転生の特典に「あなたが欲しい」と選んだ女神様が激かわ過ぎる件   作:うどんそば

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拠点

 あれから俺は、エミーの勧めるがままに刀に合う軽装の防具を揃え、木刀を一本買って店を出た。アストラは今つけているもの以上はないということで何も買わなかったが、俺だけのためにそこそこの金額を使わせてしまったことには少し思うところがある。

 まあでも、二人はそのことについて何も思っていないみたいだし、特に気にしていることもないみたいだし、気にするだけ無駄か。

 

「まさか本当に刀にするとは思ってなかった。あれは本当に扱いが難しいし、慣れるまではショートソードのなまくらかと思うほど切れない。……初めて持って、竹をきれいに切れるのは才能」

 

「……きっとエミーがオーガを倒したところを見ていたからだな」

 

「そう? それでも、あれだけで流れを掴めたのならすごい」

 

「エミーの太刀筋もすごいものがありましたけど、リョウくんも初めて持ったとは思えませんでしたよ!」

 

 そこまで言われるとすこしこそばゆいものがある。少しだけ目をそらしてごまかそうとすると、目ざとく見つけたアストラは少し意地悪な笑みを浮かべた。内心からかわれてるんだろうなあ……

 

「……そういえば、家はどうするの?」

 

「家? 今俺達は寮住みだけど」

 

「寮もいいけど、刀の練習をするなら家が良い。私も今は宿に住んでるから、せっかくだし残ったお金で小さくてもいいから拠点を借りよう」

 

「ああ。……でも、金、足りるのか?」

 

 オーガの時にもらえた白い金貨はかなりの価値がありそうだった、実際のところはわからない。

 

「……? 白金貨だけでも相当だったのに、大金貨まであって、借りられない場所なんてある?」

 

「あ、ああ、そうか」

 

 どうも白金貨は相当なものらしい。後で教えて貰う必要があるか。

 

「ともかく、不動産屋にでも行こう。貸家は多いはず」

 

 

 ●●●

 

 

 不動産屋で、庭はそこそこの広さがあるが、家自体はあまり大きくないところを借りた。下見で見た限りは、俺たちにちょうど良さそうなサイズ感だった。

 実際、俺たちにはほとんど荷物もなかったし、まだ入って数日の寮の解約も簡単にできた。エミーもほとんど荷物はなかった。

 ベッドもあまり硬くなく、「家」という感じに少しホッとする。

 

「どうです? 荷物は片し終わりましたか?」

 

 ぎい、と扉が開く音がする。アストラだ。

 

「もともと物はなかったからな。着てきた服くらいか?」

 

「確か買った服は防具付きだったんですよね? 動きやすさはどうですか?」

 

「正直、持ってきていたのよりもいいよ。やっぱり動くのを想定してあるのは違うな」

 

「そうですか……私は普段着ているこれ以上の服はありませんからね」

 

「やっぱりこの世界のものとは違うのか?」

 

「はい。何があっても傷は付きませんし、汚れません。浄化作用もあって、自動治癒もあります」

 

 ニコニコと話してくれるアストラ。なんだその防具。チートじゃないか? この世界にそれに匹敵するくらいの防具は存在するのか?

 

「それに、動くのにも全く支障が無いです」

 

「それはすごいな……武器は良いのか?」

 

「良いのです。これは少し恥ずかしいことなのですが、私はああいう剣戟などには向いていなさそうです。その代わり、魔法というのは得意なので、そっちで二人のためになります」

 

 そういえば、オーガと戦ったときの魔法はとてつもない威力があったなと思い出す。というか熱かった。近づいてきていたとはいえ、まだまだ遠くにいたはずのオーガを中心として、俺が熱いと感じるくらいまでの範囲を燃やすなんて、本当に規格外なんだな……。

 

「はい。まあ、私にはあの程度しか出来ないのですが、一応神の力というものなので。……でも、私は癒やす方が得意です。実際、あのオーガを倒すことは出来ませんでしたし、火も真っ赤までしか出来ず、青く出来ませんでした……」

 

「え? あれでも威力に不満があるのか?」

 

「はい。あれは通常なら、上まで青色まであがった温度の火で、一瞬で燃やし尽くすんです。それを私は上手く扱えなくて……すいません。せっかく転生の特典として選んで頂いたのに」

 

 ……うーん、もしかして、アストラは俺が特典を後悔しているとでも思っているのだろうか。

 

「なあ、俺は後悔していないからな?」

 

「え?」

 

「アストラを選んで良かったと思ってる。これは本当だ。多分、アストラがいなかったきっと俺は今頃死んでる。それに寂しくもないし」

 

「……ありがとうございます。ほんの少し、楽になりました」

 

 アストラは微笑んだ。

 

 ぎい、という音がなる。

 

「……ふたりともここだったんだ。まあじゃあ一緒に教えるね」

 

 部屋の中に入ったエミーは、俺とアストラが座っているベッドの上に乗って、お金を出した。

 

「二人はお金の価値をわかってないみたいだから、軽く教える」

 

 確かに、俺たちは全くと行っていいほどに価値がわからない。どれがどうしてどれくらいの価値があるのか……それがわかるだけで、大きく助かる。

 

「まず、これ。青銅貨。一番価値は低いから、あってもあんまり意味ない。でも、十枚で大青銅貨になる。大青銅貨はいくつか集めたら屋台くらいなら食べられるよ」

 

 次に、と少し色が違い、人の胸像が入ったデザインの硬貨を取り出した。

 

「これが銅貨。デザインはこの国の王様。王様の顔を誰でも知れるように、デザインされてる。一枚でボトル一本の飲み物くらいの価値。大青銅貨十枚でこれ一枚。で、銅貨が十枚重なると、大銅貨。安いランチなら一枚で食べられる」

 

 なるほど。一円、十円、百円、千円みたいな感じに上がって行っているのか。

 

「次は銀貨。これは大銅貨十枚ぶん。大銀貨はその十倍。ここまでは覚えやすい」

 

 大銀貨、そんなに高いのか……約十万円くらいの価値か?

 

「金貨。これは、大銀貨五枚分くらい。ここまでは大体の店でも使えはする。そして、ここからは本当に高い金額のものを扱っているところでしか使えない。大金貨。これは金貨十枚分。一つあれば一年は暮らせる。これでだいたいおしまい」

 

「あと、白金貨ってのもあったよな」

 

「白金貨? あれは貨と言いつつもほぼ資産。価値が時折変わるけど、大体大金貨二十枚くらいの価値。便利だから、強いモンスターの報酬で出てきがち。ちなみに、使えるところが限られすぎて、私は使ったこと無い」

 

 白金貨、大体一億くらいの価値か。……となると、あのオーガって、本当に相当なモンスターだったんじゃないか? 一億六千万くらいの報奨が出たってことだろ?

 

「あのオーガは、被害が結構大きかったから報奨が大きかった。ここから一番近いところの貴族の息子が殺されてた上に、屋敷も破壊されてたみたい。そこからの報奨が白金貨だった。ギルドからは金貨十二枚。これでもまあ太っ腹だけど」

 

 そうか……そりゃあこれで借りれない家はないって言われるわけだ。相当大きな屋敷であっても、借りるだけで数億かかる場所は無いだろう。

 

「これ、覚えててね。まあ銅貨を使ってると覚えてくると思うから」

 

「エミー。気にならないんですか?」

 

 話を終わらせたエミーに、アストラが声をかける。

 

「……何が?」

 

「なんでそんな常識を知らないのか」

 

「うーん……そりゃあ、少しは気になる。でも、いいたくないなら言わなくてもいい。……ねえ、私に隠し事があったら、仲間じゃない?」

 

「いや、そんなことは!」

 

「ほら、答えはもう出てる。こうして仲間になった以上、気になることがあっても信用する。そしたら気にする必要はない。まあ、話してくれるなら話してくれてもいいけど」

 

 そういったエミーは、俺と同い年とは思えないほど落ち着いていた。

 

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