ニュージェネレーションな出来事がいっぺんに押し寄せてくる世界のお話 作:ムジョー555
1
高層ビルが立ち並ぶ、とある街。
ビルの屋上から街を見下ろす一人の青年がいた。
「さぁ、混沌の時代を始めようか……」
半分黒、半分白の、ブラウスの様な服を着用し、無表情ながらもどこか不気味な雰囲気を漂わせた青年は、そう呟いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
平和な街の空気を切り裂くように咆哮が響く。
―古代怪獣ゴメス―
両手からは鋭い爪、口元からは長い牙、後頭部からは前方へ向かって弧を描くように曲がった一本角が伸び、背中には大きな甲羅状の頑丈な皮膚を備えた怪物が雄叫びを上げる。
ゴメスが歩みを進める度に、建物が砕け、人々が逃げ惑う。
そんな光景を目の当たりにしながら、水色のシャツと白ネクタイの制服に身を包んだ男「シブカワ」は、逃げ惑う人々の避難誘導に当たる。
『セブンガー、着陸します。ご注意ください!』
「ロボットが着陸します! 逃げて!」
アナウンスを耳にし、シブカワは声を上げる。
―セブンガー―
TPU日本支部の対怪獣部隊ストレイジが誇る対怪獣用ロボット第1号
どこか愛嬌のある顔をした巨大ロボットが、空から着陸する。
『着陸地点の民間人、避難完了!』
「こちらハルキ。セブンガー、現着!」
一足先に現場へ到着していたストレイジの隊員「ナツカワハルキ」は、セブンガーの着陸を確認し、基地へ連絡を入れる。
「これより、攻撃を開始する」
セブンガーのコクピットに座すのは、ストレイジ隊員「ナカシマヨウコ」
ゴメスに向かってセブンガーが突撃する。
―TPU日本支部 統合基地―
ストレイジ隊長のヘビクラショウタ、副隊長のタチバナサユリ、そしてTPU科学班の面々が、ゴメスとセブンガーの闘いの様子をモニターしていた。
「目標は20メートル級の古代怪獣ゴメス。新生代第3期頃より生息が確認されている、原始哺乳類だって~! すっげぇ~!!」
「過去に確認された同一種と比較すると小型の部類。恐らくはスパークドールズじゃなくて、迷い出てきた野生の個体……」
ハイテンションで騒ぐ女性研究員「オオタユカ」と、その脇で冷静に分析する「オオゾラダイチ」
その他の面々 ―イチジョウジトモヤ、ミカヅキマモル、タカダルイ、ヒジリアキト― も、思い思いの所感を述べていく。
「うむ。あれならセブンガーで充分に対処可能だろう」
そう語るのは、研究員たちの中でもひと際異彩を放つ「ファントン星人グルマン」
TPU科学班に協力する宇宙人である。
「念のため確認。現在セブンガーのバッテリーは、3分ものが3本で実用行動時間は9分間。余裕はあると思うけど、なるべく手短にお引き取り願いなさい」
「了解」
副隊長であるサユリの指示を受け、ヨウコが強く返事をする。
すると、ゴメスは何かを察したようにセブンガーに背を向け、逃走を始める。
「待ちなさぁい!」
「ヨウコ先輩、北西に大きな公園があるんで、そこに誘導してください! 位置情報、送ります!」
「了解」
ヨウコに情報を送ったハルキ。
ふと視線を前に向けると、誰かのペットらしき犬が走り回っているのに気が付く。
「えっ! 駄目駄目! ストップ、ストップ!」
ハルキはとっさに犬を抱き上げる。
「こんなとこにいちゃだめだよ」
セブンガーから逃げるゴメスは、そんなハルキのそばに近づいてくる。
「わぁ、まずい!」
ハルキは犬を抱いたまま、そばの建物の陰に隠れる。
「……危なかったなぁ」
そこにセブンガーが駆けつける。
……足元のハルキに気づかぬまま。
「えっ!? ちょっと、なんでこんなとこにいんのよぉ!?」
セブンガーは渾身のパンチを繰り出す。
大振りの拳にゴメスは倒れ、その動きを止める。
しかし、セブンガーもハルキを避けようとし、バランスを崩して転倒し、派手に建物を砕く。
『ゴメス、活動を停止』
「ハ~ル~キ~!!」
「押忍…オス……」
ヨウコの怒りの声に、ハルキは弱々しく応えるしかできなかった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「何を考えてるの!!」
ストレイジ基地にサユリの怒号が響き、思わずハルキは俯く。
そこに「まぁまぁまぁ」と身振り手振りしながら割って入るヘビクラ。
「おい、ハルキ。『何に代えても命を守りたい』っていうその心意気は、俺、好きだよ。大好きだ。でもさ、せっかくだから命だけじゃなくて、規律の方も守ってくれないと」
「……じゃ、あの犬を放っといたらよかったんですか?」
どこか納得していなそうなハルキに対し、ヘビクラは優しく微笑みながら言葉を続ける。
「万が一、セブンガーがお前を踏んじまったらどうする? ヨウコは一生、消えないトラウマを背負う。自分のせいで誰かが命を堕とすってのは後味が悪いもんだぞ?」
「押忍……」
「ま、いいや! じゃ、速やかに瓦礫の撤去任務、行って来い」
「押忍!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ハルキはセブンガーに乗り、先のゴメス戦の跡の瓦礫撤去にあたっていた。
そのとき、突如として警告音が鳴り響く。
「衛星軌道上から高エネルギー反応……これって、ハルキ! 『何か』来るよ!?」
「何かって……?」
ユカからの通信が聞こえたのとほぼ同時。
空からまるで隕石の如く、朧気な闇の球体が、ハルキの眼の前に舞い降りた。
徐々に晴れた闇の中から姿を現したのは……
「……怪獣?」
……その頃、衛星軌道上には、ひとつの円盤が浮かんでいた。
宇宙犯罪組織ヴィラン・ギルドの宇宙商人「マーキンド星人」
虫のような外見をした異星人が、円盤の中で声を上げる。
「では、スパークドールズオークションを始めましょう。本日の出品は『双頭怪獣パンドン』かつて、あの『ウルトラセブン』と激闘を繰り広げた目玉商品です! それでは全宇宙の皆様、入札スタート~!」
一方の地球上。
ハルキの乗るセブンガーがパンドンと向かい合う。
「なんだ、こいつ……隊長、どうしますか?」
「科学班、解析結果は?」
ヘビクラが問うと、科学班の面々は各々の解析結果と見解を述べていく。
「双頭怪獣パンドンだぁ。すっげぇ~……」
「過去にも異星人の侵略兵器として使われた実績が……」
「あの闇はウルトラ・フレアと同質のエネルギーで……」
「エネルギー体は急速に体積が膨張。これもあの闇のエネルギーの影響か……?」
「衛星軌道上から落ちてきたのが気になりますね……」
「ん~~、分かった分かった」
矢継ぎ早に飛び交う意見を、堪らずヘビクラが静止する。
「要は、宇宙人が、あの闇のエネルギーで覚醒させたスパークドールズを送り込んできたってとこか。ハルキ、被害が拡大する前に迎撃しろ」
「押忍!」
パンドンの無数の棘が生えた真っ赤な身体に、セブンガーは何度も拳を叩きつける。
しかし、パンドンはびくともせず、お返しとばかりに殴りつける。
「こいつ、しぶといな。だったら……」
セブンガーは大きく振りかぶり……
「チェストぉー!!」
渾身の一撃を、鳥の頭を左右にくっつけたような奇妙な頭部に叩きつける。
これには流石のパンドンも堪らずに、思わず後退する。
「よぅし、もう一押し!」
セブンガーが追撃のために距離を詰めると、一転。
パンドンの身体が妖しく輝き始める。
「!? サユリ、GUTS-SELECTに応援要請! ヨウコも直ちに現場へ急行!!」
ヘビクラはモニターに映るパンドンの姿を見るや否や叫ぶ。
そして、次の瞬間。
パンドンの口から放たれた火炎が巨大な炎の渦となり、セブンガーを包んだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
住民の避難が完了した、ひと気のない街中。
一人の青年が、セブンガーとパンドンの闘いを地上から見つめていた。
「いくぞ、タイガ!」
黒いスーツに身を包んだ青年は、懐からあるものを取り出す。
ひとつは、玩具売り場に並んでいてもおかしくないようなヒーローを象った『人形』
もうひとつは、どこか眩い銀河の煌めきを感じさせるデバイス……
「光の勇者、タイガ!」
青年はそう叫ぶと、人形の脚をデバイスに認識させるように押し当てる。
「バディ──・ゴーッ!!」
『ウルトライブ! ウルトラマンタイガ!!』
巨大な光が、空から地上に降り注ぐ。
その光はセブンガーを包む炎の渦を一瞬で掻き消した。
そして、光の柱の中から姿を現したのは……
「巨人!?」
セブンガーのコクピットから、驚愕の光景を目の当たりにしたハルキが呟く。
「あれって、降星町で確認された50m級のヒューマノイドタイプのエイリアン!? すっげぇ~!!」
ユカは思わず叫び出す。
「ウルトラマンタイガ……銀河に平和をもたらす、光の巨人。まさか……本当にこの地球に来ていたとは!」
ファントン星人グルマンも強い口調で語る。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
パンドンはタイガに向かって無数の火炎弾を放つ。
「スワローバレット!」
一方、タイガは光線を連射し、その火炎弾を撃ち落とす。
タイガとパンドン、巨体同士の戦いが続く中、タイガの胸のカラータイマーが点滅を始める。
「現場では、怪獣と巨人が戦っています!」
「見てるよ。危険そうだから、手を出すな」
ハルキからの通信に、ヘビクラはそう答える。
「でも、周辺に被害が出ています。やれるだけ、やらしてください!」
「おい!……って言って、やめるお前じゃないか。十二分に気をつけろ!」
「押忍!」
「押忍じゃなくて了解」
「押忍! いや、了解!」
ハルキがセブンガーを操り、パンドンに立ち向かう。
「どう見ても、こっちが敵だよなぁ!」
パンドンの迎撃の拳で、セブンガーが吹っ飛ばされ、建物に叩きつけられる。
タイガは倒れ込むセブンガーを抱え、抱き起こすと、パンドンに一撃を見舞う。
「あんた誰なんだよ!?……いや、頭で考えてもしょうがねぇ! あんた、味方なんだよな!? なら『せぇの』で行くぞ! せぇ〜の、チェストぉ!!」
セブンガーとタイガの同時パンチで、パンドンが大きく後ずさりする。
「ストリウムブラスタ──っ!!」
タイガの必殺光線が、体制の崩れたパンドンに炸裂。
パンドンは大爆発し、最期を遂げたのだった。
その光景を見届けたタイガは空へ飛び立つ。
「ウルトラマンタイガ……あれ? 隊長、どこに行かれるんですか?」
「ん、ちょっとトイレ」
サユリにそう答えると、ヘビクラはその場を立ち去った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
セブンガーから降りたハルキが、地上の瓦礫の山の中で立ち上がる。
「何だったんだ、あの巨人?」
「ハルキぃ! ハルキぃ!」
「ヨウコ先輩!」
「ハルキ! 大丈夫!?」
「押忍……あの巨人のおかげで」
「悪運強いなぁ……本部、ハルキ、無事でした。GUTS-SELECTに合流してスパークドールズの捜索に当たります」
そんなハルキたちの様子を、物陰から誰かが密かに窺っていた。
その人物の手には、パンドンのスパークドールズが握られていた……
【解説】セブンガー
ストレイジが運用する対怪獣用ロボット「特空機」1号
2006年に宇宙から落下してきた怪獣「グルジオライデン」を分析したデータを元に開発された。
ニュージェネレーションな科学者や宇宙人の方々による改良と情報提供の結果、ウルトラマンZ本編の個体よりもスペックは高い。
たぶんタイガが現れなくても、GUTS-SELECTの支援があればパンドンになんとか勝てていたかもしれない。