何かを運ぶ傭兵稼業   作:大金剛

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ホットコーラルで健康を取り戻そうと一生懸命になってたら、もっと運ぼうという幻覚が見えてきました。
そうだ、仕事を思い出そう。


第24話

 

 

知らなかったんだけど、解放戦線の重要拠点である「壁」を守ってる最終兵器ジャガーノートって1機じゃなかったらしい。

 

いきなりなんだって思うかもしれないが。

荷物運んで壁に向かってたら、ギュリギュリ音が聞こえたんでそっち見たらあれだよ、四角いでかい箱みたいなのが動いてたらびっくりするじゃないか。

 

何回か「壁」に荷物を運んでるけど、それを見たの初めてだったからさ。

思わず足が止まってもおかしいことじゃないと思う。

 

いきなりACの2.5倍くらいのサイズの箱が動いてるの見たら、なんだあれ!?って口から出ちゃうよ。

 

初めて見たのに何でジャガーノートって分かったのかって?

 

向こうもこちらを認識したみたいだったからさ。

先に運び屋です、背中のコンテナで頼まれたもの壁に持ってきたよって通信投げたら、こちらジャガーノート、了解したって返事が返ってきたからだよ。

 

思わず、そのまま何でジャガーノートが地上に居るの?って言ったら、ジャガーノートから律儀に返事が返ってきてさ。

 

ジャガーノートは1機じゃない。

今も1機は壁の上に居るし、このジャガーノートはアーキバスの威力偵察部隊?みたいのが近づいて来てるから、磨り潰しにいくんだ。

 

とか言って、そのままギュリギュリとキャタピラの音させて走って行ったよ。

 

 

 

 

今は、また「壁」に向かってガッションガッション、ACを歩かせてるところ。

 

BAWSの第一工廠で荷物を受け取って、運んでいって、解放戦線に渡すという運び屋を始める切っ掛けになった仕事だな。

 

最近はどこの仕事も戦闘メインになってるし、それはそれで稼ぎになるから混じってたけど。

そもそも、自分はそんなに腕が良いわけでもないんだから、ちょっと少しの間は大人しく荷物を運ぼうと思ってさ。

 

うっかり大規模な戦闘に参加することになったら、死にかねないし。

あのベイラムの依頼受けたらバケモノみたいなACと戦うハメになったのも、そんな予定じゃなかったしなあ。

 

想定外のトラブルはそりゃ、ある程度はしょうがないけど、最近は多過ぎだ。

 

 

ベイラムの依頼からドックに帰った後、傷だらけのACを修理依頼したらオールマインドから即、連絡があった時はビビったけど。

流石にキレられるかなと思ったけど、特に怒ってる感じでも無かった。

 

いや、自分の申し訳なさは消えないんだけどもね。

 

オールマインド曰く

 

・傭兵が仕事に出てACに傷がつくのは当然のこと

・無事に戻ってきた後の修理、その他の手配を含めて、傭兵支援であるオールマインドの仕事なので遠慮は要らない

・むしろ、ちゃんと戻ってきて後回しにせずに、すぐ修理依頼を出すのは良い事なので、今後も気にしないで迅速に連絡するように

 

だって。

 

もうね、オールマインドの優しさに感動して泣いちゃうかと思ったよ。

いや、ちょっと泣いてたかもしれない。

 

これからもオールマインドには頼らせてもらうし、何かできることがあればやっていこうと思ったよ。

 

とりあえず、その1歩としてACを修理してもらってる間に新しいオールマインド製の腕を動かした感じとか……

前に使ってた大豊の腕とどう違うか?とか、使用感をレポートにして出しておいた。

 

説明を読むと「人体感覚の拡張」がテーマらしいから、使ってみた感想とかは役に立つかもしれないかなと。

 

 

そして、そんなレポート書いたりしてると!

ベイラムからの報酬が振り込まれて、リペアキットが買える額まで貯まったので!

 

早速、購入申請を出しまして!!

 

 

といっても、ライセンス申請はすぐなんだけど、ACの調整には専門の技術者を手配するのに少し掛かるってことなので。

その間にドックでソワソワしてるだけじゃアレだし、荷物運びくらいなら問題ないだろうと思って、解放戦線の仕事を受けたわけだ。

 

あと、減ったってレベルじゃないくらいに消えた貯金の額を見て、不安になったというのもある。

 

次はジェネレータも欲しいし、頑張って働かないとな。

 

 

 

 

ガッションガッション、ジャガーノートと遭遇した後も斜面を歩く。

 

目的地は「壁」の中にじゃなくて、その横って言えばいいのかな?付属の施設みたいなところだ。

最近は「壁」への侵攻がまぁまぁ増えてきてるから、こういうルートで来てくれって指示があったんでな。

 

「壁」は正面から見ると、前は廃墟から更なる廃墟になりつつある市街地があるんだが、その右側には「壁」の一部が縦に伸びて仕切りみたいになってて、その向こう側にも解放戦線の施設があるんだよ。

 

 

ベイラムもアーキバスも解放戦線が立て直す前にもっと消耗させようって攻めてるのかもしれないなあ。

 

解放戦線の支援母体はどこ?って当然調べてるだろうけど、そこは……BAWSとかだと思っても、自分たちも使ってるから攻められないし。

物は補充できても人はそうじゃないだろうって、そっちを狙ってるのかもしれない。

 

特にベイラムは数で圧殺主義だし……でもベイラムも戦力補充は惑星封鎖機構を掻い潜ってやらないと駄目だし、効率良くなさそうだなーとも思うんだけど。

 

まぁ、でも。

企業同士、企業と解放戦線が戦争してくれてるからこそ、自分みたいな傭兵の需要もあるわけだし。

 

実際、ACで運び屋なんて隙間の隙間みたいな仕事ができる星なんて、他にあるのか?ってレベルだろうし。

 

自分としては解放戦線には悪いが、今の状態が続くのが一番都合が良くて、ありがたいんだろうな。

そうすれば、このまま稼ぎ続けられるから。

 

 

ああ、解放戦線はベイラム、アーキバスに殴られてる上に、後方のミールワーム養殖施設の建設とかで相変わらず、色んな方向で自転車操業らしい。

軽く聞いただけでも、前線の部隊は余り休めて無くて人、物の損耗率も良くないらしい。

 

でも和解とか停戦とか、できないだろうしな。

仮にベイラムとアーキバスは一時的にはできても、解放戦線は飲めないだろうし。

 

でもどっちかに打撃を与えて例えば、アーキバスに取られた地域を取り返せるのか?っていうと……なあ。

色んな所を見てると、まぁ無理なんじゃないかと思っちゃう。

 

独立傭兵を大量雇用して……とかは金が無さそうだしなあ。

 

 

まぁ、あんまり解放戦線からこういう話を聞き過ぎると、だから傭兵の仕事があるよ!ってなりかねないから、適当に切り上げたけど。

アーキバスに奪われた地域を奪還したいから、奴らの居るところに突っ込んで行って壊滅させて!とか言われても、できるわけないし。

 

そういうのはアレだ、もっと上位の……アリーナに登録されてる腕利きに頼んで欲しい。

 

解放戦線にもアリーナに登録されてるの居るしさ。

前にちょっと会ったダナムっていう人とか、見たことないけどツィイーって人とかが頑張るとかね。

 

きっと今もどっかの前線で忙しいとか、張り付いてなきゃいけないとかで動かせないんだろうけども、だから外注に、でも金が……うーん、ジリ貧の気配がする。

 

 

あ、ぼんやり先行きを考えてたら、壁の横の施設が見えてきた。

 

 

「あー、こちら独立傭兵の運び屋。

 BAWSからのお届け物を持ってきたよ、今回はこっちに運ぶようにって指示があったんだけど、大丈夫かな。」

 

 

いつもと違う場所に運ぶので、少し早めに連絡を入れておく。

やっぱりコッチにって言われるなら早い方がいいしな。

 

『こちらは壁の……お互いに挨拶は良いか。

 ああ、運んでくれてる資材はそちらの施設で大丈夫だ、メンテナンスが必要なMTをそちらに集めて、纏めて作業する予定だ。

 

 そのまま運んでくれ、警戒部隊にも伝達は済んでいる。』

「はは、いつもの相手だと楽で良いよ。

 了解した、じゃあこのまま向かう。」

 

 

壁に来るといつも、この声の相手が対応してくれるなあ。

話が早いのは助かるのでいいんだけど、解放戦線のブラックさがちょっと垣間見えるようだ。

 

そのままACを進めていくと、通信にもあった警戒部隊っぽいMTが立ってたんで、腕を上げて挨拶しながら通る。

あっちもライフル持ってる腕をあげて、挨拶を返してくれたわ。

 

 

そういえば、腕上げてるMTで思い出したけど。

 

解放戦線の何かの写真で、MTが演説してて、並んで聞いてるのも全部MTっていう、どういうシチュエーションなんだっていうの見たことあるなあ。

 

あの場所って、もしかして「壁」なんだろうか。

決起集会というか、戦闘前の士気向上みたいなシーンだったのかもしれない。

 

 

 

 

指定された荷物の受け渡し場所まで来ると、確かにMTが何台も並んでるわ。

やっぱりちょくちょく、継ぎ接ぎっぽいMTが居るのが目についちゃうなあ、口には出さないけど。

 

解放戦線の兵士の指示に従って、ここに置けって言う場所にコンテナを下ろす。

そうしたら作業担当のMTとか人がわらわら近づいてきて、中身を取り出して運んでいく。

 

忙しそうに運んでるのを見ると、ああ持ってきて良かったなあと思いつつ……この間は本当に暇な時間だから、仮眠するかメールの確認とかしかすることが無い。

 

 

『ぁー……済まない、少しだけ良いかな。』

 

 

メールも来てなかったし、傭兵コミュでも見るかと思ったら横で一応、警備みたいに立ってたMTのパイロットが話し掛けてきた。

 

 

「ん?はい、何だろう。」

『その、仕事と直接の関係の無い話になっちゃうんだが。

 食料品なんかの買い付けとかは、その……依頼すればできるんだろうか?』

「……えーと?

 買い付けたのを運んでくれって話?」

『いや、そうじゃない。

 運び屋が買い付けるとかはできるのかって。

 

 前に荷物を運んでくれた時、携帯食のようなものを贈ってくれたと聞いた。

 だから、そういうのも可能なのかと思って。』

 

 

そんなことあったっけな?

 

記憶に無い……こともないな、えーとBAWSの第二工廠から出た輸送トラックの護衛の時、帰り際に何か段ボールをあげた気がする。

なんか、そういう気分だからって渡した気がする。

 

 

「あー、あれは自分用のだったからなあ。

 大量にって言われるとちょっと無理かな、欲しいならアレだ、そういうの扱ってる業者探すしか。」

『やっぱりそうか。

 業者は居なくもないんだが……いや変なことを聞いて悪かった。』

「いや、良いよ。食べ物って大事だしな、力になれなくて申し訳ないけど。」

『すまない、後方に居る子供達に少しでも……と思ったんだが、独立傭兵に頼む話じゃないのは分かってるから。』

 

 

あの、重たい話するの止めて貰っていいかなあ。

 

飢える子供とかはね、そりゃあ可哀想だと思うけどね。

ちょっとオールマインドの傭兵支援サイトにある総合支援ショップを見てみる……あの時に渡したのなんだっけなあ、アーキバスのエナジーバーだっけ?

 

1人幾つまでとか、買うのに制限は無いけど、大量購入できるか知らないし。

というか、こんなのコンテナ一杯に詰めて売ってもなあ。

そもそも安く買えるわけでもないから、儲かるような値段で売るなら業者と変わらなくなるだろう。

 

あと、オールマインドに何事ですか?って聞かれるのが一番嫌だ。

 

 

「ちょっと考えて見たけど、やっぱり無理だわ。

 企業連中の補給ルートでも調べ上げて、襲う方がまだ楽じゃないかな。

 レーションとか食料品とかも、どっかで輸送してるはずだから。」

『……なるほど、それなら企業共のダメージにもなるし、メリットもあるな。

 現場で話してみて、上申できればしてみよう。

 

 ……ありがとう。』

 

 

やっぱり解放戦線の人間もミールワーム頼みの食生活はしんどいのかな。

それも行き渡ってない感じあるし、MTのパイロットの声が結構、本気な感じだったぞ。

 

子供にって言ってたのは、自分の子供なのかな。

家族、家族ねえ……孤児の自分には分からないが、まぁ頑張ってくれとしか言いようが無いな。

 

 

『運び屋、コンテナの荷物は全て運び出した。

 そちらの仕事はこれで完了だ、今回もありがとう。』

 

 

おっと、作業担当から終わりの連絡が来た。

それじゃあ帰ろうかな。

 

 

「はいよ、無事に終わって良かったよ。

 また何かあったら依頼してくれ。」

 

 

下ろしていたコンテナをACに背負い直させて、そのまま施設から出て行く。

あ、さっき話してた警備のMTが軽く手を振ってたので、こちらも振り返しておく。

 

本当に企業の輸送部隊を襲いに行くかは分からないけど、やるなら上手く行くといいな。

 

 

 

 

ドックに戻ってくると、丁度、オールマインドからメールが来てた。

 

リペアキット搭載のための手配が済んだのでって……早いなあ。

専門の人間が夜くらいにドックに行って、作業開始するから受け入れよろしくってさ。

 

いつも迅速な対応ありがとうってメール返しておこう。

 

ああ、ついでに今回は報酬の10%くらい、送金に回しておこうかな。

リペアキットの積み立てからジェネレータの積み立てに変わったオールマインド貯金に今回だけ変更をお願いしておこう。

 

って、通信が来た。

 

 

『独立傭兵 tr-227 Transporter、先ほどの件で確認があります。

 ジェネレータの積み立てについては最優先と聞いていましたが、今回、送金を優先するのは正しいですか?』

「いつも確認が早くてすごいなあ、ありがとうオールマインド。

 

 ああ、そっちの話か。うん、今回だけ……そういう気分だから。」

『承知しました、間違い無いなら大丈夫です。

 傭兵支援の一環として、何か問題が発生しているのではと確認しただけです。

 

 それでは、リペアキット搭載のための人間を受け入れの方もお願いします。』

「ああ、いつも助かるよ。

 ……本当にありがとう、オールマインド。」

『通常通り、傭兵支援を行っているだけです。』

 

 

いや本当、感謝してるんだけどなあ。

 

リビングスペースでソファに寝転ぼうとして、ちょっと、今日はシャワーでも先に浴びてくることにしよう。

色々さっぱりしたい。

 

メールとか来てるかもしれないけど、その後にしよう。

 

 

 

 

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運び屋の仕事は物を運ぶことでしたね。
いや、傭兵だろって前提はあるんですけども。

主人公は最近だと、ちょっとは腕も上がってると思うんですが……
自己評価って中々変わるもんじゃないですから、相変わらず派手めな戦闘は避けたいようです。
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