転生の特典に「あなたが欲しい」と選んだ女神様が激かわ過ぎる件   作:うどんそば

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ギルドカード

 木と石の町。そんな感じだ。

 周囲を見渡すと、コンクリートで出来たビルも、住宅も、何もなかった。あるのは、舗装されていない道と、木と石がそのまま使われた住宅だけだ。

 

「……」

 

 横をちらっと見る。少女は、非常に微妙な顔をしながら、こちらをじとっとした目で見てきた。

 

「……すいませんって」

 

「いや、別に怒ってるわけじゃないし、問題もないんですが……ううん、なんとも言えないですね……どうしようかな、みたいな……」

 

 少女は困った顔で顎に手を当て考え始めた。あーでもないこーでもないと言いながら。

 

「……あの、俺、まだ貴方のことよくわかってないんですけど」

 

「え!? わかってなくて私を連れてきたんですか!?」

 

 酷く驚いた様子を見せる少女。

 ……まあ、なんとなくは分かっているけれども、本人から聞くのとじゃあ、正確さが違うだろう。後々になって勘違いだったら困るし。

 

「では、自己紹介を。私は女神をやっております、アストラと申します。様々な方々を転生にお導きする役目を持っておりました」

 

 少女……いや、女神様は言い終えた後一礼すると、にっこり微笑んだ。そうして楽しそうにぴょんっと飛びながら一歩近づくと、

 

「私は君のことをよく知っているし、これでお互いのことを知っている状況になったわけです。つまり、これからは正真正銘仲間ということですね!」

 

 と言う。まさか女神様とはとても思えないほど天真爛漫な様子だ。……なんだか、中学の時の部活の後輩を思い出すな。

 

「それにしても、どうしましょうか。女神様」

 

「ああ、そんなにかしこまらなくていいですよ? リョウ君のことはずっと見守っていましたので、実際どんな方なのかは知っていますから」

 

 なかなかフレンドリーなことだ。女神様というくらいだから、こういった事には厳しいんじゃないかと思っていたのだが、そうでもないのかもしれない。

 どちらにせよ、俺からすればそれは好都合。そちらのほうが気楽で、それでいて身近にも感じるのだから。さっきも女神様が言っていたが、これから俺たちは仲間なのだ。変に遠慮していたくない。

 

「……そうか。わかった。じゃあ遠慮なくいかせてもらうけど。じゃあどうする? ここがどこかもわからん」

 

「ふふふ……それでいいんです。皆さん私のことを女神女神だって持ち上げて、対等な方なんて全然いなかったんです」

 

「それは……」

 

「まあ、いいんです。私は一応神という存在ですし、そう簡単に対等に接することは出来ないのなんて、よくわかっているので。でも、なんだか楽しくって」

 

 ころころと笑った女神様は、気を取り直したように言う。

 

「……それで、どうするかでしたね。私はこの世界に関して特に詳しいわけではないのですが……ギルドという組織があり、冒険者、商人、農民が分けられているはずです。もちろん所属しなくてもいいとは思いますが、互助組織的な一面でなく、身分証明や、依頼を受けることによる収入にも繋がりそうなので……」

 

「入っておいたほうがいい、か……ちなみに、女神様はどうするのがいいと思う? 冒険者だか、商人だか、農民だか。どれもしたことがないからどうすればいいか分からないんだけど」

 

 俺はといえば、現代日本からやってきたわけで。それにまだ高校生だったし。冒険者はもちろん、商売も農民も体験したことはない。いや、なんか農民は大変らしいとは聞いているけれども。もちろん商人だって同じことだろう。簡単に稼げるものはそう多くないこと位は知っている。

 

「ううん、そうですね……とりあえず冒険者がいいとは思います。なるにあたっての条件も特にないですし、カードを発行してもらえば、身分証明になります。その、このままだと多分、衛兵さんに捕まったりするかもしれないので」

 

「なるほど……今の俺等は身分証明書を持っていない怪しい子どもたちってことか。じゃあ、そのギルドとやらに行ってみるか?」

 

「そうですね! 行ってみましょう!」

 

 冒険者ギルドに行くと決めた瞬間、少しテンションを高くする女神様。

 ……もしかして、女神様が行ってみたかっただけとか無いよな? なんかそんな気がしてきたんだが? まあ、身分証明書が発行されるならいいけれども。

 

「ささ、こっちですよ!」

 

 女神様は俺の手をとると、飛ばされてきた路地からすっと抜けて、土でできた道の上を歩いた。そうして俺はその道の上で少し驚いた。

 

「……思ったより歩きやすいな」

 

「まあそうでしょうね。舗装されていないとはいえ、色々な人が通るでしょうし、踏み慣らされて固くなっています。それに、あっちを見てください。馬車もいますし、でこぼこだと危ないでしょう? ですから余計にでしょうね」

 

 そんなもんか。中世くらいと願ったからには、まともな道もないものだと覚悟していたから、少し拍子抜けだ。

 道の周りには、木骨造の家が沢山建っている。こういうテーマパークに来たみたいだ。ただ、その扉から出てくる人々も皆、中世らしい服を着ているのだから、この世界が本当に存在しているのだという証拠でもある。

 

 よく見れば、大通り沿いだからか、店らしきものも多い。宿屋、肉屋、野菜屋、材木屋。それに、雑貨屋。それだけではない。日本では見ることがなかった、店先に武器が置かれている店や、防具を道で売っている商人なんかもいる。

 通行する人々も、良く見れば普通の町人らしい格好をしている人たち以外に、物々しい武器を持った人や、見たこと無い程の大男、頑強そうな鎧に体を覆った人がチラホラ出てきた。なるほど。これがファンタジー世界というやつか?

 俺だって、全くこういうのに憧れなかったわけではない。どうせなれないと諦めただけだ。でも、今はその憧れに手が届きそうになっている。これから俺はこの世界で、ゲームの中のキャラクターのように、壮大な冒険をしていくのだろうか。そう思うと気が高ぶってくるな。

 

 ふと、隣の女神様を見てみる。すると、俺よりもずっと楽しそうに、表情をきらきらさせながら俺の手を引っ張っていた。

 

「女神様?」

 

「はっ! な、なんですか!?」

 

「なんだか楽しそうだなあ、と」

 

 女神様は立ち止まる。自分でも初めて気がついたというように。そうしてゆっくりとこちらを向くと、不思議そうに問うてくる。

 

「そんなに楽しそうでしたか?」

 

「そうだな。祭りに来た子供みたいだったよ」

 

「そうですか……やっぱり私は、自分が思っている想像以上に、この世界に来られたこと、これから過ごすだろうことを楽しみにしているみたいです」

 

 女神様は微笑むと、それはそれとしてというように手を引っ張り出した。

 

「さあ! もうすぐギルドですし、早いところ行ってしまいましょう!」

 

 ギルドは大きく、少し離れたここからも見える。近づきながら見てみると、なにかがあった時用の避難場所にもなっているのか、頑丈そうな作りになっていた。

 入り口はひっきりなしにいかつい人たちが出入りし、そうでなかったとしても、戦い慣れてそうな人たちが多くを占めていた。もちろん、普通の冒険者もいたのだが。

 

 ゆっくりと扉を開けると、にぎやかなテーブル席と受付、大きな掲示板が目を引く、暗い明かりが落ち、おしゃれな雰囲気だ。

 取り合えずは受付だということで、二人で並んで受付に行く。

 

「今日はいかがされましたか? 依頼の募集、受付、加入証明カードの発行まで、様々行っております」

 

「二人加入したいんですけど、お願いできますか?」

 

「わかりました! 加入とカードの発行ですね? お二人共10歳は超えていらっしゃるみたいですし、すぐにお作りします! ではこちらで記入をお願いします」

 

 渡された書類には、年齢と名前だけ書く欄があった。これだけでいいのだろうか。

 

 ……この世界的には、名字というのはどう考えたほうがいいのか。でもまあ、せっかく異世界で位置からやっていくわけだし、名字はここで捨てよう。

 これは一つの覚悟みたいなものだ。さっきの店で武器を見た時、傷だらけで笑いながら歩く冒険者を見た時、実際はそんなに甘くない世界なんだって、なんとなくわかった。

 リョウ、十六歳とだけ書いた紙を渡すと、受付さんは手早くそれを機械に入力し、カードを発行した。

 

「はい、こちらがカードです。様々な場所での冒険者ギルド会員の証明と、身分証明書にもなりますので、常に携帯するようにしてください」

 

 そのカードを受け取って、女神様の方を見る。すると、どうも年齢のところに悩んでいるようだった。

 

「どうした?」

 

「いや、本当の年齢はちょっと書けないなあ、と思いまして」

 

「……ああ、なるほど。じゃあ詐称しちゃえばいいんじゃないか。多分、ちょっとくらい鯖読んでる人とかもいると思うけど」

 

「しょうがありませんか……では、十代前半……十四歳にしておきます!」

 

「十四か? せっかく十歳以上ならカード作れるんだから、十二とかが良かったんじゃないのか?」

 

「うーん、それは秘密ですけど、私は十四歳がいいんです!」

 

 女神様はそのカードを渡すと、受付さんは少し微笑ましそうににっこりと笑いながらカードを作ってくれた。

 

「はい、こちらがアストラさんのカードです。では、お二人一緒に説明させていただきます。今このカードはまだ、最下位ランクです。これから、依頼の達成状況や討伐対象のランクによって、少しずつランクが上がっていきます。また依頼をするときは声をかけてください。説明いたします。がんばってくださいね」

 

 俺たちは二人でカードを見合せて、なんとなく頬を緩ませあった。

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