転生の特典に「あなたが欲しい」と選んだ女神様が激かわ過ぎる件 作:うどんそば
「え……っと、この魔石は……?」
「その辺りで私達で狩ったオーガ。目が赤かったから変異種だと思う」
それを聞いた瞬間、受付さんは一気に目の色を変え、問い詰めるような勢いでまくしたてるように言った。
「ど、どうやって!? あのオーガはゴールドランクが倒せなかった程のモンスターで……!」
「ああ、所詮ゴールドだし、倒せないかもね」
「所詮って……ゴールドと言うと、冒険者の上澄みですよ!?」
その受付さんの言葉に、エミーは冒険者カードを取り出し、それを見せた。……ちょっと待てめっちゃ光り輝いてるんだが?
「っ! これは……プラチナにダイアモンド……それに家紋……」
「わかってくれた?」
「は、はい……実質最上級の冒険者とは思わず……」
「ん。こんな見た目だし、わかるから大丈夫」
受付さんは申し訳無さそうな顔をしながらエミーに頭を下げている。それを許す感じを出しつつも、押せっている様子も見せない。一般の感性ならあんなに頭を下げられたら逆にこっちも頭を下げてしまうそうになりそうなものだが……もしかしたら、頭を下げられることに慣れている家の出だったりするのかな?
「でも、貴方があのオーガを討伐したのは理解したのですが、後ろのリョウさんとアストラさんは……?」
「ああ、ほとんどその二人で討伐してくれてたんだよ。私はとどめを刺しただけで」
「は!? それは流石に……! う、嘘でしょう?」
「まあ、討伐されたオーガの死体でも見に行ってみればいいよ。私じゃあんなに強い魔法は打てないし」
「は、はあ……では討伐報酬は二等分して貴方とお二人に、ということでいいですか?」
まだ少し信じられない様子で確認する受付さんだったが、それに涼しい顔をしたエミーは、軽い感じで言う。
「ああ、まとめていいよ」
「わ、わかりました……」
受付さんは奥に引っ込む。あれだけ話題になっていたわけだし、そこそこの賞金があったのだろう。きっとそれを出してきているのだろうな。
「それにしても、どうしてお金をまとめて?」
俺は聞いてみた。まとめて金を出すと、もしかすると大きな金貨とかで渡されてしまい、後で金を分ける時に困ってしまうのではないのだろうか。
それなら、最初は分けてもらって、後で分け前を話し合えば、小さな貨幣できれいに分けやすいだろうに。
「ああ、それは後で話すから」
ごまかすように言ったエミーに、俺と女神様は顔を見合わせて困惑を共有した。
わ、わかんねえ……エミーが一体何を考えてるのか、分からなさすぎる。無表情だけどずっと楽しそうにしているし、ワクワクしているオーラが全身から漏れ出ているのに「後で後で」って……。
「おまたせしました! こちら、討伐報酬です!」
「ん。ありがと。……あれ? プラチナ硬貨? こんなにもらえるの?」
「もちろんです! このモンスターの被害数は相当で、ギルド全体で緊急依頼が張り出される寸前でしたので!」
それに「そうなんだ」とうなずいたエミーは、こちらに向き直って、酒場の方を指差す。
「じゃあ、はなそっか」
●●●
「私は……とりあえずエールで」
「……俺はどうしよう」
「私はワインでお願いします……リョウ君もワインでいいんじゃないですか? ものにもよりますけど、飲みやすいのもありますよ」
「じゃあそれで」
「では、ワインは飲みやすいものボトルでお願いします」
その後、つまみになりそうなものを適当にエミーが注文し、店員は奥に引っ込んでいった。
「じゃあ、話をしようか。改めて、ダイヤモンド付きのプラチナ級の冒険者、エミーリア。よろしく」
「俺は……木? 級の冒険者、リョウだ。よろしくお願いします」
「私も同じく木級のアストラです」
お互い、もう一度自己紹介をする。こうしてみると、アストラもエミーも背が小さい。年下にしか見えないほどには。それなのに、ずっと高い冒険者ランクなんて、相当な実力者なのではないだろうか……
「ちなみに、冒険者ランクがよくわかっていないんですけど、エミーさんのランクってどれくらいの階級なんですか?」
「ああ……初心者だもんね。じゃあ説明する。はじめは木。これは研修期間みたいなもの。それで少し依頼を達成したら、鉄に上がる。その後は、達成した依頼の難易度とか、達成数とかでどんどん上がっていく。基本は、鉄の次に銅、銀、金。ここまで来ると、普通に目指せる上限みたいなところがある。で、それを超えた強さになると、プラチナ。そして、その上が特別な功績……例えば国家からの特別依頼を達成したりすると、特別に叙勲という形を取って授与される、ダイヤモンド付きカード。それも銅銀金プラチナがある。その上にフルダイヤモンドのものもあるけど……これは王位継承者のみのものだね」
「なるほど……となると、エミーさんは冒険者の中でトップなんですか?」
「実はそう。ぶい」
かわいい。じゃなくて。なんてすごい人なんだ……! というか、そんなすごい人はこういう最初の町とかじゃなくて、魔王前の町とかで出会うタイプでしょ。正直ビビりそうなんだけれども。
「まあでも、それでももしかしたら君たちには勝てないかも」
「……は?」
「あの火、多分抑えてたでしょ」
「……」
女神様が口をもごもごしながら目線を動かしまくっている。明らかに何かをごまかすときの顔。
「ち、違いますよ? あれが本気ですよ?」
「……わかった。そういうことにしておく。というか。どちらにせよ、この世界の魔法の使い方とは違うし、なにか私達とは違う存在なんだろうなって事はわかってるから。いいたくなれば言ってくれていい」
……ん? いいたくなったら言ってくれていい?
「あの……なんだかとてつもなく長い付き合いになりそうな言い方ですけど……」
「……ん? 私の態度で気づいてくれなかった? 私このパーティーに入るね」
「ええ!?」
まじか……? 突然の仲間の加入……? まあ、流石にずっと二人きりというのも問題があるだろうし、どこかで誰かを入れることになるだろうなとは思っていたけれども、こんなに強い人が入ってくれるのか?
「だめだった?」
「いえ、エミーこそ大丈夫なのかなって……」
「問題ない。私は強い相手と戦いたいだけ。なんだかこのパーティーなら達成できそうな気がするから。これからよろしく」
「……それなら。よろしく」
エミーは俺と女神様に手を差し出す。それを握ると、ぎゅっと小さな力で握り返して、ぽかぽかおててでにぎにぎしてきた。
……子供みたいだ……
「ちなみに、何歳なんですか?」
「む、多分小さく見てるでしょ。私は十六歳。これでも結婚だってできる年」
「け、結婚?」
「ん。結婚。十四歳から」
ほへえ……異世界ということもあってか、やっぱりそういうところも少し違うのか。
というか、エミーは俺と同い年なのか。それでこんなランクまで上がるのって、とんでもないことなのではないのだろうか。もともとすごいとは思っていたけれど、見た目より少しは上だけど、ほとんど見た目通りの歳だとは思わなかった。
……それにしても、なんでアストラ様は顔を真赤にしてるのだろうか。
「まあ、とにかく。これから私達は仲間。遠慮は必要ない。そんな余所余所しい敬語はなし。素で接してくれたら嬉しい」
「そっか。じゃあよろしく! エミー!」
そう言うと、エミーは眠そうな無表情を少し崩すと、嬉しそうに微笑んだ。
「……アストラ」
「え?」
その場に小さな声が漏れ、袖を小さく引かれた。
「……私のこともアストラって呼んでください。私も仲間です。敬語もいりません」
「……そっか。わかった。アストラ」
すねた顔をしたアストラは、俺とエミーに微笑ましい目を向けられ、また顔を赤くした。