今のルビコンはコーラルを巡って解放戦線と企業が常にどこかで争っているわけで。
その隙間で蠢いてるドーザーのやってる諍いも含め、探さなくても仕事は幾らでもある。
自分のようなドがつく三流でも、ACが動かせれば仕事を選ばなければ……いや、ある意味では選んでいるが。
できない仕事を受けて吹っ飛んで死にたくはないし。
そんなわけで、ACの背中にデカい箱を背負って今日も歩く。
ガッションガッション、脚を動かしてスクリーンに表示されたマーカー地点を目指す。
今日の目的地はルビコン解放戦線の超!重要拠点、通称「壁」だ。
といっても当たり前だが、企業連中みたいに壁越えしようとかじゃ、勿論ない。
そんなことしたら自分は絶対死ぬし。
逆に、壁越えさせない手伝いというか?
いかに強固な壁でも攻められれば減るもんがあるわけで、それはどうしても外から補給する必要がある。
特に正面のガトリング砲台の弾薬なんか、一回でどんだけ吐き出してるのか想像もつかない位にばら撒いてるだろうし。
弾薬類じゃなくても配置されてるMTや砲台に使われてる精密ユニット、細かいパーツだって戦闘すれば交換が必要な機器も出る。
今、自分が背中に担いで運んでるのがまさにそれだ。
解放戦線は勿論、自分たちで補給線を構築してるから必要な物資はそっちで補給を回してるんだが、企業連中から攻められた後はどうしても、補給を急ぎたい物が出る場合がある。
そういった時に直接、BAWS(BELIUS APPLIED WEAPON SYSTEMS)から物を届けて欲しいが自分たちで取りに行けない時に、自分が呼ばれる。
最初は解放戦線の依頼で、壁越え狙いで攻めてきたベイラムを迎撃する手伝いをした後、チラっと聞こえてきた物資の引き取りで問題が~って話に
「自分が取りにいってあげようか?」
って声を掛けたのが始まりだけどな。
てっきり断られると思ってたんだが、めっちゃ悩まれた後に"じゃあ頼む"って言われたから、BAWSの工場にAC飛ばして受け取りに行った。
今、背負ってる箱はその時にBAWSから渡された資材入れのコンテナをそのまま貰ったやつだ。
「あん時はベイラムの部隊が襲ってきて死ぬかと思ったっけなあ。」
攻めた後は補給が要るって当たり前の道理を企業が分かってないはずもなく。
BAWSの工場を監視してたらしくて、わっかりやすいコンテナ背負ってから出てきたACとか露骨に怪しいから"コラコラお前、その中身見せてみろ"ってなもんで。
それ任意ですか?って言ったらミサイル撃ってきたからアクセル全開ダッシュで逃げた。
どうもベイラムの部隊は輸送トラックとかヘリとか、そういうの想定してたらしくて(実際、後からそういう輸送も予定されてたそうだが)AC想定の部隊じゃなかったから、全力疾走で山の中に逃げ込んで振り切った。
そんで、若干焦げながら壁までコンテナ届けた自分を解放戦線は評価してくれたらしくて。
それ以降は壁だけじゃなくて、他の拠点や施設への急ぎの届け物だとかを依頼されるようになったってわけだ。
そんな目立たない荷物運びが若干、ネタになってるのか企業連中からもヘリとか飛ばし辛い場所への輸送依頼が来るようになったのはちょっと笑える。
まぁ、傭兵連中からは普通に笑われてるが、しょうがないね。
でもお金になるからね、しょうがないね。
ちなみに、そんな自分のコールサインは"Transporter/運び屋"です。
自分でつけたわけじゃなくて、いつの間にか、そうなってた。
オールマインドさん?どうして?
と、色々考え事しながら歩いてたら壁が見えてきた。
相変わらずでっけー壁だな。
手前の廃墟……街区っぽいビルより全然高い壁とかよく作ったよなって思うわ。
あっちこっちに砲台あるし、知ってる?更にあの上にはジャガーノートっていうサイコロみたいなトンデモ機体が門番にいるらしいよ。
ジャガーノート以前に正面から突っ込んでも、入口のガトリング砲台が客を2秒でスクラップにするけどな。
力押しじゃ相当厳しいんじゃないの、ここ。
あ、自分はもちろん、正面玄関じゃなく、横からお邪魔します。
山を越えて迂回して街区に入る。
「毎度ー、こちら運び屋。
BAWSからのお届け物でーす、事前の話のとおり、ルートCで入る予定。」
予定通りでも、通信で事前の連絡は念のため入れておく。
うっかり所属不明ACとか言われて撃たれたくないからな、何事も報告、連絡、相談は大事だ。
『こちら街区、哨戒担当……確認した。
運び屋の予定は聞いている、ルートCも了解した。
入口も受け取り担当もいつもの通りだそうだ。』
「確認ありがとう、このまま進むよ。」
この声は聞き覚えがあるな、何回か同じようなやり取りをした記憶がある。
時々、知らないヤツにちょっとそこで止まれって言われるからな、今回はスムーズにいった方だ。
ガッションガッション、足を動かして街区を進む。
来る度に崩れ具合が酷くなるなあ、このビルとか……上に乗ってるMTが挨拶代わりに銃を振ってくれてるのに、こちらも軽く腕を上げておく。
こういう細かい挨拶って意外と大事だったりする、これでお互い顔見知りになった気持ちになるからな。
実際は顔も見た事ないが。
ガッションガッション、更に進んで壁に何か所かある、搬入用出入口の1つに到着。
前に立ってアクセスポートに接続、今回発行されてるIDとパスを入れると、ゆっくり分厚いシャッターが上がり始める。
このシャッターもマジで分厚い。
シャッターっていうかもう、隔壁だよね、これ。
シャッターが上がり切るのを待って、コンテナをぶつけないようにゆっくり中へと入る。
こちらを待っていた作業員の振るライトの誘導に沿って、大きく展開されたスペースに足を進めて、そこでコンテナを下ろしていく。
ガコンって音を立ててコンテナを下ろすと、ACが姿勢を正す動きと連動するように自分はコクピットの椅子に体を沈める。
ふぅ、今回も運び終わった。
毎回毎回、結構疲れる。
ただ運ぶだけだろって言われるかもしれないが、いつ襲われるか分からないのに、大事な部品を背負って歩くのは神経にクる。
背負ったコンテナの重量のせいで武装がかなり制限されるのもあって、戦闘力もついでに移動力も酷いからな、このAC。
襲われた時にイチイチ、コンテナ下ろしてる暇とかないし。
「ふぁぁ……あー眠くなってきた。」
緊張が途切れたせいか、欠伸もひどい。
目尻に浮いた涙を指で払いながらスクリーンを見ると、開かれたコンテナの資材の運び出しを指示しながら、手元のPDAを弄ってる作業員が見えた。
作業員っていうか、解放戦線の戦士の1人なんだけどね、あれも。
民間人なんかここには居ないし。
「もしもし、こちら運び屋、確認とかドレ位かかりそう?」
『今のペースだと1時間くらいだ、休みたいなら空いてる部屋に案内させるが?』
「いや、それならこっちも今の間に届いてるメール見たり、細かい作業するから気持ちだけ貰っておく。」
『了解した。終わり次第、連絡する。』
通信終わり。
まぁ、細かい作業とかしないけどね。
ACから下りてる間に何かあると嫌だから、下りないだけ。
システムを待機状態にしてから、機体の関節部をロックして固定。
外から見るとセンサー類とかの光が落ちていくから、周りにも分かると思う。
あとはシートを少し倒して目を閉じる。
おっと、タイマーを1時間にセットして……ちょっと仮眠しよう。
「COM、通信がきたらタイマー鳴らなくても起こして。」
《了解しました。》
……この仕事が終わったら、次はグリッド086に行かないとだっけ。
遠いんだよねえ、Radのグリッド。
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コンテナ背負ったACの後ろ姿で、こういうのを思いついたのでした。