朱藍は夜に舞う   作:クロノヒメ

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初めまして投稿主です。
暇で書き始めたら熱が入っちゃってぇ…。ほかの小説の進捗なんてゼロでぇ… 。
まあ、楽しんでください。書きたいように書きます。



第一話 私の方が胸が大きい

 

 

 

 

 

その夏の夜は、よく覚えている。

時刻は夕方6時。太陽が半分ほど沈んでおり、世界に夜が満ちる時。

 

私は自室でノートにペンを走らせ、大学の課題をしていたのだった。

見て、調べて、書き写して。

考えて、分からなくて、それでも考える。

 

あぁ、暑いな。

 

首筋にたらり、一筋の汗が流れ落ちる。

 

このまま放置して寝たら翌朝が大変なことになるので、扇風機を付けるのを忘れずに。

お風呂にはもう入ってしまったのだから、ボディシートでお茶を濁して。

本当はエアコンがあればいいのだが、そんな素晴らしき近代文明機械なんて田舎の私の部屋にはあるわけない。

 

 

げーこげこ、げーこげーこ。

 

 

お気に入りの曲を流し、明日までの課題を行っている最中。

どうも、カエルさんはひと足早くに夜の大合唱をしているようだった。

 

げーこげこげこ、げここげこ。

 

かえるの歌に混じってぽつぽつと言う音が窓の外から聞こえてくる。

あぁ、雨だ。

蒸し暑く、うだるような暑さに扇風機の風を中から強に変える。

まだ梅雨と言うには早い季節なのに、この連日は雨の音ばかり聞いている気がする。

 

朝起きても雨、出かけようと思ったら雨、寝る時なんかは雨とカエルの大合唱。もう嫌になる。

雨、雨。雨雨雨アメアメアメあめあめあめ。

雨は嫌いじゃないが如何せん濡れるということ自体不快だ。

 

別段、海やプールで思いっきり濡れるのはまだいいが、傘を刺してもどこかしら濡れている雨に心底、どうしようもないからこそ腹が立つ。ぷんぷんなのだ。

 

ただでさえ明日は学校があるというのに、こうも嫌なことだらけだとイライラが止まらない。

 

 

「あーーー!!!雨えぐーい!!!」

 

 

とヤケクソ気味に布団にダイブする。

 

そのままゴロゴロと暴れているとピローんと気の抜けた音がした。

 

む、どうやら大学の友達からのLINEらしい。

 

スマホの表示には『藍華:助けてあかねもーん!』との一文が。

 

 

うーむ、誰があかねもんだ。赤色のネコ型ロボットなんて…いたような気もしなくも無いが。

 

少し、悩む。

というのもこの友人、中々カロリー消費が高いのだ。

 

勉強で疲れた頭にはキツイだろう!よし、ここはのび太くんをリスペクトしてちょっと寝ま

 

『〜♪』

 

その瞬間少し古い、戦隊ものの主題歌の音楽が耳に入り込んでくる。

 

えー、手詰まりです。私の負け!いや負けてはないか。

ここで無視して良いが後々面倒になるし、実際雨にうんざりしていたのも事実。

事実は小説よりも奇なりよろしくどうぞ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ははあ。そりゃ飛んだ目にあったもんだねぇー」

 

 

なんかすっごい怪物にあった(要約)と言う話を聞かされた人間は、他人が見れば思わず笑ってしまえるほど、とっても間抜けな顔をしているんだろうなと私は思ってしまった。

 

 

『む、なんだよその言い草は。こっちだって未だに信じられないんだからな!……あーでも確かに俺もそんな話聞かされたらそんな反応するわ!だはは!』

 

 

随分と呑気なもんだ、と私ははぁーとため息をつきながら呆れたのであった。

この友人、言葉では大袈裟なものの何処か冷静というくせに常に一線置いているような感じがするのだ。

 

いや、確かにどんな人間だって踏み込んではいけない、また踏み込ませたくない一線なんてあるだろう。

 

でも、こいつは常にその線に沿っているというか。

わざとはぐらかしているような?なんと言えば良いのだろう。

まあともかく、変なやつなのだ。

 

だからだろうか。

今日みたいな焦っている姿は中々…いや、とても珍しい。

 

 

『いや大変だったんだよ朱音!全身びちゃ濡れでせっかくの服も転んじゃって泥だらけでさ。これ結構気に入ってたのに…。うわーん!』

 

 

「はは、それは随分愉快なことになってんねぇ」

 

 

『笑い事じゃないっつーの!お陰様でこちとらお母様は般若になってさ!散々だったんだからネ!

…いや俺悪くないと思うんだけどなー。服泥だらけとはいえあんな怒ることある?』

 

 

「まあ藍華は悪くは無いんじゃない?

それにしても怪物ねぇ、一体全体どういったものなのさ」

 

 

『ふっふっふ、どうでも良さそうな感じでも気になっているじゃあないか。しょうがないな、ここは俺がじっくりじっくり、教えてあげ「手短にねー」…はーい』

 

 

などと言うも、実のところ普通に気になっていたのだ。

大学生になってもこ、心は子供のまま、という訳では無いがまあそれ並に好奇心はあるのだ。

 

 

 

もっとも、その好奇心というのは猫をも殺すらしいが、私達がそれに気付くのはもっと後の話らしい。

 

 

 

とと、これを見てる人に私が誰なのか記して置こう。

瑞街 朱音(みずまち あかね)、年齢20歳ピッチピチの大学生。

趣味は音楽を聴くことでJ-POPからボカロ、果てはクラシックまでなどなど。

…クラシックに関しては有名なものしか知らないが、そこはまあご愛嬌というやつで。

 

他はー、そうだな、ちょっと視力に自信があるくらいかな?

 

スリーサイズはもちろん秘密、好きな人とかは特にはいません。

実は結構モテたりしたり。

何はともあれ、こうしてひと夏の物語が始まるのです。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

翌朝、電車の中にて。

 

今日は月曜日。みんなちょっと暗い顔をしている気がする。

やはり月曜日は悪、そう結論を出す私の横で藍華が唸っていた。

 

 

「グルル…。ワォーン!ワウォン!」

 

 

「辞めなさいはしたない!公共の場では静かにしろぉ!」

 

なんだコイツ。とうとう可笑しくなってしまったのだろうか。

がー、と落ち着いた藍色の髪をぐしゃぐしゃにしながら喋り出す。

 

 

「…は!ここはどこ、私は一体全体どこの超絶美少女ちゃんなんだぁぁぁ!?」

 

 

「ここは電車、お前はバカ」

 

 

「うーん辛辣ゥ!ベリーベリー冷たい!冷たいにも程があるよネ!冬かな?」

 

 

お互い顔を見て、はぁあとため息を出す。

 

 

「んで、どうしたの?そんなに思い詰めてさ」

 

 

藍華はうーんと首を捻り、真剣な眼差しで口を開けた。

 

 

「なんだかなあ。俺は結局、何を見たんだろネ。

ぬーん、わかんないなあ」

 

 

「まあ言いたいことは分かるよ。気になっちゃうよねぇ」

 

 

「だしょ?気になって夜しか眠れない…。

そして、その謎を追って俺たちはアマゾンの奥地へと向かったのであった…」

 

 

「ひとりで行け。あれ、というか昨日何処でそいつにあったの?」

 

 

「んー?…あぁ、仙風町のあのでかい川の堤防だよ。

ちょっと野暮用でさ」

 

 

「あぁあの。まるで堤防の意味をなしていない堤防か。

……ん?おい一昨日、昨日は何にもやることないから一日中家で寝るって言ってたよなおい。どういうことだ?」

 

 

しかも、仙風町(せんふうちょう)に行くには藍華の家から1時間くらいかかるはず。

休日だからまあ分からなくないが、あんな何も無いところに行く用事なんてそうそう考えられない。

 

 

「あーーー…。まあ、ちょっとね」

 

 

目を逸らし、さも訳ありんと言ったような様である。

 

 

「む、おいなんだよそれは。急に歯切れが悪くなるじゃないか。なんだぁ?いかがわしいことでもしてたのかぁ!?おいおい!」

 

 

言って、気付く。

いつもは爽やかな笑顔を振りまくこいつだが、今はやけに思い詰めたというか、切羽詰まった印象を受ける。

そんな余程のことがあったのだろうか。

 

 

なんだか今日は、いつもの藍華とは別人のようだった。

 

 

「ま、聞かないでおいてあげるよ。朱音様に感謝するんだな」

 

 

「あはは、そうしてくれると助かるよ」

 

 

矢ヶ崎 藍華(やがさき あいか)。同じ大学、同じクラスで私の大切な友人だ。

 

女にしては自身を俺と言い、男勝りな1面が目に映える。

背は私よりデカいが、私の方が胸は大きい。

 

胸は大きいのだ、ふふん。

 

1人でいるかと思えばグループの輪の中にさりげなく居るし、ぼへーと気を抜いているかと思えば他の人に気を使っている様が見えるし。

 

最初の時私は真面目だったのでしっかり対応していたのだが、藍華と過ごしていくに「あれ、こいつ適当でいいな」と思い雑な対応をしている。

 

近くにいるようで少し遠い、壁は無いが距離はある。

一線を置いているようでしっかり他人の距離を詰めてくる、そんな人間。

 

前にウナギみたいだなと言ったら、「エ!ありがとう!うなぎ好きなんだよネ!」と返されるあたり、変人ではあるんだろうなあと。

 

そういえば、今では親友とも思えるほどのおかしい女との馴れ初めについてだが───。

 

 

「あ」

 

 

と、思い出したかのような声を上げる風華。

 

「そういえば朱音ってさ、今日の放課後空いてる?」

 

 

…嫌な予感。

ちょーっとめんどくさそうな、絶妙に嫌そうな。

 

 

「……な、ナンデショウカ。ワタシトテモトッテモイソガシイノデス」

 

 

「ふふ、何その声。嘘ついてるのモロバレだよっ。

いやさ、朱音ってサークル入ってないでしょ?だから俺の入ってるサークルに一緒にどうかな〜って」

 

 

「サークルぅ?あんたサークルなんて入ってたんだ」

 

 

そう言うと、先程とは打って変わってイキイキしながら話し出す。

 

 

「そう!まあ俺も最近入ったばっかなんだけどさ!

結構面白いとこなんだよね、まあ俺と、先輩と後輩の3人だけどさ!どう?入ってみない?」

 

 

「入ってみないって…。そう簡単に入れないでしょ?

というか、そのサークルってなんのサークルよ」

 

 

電車が止まる、世界は止まる。

ブシュー、と気の抜けた炭酸のような音を出しながら車両の扉は開く。

 

バッ、と風華は椅子を立ち、走りながらドアを出る。

追いかけるように私も早足について行く。

 

「おい、藍華聞いてんのかぁ!?なんだってんだ!」

 

運動部に入っていない私に、駅の階段飛ばしながら走るのは無理だ、息が、きつい。

 

階段の半分、両膝に手を着く私。

階段の終点、振り向きながら、藍華が背後にいる私に微笑みながら、呟いた。

 

 

「そりゃあ、怪奇研究サークルだよ!」

 

 

…………。

 

いや、

 

 

「は?」

 

 

なんですかそれは?




如何でしたか?
楽しんで貰えたのなら幸いです。
それではまた、夜に会いましょう。
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