何かを運ぶ傭兵稼業   作:大金剛

42 / 46

幻覚が薄れない間に書いてしまおうということで。
続きです。




第41話

 

 

 

アイツが飛んでいって10分ぐらい経ったが、特に何も起きてない。

 

あ、起きてないっていうのは、自分目線での話で、アイツは頑張ってるんだろうと思うんだが……

監視カメラの様子が慌ただしくなったりはしてないんで、まだバレてないんだろうな。

 

こう、あれだ。

自分が何もしてないのに待ってるだけ、待機してるだけっていうのも、落ち着かない。

 

かと言って、何ができるかっていうと、何も無いんだよなあ。

気になるからって余計なことして自分が見つかったりしたら目も当てられないし。

 

基地の近くに居るか、もう中に入ってたアイツが見つかったらヤバいし。

 

 

そんなわけで、ここに来るまでに市街地でまぁまぁ激しくやってたベイラムと解放戦線の戦闘はどうなったかなあ?って軽く調べてみる。

 

暇潰しってわけではなく、忍び込んだアイツがそっと帰ってくるにせよ、見つかって派手に逃げてくるにせよ。

帰り道が戦闘で燃え上がってましたは笑えないからさ。

 

駄目そうならルート変更を考えないとって話なわけだよ。

まあ、調べるって言っても、傭兵コミュの掲示板とか、企業・解放戦線からの依頼の更新とかを見るくらいだけども。

 

 

 

 

威勢の良いこと言ってた解放戦線側の傭兵は、どうやらまだ頑張ってるぽい。

 

レッドガン来なきゃ余裕だから、稼ぎたいヤツは来いよって話に応じたヤツが居るらしいな。

誰かまでは書いてないけど、ランカーってマジか?

 

本当だったら解放戦線にはありがたい話なんだろうなあ。

猿って呼ばれてる傭兵はランカーじゃないみたいだが……でも、あんまり派手にやってるとフラグが回収されて、レッドガン来るんじゃないの。

 

止めろよ、帰りにそんな戦闘の近く通りたくないんだからさ。

 

 

次に、公示されてる依頼を確認してみるとする。

 

そうするとやっぱり、グリッド135付近の市街地区って指定でベイラムと解放戦線で傭兵募集が出てるな。

ずっと出っぱなしの依頼だが、どっちも、相手を攻撃してこいって内容は変わりないものの、報酬がちょっと更新されて、値上がりしてる。

 

解放戦線は安い自覚はあるのか、解放戦線は貢献度で報酬に色を付けるって書いてあるな。

具体的な金額は書いてないけど……まあ、参加しようって考えてるわけじゃないし、それはいいや。

 

 

あ、解放戦線の傭兵募集で思い出したけど。

 

少し前に受付窓口のラコードから「ノーザーク」ってどういう傭兵なの?って聞かれたっけなあ。

 

確か、えーと。

雇う傭兵候補のリストに挙がったんだけど、現場の一部から猛烈な反対が出てきたのが話題になったんだと。

 

それが話半分だったとしても……

その、あんまりな内容だったから、上層部も声掛けは見送りしたものの、実際のところどうなのか?って気になったからって。

 

猛烈な反対意見っていうのを出してるのは輸送部隊の一部と、ちょっと前に解放戦線に入ったMTパイロットのネミ・ネラって人だそうで。

 

誰だよって思ってもうちょっと聞いてみたらアレだ。

前にトラックの護衛した時に襲ってきた、ドーザーの生き残りだった。

 

土壇場でノーザークに裏切られて泣いてたオッサンが、どうやらネミ・ネラって名前だったっぽい。

あの後、トラックの護衛してたMT部隊のリーダーが渡してた連絡先を頼って、解放戦線に入ってたみたいでさ。

 

元ドーザーってマイナスポイントはあるものの、MTで戦闘経験もあるし、数機の小さい部隊なら指揮もできるし。

なんかめっちゃ真面目に働いてるから評価が上向きになってきたところで、ノーザークの名前を聞いて発狂したみたいに駄目を連呼して大騒ぎしたそうな。

 

それに加えて、あの場にいた輸送トラックと護衛のMTの人達も「あれは無理、ありえない」って意見書を何回も提出したと。

 

 

ラコードが提出された音声ログを聞いても、これ何を言ってるの?って顔になったから……

もう傭兵に聞いてみようって思ったとのことで、うん。

 

気持ちはよーく分かるよ。

 

だからまぁ、出くわした……いや、出くわしてはないのか、姿は見てないから。

その時の状況とか、傭兵コミュでの評価とか、借金取りがAC使ってでも取り立てようとしてるとか、分かる範囲で教えてやった。

 

解放戦線がアレ取り込んだら、債権者から借金代わりに返済しろって言われかねない気もするし。

 

 

自分の丁寧な説明もあって、最後には解放戦線の雇用リストからは削除というか、ブラックリストに入れるように進言するってラコードが言ってたよ。

 

 

 

金を返さないどころか、家に入れたら「私からの信用の証」とか言って金を持って逃げそうな人間のクズのことは置いといて。

 

情報纏めてみると、帰る頃は下手すると戦闘が派手になってそうだから、グリッド135の辺りは避けた方が良さそうーって感じだな。

当分、揉めそうな雰囲気があるみたいだわ。

 

あ、地図を見ながら考えてたが、そこそこ時間も経ったし、撤収準備の再確認をしておくか。

渡されたメモをもう一回開いて……

 

 

「まず、撤収が決まった段階で、監視カメラに指定のコードを送信する。」

 

 

監視カメラはこのコードを受け取ると、中の機器とか回路が焼き切れて自壊するようになってるらしい。

 

勿体ない気がするんだけど、こういう仕事に使った道具は使い回すんじゃなくて、使い捨てが基本なんだってさ。

後になってどこでどう足がつくか分からないから、慣れてる泥棒は必要なものはその都度、その時に用意するんだそうな。

 

 

「迷彩に使ったシートはできれば回収して、後で燃やす。

 できないなら、この場から離れる時にミサイル撃ち込んで、他の痕跡ごと燃やす、と。

 

 コンテナは可能な限り回収すること。

 できないなら、コンテナについてる背負うジョイント部分だけは外すか、完全に破壊すること。

 

 箱背負ったACなんかルビコンで、いや、他の星系探してもお前しかいねえ  余計なお世話だ。」

 

 

もしかしたら居るかもしれないじゃないか、どっかに。

 

死んだ傭兵爺さんも言ってたぞ、お前の思いつくことは他の人間も思いつくって。

 

画期的とか、オレって天才って思うアイデアは過去に誰か試してて、主流じゃないのは欠点があるからだって……

あれ、じゃあACで運び屋やってる自分は欠点が?

 

……なんか具合が悪くなりそうだから、思い出すの止めようっと。

 

 

《暗号化された通信で 3-1-2-2 を受信しました。》

 

 

おっと。

えーと対応表で当て嵌めて…… 基地が活性化した-目的は達成-個別に撤収-合流地点は2番 か、見つかったわけじゃないのかな。

 

って考えてる場合じゃないな。

 

それじゃあ、荷物纏めて逃げよう。

 

 

「COM、撤収するから、コンテナ背負うまで周囲の音とかには注意してくれ。」

 

 

《承知いたしました。》

 

 

あれ?

いや、考えてる場合じゃない、さっさとコンテナに詰めてオサラバだ。

 

 

 

 

基地から飛び出してきた解放戦線のMTやらに追われるってこともなく、合流地点に指定されてたポイントまで戻ってこれた。

 

グリッド135にも近い崩れた構造物の上なんで、なんなら市街地の方も見える場所だ。

アイツはもう到着してて、こっちを見ると片手を上げて挨拶してきたよ。

 

 

『よぉ、ちゃんと戻ってきたな。』

「解放戦線も来なかったし、普通に帰ってきただけだぞ。

 何があったのか教えてくれよ。」

『オレがミスったわけじゃねえぞ。アレのせいだよ、アレ。ほら、見てみろって。』

 

 

言われるまま、アイツのACが指差す方向を見てみる。

ベイラムと解放戦線がやりあってる市街地の方向なんだけど。

 

 

「めちゃくちゃ燃えてるな。」

『基地の通信、盗み聞きしたんだけどよ。レッドガンが突っ込んで来たらしいぜ。』

 

 

喋りながら、視線というかACのメインカメラは市街地に固定されてる。

 

そこかしこで爆発起きてるけど、何あれ、怖いわ。

あのまま続いたら、市街地が市街地じゃなくなっちゃうんじゃないか。

 

 

『それで大慌てになったアイツらが増援要請飛ばしまくった結果、あの基地も叩き起こされたってわけよ。』

「いやぁ、酷いなあれは。

 レッドガンがACだけじゃなくて、MTと連携プレイするっていうのは本当なんだなあ。」

『やべーよなあ、物量で殴るベイラムそのままって感じだわ。

 こりゃ解放戦線は無理だろ、最近じゃ装備がマシになったとか聞いてるけど、勢いで完全に負けてるぜ。』

 

 

確かに。

 

上から見てると解放戦線側は大分、押されてるっぽいなあ。

というか、貴重な戦闘記録になりそうだから、録画しておこう。

 

できる限り拡大して、と。

 

 

『このまま帰ってもいいけど、もう暫く見てるか。

 野次馬じゃなくて、帰りにどっちかの増援だの別部隊だのに会いたくねえし。』

「なるほど……あ、肝心の泥棒は上手くいったのか?結局さ。」

『んなもん当然だろうが、解放戦線の後ろのマップデータが幾つかと、周辺に展開してる部隊のデータもあるぜ。

 コーラルが掘れるっつー井戸も入ってるかもしれねえし……こりゃアーキバスも大喜びよ。』

 

 

にやにや笑ってるのが目に浮かぶような声と一緒に、データがこっちにも送られてきた。

 

 

『全部じゃねーぞ、マップの一部だけだ。

 ベイラムに売るなら、オレがアーキバスから金貰った後にしろよ。』

「それで、アーキバスとベイラムがぶつかったら稼ぎ場が増えるってことか。」

『分かってんじゃねえか。

 揉め事が多い方がオレらの仕事が増えるからなぁ。』

 

 

ごもっともで。

 

 

「あ、そうだ。

 ベイラムじゃなくてもいいのか、売り先は。」

『あぁん?

 他にどこがあんだ……ああ、お前はRaDだっけ?とも仲良いんだっけ。

 好きにしろよ、ドーザーとアーキバスじゃあ、微妙な気もするが……それならそれで、情報流すやり方は幾らでもあるしな。』

 

 

いやあ、自分はRaDに売るとは全然、一言も言ってないけどね。

 

 

「ありがとよ。

 じゃあ、もう暫く見物して―――   うわ。」

『おいおい―――マジか。』

 

 

かなり遠くから飛んでくるヘリがスクリーンに……アイツにも見えたらしい。

どっちかのヘリだと思ってたが、接近してくるのが速すぎるのと、大きさがおかしい。

 

 

《警告 AH12 HC HELICOPTER 惑星封鎖機構大型武装ヘリです。》

 

 

COMに言われる前に分かったよ、あんなでかいヘリは1つしか知らない。

 

 

『どっちも死んだな、ありゃ……』

 

 

呆れたような声が通信越しに聞こえるが、自分も同感だ。

 

遠くから見てると、ヘリから発射されるミサイルがしっかり見えて、その数に顔が引き攣る。

 

6連装ミサイルランチャー?が2……いや3つか。

それに4連ロケットが2つかな、バカみたいに地上にばら撒きながら、ガトリングを撃ちまくってるよ、あのヘリ。

 

ベイラムも解放戦線も関係なく、手当たり次第って感じだ。

突然、乱入してきた化物ヘリに両方とも大慌てで後退し始めたが……必死に組織立って後退しようとするベイラムのが狙われてるか?

 

 

『今、通信を盗み聞きしてるんだけどよ。

 解放戦線は雇った傭兵が2人、片方はカークってのが蜂の巣にされて吹っ飛んだらしいぜ。

 いや、コイツはその前にレッドガンにやられてた?のか。

 

 そのレッドガンもハークラーってのが大分食らい込んで、大慌てだ。』

 

 

うへー、この短時間でめちゃくちゃだなあ。

 

 

「ハークラーってレッドガンのG7じゃないか、前にデータで見たぞ。」

『へえー、レッドガンって13番まであんだっけか。

 真ん中くれーってことは、相当やるACだろうに……っと、あのヘリがこっちに来るとは思えねえが、帰るか。』

 

 

アイツのACが向きを変えて、歩き出したのに合わせて、こっちも移動を始める。

 

 

「ああ、惑星封鎖機構のロジックというか、基準って分からないしな。

 自分もドックに帰るよ、報酬とかは後で振り込んでくれよな。」

『任せろ。額は期待していいぜ。』

 

 

アーキバスに頑張って高く売りつけてくれ。

 

 

 

 

 

そんな感じで分かれた後は、何事もなくドックに帰り着いた。

 

途中でやったのはコンテナの中のシートとか、道具を壊して廃棄したくらいだな。

 

 

ACを降りてリビングに入って、PDAを片手にオールマインドに機体のカラーリングを戻す手配をお願いするのと……

ついでに、惑星封鎖機構のヘリが戦闘してる映像記録とか、解放戦線の後方領域のマップデータって買い取ってくれたりするか、メールしてみた。

 

 

返信っていうか、通信来るの早い早い、いつもより早くないか。

 

 

『お帰りなさい、独立傭兵 tr-227 Transporter。

 ご連絡いただいたデータについてですが、買い取りいたします。

 

 ですが、解放戦線の領域のデータについては、意図を確認させていただけますでしょうか。』

「特に深い意味はないんだけど……

 オールマインドってACのパーツとか武器とか諸々、手配して輸送してくれてるから。

 色んな所にいる独立傭兵に送る時に、ルート考えるのの役に立つかなあって。」

『解放戦線の所有するコーラル採掘ポイント。

 通称、井戸に繋がる情報については、企業が相当な報酬を支払う可能性が高いですが?』

 

 

あー。

そこが気になる感じかあ。

 

 

「それはそうだし、今回話を持ってきたヤツは……ソレ目当てなんだけども。

 企業から似たような話を捻じ込まれても困るからさ、自分主導の仕事じゃないし、これ。

 

 あと、アーキバスとベイラムが勢い良くなって、解放戦線を追い詰めて、ボロボロに負けさせるのも困るんだ。

 企業や解放戦線は今の感じで、できるだけ長く続けてくれと思ってるから。」

 

 

最終的にどこかが……企業のどっちかが勝つにしても。

それはできるだけ先で、良い感じに稼がせて欲しいんだよな、傭兵としては。

 

 

『現在の各所で戦闘が繰り返される状況が、独立傭兵にとって好ましいという話でしょうか。』

「大体あってる。

 こんな自分が言うのもアレだが、傭兵は戦闘が仕事だから……場所と規模はバリエーション多い方がみんな嬉しいよ。

 

 あとは、オールマインドの役に立つ方が自分は嬉しいからさ。」

『―――承知しました。

 

 買い取り価格は評価後にお知らせいたします。

 その他につきましても、手配後の予定はメールでご連絡いたします。

 

 貴方のさらなる活躍に期待するとともに―――オールマインドの技術進歩にもご期待ください。』

 

 

 

 

 

 

それでさ。

この仕事の後に知ったんだけどさ。

 

 

グリッド135の近くの市街地でさ、惑星封鎖機構のあの化物ヘリが撃墜されたらしい。

 

 

ほんとに?

 

 

 

 

 

 





コーラルの幻覚で見た部分で、書けそうな部分を書いてしまおうと思ってキーボードをだだだっと。

ここから先も、生コーラルを飲めば、いや、飲まなくても全然見えてきてるんですが、多少お時間をいただければと思います。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。