Final FantasyⅨ-リリカル・クロニクル RE.   作:竜の蹄

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今回は戦闘シーンを書いてます。あと、ケフカを書いていたら、マジで碌な奴じゃ無いなって、くらいに仕上げていく予定です。


第十幕 霧中の再会

 とある日曜日……ジタンは今日も今日とて、翠屋でのバイトに精を出していた。あれから、幾日かが過ぎたが、フェイトはジュエルシードの散策の為、海鳴市を飛び回っている。

 ジタンは、次に見つかった時は自分も付いていくつもりだ。だが、なのはもまた、ジュエルシードを見つける為、相変わらず『パトロール』を欠かさないでいるらしい。

 ジタンも、ただフェイトが頑張っているのを手をこまねいている訳に行かない、と思うものも、なのはと関わりを持っている身としては、フェイトを明け透けに味方するのでは無く、フェイトとなのはを和解させる方法を考えねばならなかった。

 しかし未だに、フェイトにジュエルシードを集めさせているフェイトの母親の所在すら掴めていない。何より、ジタンは先日の事件について、考察を立てていた。

 黒のワルツ1号……あれは、ガイアにてジタンが対峙した敵だ。ガイアの技術によって生み出された人の形をした兵器『黒魔道士兵』の名称である。

 彼等は、ガイアの地脈に流れるエネルギーを利用して生成された''霧''から生み出され、戦い命を奪う為に存在し他者を殺める事に一切の躊躇が無い冷酷なる魔道士……更に言えば、命を持たず感情を持たず只々、命令に従い動き続けるだけの魂無き人形……それが黒魔道士兵だ。

 ジタン仲間であるビビもそれに該当し、汎用目的に開発された後期の黒魔道士兵の原型として生み出されたプロトタイプに当たる。

 通常、黒魔道士兵は魂を持たない為、感情は無く意思も無い、命令された事だけをこなす機械そのものだが、ごく稀に“自我”を獲得する者も居る。

 かつて、ジタン達は旅の中で、自我に目覚めて戦いを放棄し、人間の存在しない僻地に集落を築いていた黒魔道士兵達に出会った。

 ビビも然り、元は他の黒魔導士兵同様、自我が無かったが、彼を拾ったクワン老によって、知識と共に自我を身に付けたらしかった。

 だが、通常の黒魔道士兵をより戦闘に適し、より高度な命令を完遂する様に改良、調整された『黒のワルツ』と呼ばれるタイプも存在した。

 黒のワルツ達は、コードネームに使われている“ワルツ”が示す通り、三体が製造された。先日、ジタンがビビ、なのはと共に倒したワルツ1号の他、2号と3号が存在していたが、其れ等全て、ガイアにてジタン達が倒した筈だった。

 ワルツ1号はジタンとの会話の中で『別の黒のワルツ1号だ』と発言し、自分は別の存在だ、と断言していた。

 それ等を統合するならば、考え付く可能性は一つだ。あのワルツ1号は、ガイアで作られたワルツ1号と異なり、この地球に潜伏する何者かによって作られた存在である事だ。

 ジタンやビビと同じ様に、ガイアからやってきた者が居るのかもしれない、と推測したが、ふとジタンの脳裏に“ある人物”の姿が浮かぶ。

 

(まさか……“アイツ”か?)

 

 黒魔道士兵の作り方を知っている人物は、ガイアの人間では限られている。黒魔導士兵を兵器目的で開発していたブラネ女王と双子の道化師……そして、それを伝授した者……だが、そうすると、黒魔導士兵を地球に送り込む理由に説明が付かない。第一、ワルツ1号は自分を倒す為に送り込まれた、と言っていたからだ。つまり、ワルツ1号の背後にいる何者かが、黒幕と見て間違いない。

 更に言えば、あの吹雪の日、ジタンの前に現れた謎の道化師……自らを“ケフカ”と名乗った、あの奇怪な男だ。

 贔屓目に見ても、アイツはジタンにとって友好的な人物には到底、見えなかった。しかも、やたらとジュエルシードやフェイトやなのは等、魔導師達の存在、ジタンの秘密まで知っている風だった。

 何か知っているのかもしれない……そして、ケフカ自身も、それに関わっているのは確かだった……。

 

「……タンさん……ジタンさんってば⁉︎」

 

 ふと、耳元で大声がした為、ジタンは我に返った。近くには、美由希が心配げに立っていた。

 

「どうしたの? 今日は、まるで上の空じゃない」 

 

 何時もと様子が目に見えて違うジタンの姿に違和感を感じた美由希は、ジタンに声を掛けたのだ。直様、ジタンは作り笑いを浮かべ誤魔化した。

 

「悪ぃ、悪ぃ。ちょっと考え事しててな?」

「そう……。もし身体の調子が悪いなら、今日は早退する? お母さんには私から言っておくから……」

「何でもないッて‼︎ さ、仕事仕事‼︎」

 

 周囲に心配をかける訳に行かない。何とか、その場を取り繕い、ジタンは仕事を再開する為、フロアへと出て行った……。

 すると、店の玄関が開かれ、チリンとベルが鳴った。

 

「いらっしゃいませェ……あら? 可愛らしいお客様」

 

 美由希の言葉に、ジタンは玄関の方に目をやった。すると、其処には車椅子に乗った、はやてと側に付き添うビビの姿があった。

 ジタンは目を輝かせながら……

 

「よォ! ビビにはやて! 早速、来てくれたのか!」

 

 そう言いながら、ジタンは2人に近付く。はやてはニコニコしながら言った。

 

「図書館の帰りなんやけど、ジタンさんの姿が見えたから。此処がジタンさんが働いてるお店なん?」

「まァな。まさか、こんな早くに来てくれるとはな」

 

 ジタンは笑顔で2人を見る。対して、ビビは緊張している様だ。

 

「どしたよ、ビビ? もしかして、緊張してんのか?」

「あ……あの……」

「大丈夫や、ビビ君。初めてのカフェやから緊張するやろうけど、すぐに慣れるから!」

 

 相変わらず、はやてはビビの姉の様に接した。その様子を見ていた美由希が割って入る。

 

「ジタンさんの知り合い?」

「まァ、そんなとこ。はやてとビビって言うんだ」

 

 ジタンは微笑ましげに言った。はやてはメニュー表を開いて隣のビビに見せながら、何にしようかと話していた。

 

「さァ、お2人様。ご注文は何になさいますか?」

 

 ジタンは2人に注文を聞いた。はやてはメニュー表を一通り見て、ジタンを見上げる。

 

「私、ココアで。ビビ君は?」

「えっと……僕もそれで」

「畏まりました。オーダー! ココア、2つで‼︎」

「はーい‼︎」

 

 ジタンのオーダーを聞いて、美由希は厨房へと向かう。ジタンは2人に話しかけた。

 

「あれから、どうだ? 記憶は戻ったか?」

 

 ジタンの質問に、ビビは首を振った。

 

「そうか……まァ、気長に待つしか無ェな」

 

 この場合、焦ってもどうにもならない。ジタンはそう悟った。

 

「そう言えば、はやては車椅子に乗ってるけど、何処か悪いのか?」

 

 この前に知り合った時も、はやては車椅子に乗っていた。ジタンは興味を持った様に尋ねた。

 

「ちょっと足が不自由やねん。けど、車椅子も慣れた」

「そうか……。けど、この前もそうだったけど、はやてとビビ2人だけか? 両親は一緒じゃ無いのか?」

 

 その言葉に、はやてとビビは俯く。ジタンは首を傾げた。

 

「あれ? 聞いちゃ、まずかったか?」

「……ジタン、あのね……。はやてお姉ちゃんは、お父さんもお母さんも居ないんだ……。お姉ちゃんが小さい頃に、事故で亡くなっちゃって……」

 

 ビビは気まずそうに言った。はやての顔を見れば、悲しげに曇らせている。ジタンは、しまった、と眉を顰めた。 

 

「……悪かったな……無神経だった……」

 

 踏み込んではいけない地雷を踏んでしまった事を、ジタンは謝罪した。はやては首を横に振って、笑顔を見せた。

 

「……ええねん。私は今、幸せやし……。それに今は、ビビ君がおってくれてるから、ちっとも寂しないよ」

 

 そう言って、はやては朗らかに笑った。ジタンは、感心した様にはやてを見つめた。

 

「……強いんだな、はやては……」

 

 まだ、歳の頃なら、フェイトやなのはと変わらないだろう。けど、 この娘は辛い境遇に置かれながらも決して曲がった様子を見せていない。

 そう言った意味では、フェイトと彼女は似通った一面があった。

 

「……私は……ちっとも強ないよ。ビビ君が来るまでは1人で生きてかなあかんかったから……」

 

 そう言いながらも、はやてからは寂しさが滲み出ていた。きっと、はやてはこれまで、寂しさと孤独に耐えながら生きてきたのだろう。

 そう言えば、エーコもはやてと似た境遇を生きてきたのを思い出した。マダイン・サリで祖父を亡くしてからは、モーグリ達と暮らしていたエーコと両親を亡くして、恐らくは頼れる身内を欠いた状態で生きてきたはやて……。

 そんな彼女の下に現れたのがビビだったと言う訳だ。

 

「……ビビは、実は凄い奴だからな。はやてを守ってくれるよ!」

 

 ジタンはビビを褒めたが、ビビは帽子を目深に被って顔を隠した。

 

「……まァ、この通り、内気な性格が玉に瑕だけどな」

「ジタンさん、ほんまにビビ君と知り合いやったんですね」

「だから、そうだって……」

「ジタンさーん、ココア出来たわよー?」

「はいよ!」

 

 美由希の声を聞いて、ジタンは厨房へと向かった。ビビは、そんな彼の背を見ていた……。

 

 

 

 別の頃、なのはは日課となっている町のパトロールを行なっていた。ジュエルシードは、まだ沢山ある。一日も早く、全てのジュエルシードを集めなければならない……そんな使命が、なのはの足を早める。

 いつの間にか、町から外れ、森林の近くに来ていた。

 

「レイジングハート、反応は?」

 

【怪しい反応は見られません】

 

 レイジングハートに魔力を辿らせてはいるが、それらしい反応は見当たらない。なのはの肩に乗っているユーノは、なのはを見た。

 

「ねェ、なのは? 大丈夫?」

 

 ユーノは心配気に声を掛けた。先日の黒のワルツ1号の戦いで危うく命を危険に晒し掛けたばかりだけに、余計に気掛かりだった。

 

「大丈夫だよ! 早く、ジュエルシードを回収しなきゃ!」

 

 なのはは気丈に振る舞うが、内心では不安で一杯だ。心配の種は、ジュエルシードだけでは無い。自分と同じく、ジュエルシードを集めて回る魔導師フェイトの事だった。

 ジタンはフェイトと共に暮らしており、フェイトの事をよく知っているが、全ては教えてはくれなかった。

 まだ、自分はフェイトの事はおろか、ジタンの事もよく知らないのだ。無知である事は、余計な不安や苦悩を掻き立てる。

 その不安を振り払うかの如く、なのはは足を早めてしまいがちになる。先日、ジタンに無茶をするな、と叱責されたばかりだが、やはり、何もせずに居ると余計な事ばかりが頭に一杯になってしまう。

 と、その際……

 

【マスター、避けて下さい!】

 

 レイジングハートが声を上げた。なのはは慌てて後退した。すると、なのはの足元に光弾が着弾した。

 

「お〜し〜い‼︎ あと、2秒、反応が遅かったら、当たったのに‼︎」

 

 聞いた事の無い声に、なのはは上を見上げた。すると、道化師の様な奇抜な格好をした怪人ーケフカが、ケタケタ笑いながら浮かんでいた。

 

「あ、貴方、誰⁈」

 

 なのはは初めて見る人物に警戒を露わにした。しかし、ケフカは相変わらず、笑い続けている。

 

「はいどーも! 私はケフカ、と申します‼︎ 以後、お見知り置きを〜‼︎」

 

 ケフカはフワフワ浮かびながら、なのはと対峙した。だが、なのはは明らかに異様な出立ちの彼を睨みつけた。

 

「……貴方、魔導師? 貴方もジュエルシードを探しているの?」

「ん〜? 何故、そんな事を聞くのかな〜、子猫ちゃん?」

 

 真面目に尋ねるなのはに対し、ケフカはまるで小さな子供を揶揄う様に囁いた。

 

「真面目に答えて!」

「気を付けて、なのは! コイツ、只者じゃ無い!」

 

 ユーノが警告するが、少なくとも、ケフカがマトモな人間ではない事は明白だ。しかし、ケフカは無遠慮に、なのはの前に降り立った。

 

「君の探しているのは、これですか〜?」

 

 ケフカは右手を開いてみせた。其処には、紛れもないジュエルシードが握られていた。

 

「じ、ジュエルシード⁉︎ なんで、それを⁈」

「ヒョヒョヒョ‼︎ さァ、なんでかな⁈ なんでかなァ⁈ 欲しいでしょ? でも……‼︎」

 

 見せびらかす様にジュエルシードをちらつかせたケフカは、それを天高く投げ捨ててしまった。

 

「あッ……⁉︎」

「欲しけりゃ、取っておいで‼︎ 取れるものなら、ね‼︎」

 

 ケフカはニヤリと笑い、両手を振り翳した。すると、あたり一面に霧が覆い始めた。

 

「ヒョヒョヒョ‼︎ ゲームをしようか、お嬢ちゃん! ルールは至極、簡単! この霧の中、石ころを先に見つけた方が勝ち!

 既に、もう1人の金髪ッ子は探しているよ‼︎ どっちが先に見つけ出せるかなァ⁈」

「金髪って……! もしかして……!」

「では……ゲームスタート‼︎」

 

 そう言うと、ケフカは姿を消した。残されたなのはは立ち込める霧の中、立ち尽くしていた。

 しかし、すぐにレイジングハートを手に持った。

 

「待って、なのは! これは罠だよ‼︎ アイツが何者かは分からないけど、下手に動くのは危険だ‼︎」

「だったら尚更、此処に居ても危険だよ‼︎ それに、あの子も探してるって……‼︎」

「なのは‼︎」

 

「レイジングハート……セットアップ‼︎」

 

 なのはが叫ぶと桃色の光に包まれ、白と青のバリアジャケットを身に包んでいた。右手には待機形態を解いたレイジングハートが握られている。

 

「ユーノ君、行くよ‼︎」

「もう……仕方ないな……‼︎」

 

 ユーノは諦めた様に、なのはの肩に掴まる。なのはは、空へと舞い上がり、霧の立ち込める森の中を飛行して行った……。 

 

 

 なのはとは別の場所で、フェイトもまた霧の中を飛び回っていた。ジュエルシードの気配を察知して来てみれば、突然、辺り一面を霧が覆い尽くした。

 最初は困惑したフェイトだが、すぐにジュエルシードによる物だと理解して、バリアジャケットを展開したが……

 

「《アークセイバー》‼︎」

 

 フェイトはバルディッシュを起動し、サイズフォームに変形させると、先端に魔力を集中、圧縮させて、金色の光刃とした魔力弾を発射した。

 発射した先には、火の玉に目と口が付いた奇妙な化け物の姿があった。フェイトは知る由もないが、この化け物の名前はボム。

 炎に命が宿り、まるで生き物の様に動き出したモンスターだ。ジタンがやって来たガイアでは然程、珍しくない存在だが、地球では珍種に当たる。しかも、コイツ等の厄介さは、その特性にある。

 フェイトの攻撃を受けたボムは風船の様に跳ね回ったと思いきや、身体が大きく膨らみ始めたのだ。

 身の危険を察知したフェイトは上昇を試みるが、それより先にボムの膨張した身体が破裂し、爆発が起こった。

 これが、ボムの持つ特性『自爆』である。受けた衝撃や大気を取り込み、体内で凝縮された炎のエネルギーが膨張、その影響でボムの身体も肥大化する。そうして、解き放たれた炎が爆弾の様に爆発すると言う仕組みだ。

 言うまでもなく、炎の塊とも言えるボムが爆発するのだから、それは並の爆弾を上回る破壊力を有している。

 危うく爆発に巻き込まれかけたフェイトだが、上昇したのが早かった事、加えてバルディッシュに搭載された自動詠唱によって発動した防御魔法《ディフェンサー》によって、最低限のダメージに抑えられた。

 元々、フェイトは機動性、ひいてはスピードに特化した魔導師であり、相手の攻撃を『防ぐ』より『躱す』事に重点を置いている。その為、防御力は極端に苦手であり、突然の攻撃には弱い。

 緊急時によるディフェンサーも、僅かにダメージを軽減する程度であり、まともに受ければ、破壊されてダメージを受けてしまう。

 だが、咄嗟の機転と優れた動体視力によって、フェイトは負傷を免れた。

 

「一体、コイツ等は……⁈」

 

 フェイトは辺りを見回して、息を呑んだ。ボムは後から後から湧いて出る様に出現する。さっきの一体だけでも、かなりの威力だった。仮に、このボム達が全員、自爆しようものなら、間違いなくフェイトは跡形もなく吹き飛んでしまうだろう。

 ジュエルシードの反応を頼りに、やって来たが、思ってもない奇襲を受けてしまった。更に間の悪い事に、アルフとも引き離されてしまった。これでは、ジュエルシードを探すどころでは無い。

 だが、一刻も早くジュエルシードを見つけ出し、回収しなければならない。フェイトには時間が余り残されていないのだ。

 

 先日、フェイトは母親から連絡を受けた。普段は滅多な事のない限り、自分に連絡する事などしない母から、である。

 嫌な予感がしたが、母から告げられたのはジュエルシードを遅々として集められていない事への叱責と、残りのジュエルシードを早急に集めろ、と言う催促だった。この事は、自分とアルフだけの秘密であり、ジタンには話していない。フェイトが危惧しているのは、母にジタンを匿い、かつ自分達の秘密わ彼に話してしまった事を悟られる事だ。

 母の性格上、命令に反した自分を彼女は許さないだろうし、ジタンだって無事には済まされない。

 だから、フェイトは母から受けたジュエルシードの回収に今まで以上に全力を注ぐ必要があった……。

 

 その様な事を考えていたら、フェイトの周りに、ボム達が取り囲んでいた。ボム達はケタケタと笑いながら、フェイトを中心にクルクルと回り始めた。

 すると一体のボムが膨張し始めて、それに呼応するかの様に、他のボムも膨張していく。

 恐らく、連鎖で自爆していき、大爆発を引き起こそうとしているのだ。

 

「……回避しなきゃ……‼︎」

 

 フェイトは、さっきの様に上に躱そうとしたが、既に爆発寸前だった。フェイトは間に合わない、と咄嗟に目を閉じる。

 次の瞬間、ボム達は連鎖する様に自爆して行った……。

 

 

「【ワイドエリアプロテクション】‼︎」

 

 

 突然、聞き慣れない声がした。だが、ボム達の爆発によって掻き消されてしまう。フェイトは爆発に巻き込まれた筈だが、ダメージは受けていない。

 何が起きたか分からないが、フェイトは目を開いて見回すと、自身の周りを取り囲む魔法の障壁が見えた。

 誰かが、プロテクションをかけてくれたらしく、フェイトは危機を脱す事が出来た。てっきり、アルフによる物かと思って、見回すと果たして、そこに居たのは……。

 

「……貴方は……‼︎」

 

 フェイトの前に浮かんでいたのは、これまでジュエルシードを巡って幾多と対決した魔導師の少女……高町なのはだった。

 

「……また、会えたね……‼︎」

 

 なのはは肩で荒く息をしながら、フェイトに話しかけた。その様子に、フェイトはキョトンとする。

 

「……貴方が私を助けたの? どうして?」

 

 フェイトは、彼女が何の意図があって自分を助けたのか、そもそも何故、彼女は何度も自分の前に現れるのか、意味が分からなかった。

 だが、なのはは当たり前の様に言った。

 

「……前にも言ったよね? 貴方の事をよく知りたいんだ。この前は私が名乗ったから、今度は貴方の口から聞きたい。

 貴方の名前、教えて?」

 

 なのはは、フェイトにそう返した。本当は、彼女の名前を知っている。ジタンが教えてくれたからだ。

 だけど、やっぱり直接、本人の口から聞きたい。そう思って、なのはは敢えて、彼女の名前を聞いたのだ。

 フェイトは戸惑う。そんな風に、自分に真っ向から想いをぶつけらた事など無かったからだ。ましてや、これまでフェイトには、年相応の友人がいた事が無い。自分には、そんな物は一生、無縁だとも思っていた。

 その際、いつかジタンが言っていた言葉が脳裏に甦った。

 

『お前がどんな人生を送ってこようが、どんな秘密があろうが、フェイトはフェイトなんだ。それを自分が否定してどうする?』

 

 ジタンの言葉がフェイトの臆病となっていた心に語り掛け、彼女の背中を押した。

 

「……フェイト。フェイト・テスタロッサ……」

 

 初めて、自分の名前を自分と同じ年頃の少女に教えた。なのははニコリと笑った。フェイトも釣られて、笑いそうになる。

 だが……

 

 

「ああァァああッ‼︎」

 

 

 奇声を上げながら、フェイトとなのはの間に何者かが割り込んでくる。それは……

 

「アルフ⁉︎」

 

 フェイトは、襲撃して来た者の正体に驚愕した。それは、フェイトの使い魔であり、かけがえのない家族であるアルフだったからだ。

 だが、アルフの様子は明らかにおかしかった。目の焦点は合わず虚ろであり、フェイトの事も認知していない様子だ。更に、彼女の頭には妙なサークレットの様なアクセサリーを身に付けていた。一つだけ言えるのは、目の前に居る者に襲い掛かる、と言う本能だけだ。

 

「アルフ、どうしたの⁉︎」

 

 フェイトは語り掛けるが、アルフは言葉を発さず、代わりに獣の様な唸り声をあげた。その姿は、彼女の本来の姿である狼そのものとなってしまった様だ。

 なのはも理解が追いつかず、狼狽していた。反し、アルフはフェイトとなのはに関係なく襲い掛かろうと牙を向いた。

 

 その様子を霧の奥から、悪辣な笑みを浮かべて浮いているケフカの姿があった。ケフカは、ニタリと北叟笑む。

 

「操りの輪……やっぱり、効果覿面ですねェ‼︎ 御涙頂戴の友情ごっこなんか、ツマラン‼︎ 仲間同士で殺し合って、憎み合って下さいねェ‼︎」

 

 下劣極まり無い言葉を吐いたケフカはマントを翻し、霧の中に消えて行った……。

 

 

 

 ジタンは、ビビとはやてを伴い、夕方に差し掛かった町中を歩いていた。早番の仕事が終わった後、丁度、帰り道が重なった事から、一緒に帰る事に決めたのだ。

 その間、ジタンは、はやての身の上を聞いていた。両親は既に死去し、頼れる親戚もいない事、両親が残した遺産と大きな家に長らく一人暮らしだった事、今はビビと2人で暮らしている事を知った。

 

「……大変だったな……子供1人で生きていくのは、不自由したろ?」

 

 ジタンは労る様に、はやてに問いかけた。

 

「そうでも無いわ。助けてくれる人も居たし、それにビビ君と出会えたもん」

 

 そう言ったはやてを見るジタンは、改めて彼女の強さに感服する。同時に、自分の過去の一部が思い起こされた。

 ジタンも、はやてと少し違うが、似た様な境遇である。リンドブルムの劇場街で育った彼は、決して裕福な生活では無かった。

 ジタンの幼少期のリンドブルムは混乱の渦中にあった。前大公シド・ファブール8世は、大陸を覆っていた『霧』を利用した霧機関を用いて、飛空艇を多数に渡り開発した。これによって、常に戦争の勃発していた大陸は、漸くの落ち着きを取り戻した。後の『飛空艇革命』である。

 しかし、前大公の急死による崩御で、新たに息子であるシド・ファブール9世が即位したが、シド9世の権威が安定する間、リンドブルムでは長らく続いた戦争による難民や孤児の増加、戦争終結によるインフレ、等の戦災で非常に不安定な社会情勢にあった。

 リンドブルムの貧民層出身であったバクーによって結成された盗賊団タンタラスは、そんな身寄りの無い難民、孤児達の受け皿となり、激動の中に揉まれていた人々は少しずつ落ち着きを見せはじめた。

 

 やがて、シド9世が霧機関に頼らない新たなエネルギー『蒸気機関』を発見してからは、リンドブルムの戦災は治りを見せ、情勢も安定するに至った。

 だが、ジタンもまた、そんな苦しさの残るリンドブルムにて育ち、貧しさからの飢餓、疫病によって衰弱死していった自分と歳の変わらない幼子を嫌と言う程、見てきた。

 故に、平和な日常の続く地球に来たジタンは、大きなカルチャーショックを受けたのも事実だ。

 

 ジタンは再び、ビビを見る。ビビは、はやてに寄り添う様に歩き、彼女を気にかけている様子だ。記憶を失ってはいるが、間違いなく彼はジタンのよく知るビビだった。

 

「なあ、ビビ……。お前はガイアでの事は覚えてないって言ったけど……俺は、お前をちゃんと覚えてるよ。だから、心配しなくても大丈夫。ちゃんと、記憶は戻るから」

「……僕は……記憶が戻ったら……はやてお姉ちゃんと一緒に居ていいのかな?」

 

 ふと、ビビの発した言葉にはやてはキョトンとする。

 

「何言うとんの? そんなん、当たり前やんか?」

 

 はやては至極当然、と言った具合にビビに返したが、ビビは不安そうだ。

 

「……もし記憶が戻って、ジタンやガイアって言う世界の事を思い出したら……僕はガイアに帰らなくちゃいけないのかな……。

 もし、そうなったら……僕は……」

「そうなったら、その時にビビが決めたら良いだろ?」

 

 ビビの悩みに、ジタンはあっけらかんと答える。ビビとはやては同時に、ジタンを見た。

 

「もしも、なんて考えなくて良い。そんな事は、自分が本当はどうしたいか、って事を分からなくさせるだけだ。大切なのは、ビビがどうするか、どう選択したら良いか、って事だけだ。

 選択肢はいつだって少ない……けど、選ばなかった道が正しかったなんて、後から考えたって、きっと答えは出てこない。

 だからよ、ビビ。お前は、その時になったら、これだって道を選択したら良いんだ。俺達はちっぽけな存在だけど、それくらいの事は出来るだろ?」

「……僕が選んで良いの?」

「そうだ。ビビの人生はビビだけのものだからな。ビビが選べば良いさ」

 

 ジタンの言葉に、ビビは少し勇気付けられた気がした。はやては、2人の様子にクスッと笑った。

 

「俺、なんか変な事言ったか、はやて?」

「違うんよ。なんか、ジタンさんとビビ君を見てると、兄弟みたいやから、おかしなって……」

 

 はやての言葉に、ジタンは無言になった。自分とビビが兄弟……確かに、自分達の生まれを考えれば、ジタンもビビも、ある意味では兄弟に当たるかもしれない。よくよく考えれば、不思議な縁である。

 と、その時……ジタン達の足元に火球が放たれた。その火球は、ジタン達の前で爆発する。

 

「うおッ⁈」

「な、何やのん⁉︎」

「わわッ⁉︎」

 

 ジタン達は、突然の事に慌てふためく。すると、ジタン達の眼前、そして背後を素早い動きで、何者かが飛来した。

 

「クックック……見つけたぞ!」

 

 現れたのはジタン達を遥かに凌ぐ長身痩躯にダークグリーンのローブ、異様に長い腕、そしてとんがり帽子から覗く鋭い目にダークブルーの翼を持った怪人だ。

 

「お前は⁉︎ また、現れたか‼︎」

 

 ジタンが睨みつける。それは先日、ジタンとビビ、なのはが倒した黒のワルツ1号の同型である黒のワルツ2号だ。

 

「エッ⁈ ビビ君、そっくり⁉︎」

 

 はやては、目の前に現れたビビそっくりの黒のワルツ2号に驚愕した。ワルツ2号は、再び笑う。

 

「お前を連れてくる様に言われている。共に来て貰おうか、小僧」

「えっ⁈ ぼ、僕⁉︎」

 

 ワルツ2号に指名され、ビビは困惑した。そして、ワルツ2号のセリフからして、1号同様に自分達についての記憶は無いらしい。

 

「誰に言われたんだ⁉︎」

 

 ジタンが怒鳴ると、ワルツ2号は低く笑った。

 

「ククククク‼︎ そんな事は知るか‼︎ ただ、命令を受けただけだ‼︎ そこにいる小僧を連れてこい‼︎ 金髪の男は殺せ、とな‼︎」

 

 そう言って、ワルツ2号は近づいてくる。対してジタンは、挑戦的に……

 

「だったら、その命令した奴について洗いざらい吐いて貰うぜ‼︎」

「待って、ジタン‼︎ お姉ちゃんは……!」

 

 力強く言ったジタンに、ビビは不安げに声を掛ける。今、この場にはやてもいるのだ。

 しかし、ジタンははやてに振り返りながら言った。

 

「はやて……巻き込んで済まないな。けど、お前は無事に守ってやるからな!」

 

 そう言うジタンに対し、はやてはまだ驚きを隠せないながらも、コクリと頷く。

 

「……大丈夫や! よく分からへんけど、私の事は気にせんといて! ビビ君を、あんな奴に渡さへん!」

 

 そう先月したはやての顔に迷いは無い。ジタンもそれを聞くと、彼女の頭を撫でてやった。

 

「よく言った、はやて……さぁ、来いよ! ワルツ1号と同じに、お前ももう一度、倒してやるぜ‼︎ ワルツ2号‼︎」

「ククク……我が任務の邪魔をするなら、何人たりとも……地獄に堕ちろ‼︎」

 

 黒のワルツ2号は、そう叫ぶと、身構えるジタンとビビに対峙するように舞い降りてきた。

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