノ・ハラウオンだ。

 エイミィを連れて、彼は報告に訪れた。

 

『首尾はどう?』

 

 リンディの質問に、クロノは応えた。

 

『順調です。この分なら、何事も無く航行可能です』

 

 クロノは、14歳と若年ながらも時空管理局の執務官と言う重職を任されている。それは、単に彼の天才的な魔力の高さと、弛まない努力の賜物だ。

 

『あと、エスパーダ提督から通達です。小規模の次元震がアースラ航行空域の次元世界で発生したから気を付ける様に、だそうです』

 

 エイミィが続けた。因みに彼女は16歳だが、クロノとは同期に当たる。

 

『了解。ふふ……相変わらず、律儀な人ね』

『彼があってこそ、我々は安心して職務を全う出来ますから!』

 

 クロノは敬意を表する様に言った。エイミィは揶揄う様に言った。

 

『相変わらず、クロノ君はエスパーダ提督一筋だね。お姉さん、妬けちゃうな〜』

 

 エイミィの言葉に、クロノは顔を赤くしながら反論した。

 

『べ、別に、そう言う意味で言ったんじゃない‼︎ あと、前々から言ってるが、勤務中は私情を挟まないでくれ‼︎』

『だって、私の方が歳上だし〜』

 

 まるで、姉と弟の様に言い合う2人を微笑ましげに見るリンディ。これが、アースラの日常だった。

 このまま、平常運航のまま、次元艦は進むと思われた。だが、それは突然、破られる事になる。

 急に三人の背後に魔法陣が出現した。魔法陣から、とんがり帽子を被った大柄の人物像が迫り上がってきた為、クロノは警戒する。

 

『な、何者だ⁉︎ 何処から侵入した‼︎』

 

 アースラの防御網を潜り抜け、突然、姿を見せた侵入者に3人は驚愕と共に、同様を隠せなかった。

 ひいては、その侵入者の外見だ。とんがり帽子の間から覗く二つの眼は、人間のそれとは異なっていた。

 

『何者か、と聞いてるんだ‼︎』

 

 クロノは、リンディを庇いながら、その人物を問いかける。しかし、侵入者は言葉を発しようとはしない。

 

『私は、アースラの提督リンディ・ハラウオンよ。私に用があって来たのかしら?』

 

 リンディが名を名乗ると、侵入者は右手を翳す。クロノは何時でも、戦闘に入れる様にデバイスを取り出したが、その右手には球体状の物質があるだけだ。

 

 ーやァ、ハラウオン提督。ご機嫌はいかがかな? ー

 

 球体からは声が聞こえて来た。聞いた事の無い人物の声に、リンディは警戒を強める。

 

『何者なの?』

 

 イタズラにしては、度を超えている。しかし、声の人物は気にする様子は無い。

 

 〜何者か、なんてどうでも良い。それより、君達にとって、耳よりな情報を伝えておきたい。今、僕は動く事が出来ない為、彼を使いに寄越したのだ〜

 

『コイツは何なんだ? 人間なのか?』

 

 クロノが尋ねると、球体からは小さく笑い声がした。

 

 〜この者は人間では無い。魔法を動力として動くゴーレムの一種だ。君達の弁を借りるなら、リンカーコアが自立して動いている者だと思ってくれて良い〜

 

『リンカーコアが自力して動く?』

 

 エイミィが言葉を繰り返す。ハッキリ言って、このとんがり帽子の男はかなり奇妙だ。人の姿をしているが、彼からは生物らしさが感じられない。ゴーレム、と言う言葉を借りるなら、正にその通りだ。

 

『貴方が誰なんて、この際は良いわ。それで? 私に知らせたい事とは何かしら?』

 

 リンディは冷静に尋ねる。球体は続けた。

 

 〜第97管理外世界……君達の組織での名称だが、一般的には地球と呼ばれている世界だ。その世界を皮切りに近々、大変な事が起こるだろう。

 今の内に警戒を強めておくが良い〜

 

『地球って……あんな、辺境世界で起こる大変な事など、規模は知れているだろう?』

 

 クロノは呆れた様に言うが、球体は静かに……

 

 〜忠告はしたよ。後は君達の自由だ。ああ、それとね……地球に居る『ジタン』と言う男がいる筈だ。彼には用心しておきたまえ……〜

 

 

 と、言い残すと、球体は消失した。とんがり帽子の男は腕を下ろし……

 

『任務完了。帰還します』

 

 と、告げた。

 

『あ、喋った』

 

 エイミィが、そう言った次の瞬間、そのとんがり帽子の男は姿を消していた……。

 

 

 リンディは回想の中で言われた……地球と呼ばれる管理外世界で起こるであろう大変な事、そして地球に現在、流れ着いたジタンと言う人物の事を思い返した。リンディはすぐさま、地球に監視を始め、ジタンについての調査を始めた。そして、分かった事……ジタンは、何処の世界から流れ着いたのか不明で、彼についての素性が全く掴めなかった。

 しかし、彼の戦闘技術はアースラの武装局員にも匹敵する。魔力を所持している訳では無いに関わらず、魔導士ランクで表すならAAA+、或いはSは固いかもしれない。

 

「こんな技能者が、これまで管理局に目を付けられず、水面下に潜んでいたなんて考えられないわ。となれば、残る可能性は……」

「未発見の管理外世界からの漂流者……」

 

 リンディの言葉にエイミィが答える。次元世界は非常に広大で、管理局の傘下にある管理世界、干渉はしないが存在は認知されている管理外世界、無人世界などを含めたら、数えきれない程にある。

 中には、未だに管理局すら存在を認知していない次元世界も多数に存在し、其れ等は自分達の存在する時間から少し擦れた場所に存在する並行世界……俗に言う『パラレルワールド』の類では無いか、と考える者もいる。

 ジタンが、そう言った世界からやって来た者だと仮説を立てるなら、全てに辻褄が合う。

 

「リンディ艦長‼︎ 準備が整いました‼︎」

 

 クロノがブリッジへと入ってきた。後ろには2人、武装局員を引き連れているが、1人は精巧な顔立ちだが、局員の制服をだらしなく着崩した態度の悪そうな男と、人懐っこそうな顔立ちに細い糸目、制服はきっちりと着用した、どちらかと言えばお調子者っぽい男だった。

 

「クロノ君が自ら行くの?」

 

 エイミィが尋ねると、クロノは溜め息混じりに言う。

 

「仕方ない。調べてみたら、この漂流者とは別にも、素性不明の魔導士2名が居るみたいだ。それを確かめるには直接、僕が赴くしかない。

 それはそうと、艦長……本当に、この2人を連れていくんですか?」

 

 クロノが後ろの2人に目を向けた。片方は、やる気があるのか無いのか、欠伸をしているし、もう片方は落ち着きなくキョロキョロしている。

 

「エスパーダ提督からのお墨付きの2人よ。嘱託魔導士だけど、実力は折り紙付き。執務官の補佐として役に立てて」

「……はァ……」

 

 クロノは不安気に見えた。本当に、あの人に認められた優秀な魔導士には、お世辞にも見えない。

 何か問題があって、飛ばされてきただけじゃ無いのか?

 

「提督、俺達は次元漂流者探しする為に、態々、別部隊から連れて来られたんですか?」

 

 態度の悪い男は一応、上司には敬語を使ってはいるが、何処か太々しさが感じられた。

 

「あら? エスパーダ提督からは、多方面で役に立つと聞いているけど? 不服かしら、ビッグス君?」

 

 リンディの言葉に、ビッグスは溜め息混じりに呟く。

 

「そもそも、俺達は最前線で戦う為に……」

「まあ、良いじゃ無いですか! こっちの方が楽っしょ!」

「お前は黙ってろ、ウェッジ‼︎」

 

 軽口を叩くウェッジをビッグスは怒鳴る。そんな2人を、クロノは睨む。

 

「エスパーダ提督から聞いているよ。クラナガンの裏町で燻っていたチンピラなんだって?」

「随分と俺達の事、下に見てくれるじゃねェか。あと、チンピラじゃ無くて、ギャングな。記憶したか、お坊ちゃん?」

 

 険悪な雰囲気を漂わせる2人に対し、ウェッジはヘラヘラしている。エイミィは心配げに、リンディに耳打ちした。

 

「大丈夫なんですか、この人達? 私の勘だと、クロノ君と上手くやれる可能性は限りなく“0“なんですけど……」

 

 付き合いの長い彼女からすれば、クロノの性格は一番、よく分かっているつもりだ。ビッグスとウェッジの性格は、ビッグスは極端に態度が悪い上に気も短い。ウェッジは穏やかだが、目上を立てるタイプでも無い。

 突如、リンディは口を開いた。

 

「ビッグス君、ウェッジ君。エスパーダ提督から聞いているけど……貴方達、大分と管理局の定めた法を破っているみたいね?」

 

 気に話を変えたリンディに、2人は初めて真面目な顔をした。リンディは話を続ける。

 

「もし、貴方達の態度次第では、無人世界の軌道拘置所に直行させて構わない、とも言われてるけど?」

「お、脅す気ですか?」

 

 優しく微笑むリンディだが、ビッグスとウェッジは酷く狼狽えていた。どうやら、かなり脛に深い傷を負っている身らしい。

 

「どう捉えるかは貴方達の自由だけど……アースラの切り札である執務官に、そう言った口の利き方は、どうかと思うわ?」

「いやァ、冗談ですよ‼︎ 任務には粉骨砕身の覚悟で取り組ませて頂きます‼︎」

「右に同じくッス‼︎」

 

 余程、大きな弱みを握られているのか、ビッグスとウェッジは不真面目な態度を一転させた。中々に現金な二人組である。

 

「はァ……先が思いやられるよ……」

 

 クロノは最早、嘆息するしか無かった……。

 

 

 

 薄暗い研究室内…………。黒ずくめのマントを羽織った女……プレシア・テスタロッサは激しく苛立ちを覚えていた。彼女は、テスタロッサの名が示す通り、フェイトの母親である。

 

「何をしているの、あの子は……‼︎」

 

 プレシアは悪鬼に如し形相だった。

 

「ちっとも、ジュエルシードが集まらないなんて、何処まで愚図な子なの……‼︎」

 

 腹ただし気に机を叩きつけるプレシア。

 

「やぁ、お冠だねェ」

 

 突如、出現した魔方陣から現れるのは銀髪の青年。穏やかかつ妖艶な笑みを浮かべながら近付いてきた。彼に対し、プレシアは鋭い眼光で見据える。

 

「一体、どういう事なのかしら?」

「何の事だい?」

 

 凄まじいまでの殺気を滲み出すプレシアだが、青年は至って冷静な反応だ。

 

「とぼけないで‼︎ 貴方の指示通りに従って、フェイトの下に転がり込んだ男を泳がせているのに、ジュエルシードは全く集まらないじゃない⁈」

 

 憤るプレシアに反し、青年は軽く肩を竦めながら笑う。

 

「そんな事で怒っているのかい? 寧ろ礼を言ってくれても、バチは当たらないんじゃないか?」

「礼を、ですって…………?」

「目に入れても痛くない愛娘を助けてくれる様に、彼を引き合わさせたんだ。僕の聡明さに感謝したまえよ」

 

 青年の言葉に対し、プレシアは殊更、激昂したらしく青年の足元に電撃を流した。

 

「ふざけないでッ‼︎ あんな出来損ないの人形が私の娘なんて‼︎ 私の娘はフェイトじゃないッ‼︎」

「ふっ……そうかい……」

 

 我が娘に対し、あまりと言えばあんまりな言葉だったが青年は変わる事無く語り続ける。だが口調は僅かながら嫌悪感が滲み出ていた。

 

「……なら僕からも言わせてもらうが……君は何時から僕の上司になったんだい?」

「何ですって?」

「君とは、あくまで利害の一致で''手を組んでいる''だけだ。そう言った意味で君が御執心のアルハザードについての情報を与えて、こうやって根回しをしてあげてるんじゃないか。それだけで飽き足らないのかい?」

 

 青年は変わらない口調だが明らかに怒っている様子だ。流石のプレシアも口籠る。

 

「君に僕のやり方に口を挟まれるのは筋違いだし、僕は君に対し口も手も出さない……。言っておくが君が僕の取引を破棄しようとすれば、僕は君との縁を切らせてもらう。そこを履き違えるな」

 

 それだけ言い放つと青年は部屋を後にしようと踵を返す。「あ、それと……」 何かを思い出した様に青年は振り返る。

 

「君が何をしようと勝手だが……彼にだけは手を出すなよ? 彼は僕の獲物だ」 

 

 それだけ言い残すと青年は部屋から出て行った。その後、プレシアは怒りに身を任せて拳を叩きつける。

 

「……いいわ……アルハザードにさえ辿り着けば、あの男など無用の長物……その時は……‼︎」

 

 プレシアは怒りと憎しみに顔を歪ませながら狂気の笑みを浮かべた。最早、彼女は正気沙汰では無い。今の彼女には一刻の猶予も許されないのだ。時間に制限を掛けられた人間は正常な思考が出来なくなる。既に末期までプレシアは追い詰められていた。

 

 

 部屋から少し離れた場所で、青年は立ち止まる。

 

「やれやれ……切羽詰まった人間は、本当に短気だね……。そう思わないか?」

 

 青年が振り返ると、2人の人影が見えた。1人はアースラに姿を現したとんがり帽子の男、もう1人は顔は見えないが、細い見た目から女性だと分かる。

 

「……何故、管理局に情報を流したのですか?」

 

 女性は、やや不満気に言った。青年は、フフンと鼻で笑う。

 

「分かり切った事を聞くね、君は……。決まってるだろ? これも、僕の計画の内さ……」

 

 青年は、はぐらかす様に言った。続いて、とんがり帽子の男が話し始める。

 

「……現在、我々に隠れて動いている男についてですが……」

「放っておけば良いさ。どうせ、あのピエロの事だ。ろくな事はしないだろうが……ただ、騒ぎを起こして楽しんでいるだけだ。僕達の障害にはならないさ……」

「……了解しました」

 

 青年の言葉にとんがり帽子の男は閉口した。

 

「それより、僕が危惧しているのは”時間”だ。僕には、もう時間が余り無い。君達、僕は此処を動けないんだから、早く事を済ませてくれよ?」

「……はァ、人使いの荒い人なんですから……」

 

 そう言い残すと、2人はそれぞれ、魔法陣に消えていった。残された青年は、天井を仰ぐ。

 

「ジタン……」

 

 ジタンの名を呟いた青年の顔は妖しく笑った……。

 

 

 

 アースラの航行するエリアより離れた、第20管理世界に近い次元……其処を航行する、アースラと比肩する程の巨大な戦艦があった。

 その名は『パラメキア』。次元航行部隊の中でも一大勢力を誇り、規模も段違いである。次元犯罪の中でも、特に管理局の存続に関わるレベルの事件に出動し次元犯罪者達を取り締まる為、これまで数多の次元犯罪を防いできた実績を持つ。

 しかし、それ故に管理局内でも畏怖されており、特に海と対立関係にある“陸”こそ地上本部からは『殺戮艦隊』『血も涙もない悪魔達』と呼ぶ者も居る。

 そのパラメキアを指揮するのは……。

 

「レオ将軍‼︎」

 

 パラメキアのブリッジにて部下の武装局員にレオ将軍と呼ばれた男性は振り返った。やや逆立った黒髪に獣の様な鋭い目つき、顎に蓄えた髭、黒い局員制服を着用した壮年の男性だ。

 彼は、レオンハルト・エスパーダ。パラメキアの提督にして、管理局に於ける階級は少将。数々の武勲を立てて、管理局内でも信頼と地位を勝ち取って来た人物である。

 その勇猛振り、常に堂々とした態度を崩さない姿から、彼の名前であるレオンハルトから取り、百獣の王ライオンの如し将の意味を込めて『レオ将軍』と呼ばれ、尊敬を集めている。

 

「報告します‼︎ 第20管理世界で起きていた大規模な暴動の鎮圧に成功した、との事です‼︎」

「……そうか、ご苦労。武装隊に帰還命令を出せ」

 

 レオンハルトは正面に広がる次元の海を見つめながら部下の報告に応対しつつ、司令を出した。

 若い局員は浮足だった様子で、話を続けた。

 

「やりましたね、将軍‼︎ これで、また本部で我が部隊の株も……」

「私情を挟むな‼︎ これは任務だぞ‼︎」

「も、申し訳ありません……!」

 

 レオンハルトの一喝に、部下は敬礼しながら謝罪した。根っからの軍人である彼は、自分達にとって有益な状況になろうと、決して私情を挟むべきでは無いと考えていた。だが、そんな彼を部下達からは絶大な信頼を得ているのも事実だ。

 

「時に……アースラのハラウオン提督からの報告はどうなっている?」

「ハッ‼︎ 第97管理外世界に航路を進めている、との事です‼︎ 何でも、地球に流れ着いた次元漂流者について、調べているそうでして……」

「次元漂流者? 別に珍しい事では無いだろう?」

 

 部下の報告に、レオンハルトは怪訝な顔をした。

 

「それが……リミエッタ通信主任の話では、管理局のデータ内には確認されていない、所謂『未確認次元世界』より流れ着いた者では無いか、と……」

「未確認次元世界……」

 

 レオンハルトは厳しく眉根を寄せた。未確認次元世界……管理局にデータも座標も登録されておらず人口、人種、科学力が一切、不明と言う未知の世界。

 あまり数は多くはないが、そう言った次元漂流者は後を絶たず、また、其れ等の漂流者は元に居た世界への帰還は限りなく絶望的に近い。

 普通の次元漂流者ならば、ただそれだけの話だが、未確認次元漂流者の場合は状況が違ってくる。

 管理世界、管理外世界の場合なら、その人間の潜在能力についてを知る事が出来る。ごく稀に管理外世界には、高い魔力資質を持つ者が生まれる事もあるが、未確認次元世界は其れさえも理解し兼ねる。即ち、未知数なのだ。

 

「……例え、何者であろうが、我々の取るべき道は変わらない。我等の任務は管理局に仇成す者達に対し、徹底した牽制と制圧だ。その者が管理局にとって不利益であるならば……我々が見過ごしはしない!」

「はい‼︎」

 

 レオンハルトの言葉に部下は応える。だが、レオンハルト自身は暫く、目の前に広がる次元の海に見ながら、思案に暮れていた。

 

(……未確認次元漂流者……か。まさか、私以外で現れるとはな……)

 

 意味深な言葉を思いつつ、レオンハルトは沈黙を貫いた。

 

 

 アースラ、パルメキアとは異なり、周囲が白一色に覆われた不可解な部屋……其処に1人の人物がいた。

 部屋の景観に溶け合った様な純白なローブ、膝下まで伸びた長い髭、手には身の丈ほどもある杖を持った老人だ。

 顔に刻まれた皺の数、透き通る程に青い瞳、穏やかな面持ちながら、厳かさを兼ね備えた姿は、正しく『老賢人』と言う言葉が相応しかった。

 

「……いいんじゃな?」  

 

 老人は誰かに語り掛けた。すると、別の声がした。

 

 〜ああ、構わない……。そもそも、ジタンをあの世界に送らせたのは、その為だ〜

 

 謎の声が言った。老人は眉根を寄せて唸る。

 

「だが……分かっておるのか、ガーランドよ。お前は全次元世界の……いや、全宇宙の法則を意図的に乱そうとしているのじゃぞ? 本来なら、ジタン達をあの世界に送り込んだ事自体が、あってはならない事じゃ……」

 

 老人の言葉には、かなり危険な事が起きている事を示唆していた。しかし、話し相手のガーランドは続けた。

 

 〜しかし、このままにしておけば、全宇宙は乱れるだけでは済まされず、下手をしたら消滅し兼ねない。多少の無茶は承知の上だ〜

 

「……多少の無茶か……。ガーランドよ……お前達が行ってきた事を、儂は全てを否定はせんが、肯定もしない。

 遠くない未来、儂もお前もツケを払う事になるかもしれん。その時は、儂は……」

 

 〜大局を成す為なら、時には犠牲を必要とする。その為、私達は生まれてきたのだ……〜

 

 老人は若干、責める口調をしたが、ガーランドも引かなかった。遂に老人は首を横に振った。

 

「……分かった、お前の意思に従おう。だが……ジタン・トライバルが信用出来るか否かを見届けさせて貰う。行動に移すのは、それからだ」

 

 〜感謝する……〜

 

 そう言い残し、ガーランドの声は途絶えた。老人は目を閉じ、小さく呟く。

 

「……だが、ガーランドよ……お前の選択は間違ってはいない。既に“カオス”は胎動を始めている……。後は“コスモス”が、どう動くかじゃが……」

 

 その言葉の意味を知るのは、老人だけだった……。

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