君のワガママは全部聞いてあげたい   作:三月ウーナン

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書いてるうちにポケモンポポモンネタだらけになりました


いつまで経っても変わらぬ愛を

 事務所へ向かう道すがら、ちょうどよく目当てのひとを見つけて声を掛けた。隠しようもなく喜色が滲んでいたと思う。

 

「ロナルドさん!」

 

 振り返ったそのひとの表情が私を見て少し緩むのが嬉しくて、駆け寄って腕を取る。

 

「エリ」

「今日はもうおしまいですか?」

「ああ、依頼が早く終わってさ」

「そうですか!じゃあ一緒に帰れますね」

 

 腕を絡めて歩き出す。ほんの数分の道のりを軽い足取りで行き、事務所の扉を開ける。聞き馴染んだ声が二人を迎えた。

 

「やあ、エリー!待って、た……」

 

 しかし、待ち構えていたのはお兄様ではなかった。件の人物はにこやかな笑顔のまま、固まってしっかり繋がれた私たちの手を見ている。

 間延びした瞬きの間の沈黙に、正気に戻って先手を打つことができたのは私だった。

 

「お父様!お出ででしたの?連絡くださればもっと早く来ましたのに」

 

 何事も無かったと言わんばかりに、ロナルドさんから素早く離れてお父様にハグをする。

 

「エリー、今、手、え、え?」

「どうかしました?」

 

 抱きとめつつも混乱しているお父様に、私は首を傾げる。さも不思議そうな顔を作りつつも、内心冷や汗をかく。ずっと隠し通せるとは思っていないが、今はまだまずい。今日のところはなんとか誤魔化さなければならない。さすがに無理がある密着具合でイチャつきながら扉を開けてしまったとしてもだ。

 

「いや、幻覚でも見たんだろう。そんなまさか、え、エリーが。ハハ、パパ疲れてるみたいだ」

 

 顔色を悪くしながら、細かく縦揺れしている。空笑いがいっそ虚しかった。正直、予想以上に動揺している様子に私も驚いている。誤魔化すまでもなく、現実を受け入れられなくてなかったことにしてくれそうだ。今はともかく、前途が思ったより多難そうなのはいただけないが。

 

「それはいけませんね、どうぞ座っていてください。お茶でも入れます?それともボトル開けちゃいます?」

 

 さりげなくロナルドさんから引き離しつつソファに誘導する。この際、問題は先送りだ。現状に思うところはあれど、急いだって良いことはない。

 丸く収まりそうで一安心したそのとき、背後から伏兵が現れた。

 

「あの、親父さん、俺たち実は、」

 

 真剣な顔をしたロナルドさんがそこにはいた。確かに彼は秘密にしているのを心苦しく思っていたようだが、今ここで告白しようとするとは。無謀すぎる。私が呆気にとられていると、今度こそ援軍が現れた。

 

「行けジョン、君に決めた!」

 

 お兄様の掛け声に合わせて、丸まったジョンがロナルドさんに飛んで来る。ぶつかる寸前に開いて、見事、顔に着地してみせた。

 

「んぶっ」

「いやー、すまない。突然ポポモンごっこがしたくなってしまってね。いらっしゃいエリー。若造も随分早かったじゃないか」

「何すんだよ!俺は真面目に、」

「ん?なにかね、ロナランダー。そんなにポポモンごっこがしたいか。ジョン、でんこうせっかだ!」

「ヌー!」

「ジョン!?」

 

 お兄様とジョンが物理的に話を遮ってくれたおかげで、危機を脱することができた。感謝の念を多大に込めて見つめていると、ぱちりとウインクが飛んでくる。さすがお兄様、お兄様しか勝たん。この隙にと、今度はいつもより青い顔のお父様のほうを向いた。

 

「お父様、そういえば少し聞きたいことが」

「なんだい?」

「昔教えていただいたクッキーのレシピのことで」

「ん?ああ、また随分懐かしいものを。今更ドラルクが困るようなものでは全くないはずだけど」

「それはそうなんですが、ちょっと意見をお聞きしたいことがありまして。見ていただいても?」

「もちろんだとも」

「エリーちょっとお父様お借りするよ」

「どうぞどうぞ」

 

 そんなわけで、お兄様は流れるようにお父様の意識を逸らして住居スペースのほうへ連れて行った。お兄様の有能が過ぎる。

 さて、私は今のうちにロナルドさんと話を合わせておかないと。せっかくお兄様が気を使ってくださったのだ、無駄にはできない。

 

「ロナルドさん」

 

 私が怒った声を出して振り向くと、彼はジョンを抱えたままビクリと揺れた。

 

「はいっ」

「私、言いましたよね?お父様に話すのは最後にするって」

「言ってた……」

 

 項垂れて肩を落とす。落ち込むなら最初からやらなければいいのに。言ってあったことなのだから、分かっていただろう。こちらはかなり神経使ってことを進めているのだ。

 

「お父様が私たちに過保護気味なのはよく知っているでしょう。急に付き合っているなんて話したら、事務所倒壊じゃ済みませんよ?」

 

 正直なところ、私も何が起きるか分からない。今日のお父様を見てますます分からなくなった。あの動揺の仕方だと何を仕出かしてもおかしくない気がする。やろうと思えば大概なんでも出来るひとなのだ、我が父は。被害が計り知れない。

 

「うっ、でもよ……。やっぱりちゃんと言ったほうがいいと思う。不誠実にはしたくないんだ。エリのこと」

 

 ロナルドさんは依然気まずそうにしつつも、私を見つめる。あまりに真摯な視線を向けられ、今度は私がいたたまれない。こういうところが、ずるいと思う。私は怒るに怒れなくなって、小さく息をついた。

 

「……そう思ってくださるのは、私も嬉しいんです。でも、もうちょっとだけ待ってもらえませんか?お母様がもうすぐ来日予定なので、さきに味方につけたいんです」

「そうなのか!」

 

 嬉しそうな声が上がる。やはり、現状がかなり気がかりだったのだろう。私の家族と面識があるうえ、とくにお父様なんてしょっちゅう来る。そのたび騙しているようで罪悪感でも煽られていたのかもしれない。性格上、秘密ごとに向かないのだ。

 

「長らくお待たせして、すみませんでした」

「いや、俺のほうこそ悪かった。色々考えてくれてるのは知ってたのに」

「寛大に許しましょう。でも、もう勝手に先走っちゃだめですからね」

「おう」

 

 なんとか話が纏まった。笑って頷くロナルドさんを見て、私も気が抜けて吐息が零れた。

 

「お父様に怪しまれる前に戻りましょうか」

「そうだな」

 

 痴話喧嘩に巻き込まれてくれていたジョンが、やれやれと言わんばかりに溜息をついた。

 

 

 

 さて、これで丸く納まったかというと、全くそんなことはなかった。なぜなら、私がロナルドさんと話をしている裏で、お兄様がお父様に余計なこと言ってしまっていたからである!

 二人で扉を開けた途端、異様に笑顔のお父様にロナルドさんが肩を組まれて引きずられていった。ポール君ちょっといいかな?と伺いを立てる言い方だったが、有無を言わせる気は全くなさそうだった。今更だが、ロナルドさんがお父様のなかで完全にポール(蔑称)として定着している。

 私がポカンとしていると、ジョンを引き取ってきたお兄様が作り笑いを浮かべて現れた。

 

「やあエリー、一緒にポポモンしない?色ヒト○シ欲しいって言ってなかったっけ」

「お兄様、お父様になに言ったんですか」

「いやー、その、ハハハ」

「お兄様」

 

 私が至って冷静(・・)にたしなめ、ついでにジョンが促し、やっと観念してお兄様は話し出した。それによると、どうもロナルドさんが私に気があってアプローチ中、私はそれをあしらっているってことになったらしい。どうしてそうなったんだ。それでロナルドさんはあんなに詰められているのか。愛娘に近寄る虫扱いを受けている。

 

「ポール君、きみ率直にエリーのことどう思っているのかね」

「えっ、いや、俺は別にそんな」

「はぁ!?エリーは地上に降りた最後の天使、瞳は10万ボルトだろうが!!」

「すごく可愛いと思ってます!!」

「貴様、やはりエリーに言い寄って!」

「娘さんとは節度ある付き合いをさせて頂いています!!」

「付き合うとか言うな!!!!!」

 

 もうめちゃくちゃだ。私が電気ネズミだったらひとまず電撃でも浴びせてうやむやにしている。

 二人とも何が言いたいんだか分からなくってはいないだろうか。一応、私に聞かせないために部屋の端に寄ったのだろうに、ほとんど怒鳴りあっているから丸聞こえである。

 

「あれ、そういう意味で付き合ってるし、節度どころかやること全部やってるって言ったらどうなるんだろうね」

「お兄様、私怒りますよ」

「ごめんごめん」

 

 ちっとも悪く思っていない声音で謝られた。私には基本的に頼りになるお兄様なのだが、時たまこういうこともある。私以外にはほぼ常時この調子なんだろうけども。

 

「はぁー、全くもう。止めに行きますよ」

「えー、面白いしもうちょっと見てない?」

「ロナルドさん、もう正直いつ口滑らせてもおかしくないですよあれ。ドラルクキャッスルマークIIが吹き飛んでもいいんですか」

「それもそうか、仕方ない。……二人とも!その辺にしておきましょう」

 

 近づいてきたお兄様と私に気付いた二人がこちらを向いた。お父様は納得のいかなそうな顔をしているし、ロナルドさんは窮地にやっと援軍がきたような顔をしている。わりとその援軍のせいで今こうなっているのだが。

 

「しかし、ドラルク!ポールにはキツく言い聞かせておかねば」

「お父様、そう心配しなくとも、ヘタレなんだからたいしたこと出来ませんよ」

「ドラルクお前!!」

「なんだね、おくびょう物理アタッカーめ。ハーブ使っても元の性格は変わらんのだからな!」

「お兄様も煽らない!」

 

 ほら、目を離すまでもなくこうなる。こんなことに付き合わせているのは申し訳ないけれど、一瞬で目的を忘れないでほしい。ちょっと大人しくしていてくださいよ、と目線で促しつつ、一番説得にかからないといけないひとを見た。

 

「お父様、お気持ちは嬉しいですけれど、大丈夫ですよ。ひとを見る目はあるつもりです」

「でもね、エリー。なんと言うか、ひとって時に思っているよりバカになるから。どんなにエリーが賢く、強く、美しくても、不測の事態は起こり得るんだ。心配なんだよ」

 

 眉を下げてお父様が言う。けれど、いつになく真剣な風だった。

 

「ううん、そうですね……。私が本当に困ったときには必ずお父様を呼びます。すぐ助けに来てくれるでしょう?私の自慢のお父様なんですから。だから、今はエリーを信じてくださいませんか?」

 

 私が真っ直ぐ見つめていると、やがてお父様は渋々と小さく頷いた。折れてくれるらしい。

 

「……分かった。今日のところはエリーに免じて引き下がろう。ただし、ポール!エリーにおかしなことしたら承知せんからな!!」

 

 そんな捨て台詞のようなものを吐いて、お父様は(窓から)帰っていった。我が親ながら人騒がせなことである。決して、嫌いなわけではないんだけれども。

 残された3人と1玉でなんとも言えない虚脱感に包まれた。

 

「君たち、なるべく早くどうにかしなさいね」

「ヌンヌン」

「はい」

「おう」

 

 お母様、早く来てくれないかな。あのひと私生活面ではわりと頼りにならないけれど、今回ばかりは期待したい。

 

 

 

 と、思っていたのだけれど……。




いつまで経っても変わらぬ愛を、君に捧ぐ覚悟はあるか


【エリー】推しポケはシャン○ラ。図鑑埋めくらいまでは毎度遊ぶ。ゴリラ○ダー、育てようかな……。

【ドラルク】推しポケはサ○ド(ジョンには秘密)。もちろん対戦まで手をつけている。

【ロナルド】推しポケはルカ○オ。夏にテレビでやっていた映画で号泣した思い出。

【ジョン】推しポケはオ○バット。サ○ドに対抗心を燃やしている。ばればれヌ。

【ドラウス】ピカ○ュウはかろうじて知っている。最近のゲーム機、怖い。
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