アズールパイセン可愛すぎません??????3章後半スクショの手が止まりませんでした。
魔法が使えないNRC生徒なんて、前代未聞だった。
「こんにちは、あなたが噂の監督生さんですね?」
だからほんの少し、アズールは興味を持った。
不審そうに振り返ったその人は、周囲に誰もいない、つまり確実に自分に対して掛けられた声だと判断してから頷いた。
控えめな身長と華奢な体格。吹けば飛びそうな見た目は、しかし表情と視線の冷たさからして凛として逞しい。
女性と云われても納得できそうな感じだけれど、間違いなく男性なその人は、慎重に口を開いた。
「噂は知りませんが、監督生は私です」
「初めまして、僕は2年のアズール・アーシェングロット。オクタヴィネル寮寮長を務めています。あなたとは……そうですね、一応同職ということになりますね」
アズールがいつも通りにこやかな笑顔を浮かべて挨拶をすると、その人は思いのほか丁寧に挨拶を返してきた。
「初めまして。ですが私たちの寮はグリムと私だけですから、寮長などと立派なものではありませんよ。なのであなたと同職というのは厳密には間違いです」
言葉は至極丁寧なのに、その表情は変わらない。にこりともせずそう云うと、早々にこの場から立ち去ろうと踵を返していた。
なるほど、やはり噂通りの人らしい。
思った通りの反応に、思わずアズールは小さく笑った。
物腰も言葉遣いも丁寧なのに、その丁寧さの中に明らかな壁を作って誰とも距離を取っている、異世界の住人。
勉強こそ最初は酷いものだったらしいけれど、NRC生にあるまじき真面目さで授業を受け、わからないところはちゃんと質問し、暇さえあれば図書館に入り浸って勉強漬け。
すると、何もかも初めての学問だったはずなのに、気付けば成績は真ん中より上まで来ているというから驚きだ。この分では年内にはトップに躍り出るだろうと教員内でも話題らしい。
何故そんなことをアズールが知っているのかと云えばまぁ、企業秘密だ。
魔法が使えないことと、試験を受けずに特例入学となったことでいささかやっかまれて嫌がらせをされているようだが、それらを流水の如くあっさり流してしまい、今では余程の暇人か馬鹿しかちょっかいもかけないそうだ。何をしても無反応なのでいじめ甲斐がない、と判断されたのだろう。
まぁ、ある程度は比較的彼に対して好意的な周囲が気にかけているし、教員一同も気を付けているというのも大きいかもしれないが。
一部の生徒がなんとか打ち解けようとしても、冷たい氷のように突っぱねてずっと一人きりでいるその人に、深海の商人であるアズールがどんな用事があるのか。
自己紹介の通り、二人がまともに話すのはこれが初めてだ。入学式の時に顔は合わせていても、慌ただしかったので会話という会話はしていない。
その後も何だかんだとトラブル続きでそちらに監督生は巻き込まれており、他寮のトラブルになど関わりたくないアズールは遠巻きにしていたので接点もなかった。金にならないトラブルは御免なのだ。
だからいきなり話しかけたアズールに監督生が不審感を抱くのは当然といえば当然のこと。
なので、警戒する表情については触れずに、なるべく穏やかな口調で丁寧に云った。
「少し相談があるのですが、お時間いただけませんか?」
「……相談、ですか」
明らかに怪訝そうに更に眉間に皺を寄せる。あまり表情の変わらない人だと評判だけれど、なかなかどうしてわかりやすい。
笑ってしまいそうになるのをなんとか堪え、口よりもよっぽど雄弁な視線に促され、アズールは続けた。
「実は、あなたに僕が経営するモストロ・ラウンジでアルバイトをお願いしたいと思っているんです」
「……アルバイト?」
「ええ、間抜けな……いえ、少々やんちゃな生徒が数人、授業をサボったおかげでしばらくの間放課後は補習になってしまいましてね。人手不足なんです」
「……そうですか、お気の毒に。しかし私も勉強しなくてはならないので、お力にはなれません」
「お給料は弾みますよ?」
「…………。」
云い捨てて再び踵を返していたその人がピタリと足を止めたのを見、勝った、とアズールは思った。
監督生が、理事長の温情だけでNRCにいるわけではないのは知っている。
元の世界とやらに帰るためにも拠点となる場所は必要で、あらゆる国から生徒が集まるこの学園は情報収集するのに願ってもない場所だ。
学園長とどんなやり取りをしたのかは知らないが、それなりの交渉をしたのは想像に難くない。
住む場所と制服と食料、最低限の生活費は学園から支給されているらしいけれど、それも本当に最低限だろう。
おそらく一人だけならば受け取った金額でうまくやりくりできても、グリムという一蓮托生の半身がいては思うようにいかない。
端的に云って監督生は金欠だと、アズールは見抜いていた。
そしてそれは正しかったらしい。あの反応が何よりの証拠だ。我知らず、口の端が持ち上がってしまう。
ここで畳みかけてしまおうかと思ったのだけれど、このタイミングで予鈴が鳴った。時間切れだ。
「詳しい話はまた後程。お話を聞いてくださるのなら、今日の夜9時、モストロ・ラウンジにお越し頂けますか?」
焦らない、急かさない。
あくまで下手に出る形での提案をする。
思案するように視線を泳がせた監督生は、ややあって渋々頷いた。言葉にだけは、ちょっとした抵抗を残して。
「考えて、おきます」
「それは重畳。では」
今話すべきことはもうない。予鈴はとっくに鳴っているのだから、自分も次の教室に向かわなければ。
アズールは最後に一つ笑顔を残し、急いで音楽室へ向かった。優等生は遅刻などしないから。
◇◆◇◆
約束の時間丁度に姿を現した監督生に、アズールはにっこりと最高級の笑みを浮かべた。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
「……お邪魔、します」
ここへ来てからずっと勉強漬けだった監督生は、当然ながらモストロ・ラウンジに来たのも初めてだ。というかそもそもオクタヴィネルに入ったのすら今日が初めて。
海の中に建つオクタヴィネルは、元の世界の水族館ともまた違う不思議な美しさと魅力があった。ハーツラビュルの愛らしさとも、サバナクローのワイルドさとも違う美しさは、監督生を感動させるのに十分だった。
思わず見惚れて立ち止まってしまい、ハッとしてアズールのあとに続く。
通されたのはラウンジの奥の部屋で、VIPという看板がかかっていた。
部屋の調度品はラウンジとは一線を画す高価そうなものばかりで、これが学校の一部なのが信じられないくらいだ。銀行の執務室、あるいはマフィアのアジトと云われた方が納得できる。
促されるままにソファに腰掛けると、ものすごく柔らかい。なんなら寮のいろいろギリギリなベッドよりも、ここで眠った方がいい夢が見られそうだ。
流れるように目の前に出された紅茶も、香り高い。ニルギリだろうか。ほのかな甘い香りが懐かしい。が、まったく同じものでもないだろう。何せここは異世界なのだ。この世界にインドはない。
ここはラウンジとのことなので紅茶の代金を尋ねると、これはサービスです、と微笑まれた。
全力で胡散臭い。
放課後、魔法薬学の質問がてら念のため担任であるクルーウェルにこの訪問のことを相談すると、安易に契約するな、口約束もよく考えてから、贈り物なんてもらったら疑ってかかれと口を酸っぱくして云われた。
なるほど、そういうタイプの相手なのかと心得た監督生は不用意に紅茶に手をつけることはしなかったけれど、サービスですと云われた以上はサービスなのだろう。
しかも、今回は監督生が自分から訪れたわけではなく、ラウンジ支配人直々の呼び出しに応じただけだ。
これであとから紅茶の代金がどうのなどと云われてもそれは立派な詐欺だから、監督生は諦めて紅茶を頂くことにする。何故って、良い紅茶を放っておくのはもったいないし。
こだわり抜いたであろう素晴らしい紅茶に内心感動していると、さて、とアズールが切り出した。
「アルバイトの件ですが」
「その前に、アーシェングロット先輩。質問があります」
行儀が悪いことは承知で、監督生は声を上げた。案の定、アズールの動きが止まる。表情は笑顔のままだけれど、心なしか眉間に皺が寄ったような気がした。
が、ここで引き下がるわけにもいかない。
言葉を遮られたアズールは少々面白くないが、監督生はこの世界に不慣れである、ということを予め知っていたので何とか耐える。
そして、
「どうぞ?」
と大人な対応をすると、軽く頭を下げた監督生は続けた。こういうところは礼儀正しいようだ。
「何故私に声をかけたんでしょう。あなたはここの2年生なのだし、知り合いはたくさんいる。私でなくてもよかったはずです。それなのに、周囲に人がいない時を狙って声をかけたのは、何故です?」
これは、アズールが悪どい商人であることは横に置いた監督生の純粋な疑問だった。
噂によると彼はあらゆる手段で多くの生徒の弱みを握っているそうだし、わざわざお願いなんてしなくとも強制的に労働させる手駒はいくらでもいるのではないか。
なのに、特に愛想がいいわけでもなく、違う学年の、謎だらけの異邦人に声をかける意味がわからない。
何か裏がある、と思うのも無理はない話だった。
しかしアズールは、ああそんなこと、と軽く笑って云った。
「勘です」
「は?」
「なんとなく、あなたは良い人材だと思いまして。ついでにご友人もおらず部活にも入っていないようですし、時間はあるでしょう?」
暗に、暇でしょう、と云われている。
確かに友人はいないし部活に入っていないのも本当だけれど、だからといって暇なわけではない。
この世界に生まれ落ちていれば小さな子供でも知ってるような一般常識もわからない監督生は、勉強はもちろん社会常識から学ぶ必要があるのだ。
だから放課後は図書室やら教師に個別に質問に行ったりと忙しい。
断じて暇人ではない。
基本的に嫌味や罵声には無反応を決め込んでいる監督生だが、さすがに暇人扱いは反論しようかと口を開こうとして、先に口を開いたアズールによってそれは阻まれた。タイミングがよすぎてわざとなんじゃないかと思う。
「僕は人手が欲しい。あなたは時間に余裕があってしかも――失礼ながら、生活が苦しい。ほら、僕たち、協力し合えると思いませんか?」
にっこり。にーっこり。
素直な人間であれば、ああ、なんて優しいのだろう。まるで海の魔女のような深い慈悲だと感涙できたかもしれない。
しかし残念なことにこの監督生はまったく素直ではない上に、クルーウェルからの助言がある。
学園長も相当胡散臭いと思っていたけれど、アズールはさらにその上を行く。
もはや監督生は渋面を隠そうともせず、相変わらず笑顔満点なアズールをじっとりと睨んだ。
胡散臭い。
怪しい。
嘘くさい。
しかし業腹なことに、監督生が金欠なのは事実だった。
漸く勉強も成績が下の下から脱出出来て、ある程度追い付いてきたところだし、実はそろそろアルバイトを探そうかと思っていた。
最低限の生活は保障されているとはいえ、やはり今後何があるかわからないことを考えるとお金はあるに越したことはない。
それに、自分だけならまだしも、いくら言葉を扱えてもグリムは動物だ。今まで奔放に生きていたようだし、急に節制生活をしろと云っても無駄なのはわかっている。彼にアルバイトなんて無理だし、つまり自分が働くしかない、と監督生は割り切っていた。
そう考えると、契約内容さえしっかり確認すればアズールの提案は監督生にとって悪い話ではない。
「ね、いかがです? 賄いもつきますよ」
「…………。」
的確に欲しいものを挙げるこの男、やはり食えない。
いろんなものを天秤にかけつつ、監督生は考える。
そうして、ニコニコ笑顔を浮かべたままこちらを見てくるアズールの視線を苦々しく思いながら紅茶を飲み切る頃に、漸く監督生は腹を括った。催促されない方がずっと催促されている気分になるとは、初めて知った。
短く息を吐き出して云う。
「ひとつ、契約に加えてほしいことがあります」
「おや、なんでしょう?」
散々待たせた結果、はい、より先に要求を加えるとは。
なかなかどうして肝が据わっている、とアズールは感心しながら続きを促した。要求を飲むかどうかは、要求を聞いてから。契約を交わすのならば常識だ。
すると監督生は、少し躊躇いがちに口を開いた。
「アーシェングロット先輩が卒業するまで、毎日か週一か月一か、グリム用のツナ缶を支給してほしいんです」
もちろん、私の給料の一部として。
……はて。
これはおかしなことを云う、と珍しくアズールは面食らった。
もっと時給を上げろだとか、簡単な仕事しか回すなだとか、そういうことを云われたら返す言葉は用意していたけれど、これはあまりに予想外すぎて一瞬言葉に詰まった。
「……渡した給料で買えばいいのでは?」
法外ではないが、足元を見た激安でもない額の給料を提示している。そのあたり、アズールは律儀なのだ。
当たり前の疑問を口にすれば、監督生は。
「それでは、私が途中でいなくなったらグリムが飢えてしまいますから」
――ああ、そうか。
ここで初めてアズールは、監督生がこの世界の人間でないことを思い知った。
知識としては知っていたことだったけれど、改めて思い知らされた、というところだろう。
いきなりこの世界に召喚されたから、いつどんなタイミングで強制送還されるかわからない。
ちゃんと帰る方法が見つかるかもわからないし、ある日突然帰されるかもしれない。
そうなれば自分はいいけれど、グリムはこの世界に取り残されることになるだろう。
半身がいなくなったのだから学園から出て行け、とはさすがに云われないだろうが、アルバイトなんて出来ないグリムが日々の食事に困るであろうことは想像に難くない。
だからせめて、伝手があるうちに使えるものは使っておこうというのが監督生の考えなのだ。
定期的に食料が手に入る手配をしておけば、しばらくは飢え死にすることはないだろう、と。
自分も大変だろうに、この監督生は自分のことよりも半身を気遣っている。それも、自分がいなくなってからのことまでも。
お人好しにもほどがある、とアズールは内心呆れた。
「向こう三年分のツナ缶代になるまでは給料はいりません。天引きしてください」
「い、いや、さすがにそれは」
「私は」
未来への投資とはいえ、三年分のツナ缶代となれば給料はひと月やふた月では賄えない。いくらなんでもそんなに長い間無給同然で働かせるのはアズールの本意ではなかった。
一応winwinの関係であっても、アルバイト自体はアズールからお願いしている形なのだ。
真の商人とは、互いに利益をもたらしてこそ。
馬鹿やクズや間抜けや悪党相手ならばどんな悪どいことも平気でやるが、アズールは根っからの商人だった。
せめてもう少し条件を緩めるべきでは、例えばしばらくは全額とは云わず半額をツナ缶積立金にするとか、と提案しようとすると、ぽつり、と零すように監督生が云う。
「私のことは、いいんです。でもグリムは、私が巻き込んでしまっているから」
消え入りそうな、声だった。
ならば諦めて馬車馬のように僕の手足となって働け、と。
アズールは云うことも出来た。
むしろ、普段だったらよしきた弱味だ付け入るチャンスだと云わんばかりにそう契約書を叩きつけただろう。
けれど。
「――わかりました。いいでしょう」
そうは、しなかった。
出来たけれど。
しなかった。
あえて、しなかった。
出来なかった、とは云わない。
てっきりアズールのことを極悪守銭奴商人だと思っていた監督生は、この要求がこうもあっさり通るとは思っていなかったので、自分から云ったことなのに面食らって固まった。
もっとごねられるか、普通に突っぱねられると思っていたのだ。
そうしたら教師の誰かに銀行役をやってもらい、自分がいなくなってからのグリムの金銭の管理をお願いするつもりだった。
が、思いのほかすんなりと了承されてホッとする。
なんだ、案外良い人なのかもしれない。
噂だけで人を判断するのは愚行だな、と改めて自分に云い聞かせた。
そうして一度居住まいを正し。
「ありがとうございます」
心からの感謝の意を込めて、監督生は頭を下げた。
アズールはそんな監督生を、妙にむずがゆい気持ちで見つめていた。
◇◆◇◆
差し出された契約書を、クルーウェルの助言通りに隅々まで読み込む。速読は得意だ。びっちり小さな文字で書き連なったそれらを読み、おかしな文章やあいまいな表現、契約書自体に細工などがないことを確認し、署名をした。少し悩んでから、自分の国の言葉で。
不思議なことにこの世界、共通語は英語に似たものだった。何故曖昧なのかと云うと、日常会話程度の英語しかわからないはずの監督生には文字が読め、書くことも出来、当然会話も成り立つくせに、完全に英語とは云いきれない違和感があった。間違っても日本語ではない。が、滞りなくコミュニケーションがとれている。
これは異世界ボーナスなのだろうかと思ったけれど、深く考えたら負けな気がして、言語で悩まなくてよかった、くらいに思うことにしたのだ。代わりに、古代文字関連は元の世界で云うアラビア語のように難解なので一から勉強するしかなかった。
つまり、この難解な契約書の内容を監督生はしっかり確認できる、その上で署名したわけだ。
この世界ではおおよそ目にすることのなかったであろう署名に少々首を傾げたアズールは、監督生の『私の世界の言葉です』という説明に納得したように頷いた。
「ありがとうございます。これで契約は完了です。シフトについてはご希望があれば伺いますよ」
「学業に支障が出ない程度であれば特にありません」
「承知しました。では来週の月曜日、まずは仕事を覚えて頂きたいので授業が終わり次第ラウンジへ。僕かジェイドかフロイド、誰でもいいので声をかけてください」
「わかりました」
「では、こちらをどうぞ」
アズールはその言葉と共にマジカルペンを一振りした。
そうして監督生の前に現れたのは、一つの紙袋。
手を、と促されるまま受け取り、封の開いたままだった上部から中を覗き込んだ監督生は、大きく目を見開いた。純粋に驚いた。
「私、まだ働いていません」
「でも、話を聞いてくれたでしょう?」
紙袋の中身はツナ缶だった。それも、いつも買っている一番安いものではなく、購買部にもたまにしか入荷しない高級ツナ缶。それが、10缶も。
確かにアルバイトの面接を受けただけで粗品を渡す職場もあるだろうが、これはあまりにも高額すぎる。
今後ヤバイ仕事でも回されるのか、契約書は確認したつもりだったけれど見落としがあっただろうか、と戦々恐々する監督生に、アズールは『可哀想で可愛い後輩に、海の魔女のような慈悲を施しただけですよ』と笑うだけだ。
またもや胡散臭さがすごいが、受け取らないなら廃棄するだけだとアズールは云う。
金欠学生として、そもそも人としてそんなもったいないことはさせられない。きっと冗談ではなく、監督生が固辞すればアズールはすぐさまこのツナ缶を廃棄処分するだろう。
悩んだ結果、監督生はこの高級ツナ缶をありがたくいただくことにした。
「……アーシェングロット先輩が良い人なのか悪い人なのか、わかりません」
「ええっ、良い人に決まってるじゃないですかっ!」
「良い人は、自分のことを良い人だなんて云わないんですよ……ふふ」
思わず笑ってしまい、慌てて監督生は表情を引き締める。
危ない、油断した。
どうか気付かれてませんようにと祈りつつアズールを見ると。
「おや、いい表情です。僕たちは接客業ですからね、その笑顔をお忘れなく」
ものすごく綺麗な笑顔を返され、こういう人だ、と息を吐く。
そうしていろんなことを諦めて、監督生は接客用の渾身の営業スマイルを浮かべた。
「承知しました、支配人」
監督生
女。でも『周囲が男と認識する魔法』をかけられているので、アズールも監督生のことは男だと思っている
驚くほど無愛想。なまじ顔が整っているので冷たい印象しか与えられない。顔が整っている自覚はない
関わる人たち全員が美形なので、この世界の人は美形じゃないといけない法律があるんだろうか、と割と真剣に悩んでいる
友達はいない。エースデュースはやたら絡んでくるけど関わらないでほしいと思っているしそう伝えてるのにめげないので、最近は諦めて放っておいている。心を許せるのはグリムと教師(除:学園長)だけ
だいたい今はゲーム本編2章が終わったくらいの時間軸
アズール
監督生を誘った言葉に嘘はない。無愛想だけどぶっきらぼうでもがさつでもないし、身の振りは丁寧だから普通に給仕として良さそうと思った。ら、想像以上にいい仕事をするので卒業後は是非モストロ・ラウンジで雇いたい所存
馬鹿やクズや間抜けや悪党そうならこき使ってやろうかと思っていたけれど、案外普通の礼儀正しい子だったので普通に後輩として可愛がってやろう、と上から目線で思っているところ