Final FantasyⅨ-リリカル・クロニクル RE.   作:竜の蹄

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今回から戦闘シーンが入ります。敵としてはかなりマイナーなFFボスを出しますが、その辺りはご愛顧で(笑)


無印編
第四幕 闇夜を翔ける魔導士


 その日のテスタロッサ家での夕食を終え、ジタンはフェイト達と楽しい団欒の一時を過ごす。

 食器を片付けた後、ジタンはフェイト達に自身の歩んできた旅の物語を聞かせた。

 

「……でさ、そのスタイナーって、オッサンが面白いんだ。何かにつけて、額に皺を寄せながら顔を真っ赤にして『貴様〜‼︎』って来るんだもんな」

 

 ジタンは、仲間の1人であるスタイナーの様に眉に皺を寄せ、彼の口真似をして見せた。

 

「アハハハ! 何それ⁉︎」

「ジタンって、本当にあった様な作り話するんだね」

 

 フェイトは、毎晩の様にジタンの話してくれる話を聞くのが待ち遠しくなっていた。アルフは到底、信じられないと言った具合だが彼の話す物語を聞いていた。ジタンの話は、はっきり言って荒唐無稽だが、まるでワクワクする様な語りが殆どだった。

 例を挙げれば、空を飛ぶ船が恐ろしい森に墜落した話、カエルや何でも食べてしまう者がいた話、果てには足の早い大きな鳥や頭にポンポンを付けた生き物の話……いつしか、フェイトもアルフも、ジタンの話す物語に知らず知らずの内に惹きつけられていった。

 

「それで⁉︎ 船が森に落ちた際、ジタンはどうやって助かったの⁈」

「そこだよ! 俺は船が爆発して墜落する刹那、大地に向かって投げ出された。普通なら死ぬとこだがな、俺は間一髪……‼︎」

 

 フェイトのねだりに、ジタンは少しオーバーリアクションを交えながら話そうとする。だが、アルフが……

 

「ほら、フェイト。もう遅いし寝ようよ。ジタンだって明日からバイトなんだろ?」

「……でも、アルフ……」

 

 フェイトが何かを言いたげだが、アルフも何かを訴える様な顔をした。それを察したフェイトは無言のまま頷いた。

 ジタンも流石に話し疲れたのか、欠伸をする。

 

「……あ〜あ、ちょっと喋り過ぎたか……。じゃあ、俺は先に寝るわ。フェイトとアルフも早く寝ろよ」

「……うん……おやすみなさい、ジタン……」

「おう、おやすみ」

 

 フェイトにおやすみを返しながら、寝室に消えて行くジタン。暫くすると、寝室から寝息が聞こえ始めた。

 アルフがドアに耳を傾けて頷いた。

 

「やっと寝たよ。流石、リニスが作った睡眠薬だね。少量、コーヒーに混ぜただけだったのに、良く効く薬だね」

「うん……」

 

 そう返すフェイトは、ジタンへの申し訳なさに支配されていた。ここ最近、ジタンが自分達が家を空けている事、何かを隠している事に勘付いている様子だった。

 ジタンに気付かれる訳に行かなかった。もし、ジタンに自分達の秘密を話したと、あの人にバレたら大変だ。そもそも、ジタンを家に招き寄せている事さえ秘密の上でやっているのだ。その事を含めてバレたら……。

 

「フェイト?」

 

 難しい顔をしているフェイトを案じたアルフが話しかけてきた。フェイトは意を決して、アルフに話しかける。

 

「ねェ、アルフ……。やっぱり、ジタンに私達の事を話した方が……」

 

 案の定、フェイトの言葉に対し、アルフは眉をひそめる。

 

「やめた方が良いよ……はっきり言って、アタシはまだアイツを信用し切れない。管理局のスパイだって可能性もあるし……」

「ジタンは、そんなんじゃ……」

 

 フェイトの反論を遮り、アルフは更に続けた

 

「……それに、あいつに本当の事を話したのが鬼ババァに知れたら、またフェイトが痛い目に遭わされるよ……」

「ん……でも……」

「私、見てられないんだよ……。フェイトが痛めつけられる姿なんて……」

 

 アルフは悲しそうに俯く。フェイトとしても、アルフの言いたい事は分かる。姉妹同然に育ったフェイトが痛ましく耐える様を見続けてきたからこそ、彼女は過敏になっているのだ。だからこそ、ジタンを受け入れる事をアルフは懸念していた。

 

「…………ごめん…………心配ばかりかけて……」

「良いんだよ、フェイトが悪い訳じゃ無いよ……悪いのは……」

 

 アルフは何かを言おうとしたが、フェイトが無言で手をかざして黙らせたが、その顔は悲痛な迄に沈みきっていた。

 

「……行こう……アルフ。ジュエルシードを……」

 

 そう言いながら、フェイトは振り返る。ジタンが寝ている部屋の方へ向き

 

(ごめん……。ジタン……)

 

 ジタンに心中で謝った。

 

 

 だが、部屋の中でジタンは寝ていなかった。先程のコーヒーは飲んだフリをして、吐き出していたのだ。

 そして、寝息を立てている様にして、フェイトとアルフの会話を申し訳ないが、盗み聞きしていた。

 

(2度も同じ轍は踏まないって……)

 

 以前、リンドブルムの狩猟祭の後、ダガーの手で料理にスリプル草を盛られて出し抜かれた事があったが、今回は事前に勘づく事が出来た為、事なきを得た。 

 

(ジュエルシード……)

 

 先程、フェイトの口から放たれた単語に思案する。聞いた事の無いが、フェイト達はそれを求めている。何の為かは分からないが……。

 フェイトの家に転がり込んでから、2人が何かを隠している事には気付いていたが、ジタンが思っていた以上に根は深いらしい。

 

(鬼ババァ……とか言ってたけど、そいつにやらされてるのか?)

 

 様々な思案がジタンの脳裏を浮かんでは消えていく。フェイトが知られたく無いなら、素知らぬ振りを決め込もうと決意したばかりだが、何やら嫌な予感が胸を撫でる。

 実はジタンは気付いていた。昨日の夕方、フェイトが右頬を赤く腫らしていたのだ。もしかしたら、その『鬼ババア』に殴られて出来たものかもしれないと、ジタンは邪推した。

 

「ふゥ…………行くか……」

 

 1人、ジタンは呟くと窓を開け放ち夜の街を見下ろす。既に人々は眠りに就き、漆黒の中は深い沈黙に満ちていた。

 意を決した様に、ジタンは夜の闇の中へと飛び立ち消えていった……。

 

 

 夜の海鳴市……街を彩るネオンが、夜の街を明るく照らしていた。その街を見下ろす様に佇むビルディングの一つに、下界を悠々と眺める者が居た。

 フードを被っていたが、その隙間から覗くのは月明かりに照らされた銀髪、中性的な顔立ちの青年だった。

 

「……綺麗だ……」

 

 青年は大仰な仕草で空を仰ぎつつ、呟いた。

 

「……そこかしこから夜の世界を彩る輝き……眠る事を忘れた様に夜の世界を闊歩する者達……その中に立つのは、異世界より舞い降りし僕……中々の舞台じゃ無いか!」

 

 まるで、舞台役者の様なオーバーリアクションと舌を噛みそうな言い回し……青年は自分に酔った様な奇異な行動を取っていた。

 その際、青年の真下を飛ぶ様に、いや文字通り飛んでいる少女を見つけた。

 金髪をツインテールにした少女と薄い赤毛の狼……青年は、それを見つけるとニヤリと笑った。

 

「……フフフ……やっている様だね。恐ろしき母に逆らえず、ただただ命令に従う事しか出来ないお姫様……かつての僕みたいだ……。我ながら、嫌になるよ……」

 

 青年は踵を返し、右手からカードを取り出す。其れを天に掲げると、青年は瞬く間に、その場から姿を消した……。

 

 

 フェイト、アルフは夜の街を飛び回っていた。彼女には、ジタンにさえ明かしていない、もう一つの姿がある。

 彼女は所謂『魔導士』だった。魔法を発動させる媒体である機械『デバイス』を所有しており、魔法を操り空を飛ぶ事も可能だった。

 そもそも、フェイトは海鳴市に在住する人間では無い。更に言えば、彼女は地球の出身者でさえ無かった。

 

『次元世界』……無限に続く時の海に存在する世界の総称……この地球が存在する世界を『第97管理外世界』と呼ばれ、他にも数多くの世界が存在していた。

 その次元世界の中で、次元移動の術を持つ『時空管理局』と言う巨大な組織の下に加盟している世界を『管理世界』と呼ぶ。

 通常、他の管理世界は個人が互いに行き来する事は出来ないが、その管理世界を繋ぐ技術『次元航行船』を管理局は所有している。この航行船があれば次元世界の狭間を移動できる。船と言うより、ジタンの世界に当て嵌めれば、飛空艇を更に発展させたものだ。兎にも角にも、次元航行船が各次元世界を繋いでいる故、管理世界の人間達は他の次元世界へ行く事が出来るのだ。

 地球が『管理外世界』と呼ばれ、管理世界側に存在が認知されているものも、次元移動するだけの技術力を持っていない為、管理局は有事以外は関わる事は無い。

 

 話は戻すが、フェイトとアルフは時空管理局の本拠地にしてお膝元でもある世界『ミッドチルダ』よりやって来た人間だった。

 彼女が態々、地球の海鳴市にやって来たのは、この世界に流れ着いた“ある物”を見つけ出す為だった。

 

「フェイト、見つけたよ! だけど、やばい‼︎ 暴走してる‼︎」

「分かった、場所は⁉︎」

「この先の公園だよ!」

 

 狼の姿となったアルフがジタンに語り掛けた。アルフは人間では無く、動物に魔力を与えられ、魔導士の使い魔となった存在だった。

 故に、この狼の姿こそが彼女の本来の姿であった。狼であるアルフは、魔力と共に、気配を感知する事が出来た。

 フェイト達はジュエルシードのある場所へと直行する。その後ろ、ジタンがフェイト達に気付かれない様に尾行しているのが見えた。

 

(成る程な……アイツ等の隠している理由はこれか……)

 

 ジタンは納得しながら、飛び去っていく2人を見失わない様に、追い駆けて行った……。

 

 

 

 海鳴臨海公園……その名の通り、海鳴市内に存在し海辺が見渡せ、街で一番の広さを誇る公園である。また、同市随一のデートスポットとしても有名であり、クリスマスの季節になると公園一帯がライトアップされる。

 やはり、夜ともなれば、デートに訪れるカップル達の姿が見られた。とあるカップルがベンチに腰掛け、夜の海を見ながら良い雰囲気になっている。

 彼氏の方が、彼女の手に触れて握ろうとしていた。彼女も少し恥ずかしげに、ソワソワとしていた。

 すると彼氏の左手に何かが触れて、彼女の右手だと思い強く握り締めた。

 

「……ハハ……まだ、4月と言っても寒いね……」

「……そ、そうね……」

 

 彼氏の気遣いの言葉に彼女は返す。彼氏は、妙に彼女の手がヌメヌメしている事に違和感を感じたが、手汗をかいているのだろうと思い……

 

「……き、緊張してるのかい? 手の甲まで、汗びっしょりだよ?」

「……意地悪……手なんか握ってないじゃない……」

 

 彼女の言葉に、彼氏はギョッとなって彼女を見た。確かに彼女は両手を膝に乗せている。触れられる訳が無い。

 

「……じ、じゃあ……俺は何を……?」

 

 彼氏は恐る恐る、自分の左手を見た。自分が触れているのは彼女の手などでは無い、明らかに人外の物と思しき、ネチャネチャした体液を分泌させた薄黄色の物体だ。

 

「う、うわァァッ⁉︎」

 

 彼氏は悲鳴を上げ、その場から立ち上がる。彼女も異変に気が付き、振り返って見ると、自分達と真後ろに巨大な棘状が突き出した紫色の貝殻みたいなのが居座っていた。

 

「い、いやァァッ!!!」

 

 彼女が悲鳴を上げると、殻の下部にある穴から黄色い軟体の様な物体が飛び出して、彼氏を捕まえた。

 

「……た、助けて……⁉︎」

 

 彼氏は彼女に右手を伸ばし助けを乞うた。彼女も、その右手を掴んで引っ張り出そうとしたが、軟体の方は信じられない力で女の力では、どうする事も出来ない。やがて、ジリジリと彼氏の身体は軟体に包み込まれ、紫の殻で中に引き摺り込まれそうになった。

 

「だ、誰かァァッ‼︎ 誰か助けてェェッ‼︎」

 

 彼女は金切り声を上げて、助けを求めた。このままでは彼氏だけで無く、自分の化け物に捕食されてしまう。

 しかし、その叫びも虚しく、2人纏めて軟体に包まれそうになったが……

 

 

「フォトンランサー‼︎」

 

 

 突然、発せられた声が夜の公園に木霊した。そして金色の槍の様な電撃が軟体の身体を貫いた。軟体はビクッと身体を震わせ、彼氏と彼女を離した。

 2人は訳の分からないまま狼狽していたが、走って来た赤い犬の姿に気付く。

 

「さっさと逃げな‼︎ 巻き込まれたいのかい⁈」

「い、犬が喋った⁈」

「な、何なのよ⁉︎」

 

 次々に起こる非日常な事態に最早、2人は混乱するしか無かった。しかし、犬が牙を覗かせながら

 

「逃げろって言ってるんだ! とっとと行かないと、ガブリと行くよ‼︎」

 

 と、凄みながら威嚇して来た。慌てた2人は這う這うの体で、その場から離脱した。カップルが逃げた事を確認すると、空中からフェイトが舞い降りた。

 いつもの私服では無く、黒を基調にした防護服(バリアジャケット)に身を包み、手には同じく黒一色のデバイス『バルディッシュ』が握られていた。

 アルフが激しく唸るとベンチや芝生を押し倒しながら、“それ”は正体を現した。紫色の殻の穴からヌルリと出て来たのは、頭部に2本の角に似た器官を持ち、淀んだ緑色に目玉をギョロつかせた怪物だ。

 

「な、何だい、コイツは⁈ カタツムリの化け物⁉︎」

「恐らく、ジュエルシードのせいで……‼︎」

 

 フェイトは推測した。自分達が探し求めるジュエルシードは、存在するだけで周囲の願いを叶える力がある。本人が望んだ、望んで無いに関わらず、その願いを叶えて力を暴発させてしまう危険性がある。

 故に、ジュエルシードの様な物は大変、危険な代物とされ、現代の技術を大きく超えた科学力を有して開発された物が大半である。既に何らかの理由で滅び、それだが残された品を管理局は『ロストロギア』と名を定め、見つけ次第に回収と管理する事を任務にしていた。

 因みに、フェイト達が対峙しているカタツムリの様な化け物は、とある世界では『ユミール』と言う名称を付けられていた。

 

「気を付けて、アルフ‼︎ コイツは今までのとは違う‼︎」

「みたいだね‼︎ けど、負けないさ‼︎」

 

 フェイトはバルディッシュを握り直す。そして相棒に向けて……

 

「行くよ、バルディッシュ!」

 

 と、指示を出した。主の期待に応えるべく、バルディッシュの宝石が点滅した。2人の魔導士を前にユミールは奇怪な声を上げながら、迫って来た……。

 

 

 その頃、ジタンは、フェイト達を見失ってしまい、街を走り回っていた。さっきまでギリギリ付いて行けていたが、2人が高速で飛んでいってしまった事で、行き先が分からなくなってしまったのだ。

 

「クッ! 参ったな、どっちに行けば良いんだ⁈」

 

 まだ、海鳴市の地理に詳しくないジタンは、フェイトが行きそうな場所が皆目、見当が付かない。とは言え、当ても無く探し回っていた所で、見つかる訳でも無い。道を聞くにしても、空を飛んでいた女の子を見なかったか、なんて聞いた所、頭のおかしい人間扱いされるのがオチである。

 どうするか、困り果てていると……

 

「ハァ、ハァ……! 何なんだよ、あれは⁈」

「知らないわよ! あんなの見た事が無いし!」

 

 と、口々に喚きながら、男女のカップルが走って来た。何があったかは知らないが2人共、服がボロボロだ。

 

「さっきの犬、何で喋ってたんだ⁉︎ 夢でも見てるのかな⁉︎」

「もう! 本当に訳分かんない‼︎」

 

 2人の言葉を聞いていたジタンは、ピンと何かに勘付いた。そして、そのカップルに話しかける。

 

「なァ! その喋る犬って、何処にいたんだ⁉︎」

 

 ジタンの質問に男は怪訝な顔をしながら……

 

「海鳴臨海公園だけど……」

 

 と、応えた。

 

「それは、どっちに行けば良い⁈」

 

 ジタンが急かす様に言うと、男は指を差す。ジタンは海鳴臨海公園と書かれたプレートを見て、大体の行き先を把握した。

 

「よし、分かった‼︎ ありがとうな‼︎」

 

 ジタンは礼をそこそこに言って、再び駆け出した。ジタンの背中を見送りながら、2人はキョトンとしていた。

 

「今日は帰るか……」

「そ、そうね……帰ろ……」

 

 考える事を放棄した2人は、そう呟いた……。

 

 

 

 フェイト達はユミールとの戦いに、かなりの苦戦を強いられていた。何が、と言えば、異常な程に頑丈な殻のせいだ。

 恐らく、軟体の柔らかい部分が敵の弱点なのだろうが、ある程度の攻撃を与えたら殻の中に籠ってしまい、一切の攻撃が与えられ無くなってしまうのだ。

 アルフは得意の格闘戦で殻を殴り付けるが、ヒビ一つ入らない。アルフは拳を払いながら、忌々しげに睨む。

 

「イテテ……! 何て硬い殻なんだろ‼︎」

 

 アルフの一撃にも微動だにしないユミール。フェイトは徐々に焦りが出てきた。

 

(このままじゃ、私達が自滅しちゃう……!)

 

 そう判断したフェイトは強力な魔法での形勢逆転を狙った。だが、問題は魔法詠唱に時間が掛かり過ぎる事だ。

 魔法を唱えている間、フェイトは完全な無防備となってしまう。其処で、アルフに声を掛けた。

 

「アルフ! バインドで拘束して‼︎」

「“あれ”を使う気かい⁉︎ 賛成出来ないよ、アイツの硬さに通用するかどうか……⁉︎」

「……でも、これに賭けるしか無い! だから、お願い‼︎」

「あ〜! 分かったよ‼︎」

 

 アルフは上手くいく保証のない作戦に反対したが、フェイトの言う通り、一発逆転を狙うには、これしか無い事も理解している。

 

「長くは縛ってられないよ‼︎ 《チェーンバインド》‼︎」

 

 アルフが呪文を唱えると、地面から魔力で生成した鎖が複数、出現してユミールの身体を縛り上げた。

 この魔法は拘束力が長けており、動作が鈍い対象の動きを止める事が可能だが、ユミールの力は想像以上に強く、アルフの全力を込めたバインドをも逆に引き千切らんと暴れた。

 

「フェイト、早く‼︎ このままじゃ、引き千切られちまう‼︎」

 

 アルフは叫ぶが、フェイトは呪文を詠唱中だった。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス

 疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ

 バルエル・ザルエル・ブラウゼル

 

《フォトンランサー・ファランクスシフト》

 

 撃ち砕け、ファイアー‼︎」

 

 詠唱し終えると同時に、バインドの鎖が完全に引き千切られ、ユミールは解放された。だが、フェイトの放った魔法が怠慢に動くユミールを捉えた。

 出現した38基のフォトンスフィアから、フォトンランサーが一斉に目 叩きつけられた。

 炸裂音と共に爆煙が舞い上がり、ユミールを覆い隠した。

 

「やった……⁉︎」

 

 アルフは勝利を確信し呟く。フェイトが体得している魔法の中でも間違い無く、最高レベルの必殺技だ。如何に堅牢な化け物と言えど、只では済まない筈だ。フェイトも、そう思っていた。

 

『グゴゴゴゴ……‼︎』

 

 だが、爆煙の中から地の底から響く様な唸り声がした。まだ、敵は倒れていない……そう、察した2人だが、反応が遅れてしまった。

 直後、煙を切り裂きながら、複数に及ぶ電撃が放たれた。フェイトは躱そうと身を翻すが、魔力を大量に消費した事、更には激戦による疲労によって、電撃をもろに受けてしまった。

 

「ああァァァァッ!!!!」

 

 フェイトの絶叫が響いた。アルフは同時に叫ぶ。

 

「ふ、フェイトォォ!!?」

 

 アルフの叫びも虚しく、電撃を受けたフェイトはバランスを失い、糸の切れた人形の様に落下した。アルフは助けようとしたが、煙のせいで視界が悪く、身動きが取れない。

 フェイトは意識を朦朧させながら、地上に落下して来た。

 

(だ、駄目だ……身体が痺れて……)

 

 過剰な電撃に貫かれた事で、バリアジャケットの加護があったとは言え、身体が麻痺して飛行する事もままならないフェイト。

 このまま、大地に叩きつけられるか、と思った刹那……煙から飛び出して影が、フェイトの身体をしっかりと受け止めた。やがて、煙が晴れていき……

 

「あ、アンタは⁉︎」

 

 アルフは目を疑った。何故なら、家で眠っている筈のジタンがフェイトを抱きかかえていたからだ。フェイトは手放しそうになる僅かな意識の中、自分を助けた人物を見つめた。

 

「じ……ジタン……? ど……うし……て……?」

 

 この場にいる筈の無いジタンの姿に、フェイトは疑問を口に出す。だが、ジタンはニカッと笑って見せた。

 

「女の子のピンチに、男は颯爽と駆け付けるものだろ?」

 

 おどけた口調ながら優しさに満ちたジタンの言葉に、フェイトは安心したのか、そのまま気を失った。

 ジタンは、フェイトをそっと下ろしてやると、アルフに振り返る。

 

「なんで、アンタが此処に⁉︎ 家で寝てたんじゃ⁉︎」

「ん〜? お陰で、朝までぐっすり眠り込んでた所だよ。コーヒーに混ぜた睡眠薬でな」

「……気付いてたのかい?」

「俺を見くびって貰っちゃ困るな。数々の修羅場を潜り抜けて来たジタン様をな!」

 

 ジタンは胸を張って応えた。アルフはジタンが此処に居ると言う現実より、フェイトが助かって良かった、と言う安堵の方が強かった。

 

「……助かったよ……けど、礼は言わないよ」

「要らねェよ。それよりもだ……アイツを何とかしなきゃな……!」

 

 まだ、ジタンへの不信感が残るアルフはぶっきらぼうに言ったが、ジタンは気にする素振りを見せず、アルフの後ろに迫るユミールを顎で促した。

 ユミールは拘束を抜け出し、フェイトの魔力を吸収して得た電撃を殻から迸らせながら、2人に迫って来た。

 

「こっちにも居たんだな……コイツ等……‼︎」

「知ってんのかい?」

「俺達の世界じゃ、其処等かしこに居たからな。『モンスター』達は……‼︎」

 

 そう言いながら、ジタンは自身の武器を取り出す。二つ一組の短刀にして「魔法使い殺し」の異名を持つ「メイジマッシャー」である。

 

「アンタ……やっぱり、管理局の人間かい⁈」

 

 アルフは警戒心を露わにしながら身構える。ジタンの事は信用していないが、フェイトの気持ちを汲んで側に置いていた……が、やはり、フェイトに危害を加えかねいジタンに対し、不信感が肥大化した。

 だが、ジタンは静かに諭す。

 

「アルフ、俺を信用出来ないなら、それでも良いさ。けど、今やるべき事はなんだ?」

「……フェイトを守る事……」

「なら、俺も気持ちは同じだ。フェイトを守る為に、此処へ来た。お前等の目的も管理局も関係無い。ただ……俺は、俺が守るって決めた奴を絶対に守るって決めてるんだ!」

「…………」

 

 ジタンの言葉にアルフは無言で思案し、そして答えを出した。

 

「……いいよ。一旦、アンタを信じる。但し、フェイトを守る為だ‼︎」

「OK〜、決まったな! んじゃ、ちゃっちゃとこのカタツムリをやっつけちまおうぜ‼︎」

 

 取り敢えず、話が纏まったらしく、ジタンとアルフは即興タッグを組んで、怪物ユミールに臨戦体制を取った……!

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