本当に寒くなったので、ホットコーラルを飲んで、コーラル飴を食べております。
ああ、幻覚が一杯見えます……素敵だぁ……
グリッド086を出る前に、帰りの予定について若干遅れることをオールマインドに報告しておいた。
理由を説明したら、闇市に行くこと自体は仕事なので止めるものではないが、怪しげなパーツを買わないようにって釘を刺された。
武器についても同じで、動作保証も無いし、暴発の危険を考えたら危ないから止めなさいって。
うん、めっちゃ正論なので頷いておいた。
見るだけにして、気になるアイデア商品があったら、帰ってオールマインドに相談するということになった。
ランカーでもない、自分みたいなその他大勢みたいな傭兵にもちゃんと忠告してくれる、オールマインドは優しいなあ。
流石は傭兵支援システムだなあ。
ということで。
現在、モラドの乗ったMTの案内で闇市を目指して移動中だ。
ボナ・デア砂丘を越えた先の区域にある、岩の塊みたいなのがあっちこっちにある荒れた場所をACとMTで走ってる。
今まで行ったことが無い区域だったんだが、こんな場所もあったんだな。
構造物がほぼ無いらしくて。
多分、グリッドを建設する時の狭間というか、隙間みたいになった土地なんじゃないかって話だ。
企業や解放戦線も今のところはスルーしてる区域のうち、廃材漁りも来なさそうなポイントは他にもあって。
ドーザーが多めに、今回の闇市みたいに集まる時はそういう場所を使うらしい。
ドーザーって頭コーラルなジャンキーばっかりだと思ってたら、そういう普通の無法者みたいなこともやるんだな。
普通の無法者ってなんだって言われると困るんだけど。
あれだ、余所の星だと絶対居るじゃないか、マフィアみたいなヤツらってことで。
ああ、砂丘の終わりまではRaDが出してくれたホバー船みたいのに乗ってきたんだけど、あれ便利だったなあ。
RaDってああいうのも作れるんだなあ。
砂丘以外じゃ使えないけど、見回りや襲撃への対応に有利になるから自分達の専用なんだってさ。
代り映えしない景色の中、MTに合わせて進んでるとメールが来たからささっと確認だけしておく。
差出人は……ギンだった。
やっぱり頼むって話かな。
それならすぐ返信できるから、開いて流し読みするか。
どれどれ。
[獲った、いえーい☆]
短いメールには画像が添付されてて。
え?って開いてみると、頭が綺麗に無くなったACが地面に転がってたよ。
いや、怖いって。
もう狩り終わったのかよ。
転がってるAC、全身アーキバス製じゃん。
ところどころ凹んでるけど、殴る蹴るして頭だけパイルバンカーで飛ばしたのかな。
このACのパーツ自体、使い込まれた感じが全然無いというか、すごい新しそうなんだけど……新兵狩りでもしたの?
あと、遠くに転がってる原型留めてないMTらしきものの残骸も1人でやったんですかね。
いえーいじゃないよ、いえーいじゃ。
普通に怖いって返そうと思ったけど、機嫌を損ねたくないから穏便にしておく。
[本当に仕留めててすごいな。新しい頭乗せれば全然使えそう。]
[妹分も喜ぶんじゃないか。]
これで良し。
鹵獲したものそのまま使うでも、売り飛ばすでも、良い値段になるんだろうな。
アーキバス製のパーツって元値が高いからなあ。
『くっそー、グリッドの外に出たのなんざ久しぶりだぜ。
クソがよー。』
おっと、モラドが嫌そうにブツブツ言ってるわ。
ははは、諦めが悪いなあ。
段々と教えて貰ったポイントが近づいてきたから、そろそろ意識を切り替えようか。
「まだ言ってんのかよ。
それより段取りの確認しようぜ。」
『オマエのせいだろうが。
段取りつってもなあ、中に入ってぐるっと回って帰るだけだぜ。』
「それは分かるけど、ドーザーの流儀とかルールとか無いのか。
やっちゃ駄目、言っちゃ駄目とか。」
『ぁー……
物の出所は聞くな、相手を探るな、ケンカするなら外でやれ、かね。』
全部盗品か発掘品だし。
売ってる側も買う側も、全員がドーザーか関係者なら、そりゃそうかって納得の3つだなあ。
闇市全体が1つの店みたいなもんだし、店の中で暴れるなっていうのも、はい、そうですねって感じ。
「大人しく見て回れってことね。」
『そうは言っても、元がバカの集まりだからな。
息するのと同じレベルでケンカ売ってくるヤツ、足元見て吹っ掛けるヤツも多い。
あんま言いなりだと、それはそれで仕事にならねえから気をつけろよ。』
「初心者に難しいこと言わないでくれよ。」
とか言ってる間についたみたいだな。
輸送トラックとかMTが動いてるのが見えてきた。
こんなに集まって大丈夫なのか?
惑星封鎖機構が上から見たら丸見えな気がするんだけど。
スルーされてるのは何時でも殺せる程度だって思われてるのかなあ。
モラドに聞いてた通り、まずは入口っぽく陣取ってるMT数機のところに向かう。
MTはマシンガンとか持ってるが、こっちに向ける様子もなく話し掛けてくる。
『よぉ、独立傭兵か?
見たとこ傷も無さそうだが、客でいいのか?』
「ああ、仲間がこの前の騒ぎで頑張り過ぎてな。
ボコボコになったんで代わりに来たんだ。
とりあえず動くようにしてやらないと、仕事にならないからなあ。」
『へへ、そりゃあ災難だ。
入場料は要らねえが、武器は預かるぜ。そういう決まりなんでな。』
それは聞いてたから、大人しくバーストライフルとパルスブレードも外して、近付いてきたMTに渡す。
渡し終えたら、話し掛けてきたMTに100 COAMチャージされたプリペイドコードを送信しておく。
「預かったもんの管理も大変だろ、手間賃にそこの皆で分けてくれ。」
『おっと話の分かる傭兵だな、おい。
任せとけよ、特別大事に預かっとくぜ。』
「あ、ついでにさ。
ACのパーツならこの辺とか、ヘンテコな発明品とか発掘品とか、オススメってない?
案内料にさっきのコード、もう2つあるよ。」
言いながらさっきと同じように、100 COAMのプリペイドコードを2つ纏めて送信してやる。
預かり賃を渡した時よりも、更に愛想が良くなった。
『いやぁ旦那、そういうのなら任せてくれよぉ。
案内なら仕切りのオレらに聞くのが一番でさぁ。
そうだなあ、旦那の目当てはACなんだろ。
それじゃあここんトコの祭りで勢いあったところだな。
こっちとこっち、あとはRaDのヤツらのを流してるコイツらのトコか。
後は発掘だっけ?ホントかどうかは知らねえが、端っこの……この辺にならあるかもなあ。』
いやあ、想像以上に良く回るようになった口だなあ。
簡単なマップみたいなのくれた上に、マーカーまでつけてくれたよ。
これもう、これで仕事終わりでいいんじゃないのか。
受け付けのMT達、何か困ったら来いよって手まで振ってくれたよ。
『…………オマエほんとに素人か?
何で傭兵がそんなに手慣れてんだよ。』
「昔、自分らに色々教えてくれた傭兵の爺さんが居てな。
最初にこういう所に来たら、ちょっと金を握らせれば扱いが良くなるって言ってたんだよ。」
強化人間の実験台にされて、雑に廃棄されるところを皆で逃げた先に居たんだよ。
自分らを拾ってくれた爺さんがな。
『だったらオレは要らねえじゃん!
連れてこなくて良かっただろうが!』
「分かんないことあった時に、聞ける相手が居ないと困るだろ。
ほら、その辺見ながらマーカーつけてくれたところ行ってみようぜ。」
ぎゃーぎゃー言ってるモラドに貰ったマップを共有してやって。
ボロいのからめっちゃ改造されたのまで、色んなMT達がウロウロしてる闇市の中へ入っていく。
指定されたのか勝手に陣取ってるのか分からないが……
基本、それぞれ確保したスペースに売り物を適当に並べたような店?が多い。
引き千切ってきたようなパーツをそのまま売ってたり、BAWSのロゴが入ったコンテナに入れた中身をそのまま売ってたり、まぁ、色々な感じ。
割と人が多いなあと思いながら、ぶつからないように注意しつつ、モラドと歩く。
時々、勝手が分かって無さそうにウロウロしてるMTやACが居るが、あれは独立傭兵なのかな。
受け付けでお勧めされたスペースに行ってみると、確かにACの手足とか武器が売られてるようだった。
コアはもう売れたのか、元々無いのか分からないが、見た感じ、どれも大分傷んでるのが多い印象。
でも割と群がってるMTが多かったんで、ちょっと遠くから眺めるだけにして離れて終わった。
『あれ、くっつけても動くかどうか分かんねえぞ。アイツらよく買う気になるなあ。
動かねえ脚なんて的になるだけだろうに。』
「修理して使うつもりなのかねえ。
それでも新しいの買うより安く上がるのかも。」
『ウチから買えばいいのになあ、よっぽど上等なの売ってるぜ。』
「その上等なの買う金が無いんだろ。」
ガッションガッション、モラドとあーでもないこーでもないって話ながら、売られてるものを流し見しながら歩く。
ちょっと遠くに細いロケットを束ねたようなバカでかいブースタが置いてあるの見つけたので、ちょっと見に行ってみたり。
これってもしかして、シューティングスターが生まれる原因になったロケットブースタ作ってるヤツらかな。
スペースには肘から先に直接ショットガンみたいのがくっついてる腕とか、逆に関節が一杯ある腕とか変な物が一杯あった。
異様なラインナップで逆に目を引くのか、足を止めるMTはちょいちょい居るし、自分とモラドもそうだ。
眺めてると、この丸い筒にしか見えない頭?パーツはまだマシなのかなあって思えてくるから不思議だ。
流石に買うものは無いだろと思ってたんだけど。
モラドが片手持ちの、変形して伸びるチェーンソー?としか良いようのない武器を買ってたのに割とびっくりした。
自分で使うのかって聞いたら、1本はカーラ、1本はラミーへのお土産だってさ。
カーラは分かるけど、モラドってラミーと仲良かったんだ。
武器と言えば、長方形をノの逆に曲げたみたいな、剣っぽい武器も置いてあった。
下側に持ち手があったから多分、剣だと思う。
全体的に色々と回路がついてたから、刀身の先にレーザーでも張るブレードなのかな。
パルスブレードよりこういうのの方が、放棄されたACやMTの解体とかし易いのかなあ?
でも、変なものを買わないようにっていうオールマインドの声が頭の中で再生されて、買うまでは行かなかった。
後は槍みたいなのを撃ち出して、刺さったら繋がってるワイヤーで電気を流すスタンバリスタっていうのも面白そうだったな。
最近カタログでスタンバトンを眺めてたから、そう思ったのかもしれないけども。
バカでかい狙撃銃らしき物があったが、重量級ACでも持てる重さじゃないよって言われた。
威力はすごいが、タンクに積んでもマトモに動けなくなるらしい。
専用のFCSプログラムも入れないといけないし、それは他のFCSと競合するから、他の武器の照準がグチャグチャになるとも言ってた。
じゃあ誰がどうやって使う想定なんだって聞いたら、ふっと思いついたから作るんだけど?って心底不思議そうな声で返されたよ。
なんか、コーラル食べてると色んなものが聞こえたり、見えたりするんだってさ。
末期っぽいコーラル中毒者の発言に静かに怖くなってきたんで、スペースから離れることにしたよ。
でも、あの狙撃銃は解放戦線なら「壁」とかで固定砲台に使えるんじゃないか。
もう1件、マーカーつけてくれてたスペースでもACのパーツ売ってるらしいので、一応見に行ったら凄く混んでた。
遠巻きに見てるだけでも、置かれたコンテナの幾つかにはベイラムとかアーキバスのマークが入ってるのが分かる。
売り側のMTがスピーカーで企業共と解放戦線がやり合ってるところを掠め取ってやったとか、直接奪ってやったとか、元気に騒いでる。
確かに、ベイラムやアーキバスの製品が置いてあるし、完全に嘘じゃないんだろうけど。
自分としては、あの在庫が全部そうか?には割と疑問が。
企業の補給物資を強奪するのって、そんなに簡単にできるもんじゃない。
解放戦線だってやればやるだけ奪えるわけじゃなくて、成功するケースもあるってレベルだと思う。
それより戦力、練度も劣るだろうドーザーがヒョイヒョイと持っていけるわけないと思うんだよな。
勿論、口に出すつもりはないし、盛り上がってる場に水を差す気はないけどね。
『ありゃマトモなのは最初のだけだな。
後は適当に拾ったモンのガワを整えて、綺麗にしただけだ。
いつ拾ったパーツなのかも怪しいんじゃねえか。』
買うのに混じるわけじゃないし、邪魔にならないように歩き始めてから、モラドが嫌そうにさっきのスペースの感想を言ってきた。
「それじゃあ繋げても動かないってことか?」
『運が良ければ動くかもなあ、つっても動くだけだろうが。
最低限のクリーニングくらいはしてるだろうぜ。
中身がゴミの塊じゃあ、後で言い訳できねえからな。
まぁ、闇市で買うもんだ、物の目利きができねえ方が悪いっちゃ悪いがな。』
「それは……まぁ、そうか。」
マトモな動作保証が欲しければ正規ルートで正規品を買えって話だしな。
オールマインドが変な物を買わないようにって言うのは、そういうことだと思うし。
最後は発掘品を売ってるってスペースに行ってみる。
置いてあるのはどういう用途かも分からない部品とか、何から剥ぎ取ったのかも分からないパーツとかで……
これが発掘品と言われても、その、分からないわ。
店番のMTにこれ何?って聞くと さぁ?って言うし、物を売る気があるとは思えない雰囲気なんだけども。
『これは4脚MTの爪先か?うーん……』
分からな過ぎて、逆に変なスイッチ入ったモラドが鑑定し始めちゃったよ。
「えーと、取ってくるのに苦労した物とかある?
こんな大変だったんだ、みたいな感じの。」
物の鑑定とかできる気がしないので、モラドが唸ってる間は店番と話してるか。
『苦労かね。
どれも苦労といえば苦労してるがね。
そうだねえ……この辺なんか、漁りに行ったグループが1人だけしか帰ってこなかったやつだねえ。
その1人もみんなでかい歯車に飲み込まれたとかなんとか、頭おかしくなってたらしいんだねえ。』
「いや、聞きたいのは苦労した話であって、怖い話じゃないんだけど。」
でかい歯車ってなんだよ。
稼働してる施設でもあったのか?MT飲み込む歯車なんて……なんて……歯車?
歯車??
あっれー、頭の中に地下の坑道で追い掛けてきた悪夢の掘削機械、ヘリアンサスが浮かんできたぞ。
あれも歯車に見えると言えば見えるか?
ヘリアンサスが居るってことは、それは技研に関係する場所ってことで。
自分が見つけた場所は誰かが漁った痕跡は無かったから、これは違う場所の話ってことで。
「なぁ、その1人が持ってきたのって幾つある?
知り合いに怖い話好きな奴が居るから、お土産にするわ。」
『マジかね?
今ので買う気になるって頭大丈夫かね?
コーラル食べてるのかね?アレは程々にしないと駄目なんだがね。』
「失礼過ぎない!? 1ミリグラムも食ってねえよ。
それで、どれだよ。」
店番が寄り分けた物はやっぱり大体、何か分からないけども。
でも、前に地下施設で見たデータストレージみたいなのも幾つかあるな。
「じゃあ纏めて小さいコンテナにでも入れてくれ。
全部で幾らだろ。」
店番がひょいひょい詰めていく間に代金も聞いたが、全然払える額だったので良かった。
その間にちょっと世間話もしたが、発掘品は分かりやすい武器とかパーツとかの形してないと、ほぼ売れないんだとか。
普段はドーザー相手にやってるらしいから、そんなもんかーって納得。
あんまり売れないなら、怖い話とか変な場所の話とセットなら、個人的に連絡くれれば買うかもよってことにした。
向こうも買い取り手は多いに越したことはないから、店番のMTと連絡先は交換しておいた。
そういうのあったら連絡するかもってさ。
『あーーくそ分からねえ!
これくれよ、帰って考えるから!』
店番と喋ってたら、モラドが唐突にキレたわ。
鑑定できなかったのがよっぽど気に入らないのか、金属の塊にしか見えない何かを買うらしい。
店番は毎度ーって嬉しそうだわ。
その後は大体歩いたし、全体的なマップもこんだけできてれば良いだろうってことで帰ることにした。
来た時より人が増えてるみたいだし、離れたところでケンカしてるヤツらも居たし。
巻き込まれない間に帰ろうぜってことでね。
あ、奥の方には立入禁止で門番立ってるスペースがあったが。
多分、あれがこの闇市仕切ってるグループの居る所だろうなあ。
武器預けた受け付けに行くと、最初に居たMTのヤツらがまだ居たからスムーズに返して貰えた。
離れる時もまた来いよーって手を振ってたし最後まで愛想良かったなあ。
最初にCOAM握らせたのがよっぽど効いたのかな。
帰りは特にこれといってイベントやトラブルも無くて一安心だ。
迎えにきたRaDのホバー船に途中まで乗せてもらってたが、この後はBAWSの第一工廠に行くから途中で降ろさせて貰った。
モラドが両手に変なチェーンソー持って腕振ってるのを見ながら、ブースタ吹かして高めに飛んで、ホバー船から離れていく。
そういえばモラドって結局、自分よりも買い物してた気がするような。
カーラはあの闇市、全部吹き飛ばすのかな?
それとも奥の仕切ってる奴らのスペースだけ狙うのかな?
モラドに今度、結果だけは聞いてみるか。
工廠についたらコンテナ受け取って、ドックに帰れば今日の仕事は終わりだ。
お土産はオールマインドにというか。
前にオールマインド経由で探索依頼してくれた人が欲しがるかもって買ってみたけども。
どうなんだろうなあ?
要らないって言われたら、自分で中身見れないか頑張ってみるか。
帰ったらオールマインドに連絡して相談しないとな。
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闇市は他にも幻覚が見えてたんですが。
書いても書いても終わら無さそうなので、端折られました。
次はオールマインドの依頼を対応……のハズです。
コーラルの幻覚次第では何か別のことが起きるかもしれませんが。