ニュージェネレーションな出来事がいっぺんに押し寄せてくる世界のお話 作:ムジョー555
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その場に居合わせた皆の脳裏に浮かぶビジョン。
それは、ノスフェルの体内、蠢く肉塊。
とても人間とは思えないその塊だか、そこからは確かに、何か人間めいた意思を感じる。
そして、ビジョンはさらに移り変わる。
2人の男女が幸せそうに食卓を囲む。
そんな光景が、皆の脳裏に浮かぶ。
「愛する夫を失った彼女は悲しみにくれていた」
トレギアの言葉とともに、またビジョンは移り変わる。
降りしきる雨の中、土砂崩れで倒壊した家屋の前で這いつくばり、涙を流す女性の姿。
「君が望むなら、私はそれを与えよう。どうする……?」
青年はそう語りかけながら、彼女に手を差し伸べた。
彼女は黙って、青年の差し伸べる手を掴んだ。
その瞬間、彼女の背後の土砂が消え去り、崩れ去っていた家屋も立ち上がった。
家屋は廃墟と呼ぶべき無惨な姿だったが、彼女の目には新居同然に映っていた。
そして、廃墟を包みこんで守るように立ち上がった異形。
それがノスフェルだった。
ノスフェルは廃墟の中に倒れる男の亡骸に己の闇を浴びせた。
次の瞬間、男は動き出した。
―ビーストヒューマン―
スペースビーストの細胞によって異形となり再生した人間の亡骸
変わり果てた男性の姿でさえも、悲しみの果てにいた彼女の目には、生前と変わらぬ愛しい人の姿に映っていた。
そして、ビジョンは再び切り替わる。
暖かく柔らかな日差しが注ぎ込む食卓に、2人の男女は、微笑みながら向かい合う。
テーブルの上には、2人分のカレーライスと、今朝生けたばかりの花が花瓶に1輪。
しかし、そのビジョンがガラスが割れるように崩れていく。
居間と思しき荒れ果てた部屋の中央。
朽ち果てたテーブルを挟み、向かい合うのは女性と異形。
テーブルの上の花瓶に生けられた花は無惨に枯れ果て、皿に盛られている『カレーのかかったおがくずの山』を異形が貪り食っていた。
「……どうして」
女性は再び悲しみの涙を流すと、部屋の窓からこちらを覗くノスフェルに向かって語りかけた。
「お願い……こんなことなら……私も……」
ノスフェルはその願いを聞き入れるかのように、食卓を囲む2人に闇を浴びせた。
闇に包まれた2人は脈動する肉塊へと形を変えると、ノスフェルの舌に巻き取られ、体内へと消えていった。
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「酷い……酷すぎる……」
アスナは率直にそう口にする。
突入した廃墟に感じた違和感の正体は、直視も憚られる、あまりにも酷い現実。
何故こんなにも非道なことが出来るのか?
アスナは、ただ呟くことしか出来なかった。
「さぁ、ウルトラマン。どうする? これでも君は、哀れな彼らを討ち滅ぼすことが出来るかな?」
『貴様ぁぁぁ!!』
トレギアの問いに、タイガは怒りを露わにした。
『ヒロユキ! やるぞ、トレギアも、あの怪獣も……俺たちで倒すんだ!!』
「タイガ……」
怒りを覚えるタイガの気持ちを、ヒロユキはよく分かった。
しかし、同時に疑念も感じた。
このまま怒りに身を任せ、闘っていいものかと。
そんなとき、ヒロユキには囁くような女性の声が聞こえた気がした。
『……お願い』
ヒロユキが耳をすますと、それは確かに聞こえた。
……眼の前の怪獣の中から。
『お願い……あの人との思い出が、これ以上壊れる前に……終わりにして……』
その声を聞いたヒロユキの胸に強い衝撃が走る。
確かに肉体は滅びたのかもしれないが、彼女の意思はまだ、あの怪獣の中に残っている。
それを、自らの手で打ち砕くことが出来るのか?
いや、打ち砕いてしまっていいのか……?
タイガはよろめき、胸のカラータイマーが点滅を始める。
「どうしたら……」
『立て! ヒロユキ!!』
タイガとヒロユキの意思にズレが出始める。
それは、ウルトラマンとしての闘いにも勿論影響を与える。
ヒロユキの動揺が、そのまま反映されたかのように、カラータイマーは鳴動し、タイガの全身から力が抜けていく。
『ヒロユキ!!』
タイガの叫びも虚しく、とうとう膝をつく。
そこに迫るノスフェルの鉤爪。
鋭い爪が、タイガの身体を切り裂く……
……ことはなかった。
小さな、それでいて強い、ひとつの赤い光。
それがノスフェルの鉤爪を受け止めた。
『……お嬢さん。その願い、確かに聞き入れた!』
赤い光は、タイガのカラータイマーへと飛び込む。
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―インナースペース―
ヒロユキとタイガがひとつになったときに生まれる空間
そこに、新たなひとつの光が飛び込んできた。
その光が徐々に『スパークドールズ』の形を露わにしていく。
『タイタス!? なんでここに!?』
―ウルトラマンタイタス―
惑星U40出身の紅き光の巨人
突如現れたスパークドールズを見たタイガが驚きの声を上げる。
『話はあとだ。青年、ヒロユキといったか。私の力を使いなさい!』
「でも、彼女の想いにどうやって応えたら……」
『私に考えがある。信じろ!』
『ヒロユキ、タイタスなら大丈夫だ。信じて進め!!』
タイタスとタイガの熱い言葉に押され、ヒロユキは覚悟を決めた。
「分かった……任せたぞ、タイタス!」
そう言うと、ヒロユキは眼の前に浮かぶ、タイタスのスパークドールズを力強く掴む。
「力の賢者、タイタス!」
ヒロユキは力いっぱい叫び、タイタスのスパークドールズをデバイスに読み込む。
「バディ──・ゴーッ!!」
『ウルトライブ! ウルトラマンタイタス!!』
巨大な光がタイガを包み込み、その姿を変えていく。
「……新しい、ウルトラマン」
トモヤは、思わずそう呟いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「タイタスか。お久しぶり……賢者の拳とやらで私を砕いてみるか?」
突然現れたタイタスにもさほど驚く素振りを見せず、トレギアはひょうひょうと語りかける。
「今は、貴様の相手をしている暇はない……」
そう呟き、タイタスはノスフェルへと向かっていく。
歩み寄ってくるタイタスに対し、ノスフェルはその鋭い鉤爪を振るう。
しかし、タイタスの鍛え上げられた肉体、鋼のウルトラマッスルには届かない。
タイタスは一切臆することなく、ノスフェルとの間合いをゼロ距離まで詰め寄る。
「プラニウム……」
ノスフェルに密着した状態で、タイタスは緑色のエネルギー光球を生成する。
そして……
「バスタァァァ!!」
右手のパンチで光球を力の限り、ノスフェルへと押し込む。
その衝撃は凄まじく、ノスフェルの肉体は光に包まれ、跡形もなく消え去ってしまった。
「ハ、ハハハ!!」
その光景を見て、笑い出すトレギア。
「大したものだ、ウルトラマン。哀れな犠牲者たちの、命も護れず、魂も救えず、全てを打ち砕いた!」
トレギアは高笑いを続ける。
「それでよくも正義を語れたものだ。救世主を気取れたものだ。所詮、お前たちなど、グヘェッ!?」
語りの途中、思わずうめき声を上げるトレギア。
その顎には、タイタスの拳が突き刺さり、脳天を揺らしていた。
「……暇が出来た。相手をしてやろう」
トレギアは事態を飲み込めない。
タイタスは強靭な肉体と溢れるパワーの肉弾戦こそ得意だが、スピードは特筆するべきものではない。
だが、今の一撃を、トレギアは全く感知することが出来なかった。
「ただし、今日の私は機嫌が悪い。手加減出来ると思うなよ……トレギア!!」
次の瞬間、タイタスの両拳が、目にも止まらぬ速度で打ち出される。
スピードを優先したからといって、決して威力が落ちているわけではない。
そのひとつひとつが、全てを砕く『賢者の拳』
「ウルトラァァァァァァァァ!!」
凄まじいラッシュが、トレギアを襲う。
トレギアの全身に余すことなく、賢者の拳が叩き込まれる。
「……フ。今日はこの辺にしておいてあげるよ」
トレギアはフラつきながらも、そう呟くと、闇の中に消えていった。
「逃げたか……」
見届けたタイタスは、視線をノスフェルを撃破した地点に移す。
ノスフェルが崩れ去った跡、そこには小さな2つの光が浮かんでいた。
「あれは……?」
ヒロユキが疑問の声を上げ、光に目を凝らす。
すると、その光はとある人物たちの姿を見せ始めた。
それは、ノスフェルの犠牲となった、あの夫妻。
―賢者の拳は全てを砕く―
この言葉に嘘はない。
しかし、無条件に何もかもを砕くわけではない。
何を砕き、何を護るか。
力の使い方を決めるのも、力を振るう者の責務。
タイタスの賢者の拳は、確かに砕いた。
スペースビーストの悪しき細胞に侵された、彼らの肉体を。
しかし、その身に宿る魂までは、決して砕かなかった。
結果、異生獣の呪縛から解き放たれた魂が、安らかな想いを抱き、光となって解き放たれた。
『……ありがとう。ウルトラマン』
天に昇り、消えていく光から、そんな声が聞こえた気がした。
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闘いが終わり、変身を解いて一人山中を歩くヒロユキ。
そこに声をかける者がいた。
「お久しぶりです。ヒロユキさん」
「トモヤくん、久しぶり。さっきはありがとう」
ヒロユキとトモヤは、互いに顔を見合わせると、静かに優しい表情を浮かべた。
「やっぱり、あのタイガはヒロユキさんだったんですね。次に出てきたウルトラマン……確か、タイタスでしたか? あれもヒロユキさんなんですか?」
「うん、そうだよ」
トモヤの問いかけにヒロユキが答えると、彼の背後に2つのスパークドールズが浮かぶ。
『久しぶりだな、トモヤ!』
『タイガたちが世話になったようだな。私からも礼を言おう』
タイガ、タイタスが、トモヤに語りかける。
「トライスクワッド……でしたよね。皆さんにお見せしたいものがあります」
そう言うと、トモヤはガンパッドに『あるもの』を映し出す。
『『これは!?』』
タイガとタイタスが驚きの声を上げる。
画面に映し出されたのは、ひとつのスパークドールズ……
―ウルトラマンフーマ―
惑星O-50出身の蒼き光の巨人
『風の覇者』の異名を持つ、トライスクワッド最後の一人。
それを象った人形だった。