Final FantasyⅨ-リリカル・クロニクル RE.   作:竜の蹄

14 / 14
先週は投稿が出来ず、申し訳ありませんでした。今回はジタン側の対戦ですが、ビビは今回は非参戦です。
また、今回は遂に“奴”を参戦させます。本格的な戦いは次回以降ですが、乞うご期待ください‼︎


第十一幕 屈辱の恐怖

 ジタン、フェイトの二組が戦っている同時刻、海鳴市の某所では……

 

「はァ〜〜……‼︎」

 

 地球の民間人に扮したビッグス、ウェッジの姿があった。

 

「ビッグスさん、さっきから何回、溜め息吐いてんですか?」

 

 横で溜め息を吐いてトボトボ歩くビッグスに、ウェッジが声を掛けた。

 

「溜め息だって吐きたくもなるわ‼︎ 例の次元漂流者を探す為、足で探せなんて……俺達は腐っても、パラメキアの武装局員だぞ‼︎ あのガキンチョ執務官、俺を何だと思ってんだ⁉︎」

「仕方ないっしょ。ジタン・トライバルの詳しいデータがある訳じゃ無いんですから、地道に探すしか……」

「お前は、本当に呑気で良いよな⁈ そもそも、俺達はこんな雑用させられる為に、アースラに異動してきたんじゃ無いだろうが⁉︎」

 

 ビッグスは苛々しながら道に唾を吐いた。ウェッジは呑気に笑いながら話し始めた。

 

「クロノ執務官に言われたじゃ無いッスか。本来なら、管理局が管理外世界に介入するには、本局に通して複雑な手続きを取らなきゃならないって。

 それに、クロノ執務官は別件で動く用事があるし、漂流者探しには嘱託で身動きが取りやすい俺達が探すしかないんス」

「……あのなァ、ウェッジ……そもそも、誰の為に、こんな雑用の雑用をやらされてるか分かってんのか?」

「誰の為ですか?」

「テメェの為だよ‼︎」

 

 ビッグスは怒鳴り声を上げた。夕方と言う事もあり、人通りは少ないが、まだそれなりに人の目があるにも関わらず、ビッグスは捲し立てる。

 

「お前が、間違えてパラメキアに貯蓄されていた次元犯罪データを消去しちまったからだろうが‼︎ データ自体はバックアップがあったから事なきを得たが、もう少しでクビになる所だったんだぞ‼︎」

「まァ、よくある事ッスよ」

「あってたまるか! そのせいで、俺まで責任取らされる事になってよ……! お陰で彼女にも振られちまったよ!」

 

 ぐちぐちとぼやくビッグスに、ウェッジはまあまあと宥めた。

 

「物は考えようですよ? クビにならず、アースラに回されるだけで済んだんですから、レオ将軍には感謝しなきゃですよ」

「はァ〜〜、もう突っ込む気も起きねェ……」

「そんな事より、早いところ『ジタン』って人を探さなきゃですよ。このままじゃ、日が暮れちゃいますし」

 

 ウェッジの指摘に、ビッグスは唸った。

 

「そうは言ってもよ……顔写真一枚で人1人探すなんて、俺達2人じゃ無理があるよ……」

「さっきから何人かに聞いても知らない、知らないでしたしね……」

 

 ビッグスもウェッジも腕組みをして悩んだ。海鳴市限定とは言え、町はそれなりの広いし住人も沢山いる。その中から、ジタンと言う人物を探し当てるなんて、正に雲を掴む様な話だ。

 

 

「今、ジタンさんの話をしてました?」

 

 

 ふと声がした為、振り返ると、2人の女の子が立っていた。なのはの友人であるアリサとすずかだ。

 

「ちょっと、すずか! こんな怪しい人達に話しかけて……」

「だって、ジタンさんの事を話してたよ?」

 

 アリサは胡散臭そうな目でビッグス達を見ていたが、すずかは困っている風に見えた2人に親切に話しかけたらしい。

 

「お、おい! お前等、ジタンって奴を知ってんのか⁈」

 

 ビッグスが言うと、アリサは眉を吊り上げた。

 

「お前とは何よ⁉︎ それが人に物を聞く態度⁉︎ おじさん、礼儀って知ってる⁉︎」

「お、おじさんだァ⁉︎ 俺はおじさんじゃ無ェ、お兄さんだよ‼︎ どっちが礼儀なってねェんだよ、ガキンチョが‼︎」

「はァ⁉︎ 誰がガキンチョよ、誰が‼︎」

 

 売り言葉に買い言葉で、ビッグスとアリサは喧嘩になりかけた。ウェッジ、すずかが間に入る。

 

「ビッグスさん、大人げないですよ」

「アリサちゃんも冷静になって……」

 

 ビッグス、アリサは互いに睨みいながら黙る。そこに、ウェッジが話しかけた。

 

「お嬢ちゃん達、ジタンって人を知ってるの?」

「はい。友達の家族がやってるお店で働いてますよ」

 

 すずかが言うと、ビッグスとウェッジは互いに頷いた。

 

「その話、詳しく教えて貰って良いかな⁈」

 

 

 

 その頃、ジタン達は黒のワルツ2号との戦いを行っていた。前回と違い、なのはは居ないに加え、非戦闘員のはやてを保護しながらの戦闘である。更に言えば、なのはやフェイトが用いる結界魔法も無い為、市街地の真ん中での戦闘となり、長引けば周囲への被害が出てしまう。

 

「ククク‼︎ どうした⁈ 攻撃して来ないのか⁉︎」

 

 ワルツ2号は中々、攻撃を仕掛けてこないジタンとビビを嘲笑する。恐らく、こんな人気の目立つ市街地に奇襲を仕掛けてきたのも、2人が周囲への被害を気にして本気を出せない、と踏んだと、ジタンは邪推した。

 迂闊に攻撃を仕掛ければ当然、ワルツ2号も反撃してくるだろう。そうなれば、他の人達の視界に入るし、下手をすれば被害者を出してしまう。

 

 ビビは、なるべく、はやてから離れない様にしていた。自分が避けたり逃げ回ったりしたら、はやてに攻撃を加えられ兼ねない。

 故に、行動範囲はかなり狭まり、ビビを迂闊に動けないのだ。

 

「び、ビビ君……‼︎」

 

 はやては、ビビを不安にさせない様に気丈に振る舞っていたが、やはり目の前に凶悪な敵が現れた事で恐怖を隠せない様だ。

 ビビは、はやてに振り返りながら言った。

 

「大丈夫だよ、お姉ちゃん! 僕が、お姉ちゃんを守るから‼︎」

 

 そう言いながら、ビビの声は震えていた。ワルツ2号に恐怖しているからでは無く、はやてを攻撃に巻き込んでしまわないか、と言う不安からだ。

 ジタンは、ビビを見つめる。

 

「よお、ビビ。暫く見ない内に、随分と男らしい事を言う様になったな」

 

 ジタンの言葉には、ビビへの労りと想いが込められていた。ガイアでのパーティでは、エーコに続いた最年少メンバーであり、エーコが加入してからは、彼女に主導権を持たれ、どちらかと言えば、ジタン達に付いてくるのがやっとだったビビ。しかし今は、はやてを守る為、自分が前に立っている。

 かつての弱々しい姿だった少年は、ジタンの知らない所で大切な人の為に立ち向かう立派な“男”となっていた。

 

「……本当は怖いけど……怖がってばかりじゃ駄目だって気付いたから……守られてばかりじゃ駄目だって分かったから! 

 それに、今はジタンも一緒だから、僕も戦える!」

「……そうか!」

 

 ビビの決意を満ちた言葉に、ジタンは自然と笑った。今のビビは、かつての弱虫で鈍臭くて、ダガーをハラハラさせて、スタイナーに心配されて、エーコにも馬鹿にされていたビビでは無い。

 守るべき大切な人を得て、ビビは大きく成長した様だ。

 

「何をごちゃごちゃと……‼︎ 焦ったい奴等だ‼︎ 殺すな、とは言われているが無傷で連れてこいとは言われてないからな‼︎ こうなれば、全員纏めて、焼き飛ばしてくれるわ‼︎」

 

 とうとう我慢の限界に達したワルツ2号は、両掌に炎を発生させて頭上に持ちあげる。すると、みるみる大きな火球が出来上がった。

 あんな物を、まともに受ければ、ジタン達は勿論だが、この辺り一帯が一瞬で焼け野原となってしまう。

 ジタンは少しでも、はやてへの火の粉を文字通り振り払おうと、はやての前に立った。

 

「何しとんの、ジタンさん! ジタンさんが焼かれてまうわ‼︎」

 

 はやてが叫ぶが、ジタンはニコッと笑った。

 

「ビビが頑張ろうってんだ‼︎ 俺にも良い所を見せなきゃ、示しが付かねェだろ‼︎ 心配すんな、はやて‼︎ 俺の目の黒い内は、はやてにかすり傷一つ付けさせねェから‼︎」

 

 ジタンの強い言葉に、はやての心が暖かくなった。だが、そうしてる間に、ワルツ2号の両手は振り下ろされた。

 

「《ファイガ》‼︎」

 

 放たれた巨大な火球がジタン達に飛んでくる。ジタンははやて、ビビを庇う様な体勢を取った。だが、眼前にまで迫った火球はその動きを止めた。

 よく見ると、3人の前に見えない壁の様なバリアが張られ、ファイガを受け止めていたのだ。

 そして、ファイガは、そのままワルツ2号へと跳ね返されてしまった。

 

「ぐおッ!??」

 

 ワルツ2号は自分の放った魔法を受け、ダメージを負う事となった。ジタンは驚愕し、辺りを見回す。

 最初はフェイトかなのはか、と思ったが、直ぐに誰がやったか分かった。

 ビビだ。ビビが、両手を翳している姿が見えた。恐らく、ビビを始めとする黒魔道士兵が扱える技『魔法返し』を用いたのだろうが、記憶を失っている筈のビビが、こんな高度な技を発揮できる事に驚いた。

 

「ビビ⁉︎ お前がやったのか⁉︎」

 

 ジタンはビビに話し掛けた。だが、それをやったビビ自身が一番、驚いている様子だ。

 

「……分からない……けど、気付いたら出来てた……」

 

 ビビも自分がやって退けた芸当に、まるで自覚が無かった様だ。無意識に、ビビの中に眠る“力”が覚醒したのか……。

 

「凄いやん、ビビ君‼︎ そんな事が出来るなんて、まるで魔法使いや‼︎」

「あ……えっと……」

 

 はやてに褒められて、ビビも恥ずかしそうにしていた。だが、ワルツ2号は炎を払うと、激怒した様子で姿を現した。

 

「本気で、この黒のワルツ2号を怒らせた様だな……」

 

 怒りを見せたワルツ2号は、ジタン達の眼前にまで迫ってくる。だが、再びビビの身体が輝き始めた。

 

「こ、今度はなんだ⁈」

「ま、眩しい‼︎」

「⁉︎」

 

 ジタン、はやて、ワルツ2号は突然の出来事に思考が付いていかず、慌てふためる。やがて、光が収まったと思うと、ジタン達は街とは離れた森に近い空き地に立っていた。

 ジタンは驚いてビビを見る。自分の知り得る限りで、ビビにはこんな力は無かった筈だ。

 

「ビビ?」

 

 ジタンはビビを見るが、さっきの事と言い当人であるビビの方が驚いている様だ。だが、驚いてばかりでは無い。ワルツ2号が体勢を立て直し、ジタン達に対峙する。

 

「……小僧が……‼︎ この黒のワルツ2号を舐めてくれる……‼︎ 良いだろう、見せてやろう‼︎ 私の真の姿を……‼︎」

 

 ワルツ2号が叫ぶと帽子を突き破り、大きく湾曲した2本の角が出現した。更に両腕が倍近くに伸縮し両掌に鋭利な爪が生え揃い、ローブに隠れていた下半身からは、漆黒のハチの様な奇妙な体型となった。

 黒のワルツ2号・第二形態である。

 

「……さァ……この姿となったからには……容赦は出来んぞ‼︎」

「変身しやがったか……だけど、此処なら思う存分、戦えるぜ‼︎ 行くぞ、黒のワルツ‼︎」

 

 ジタンはメイジマッシャーを取り出し、ワルツ2号に向かって行った。ワルツ2号は鋭い爪を振り上げ、ジタンに切り掛かるが、ジタンはメイジマッシャーで防いだ。

 

 

 はやては呆然としながら、ジタンとワルツ2号の戦いを眺めていた。さっきの事と言い、これまで彼女が生きてきた人生では考えられない出来事だ。

 

「わ、私……夢を見てるんやろか?」

 

 今まで、魔法などとは無縁の性格を送ってきたはやてからすれば、目の前で起きている事は、あまりにも非現実的だった。

 ビビは、はやてを気遣う様に寄り添う。

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

 ビビの言葉に、はやてはニコリと笑った。

 

「うん、大丈夫や。ゴメンな、ビビ君。ちょっと、驚いてしもてん……」

 

 無理もない……魔導師であるフェイトやなのはと異なり、はやては魔導師では無いし、その知識がある訳でも無い。

 

「……ビビ君……あの、黒のワルツ2号って、ビビ君にそっくりやけど……ビビ君と何か関係があるん?」

 

 はやての質問に、ビビは言葉に詰まった。記憶は無いが、ワルツ2号は自分を知っているし、自分を狙っている。もしかしたら、ワルツ2号と自分は何か因縁があるのでは無いか? ビビは不安に駆られた。

 

「……僕は……僕だよ。はやてお姉ちゃんの弟のビビだよ」

 

 掠れながらも、ビビは言い切った。ワルツ2号と何の因果があるかは分からないが、自分は自分であり、はやての大切な弟である事に変わらない。

 はやては安心した様に、ビビを抱き締めた。

 

「そやんな。分かってるよ、ビビ君は私の大切な弟や!」

 

 その言葉に、ビビは心が温かくなるのを感じた。そうだ……自分は、はやての側に居る大切な音だ。それで充分じゃ無いか。

 

 

「フン……虫唾が走る……」

 

 

 別の声が聞こえた。ビビとはやてが顔を上げると、其処にはビビやワルツ2号と同じ姿をしたとんがり帽子の巨漢が居た。

 継だらけの帽子から覗く鋭い眼、濃紺色のロープ、背面から突き出したダークブルーの翼、右手には三日月に似た杖が握られていた。

 

「……見つけたぞ……!」

 

 とんがり帽子の弟は目を細めながら、ビビを睨みつけた。

 

「あ……あ……!」

 

 ビビは慄いた。この男をビビは知っている……いや、思い出した。かつて、ビビの前に現れ、圧倒的な力で自分と同じ姿の“仲間”を焼き払った者……。

 

「黒のワルツ……3号……‼︎」

 

 ビビはガタガタと震えていた。それは、明らかな恐怖だ。深層心理に刻み込まれた恐怖が、ビビの記憶を呼び覚ましたのだ。

 

「な、何やの‼︎ ビビ君、怯えてるやんか‼︎」

 

 はやては恐れながらも気丈に叫ぶ。だが、黒のワルツ3号は目を見開く。

 

「喧しい‼︎ 貴様の事は覚えているぞ、小僧‼︎ 忌々しく! 憎く! 見ているだけで怒りが込み上げて来て、殺意が抑えられなくなる程にな‼︎」

 

 そう言ったワルツ3号は、ビビを憎々しげに見据えながら見下ろしていた……。

 

 

 

 ジタンとワルツ2号の戦いは激しさを増していた。魔法を主体とした戦いのワルツ2号だが、接近戦も苦手な訳では無い。爪を用いて、ジタンに近接から挑んでくる。だが、近接戦においてなら、ジタンの土俵だ。彼の得物とするダガーは短い刃の為、リーチが短いが相手の懐に飛び込み、ピタリとくっ付けば、相手は行動を制限されてしまう。

 ましてや、ワルツ2号の様な魔法を用いた攻撃は呪文の詠唱の為、必ず隙が生まれる。魔法さえ封じれば、如何に強力な魔法を扱えても宝の持ち腐れである。

 ジタンは、これまでの戦いの中で、多種多様な敵と戦ってきた。剣や槍を用いる者、魔法を用いる者、ゴブリンやドラゴンの様なモンスターとの戦い方、立ち回り方を熟知している。

 ことバトルにおいて、ジタンと互角に渡り合えれる者は、この地球には居ないだろう。

 

「よォ、ワルツさんよ。自慢の黒魔法を使えなければ、黒魔道士兵も形無しだな!」

「だ、黙れ‼︎」

 

 さっきまでの余裕は無くなり、ワルツ2号は焦りが出てきた。まさか、ここまで自分が苦戦を強いられるとは思わなかったからだ。

 最も、ジタンからすれば、ワルツ2号は一度、戦った事がある。以前、戦ったワルツ1号もそうだが、多少の強化を差し引いても、戦法は大きな変化は無い事は気付いていた。さっきの苦戦にしたって、はやてを庇いながら、更には市街地で本気を出せない、と言う悪環境が原因だった。従って、ジタンは優勢となるのは必然だった。

 対し、ワルツ2号は魔法を封じられ、爪を用いた攻撃もジタンに通じない。そこで、自身の特殊能力である瞬間移動を使って、ジタンとの距離を取ろうと考えた。ワルツ2号は瞬く間に姿を消し、ジタンの背後へと回り込んだ。

 そして、ジタンの背中に切りかからんとしたが、ジタンはかがみ込んで、それを防いだ。

 

「読んでんだよ、それは」

 

 驚愕するワルツ2号に対し、振り返ったジタンはニヤリと笑って見せた。そして、メイジマッシャーをワルツ2号へ投擲した。メイジマッシャーはワルツ2号の胸へと突き刺さる。

 

「が……は……⁉︎」

 

 ワルツ2号は苦しげに呻く。次の瞬間、ジタンは駆け出し、ワルツ2号の身体を斜め一直線に袈裟斬りした。その刹那、メイジマッシャーを回収しておいた。

 致命傷を負って、虫の息となったワルツ2号はジタンを見上げながら唸る。

 

「……おのれ……任務を……遂行……‼︎」

「さァ、洗いざらい吐いて貰おうか? お前等を嗾けて来たのは誰だ⁈」

 

 ジタンは動けなくなったワルツ2号に尋問を始めた。だが、ワルツ2号は頑なに口を割らない。

 

「……話す事など……無い……!」

「力尽くで聞き出してやろうか?」

 

 ジタンは鋭い目つきでワルツ2号を睨む。しかし、ワルツ2号は「ククク!」と笑い出す。

 

「何が可笑しい⁉︎」

「……貴様は……何も分かっていない……! 我々の背後に……控える者達の……存在……に……‼︎」

「者達⁉︎ 何人も居るってのか、お前等のボスは⁉︎」

「……彼等は……カッ……‼︎」

 

 ワルツ2号が何かを言い掛けたが、その瞬間にワルツ2号から煙が生じて動かなくなってしまった。機能停止したのだ。

 

「ちッ……‼︎ しかし、誰なんだ? コイツ等の裏にいる奴等は?」

 

 ジタンは停止したワルツ2号の躯を見下ろしながら思案した。だが、ビビとはやての事が気に掛かり、ジタンは振り返る。

 すると、其処には2人の前に立ちはだかるもう一体の黒のワルツの姿があった。

 

「しまった‼︎ アイツも居たんだ‼︎」

 

 ジタンは舌打ちした。アイツは黒のワルツ3号……改造黒魔道士兵の3号機であり、かつてはダガーを狙ってジタン達に二度に渡り奇襲を仕掛けてきた。

 一度目は、リンドブルムへ向かうカーゴシップ内で、ジタン達が戦って何とか退ける事に成功した。

 二度目は、ジタン達と別行動を取ったダガーがスタイナー、タンタラスのメンバーであるブランクの3人で南ゲートにて迎え撃ったと聞いている。

 その際、ワルツ3号は既に限界寸前であり、ダガーを連れ戻すと言う思考以外は消失していたらしい。

 

 しかし、他の黒のワルツ達の様に量産された別個体だとするなら、ワルツ3号がいる事にも合点が行く。恐らく、奴等を操る何者かが嗾けたのだろう。

 ジタンはメイジマッシャーを逆手に握り、ワルツ3号に向かって叫んだ。

 

「止めろ‼︎ そいつ等に手を出すな‼︎」

 

 ジタンの怒声に、ワルツ3号を顔を上げる。だが、ワルツ3号は興味なさげにジタンから目を逸らした。

 

「貴様に用は無い……あるのはコイツだ」

 

 ワルツ3号の言葉にジタンは違和感を覚えた。どうも、ワルツ3号は他の黒のワルツとは様子が異なる。

 寧ろ、ビビに対して、明確な敵意を抱いている様に見えた。

 ジタンは、ビビとはやてを庇う様に前に立った。すると、ワルツ3号は憎しみを込めた目で、ビビを見据える。

 

「我は、ソイツを許さない……八つ裂きにしても足らん程にだ……! 我は、ソイツの為に敗れた……存在理由を奪われた!

 だから、我はその小僧を殺さなければ気が済まされぬ……‼︎」

「どう言う事だ⁉︎ お前、ビビの事を覚えているのか⁉︎ 他の黒のワルツ達は覚えていなかったのに⁉︎」

 

 ジタンは驚く。これまでの黒のワルツ達は姿形こそ、ジタンの良く知る者達だったが、ジタン達の事を知らない別個体だった。即ち、ワルツ3号もダガー達に敗れている以上、別の黒のワルツ3号である筈だ。

 だが、ワルツ3号は明確にビビを覚えている。ビビに敗けた、と言うのは、カーゴシップでの戦いで他の黒魔道士達を消し飛ばされた怒りから、魔力を爆発させたビビの放った黒魔法を直撃させられた事を指しているのだろう。

 

 つまり、ワルツ3号は別個体に関わらず、ジタン達を覚えている所か、前個体との記憶を有している事になる。

 しかし、ワルツ3号は苛立ちながら怒鳴った。

 

「喧しい、と言っている‼︎ そんな事、我は知らぬ‼︎ 我に命を受けたのは、貴様等を倒す事‼︎ だが、小僧は生かして連れて来い、と言う事だ‼︎

 だがな……その小僧だけは許さん……‼︎ ボロ切れの様になるまで痛め付け、生まれて来た事を後悔させてやらなければ気が済まん‼︎」

 

「アカン‼︎」

 

 ジタンが叫ぶより先に、はやてが叫んだ。ビビを庇う様にしながら、ワルツ3号を睨む。

 

「ビビ君が貴方に何をしたか知らないけど……ビビ君には指一本、触れさせへんから‼︎」

「はやて! 危ないから、下がってろ‼︎」

 

 ジタンがはやてを諌めるが、はやては聞き入れない。

 

「私にとって、ビビ君は大切な弟や‼︎ 弟を守るんが姉の役目やろ‼︎」

「……お姉ちゃん……」

 

 はやての言葉に、ビビは嬉しさを感じた。自分をはやては大切な弟だと言ってくれた。それだけで、こんな嬉しい事は無い。

 ジタンもビビを見て、少しほっこりとした。自分をフェイトやなのはが受け入れてくれた様に、ビビもちゃんと受け入れてくれる人が地球にいたからだ。

 だが、ワルツ3号は怒りに狂いながら、はやてを睨む。

 

「小娘が……! 邪魔立てするなら、貴様から痛め付けてやろうか‼︎」

「上等や‼︎ やれるんならやってみィや‼︎」

 

 売り言葉に買い言葉で、はやてはワルツ3号に啖呵を切った。だが、ワルツ3号は、はやての勢いに押されている様に思えた。

 

「……こ、小娘如きに……何が……‼︎」

 

 ワルツ3号は驚いていた。こんな年端も行かない様な小娘の気迫に、自分が気圧されている。必死に取り繕って見せるものも、ワルツ3号の中に本来なら存在しない筈の感情が芽生え始めていた。

 それは、人間なら必ず持ち合わせている感情の一つ“恐怖"だ。

 

「……クッ‼︎ 今日は一旦、引いてやる‼︎」

 

 ワルツ3号は捨て台詞を残して、その場から飛び去って行った。残されたジタン達は呆然と、飛び去るワルツ3号を見ているしか無かった。

 

「大丈夫か、2人共⁉︎」

「うん、大丈夫や!」

「ぼ、僕も……」

 

 2人の身体の安否を確かめ、ジタンはホッと胸を撫で下ろした。

 

「はやて。さっきの啖呵は良かったぞ」

「えへへ……ビビ君を守らなって思ったら、怖いのを忘れてしもたわ!」

「……」

 

 談笑するジタンとはやてだが、ビビは俯いていた。

 

「どうした、ビビ?」

「……僕……また、お姉ちゃんを守れなかった……」

 

 ワルツ3号が襲って来た時、ビビは恐怖に襲われて竦んでしまっていた。結局、ジタンとはやてに守られてしまい、我ながら情けなくなってしまう。

 

「そんな事ないよ! ビビ君が側にいたから、私も勇気を出せたんやから!」

「……でも……」

 

 はやてにそう言われても、ビビは酷く落ち込んでいた。見兼ねたジタンはビビと目線を合わせる様に片膝を突いた。

 

「いいか、ビビ。ビビははやてを傷つけさせたくないって思ったから、ワルツ3号から逃げなかったんだろ? それが勇気だ。ビビは勇気があるから、はやてを守ろうとした。守れなかったんじゃない、守ろうとしたんだ!」

「守ろうと……した?」

「そうだ。 だから、ビビは自分をもっと誇っていいんだぜ」

 

 ジタンの言葉を聞いたビビは、さっきまでのワルツ3号への恐怖が少し無くなった様だ。だが、やはり……

 

「……あのね、ジタン……僕、思い出したんだ……アイツの事……」

「黒のワルツ3号か?」

「うん……。アイツ、前にも僕の前に現れて、僕に似た人達を魔法で焼き払ったんだ……。その時の事が思い出して……」

「……そうか……また、思い出せたんだな……」

 

 ビビの失われた記憶が、また一つ思い出された様だ。だが、そのせいでビビにとっては辛い記憶も思い出していく事になるかもしれない。

 そんな事を考えていると……

 

『ジタン……ジタン……』

 

「エッ?」

 

 誰かに呼ばれた声がしてジタンは振り返る。だが、其処には誰もいない。

 

「ジタンさん、どないしたん?」

「いや……空耳か?」

 

 はやてが尋ねるが、ジタンも首を傾げる。だが、再度、ジタンの頭の中に声がした。

 

『ジタン……助けて……ジタン……‼︎』

 

「……まさか、フェイトか……?」

 

 その声にもならない様な声に、ジタンはフェイトは勘付いた様だ。もしかしたら、ワルツ2号と3号は囮だったのでは無いか? 今、本当に危険な目に逢っているのは、フェイトなのでは? 

 そんな一縷の不安が、ジタンの胸中を掻き毟った。

 

「悪い、はやて‼︎ 俺、行かないと‼︎ 送ってやれないけど、2人で帰れるか⁉︎」

「え? 多分、大丈夫やと思うけど……」

「そうか……じゃあ、またな‼︎」

「待って、ジタン‼︎ 僕も……‼︎」

 

 走り出そうとするジタンにビビは、自分も着いて行く、と言おうとした。だが、ジタンは振り返ると……

 

「お前は、はやてと一緒に帰れ‼︎ はやての側に居てやるんだ‼︎」

 

 と、言うと走っていた。ビビは何か嫌な予感がした。だが、はやてが隣でニコリと笑う。

 

「ジタンさんなら、大丈夫や。私達も帰ろ?」

「う……うん……」

 

 はやてに諭され、ビビはジタンなら大丈夫、と言うはやての言葉で自分を落ち着かせながら、帰路に着く事にした……。

 

 

 

 黒のワルツ3号はジタン達から逃亡した後、暗い廃墟に降り立っていた。だが、彼は自分の中に芽生えた恐怖に、酷く取り乱していた。

 あんな小娘に、まさか自分が撤退を余儀無くする程に恐怖を覚えさせられるとは思わなかった。この自分が……。

 

「〜‼︎ 認めん‼︎」

 

 ワルツ3号は杖を振り上げ、幾千もの雷撃を起こした。そして廃墟の中にある物を手当たり次第に破壊し始めた。

 

「我の存在理由は勝ち続ける事のみ‼︎ あんな小娘に恐怖を抱くなど、愚の骨頂だ‼︎ 我は断じて認めんぞ‼︎」

 

 獣の如し咆哮を上げながら、ワルツ3号は呪詛の言葉を吐き散らした。認める訳に行かない……何故なら、自分は戦いに勝つ事を前提に生み出されたのだから……自分が恐怖に腰が引けた、等とは認める訳には行かないのだ……。

 

「ジタン・トライバル……ビビ・オルティニア……八神はやて……奴等の名を刻み込んだぞ‼︎ 必ず、我のプライドに賭けて‼︎ 奴等、3人は殺してやる‼︎

 必ず! 必ずだ‼︎」




BOSS《ライブラ》

−黒のワルツ2号
ケフカが送り込んできた改造黒魔道士兵2号機。ガイアでの戦いより強化されているらしいが、際立った強化ではない事、基本的なパターンはジタンに読まれていた事から、呆気なくジタンに倒された。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。