転生の特典に「あなたが欲しい」と選んだ女神様が激かわ過ぎる件   作:うどんそば

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明日も一緒に頑張りましょうね

 ギルドの中、テーブルの向かい席に座る。色々話さないといけないこともあるし、まず俺はこの世界について全く詳しくないのだ。その辺りを聞いておかねば心配でたまらない。流石に何も知らないまますぐ死ぬのは勘弁だ。

 

「まあ、ギルドカードは手に入ったわけだけど、これからのことを話し合おうか」

 

「そうですね。考えなしに依頼を受けるのは危険ですもんね」

 

「はい。じゃあとりあえず、この世界の状況について教えてくれないか?」

 

 女神様は、転生の折に確か、終わりそうな世界。でもまだ間に合う場所に転生者を送るのだと言っていた。なので、この世界にもなにか、終わりを運んでくる何かがあるはずだ。

 

「まあ簡単に言うと、魔王と言うやつです」

 

「これまたテンプレだな」

 

「そうですね。魔物にも偶に非常に強い特殊個体が出てきまして、それが魔王になることがほとんどです。ですので、どの世界線でも有り得る話なのです。だからですかね?」

 

「つまり、人間で言うところの、王みたいなものだったりするわけか」

 

「そうなります。人間が栄える世界があるだけ、魔が栄える世界もあるのです」

 

 女神様はただただ事実を述べるように言った。

 

「まあ、それだけなら問題ないのですが、この世界の魔王はむちゃくちゃしだしてですね……せっかく共存していた人類を滅亡させる活動を強めています。ですから、君に案内したのです」

 

「なるほどね。じゃあ、そいつを倒せばいいのか?」

 

「まあ、出来たらで。魔王は強大な存在です。その侵攻を食い止めてくれるだけでも十分ですよ」

 

 曖昧に女神様は言う。……もっと魔王を倒せとか言われると思っていたので、少し驚く。女神様はそれに気がついてか、すっと目をそらした。

 

「あの、本当に自由に過ごしてもらっていいのです。もしかしたら死ぬかもしれないような使命を強制することは私にはとても……」

 

「優しいんだな」

 

「へ?」

 

「女神なんだから、きっと命じれば皆そのために戦うだろうに、その人をきちんと思うばかりに命じられない」

 

 きっと心から優しい人なんだろうな。蘇らせてくれて、それに自由に生きていいだなんて。これなら、実質何も条件なしに蘇っただけじゃないか。

 これまでには、世界を救ってほしいなんてお願いを放っておいて、ただ新しい命を楽しむだけの者もいただろう。

 それでも、あくまで転生者の自由意志に任せて、使命を強制しない。何なら、新しい命を楽しんでほしいとまで思っている。これを優しいと言わずしてなんというのだろうか。

 

「じゃあ俺は、その優しい女神様のため、頑張ってみようかな」

 

「本当ですか? ここに来て言うのはなんですが、いつ死んでもおかしくないんですよ?」

 

「それでもだ。それに、来た時に仲間だって言ってくれたってことは、女神様も一緒に戦ってくれるんだろ?」

 

「それはもちろん!」

 

「うん。じゃあ大丈夫だ。女神様みたいな仲間がいれば、きっと成し遂げられると思う。……まあ、もちろん楽しみつつにはなるかもだけれども」

 

「それはもちろん。せっかくのこの世界なのに、楽しまないのは損ですよ」

 

 女神様は楽しそうに笑った。そうして、少し頬を赤くして、心のこもった声で言うのだ。

 

「……ありがとう。リョウ君」

 

 

 ●●●

 

 

 俺等のような、家のないなったばかりの初心冒険者向けのちょっとした部屋を紹介してもらい、そこに足を踏み入れる。

 

「おお、そこそこ広いですね。もっと狭いものかと」

 

「……」

 

 女神様はぴょこっと可愛らしく飛び跳ねながら、楽しそうに部屋を眺めた。

 

「あ、トイレも個室ごとにあるみたいですね。こういったところにしてはとてもいいランクなんじゃないでしょうか」

 

「……」

 

 色々配置されている戸を開けては目をキラキラさせながら報告をしてくれる。かわいい。

 

 ではなく。

 

「……本当に相部屋で良かったのか?」

 

「へ? そのことですか? 大丈夫ですよ。問題ありません」

 

 いや問題ありありだと思うのだが? 落ち着かないが?

 この女神様、ギルドでこの部屋を借りる受付をする際、相部屋と別部屋を選択する時に即答したのだ。「相部屋で」と。

 俺は完全に別部屋だと思っていたのもあり、女神様があまりに可愛すぎることもありと、色々なことのせいでなんだかこれからここで過ごすはずなのに、非常に落ち着かずソワソワしてしまう。

 

「やっぱり別部屋のほうが良かったんじゃ? 一応女神様も女の子だし……」

 

「一応ってなんですか……れっきとした女です。というか、部屋を借りるのもただではありません。明日以降の依頼達成報酬から後払いということになっているだけです。ということは少しでも安く済ませたほうがいいでしょう?」

 

「……でも」

 

「でもじゃないですよ。私がいいと言ったらいいんです! はい! この話は終わりです!」

 

 手をぱちんと鳴らして、この話は終わり! とアピールする。……女神様も顔が少し赤くなっているところを見ると、少し恥ずかしくなってきたのかもしれない。

 

「どうします? もう暗くなってますし、寝てもいい時間だとは思いますが……」

 

「あ、じゃあ少し浮かんだ疑問を答えてもらっていいか?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「なんで俺の言葉が通じるんだ?」

 

 これはかなり強い違和感だった。見たこと無いはずの文字がスラスラ読めるし、言語も、発音は日本語とは全く違うはずなのに、手に取るように意味がわかるし、会話もできるのだ。

 

「ああ、それは転生の時に自動で付与される能力のようなものです。こちらの人間の公用語は一種類だけなので、この国の人間相手なら、なにも不自由せずに話せますよ。もちろん日本語も話せますから安心してくださいね。日本語で話したいなと思いながら話したら日本語で。特になにも考えず話したときはこちらの言葉になるように、自動で調整されてます」

 

 なるほど。そんなものだったのか。確かに、ほぼ日本語と変わらないくらい扱えていると思う。公用語が一種類だけだと、多言語話者に教えるということも無いはずで、そういったことをしていくうちに多くの時間を無駄にしそうだ。この能力をくれた女神様には感謝だ。

 

「さあ、ほかはなにかありますか?」

 

「特に無いな。その時々に聞くことにするよ」

 

「じゃあ、もう寝ちゃいましょうか。明日からは私達も依頼を受けて暮らしていかないといけないわけですし、英気を養うということでも」

 

 女神様は大きなベッドに寝転がる。ダブルベッドというやつだ。そうして顔を隠すように毛布をかぶると、その毛布から声が聞こえた。

 

「リョウ君は寝ないんですか?」

 

「ああ……」

 

 さっき女神様が潜ったのと別の方向から、腰を下ろして、ゆっくり寝転がった。

 ベッドは別に問題ない。古いなとは思うが、硬すぎず軟すぎず、いいバランスだ。問題はそれではない。隣がものすごく気になるのだ。

 いつもの感覚とは違う、隣に誰かが寝ているという状況。なんだか落ち着かない。これが男友達とかなら、合宿気分で楽しく話しながらというのもあっただろうが、相手はものすごくかわいい女神様だ。落ち着けるわけがない。

 

 心臓がバクバクとする。副交感神経よりは間違いなく交感神経優位な状態。寝られるわけがない。

 と、そこに、ばさっと言う音がなった。そうして視界は闇に包まれた。

 

「んふふ……驚きましたか?」

 

「……ああ。驚いた」

 

「リョウ君緊張してます? 顔が赤いですけど」

 

「……女神様もだけどな」

 

 暗い毛布の中で、お互い顔を近づけて会話する。きれいな翡翠の目の下、頬のあたりは普段よりずっと紅潮して見えた。

 

「せっかくの仲間なんです。こうやって寝るだけの時間も楽しみましょう?」

 

 女神様は小さく笑って、俺の頬をつついた。

 

「明日も一緒に頑張りましょうね」

 

「……それ何回目?」

 

「何回でも言いますよ。君と私が一緒にいられる間ずっと」

 

「そっか」

 

 不思議と、今なら眠れそうだった。

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