Final FantasyⅨ-リリカル・クロニクル RE.   作:竜の蹄

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お久しぶりです。
以前、書いていた小説を手直ししつつ、再び連載していきます(笑)
今回はラストまで書いていく予定です。
まずはプロローグをどうぞ‼︎


プロローグ
第零幕 命の願い


 イーファの樹の内部、ジタン・トライバルは迫り来る樹の根を見た。

 最早、逃げる事は叶わない。隣に横たわる男、クジャと共に心中する以外に道は無いのか? 

 

 クジャは言った。「生きるんだ」と。

 

 彼が憎かった。自分の大切な仲間を傷つけて、世界を傷つけて、故郷を傷つけた彼が憎かった。だが、今は彼に対する憎しみは無い。寧ろ、彼を助けたい。心から、そう願った。

 

 クジャは「生きる、という意味が少し分かった。でも遅すぎた」と後悔の念を抱きながら眠りについた。

 

 彼を死なせない。死なせる訳に行かない。例え世界の全てが、クジャを憎んでも彼が手に掛けた者達が彼を憎んでも、彼を死なせる訳に行かない。助ける、と決めたからだ。ジタンはクジャの「何故来たんだ?」という疑問に、胸を張って答えた。

 

 

「誰かを助けるのに理由がいるかい?」

 

 

 そうだ、誰かを助ける事に理屈など要らない。助けたいから助ける、それで充分だ。ジタンは襲いかかる樹の根からクジャを守る様に覆いかぶさった。

 

 

(ダガー……ごめんな、約束破っちまった……)

 

 

 最後の刹那、脳裏によぎった愛しい想い人(ガーネット)の顔を見た。きっと彼女は帰らない自分を想って泣くだろう。絶望に打ちひしがれる事だろう。でも大丈夫。彼女を支える仲間達がいる。スタイナー、ベアトリクス、エーコ、フライヤ、クイナ、サラマンダー……そしてビビ……。

 

 例え自分が居なくても「いつか帰る場所」を知っているから、俺は必ず戻る。魂だけになっても…………必ず…………。

 

 

 

「……僕、もう動かなく……なるのかな……」

 

 外側の大陸にある黒魔道士の村ー自我に目覚め、戦いを嫌い逃げてきた黒魔道士兵達によって築かれた辺鄙な村……。その村にある小屋の一室にあるベッドに横たわる1人の少年。

 彼もまた、黒魔道士兵だった。多くの黒魔道士兵達の基盤となる試作型として造られ、あの悲しい戦いを生き残った少年だった。名前はビビと言う。

 

「…………苦しいかい……?」

 

 ベッドに横たわるビビの隣に、ビビより体躯の大きな黒魔道士が座っていた。名前は黒魔道士288号。村の黒魔道士達のリーダー的存在であり、ビビに自分達の素性と生きる事の意義を教えた存在である。

 

「ううん……ちっとも苦しくない……。でも、動かなくなるのは……怖い……かな……」

 

 ビビは生まれ落ちた時は感情が無く、他の黒魔道士兵同様に戦う為にだけ造られた使い捨ての消耗品だった。だが、そんな彼に心を教えてくれた祖父がいた。世界を見せてくれた友がいた。2人のお陰で、ビビは諦める事なく前に前に進む事が出来た。だが……祖父はもう死んで、この世にいない。友は、あの日から帰ってこない……。

 

「288号さん……お願いがあるんだ……」

「なんだい?」 

 

 ふと、ビビが口を開く。288号は黙って耳を傾ける。

 

「僕が動かなくなったら……僕が死んじゃったら……僕の身体を……高い場所に……埋めて欲しいんだ……」

「どうして?」

 

 ビビから発せられた言葉に、288号は首を傾げた。

 彼等、黒魔道士兵は戦いの為に造られた消耗品……幾らでも代替えが効く彼等には寿命は少なくて良い……。だから、彼等には僅かしか生きる時間が設けられていなかった。

 ビビは、その黒魔道士達のプロトタイプであるが故に普通の黒魔道士兵とは異なり子供の姿……所謂、成長して強くなるタイプだった。だから、凡用の黒魔道士兵より長く寿命が制定されていた。

 しかし時間は余りにも残酷で実直だ。ビビにも、その寿命が尽きる時が来たのだ。

 

「僕の生きた証を……僕の記憶を……空に……預けておきたいんだ……。また……皆に会いたいから……」

 

 ビビは自分が間も無く動かなくなる事を理解していた。2度と会えなくなるであろう事も……。だが、ビビには希望があった。自分の意志を継いだ黒魔道士の仲間達、ミコトを始めとするジェノムの皆、そして子供達……。彼等がいれば、自分達がいなくなっても忘れられる事は無い。いつだったか、彼が教えてくれた。生きるという事は永遠に生きる事じゃ無い、助け合って生きていく事だと……。

 

「…………解った。ビビ君、君には感謝してるよ……。君の存在が僕達に希望を与えてくれた。もう村に居る皆は死を恐れていない……。僕達が死して朽ち果ても後世の人達に僕達を忘れずにいて貰う事で、皆の中に僕達を覚えていてくれる事で、僕達は何時までも生き続けるんだ……」

 

 288号は淡々と語る。彼もまた、最初は死を理解していなかった。だが、次々に動かなくなる仲間達を見続ける内に漠然としながらも死を理解した。そして死を恐怖し仲間達が離れていく事を止められなかった。だが、死を恐れず直向きに歩き続けるビビの姿に感化され、少ない時間を一生懸命に生きようという意志が生まれた。

「…………288号…………さん……もう目が見えなくなってきた…………最後に……言わせて…………。さ…………よ…………う……な……ら…………」

 

 それだけ言い残すと、ビビは目を閉じて静かに眠りに就いた。だが、その顔は安らかで今にも目を覚ましそうだった。

 

「…………ビビ君…………僕もすぐに行くから……。待っていて……」

 

 ビビの死を看取った288号は顔を下げる。黒魔道士兵である彼には涙が流れない……。だが、かけがえの無い仲間の最後に立ち会った彼の心の中には虚無感と悲壮に満ちていた。

 

 

 

 とある世界にある街……夜闇に支配された街を彩るネオンの輝き……それを見下ろす様に眺める二人の影……。

 一人は腰まで伸ばした金髪をツインテールし、赤い瞳をした黒服の少女だった。まだ年端もいかない、凛々しい顔立ちの中にはあどけなさと儚さが合わさった少女だった。右手には黒一色の戦斧に似た杖を握りしめている。

 もう一人は薄い桃色の髪を長く伸ばした女性だ。何処か荒々しさを秘めた瞳と髪の隙間から覗く人間の物とは明らかに異なる動物の耳……。

 

「……行こう、アルフ……」

 

 金髪の少女が言った。アルフと呼ばれた女性は彼女を見つめる。

 

「行くって、フェイト……アンタ、昨日に一悶着あったばかりじゃないか! 今夜はやめておいた方が……‼︎」

 

 アルフはフェイトと呼ばれた金髪の少女を気遣う様に言った。しかし、フェイトは首を横に振る。

 

「母さんが必要としているんだから……早く探さないと……」

「くそッ‼︎ あの鬼ババア、フェイトを何だと思ってるんだろ⁈ 自分の娘に無茶ばかりさせやがって‼︎」

「……やめて……母さんを悪く言わないで……。“アレ”が全部集まれば、昔の優しい母さんに戻ってくれる……」

 

 アルフの暴言を嗜めながら、フェイトは強く願う様に呟いた。今のフェイトの心身は限界を迎えつつあった。理由は分からないが、“ある物”をフェイトの母は探してくる様に娘である彼女に命令を出した。

 だが、手ぶらで帰ったりしたら、母からの残忍なお仕置きが待っており、見つけてきたとしても『次を探してこい』と言う冷たい命令だった。

 だが、フェイトは愛する母の為だと歯を食い縛り、毎晩の様に“アレ”を探し続ける。全て揃えれば母が褒めてくれる、と願って……。

 だが、アルフからすれば、姉妹同然に育ったフェイトが傷付き哀しむ姿を見るのは苦痛でしかない。

 アルフは願った……フェイトの心を癒し、救ってくれる存在が現れる事を……もし、本当に居るなら……彼女を救ってくれるなら……。

 

(リニス……アタシはどうしたら……?)

 

 アルフは天を仰ぎながら、心中で呟いた。

 

 

 

 一方、別の街にある閑静な住宅地……その中で際立って大きな邸宅があった。時間は日もすっかり暮れ落ちた夜。

 その家のバルコニーにて車椅子に腰掛ける1人の少女…………彼女の名は八神はやて。まだ年端も行かない子供だが、彼女からは歳不相応な聡明さが滲み出ていた。

 彼女は今年で8歳になるが、幼い頃から原因不明な難病の為、車椅子から立てずに居た。更には彼女の両親も不慮の事故で他界し、既に身寄りはなく天涯孤独な身上だ。おまけに脚が不自由である為、学校に通学する事すら難しい。

 しかし、端から見れば不幸と言わざるを得ない境遇に関わらず彼女は曲がる事なく真っ直ぐに育っていた。

 だが、どんなにしっかりした考えを持っていようとも、まだまだ甘えたい盛りの子供である。そんな時に両親が居らず学校に通えてない為、友人にも恵まれてない彼女には、どうしても耐えられない時がある。それは''孤独''だ。

 彼女には親しくしてくれる人間は居ない。唯一、交友があるのは脚の病気の件で通院している病院の医師だけだ。

 寂しくない……と言えば嘘になる。その為、彼女は寂しさを紛らす為に本を読む事が日課となっていた。今では車椅子で街の図書館に通い、借りてきた本を毎日、読み耽る。それ故に彼女は同年代の子供以上の博識さと達観さを身に付けていた。

 今日、読んでいるのはファンタジーの物語だ。人間だった男の子が魔法使いであると知り、魔法使いの学校に通い冒険や悪い魔法使いとの戦いを乗り越えて成長していく話だった。

 ページを読み進める内に、はやては男の子が羨ましく思えた。彼には友人に恵まれ、どんな困難にも立ち向かう勇敢さを身に付けていた。

 

(私にも、こんな風になれんかな……)

 

 そう思いながらも、はやては物語の世界に思い馳せながら哀しみをグッと抑え込んでいた。

 

 

 もし、自分の目の前に魔法使いが現れたら…………。

 

 

 

 また、別の場所には窓から外にある夜空を眺める少女がいた。栗色の髪をサイドテールにした愛らしい少女だ。名前は高町なのは。

 優しい家族、学校の友達……毎日は平凡ながら幸せだった。だが、なのははそんな中、密かな願望があった。

 漫画やアニメにある様な……ある日を境に突然、非日常へ引き摺り込まれる様な出来事……そんな事があれば……。

 だが、実際にはそんな非現実は起きない。だが、望まずにはいられない。自分に助けを求める者が現れ、自分に力を与えてくれたら……。

 

「なのは〜? もう遅いから寝なさ〜い!」

「はーい」

 

 一階から母の声がした。なのははベッドへ向かおうとしたが、夜空に一筋の流れ星が走った。

 慌ててなのはは、心中で何か願い事を思いつつ、今度こそ布団に潜り込んだ。

 

 

 

 様々な想い、願い、望みが交錯する様に、新しい物語が幕を開ける。これは“命の尊さ、そして儚さ”を紡ぐ物語……誰も知らない最後の幻想曲(ファイナルファンタジー)が幕を開けた……。

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