ハリーポッターと願いの本   作:aly

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魔法少女と秘密の部屋

 ハリーがその部屋に辿り着いたとき、部屋の奥には一人の少女が横たわっていた。ジニーだ。しかしマミがいない。

 ジニーに駆け寄りながら周囲を確認していると、蛇の像に背を預けた青年がいることに気が付いた。トム・リドルだ。どうして彼がここにいるのか分からなかったが、とにかく少女を助けることが最優先だと思って、後ろから追いかけてきた友人に声を張り上げた。

 

「ロン! ジニーは生きてる! でも弱ってるんだ、すぐに連れだそう!」

 

 水が跳ねる音がする。1つ、2つ。トムはそれを数えて、やれやれを頭をふった。

 

「どうして君は一人で来なかったんだ。ハリー・ポッター。君のせいで友人が死んでしまうじゃないか」

「なんだって?」

「まぁ穢れた血と血を裏切るものだから僕としては喜ばしいことだ。それに君も死ぬ。僕の質問に答えてからね」

 

 ようやく追いついたロンがジニーのそばに腰を降ろした。頬を叩いても反応がない。しかし呼吸はしている。一方ハーマイオニーはそばに佇む青年のほうを見て、彼の手にジニーの杖が握られていることに気が付いた。

 

「みんな、杖を出して! エクスペリア―ムズ!」

 

 ハリーとロンに指示を出すと同時に、彼女はトムに武装解除を仕掛けた。しかしトムはさっと杖を一振りするだけで無効化してしまった。無言呪文だ。

 ハリーも杖をトムに向けて、ジニーを背にして立った。ロンは杖がダメになっているので、ジニーの脇の下に手を入れて、少しでもトムから引き離そうと試みた。

 

「マミ・トモエよりは賢いようだ。だが今はお前たちに構っている暇はない」

 

 再びトムが杖を振ると、ハーマイオニーの杖がトムの手の中に納まった。

 

「シレンシオ。……さて、ハリー。これで僕たちだけが話せるようになった。僕は少し聞いておきたいことがあってね。それはどうして赤ん坊の君が強大なる闇の帝王を相手にして生き残ったのかということだ」

「どうして君がそんなことを気にするんだ。それに、マミはどこにいる!」

「彼女はこの部屋にいるさ。耳を澄ませば聞こえるはずだ。しかし今は僕の質問のほうが優先だ。なぜなら僕は――」

 

 Tom Marvolo Riddle

 

 I am Lord Voldemort

 

「ヴォルデモート卿の過去であり現在であり未来だからだ」

 

 宙に描いた文字をひらりと動かしてトムが自ら名付け、イギリス魔法界を恐怖に陥れた名前が浮かび上がる。

 それを目にしたハリーたちの顔がこわばる。しかしそれはトムの期待していた反応ではなかった。

 

「なぜ驚いていないのか……誰が僕の名に辿り着いた?」

「ホグワーツで一番偉大な魔法使いはダンブルドアだ。だけど二年生で一番賢い魔法使いをお前は知らなかったのか?」

「なに?」

 

 そのとき、部屋が轟音とともに揺れた。ロンはジニーのほうへつんのめり、ハーマイオニーはその場で屈み込んだ。

 ハリーとトムは少したたらを踏んで、周囲を窺った。

 

「まさか」

「僕の知る中で最も勇敢なマミに最も賢い夏目さんが加勢したんだ。バジリスクはもうお前の下には来ないぞ!」

 

 

 秘密の部屋に三人が入る前、かこはハリーから借り受けた透明マントを纏って通路に並ぶ蛇の彫像の脇にある水路に入っていった。

 すでにマントの下では魔法少女に変身している。

 

『巴さん、加勢に来ました。現在位置は分かりますか?』

『助か、っるわ! でも中は入り組んでるから場所は――このっ! 分からないの!』

『じゃあリボンを放ってもらえませんか? とにかく動き回ってそれを探します』

『了解!』

 

 これは事前に確認していたことだが、この世界でも魔法少女のテレパシーは使えた。あまりにも非効率な連絡が続いたので一度試してみようという話になったのだ。

 かこは長い通路を駆けた。マミの言う通り、部屋に通じるものからホグワーツの様々な部分に通じているだろう道が分岐している。

 幸いなことに途中でバジリスクとマミの戦闘の痕跡を発見したので、あとはそれを辿るだけでよかった。

 次第に遠くから発砲音が聞こえるようになり、ついにマミの残したリボンの先端を見つけた。かこはそれを手に取った。

 

『巴さん、見つけました。すぐ向かいます』

『こちらでも感知したわ。やった! ようやく片目を潰した!』

 

 テレパシー越しのマミの喜びようといったら、いつも大人っぽい彼女が初めて見せた稚気だった。

 しかしバジリスクにはまだ片目がある上、牙が持つ毒や巨体は健在だ。

 かこはリボンを手繰って疾走した。

 バジリスクの尾を見つけるより前に、かこはリボンで作られた結界を見つけた。石造りの水路に接着しているのは魔法だからだろうか。さながらスパイ映画のセンサーのように張り巡らされている。

 かこにはマミのようにバジリスクの視線を防ぎながら動きを探知する術はない。しかし背後からの攻撃ではほとんどダメージを負わせられないのはマミが実証している。唯一の希望はマギアだが、失敗すれば自らが危うい。

 狙うなら頭部。叶うなら残る目だ。かこの槍はビームを放てる。これを当てることがデキレば……。

 まとまらない思考を続けながら結界を進む。そこでふと、水路の分岐点を見つけた。

 かこはバジリスクの正面に立つことはできない。だが、側面ならどうだろう。バジリスクと目が合う前に、ちょうど分岐点を通る瞬間にビームが着弾できれば。

 

『巴さん、一つ作戦があります。聞いてもらえますか?』

 

 かこはリボンを握りしめて分岐を曲がった。

 

 

 マミは常に新しい結界を張りながら、その万能から頭部を推測してひたすら銃撃を続けていた。

 しかし片目を失ったバジリスクは慎重で、真正面からマミを食おうとするのではなく、残る目を死角にやりながら首を振るっている。

 だからこそ、かこの作戦が唯一の勝機だった。リボンから感じるかこはかなり近づいてきている。

 これまでの経験から分岐は十から十五メートル間隔で設けられている。かこのいる水路とどこで合流できるのか、タイミングを合わせられるのか。かなり運に頼る作戦だ。

 マミは新たな分岐路にリボンを放った。かこへの目印だ。これを彼女が手に取れば合流が分かる。

 しかしマミはそのことで頭がいっぱいになっていて、バジリスクへの注意がわずかに散漫になっていた。だからバジリスクの猛攻が止んでいることに気がつかなかった。

 

(バジリスクが結界にいない? これはまさか――)

 

『夏目さん、逃げて! バジリスクがそっちに向かってるわ!』

 

 その瞬間、激しい光が水路を照らした。かこのマギアだ。これで二度目のマギア。かこにもう後はない。

 マミは懸命に光のもとへ走った。

 バジリスクの巨体が見える。側面に爛れた痕が残っている。かこのマギアの影響だろう。しかしそれは既に封殺した側の身体だった。

 

「ああぁぁぁあああ!!!」

 

 一気に十数丁の銃を作り出して傷跡を狙う。少しでもかこの助けになればと思い――その言葉が頭に届いた。  

 

『巴さん。私は弱いから、こうするしかありませんでした。あとはお願いします』

 

 閃光。再びのマギアだった。今度は間違いなく残った側の目を狙っている。傷跡の側にいたマミが無傷なのがその証拠だった。

 

『……夏目さん?』

 

 無事を祈ってテレパシーを送る。しかし返事はない。

 そのかわりに、バジリスクの向こう側から大きな悲鳴が聞こえた。かこの声だった。

 

「う、アアァァア!!!」

 

 マミはバジリスクの巨体の上を走った。何か事態を改善できる魔法があるかもしれない。エピスキーとかレパロとか。とにかく何か試さずにはいられなかった。

 しかしマミがようやくそこに辿り着いたとき、目の前にいたのはかこではなく魔女だった。

 人型の魔女の腰には本があった。頭はまるで裁断機のよう。しかし一番マミを震撼させたのは、本の下の下半身がかこの魔法少女姿だということだった。

 理解できない。いや、理解したくない。心が拒絶して、動揺のあまりバジリスクから転げ落ちる。

 しかしその瞬間。その魔女は裁断機を大きく開くと両目を失ったバジリスクに接近し、その刃で首を切断した。

 硬い表皮に刃を何度も打ち付けて、次第に肉に食い込ませていく。暴れるバジリスクを物ともせず、魔女のパワーで抑えつける。そしてようやくそれは骨をも切断した。

 

「うそ……」

 

 図らずしも魔女に助けられた。驚くマミに対して、魔女が向きを変えた。

 次は自分の番だ。そう思い気持ちを奮い立たせようとした時、突然魔女は姿を消した。

 そんな馬鹿な。マミは首を断たれたバジリスクを飛び越えて魔女のいた場所へと向かう。

 そこにいたのは無傷のかこと穢れのまったくない彼女のソウルジェムだった。

 

「どういうことなの……?」

 

 今はまだ、その問いに答えられる人物はいない。

 

 

 ハリーとトムの耳にバジリスクの断末魔が聞こえた。悲鳴とも咆哮とも取れるような怪物らしきそれは、蛇語を解する二人をしても理解不能なものだった。そのことが、真にバジリスクが成すすべもなく死んだということを現実的なもののように思わせる。

 

「馬鹿な……」

 

 その衝撃は2度にわたって彼を操ってきたトムのほうが大きい。決闘と言う名の尋問の最中にも関わらず、彼の意識は水路に向いた。ハリーは数々の魔法を身に受けて眼鏡は吹き飛び傷だらけて床に倒れている。

 その一瞬の隙をついて、ロンがトムにとびかかった。

 二年生とはいえ大柄なロンはトムの横っ腹にタックルをしかけ、その拍子にトムの手から杖が飛んだ。

 

「貴様! しかし僕は杖がなくとも魔法が扱えるということを知らないようだな! ディフィンド!」

「うわあぁぁ!」

 

 無防備になっていたロンのローブの背中が破ける。裂け目からは血が滲み始めた。

 

「は、放すもんか! ハリー、今だ!!」

「うるさい。デパルソ」

 

 再びトムの放った杖なし魔法がハリーの身体を大きく吹き飛ばした。杖は床に転がったままだった。

 

「さて。では哀れなウィーズリーを先に殺そう。さすがに死の呪文には杖が要る。さて、お前の妹に取ってきてもらおうか」

 

 先ほどまでロンがいたところで横たわっていたジニーの瞼が開く。しかしトムが実体化しているせいかその動きはかなり鈍い。ロンはゆったりと地面を這おうとする妹を見て真っ青になった。

 

「ジニー、ダメだ! くそっ、ダンブルドアはどうしてこんなときにいないんだ!」

「それはサラザール・スリザリンが偉大な魔法使いだからだ。そして僕もまた偉大な魔法使いだ。この部屋に入る条件をあいつは満たしていない」

「違う! ダンブルドアはお前よりずっと偉大な魔法使いだ!」

 

 ロンとハリーが叫んだ。ジニーはじりじりとハリーの杖に近づいている。そのとき、秘密の部屋の遥か向こう。どこかから鳥の鳴き声が響いてきた。

 やけに反響したその音は次第に大きくなる。全員がその音がどこから聞こえてくるのか目を凝らして音の元を探った。それは蛇の彫刻の脇から現れた。

 不死鳥だ。ダンブルドアのフェニックスだった。その脚にマミが片手でぶら下がっている。そして不思議なことに彼女は組み分け帽子を手にしていた。

 

「『ホグワーツでは助けを求める者にそれが与えられる』よ、二人とも」

 

 マミが不死鳥から手を放す。地上三メートルはありそうな高さから飛び降りながら。彼女は帽子の中に手を入れ、一本の牙を取り出した。

 そしてその牙を両手に握りしめると、切っ先を下に向けて一直線にそれに向かって落下した。

 

「や、やめろぉぉおおおお!!!」

 

 牙が皮の表紙を割く。落下の力に合わせてぐっと奥深くまで押し込まれ、トム・リドルの日記はどす黒いインクを噴き出した。

 それと同時にロンが拘束していたトムの姿が塵と化していく。背中に傷を受けたロンはそのままつんのめって床に倒れ込んだ。

 

「ロン!」

 

 立ち上がろうとして、ハリーは身体の痛みでその場で四つん這いになることしかできなかった。目の前にはうつぶせに倒れた親友の姿がある。その背中にマミが離れた後は上空を舞っていた不死鳥が止まった。

 

「大丈夫よハリー。不死鳥の涙には傷を癒す効果があるって聞いてない?」

「あっ、そうか」

「そうよ。リナベイト!」

 

 蘇生の呪文で気絶していたハーマイオニーの身体がびくりと跳ねた。

 

「そうだ、夏目さんは?」

「ああ……うん。彼女はバジリスクとの戦いで疲れて眠っているわ。まだ水路にいる」

 

 やれやれ、とマミは脇に抱えていた組み分け帽子を被った。

 

「いたっ」

 

 格好よく決めた途端、マミの脳天に衝撃が加わった。思わず尻もちをつく。何が起こったのかと周りを見ると、彼女の前に美しい剣が転がっている。

 

「マミ、その剣どうやって出したんだ?」

「帽子からかしら。でも、どうしてかしら……」

 

 

 それからジニーは目を覚ますと兄の背中の傷を見てわんわんと泣き出し、ハリーはそれが治っていることを説明するのに苦労した。何もできなかったと落ち込むハーマイオニーをマミが慰め終えると、皆でフォークスの案内で水路を歩いてかこを迎えに行った。

 巨大な蛇の死骸の脇で彼女は眠っていた。もちろん、ホグワーツの制服でだ。彼女をハリーとロンで抱えると、二人はフォークスに掴まった。その脚に女の子三人がしがみついて、一同はゆっくりと秘密の部屋を後にした。

 長いトンネルを抜けると、穴の脇でふわふわと漂っていたマートルが仰天して飛び上がった。ちょっとばかし天井を首が突き抜けたが、慌てて戻ってきて驚きの声をあげた。

 

「まさか誰も死んでないの? 本当に? あぁあ。ハリーが死んだら同じトイレに住んでもらおうと思ったのに。かこは同じレイブンクローだからいい同寮のよしみで仲良くできそうだったのにざーんねん」

「おあいにく様。私たちは誰一人欠けていないわ」

 

 ハーマイオニーがつんと顎を上げて告げると、マートルは舌を出して個室の便器に飛び込んで水を彼女にひっかけた。二人は反りが合わないらしい。巻き添えをくらったロンが「おえーっ」とえずいた。

 トイレから出ると、フォークスを先導に六人はまっすぐに校長室を目指した。フォークスのおかげで合言葉もなく扉が開く。するとわっと女性が飛び出てきた。ウィーズリー夫人だ。彼女は二人の子供を抱きしめて大声で泣いている。

 

「モリー。気持ちは分かりますが全ての生徒を通してあげてください」

 

 マクゴナガルの声にはっと周囲を見渡したモリーは、まずハリーの顔を見つけて彼を抱擁した。それからハーマイオニーとマミと続き、初対面のかこをじっくりと見つめてからゆっくりと抱きしめた。

 彼女の気が済んだところで六人はようやく部屋の中に入れた。部屋の中にはダンブルドアがいて、その肩にはフォークスが止まっている。

 

「さて、君たちは昨年に続いて今年も冒険をしてきたようじゃ。わしらは大いに話を聞かねばならん」

 

 それから、ハリーが代表してこの一年のことを語った。秘密の部屋の怪物がバジリスクだと辿り着くまでやトム・リドルの日記のこと。バジリスクをマミとかこが倒し、さらに颯爽と宙から現れたマミが日記を貫いた途端にトム・リドルが消えてしまったこと。

 ダンブルドアは青い目を煌かせながらそれをじっくりと聞いた。

 

「うーむ。つまるところわしが一番興味があるのは……そのヴォルデモート卿の日記がなぜここにあるのか、ということじゃ」

 

 その名前にウィーズリー夫妻とハーマイオニーはびくりとした。マミとかこだけは他の誰とも違う理由で恐れを抱かなかった。

 

「その日記――ママが準備してくれた本の中にあったの。何かを書いたら返事をくれたから、相談にも乗ってくれて。こんなに恐ろしいものだなんて思わなかった!」

「そうじゃろうとも。大人の賢い魔法使いでさえヴォルデモート卿に誑かされてきた。一年生に罰はなし。君には温かいココアがちょうどよいじゃろう」

 

 ダンブルドアがウィンクを投げかけると、ウィーズリー夫妻はジニーを連れて医務室に向かった。

 

「さて、君たちの中の誰かには礼を言わねばならん。真の忠誠を示してくれたものがいたからこそ、フォークスは君たちのところに現れた」

 

 それはハリーでありロンであったかもしれない。二人は照れながら互いを見合った。

 

「そしてこの剣はグリフィンドールの剣という。真のグリフィンドール生だけがこれを帽子から出せるという。マミはまさしく勇敢じゃった。さて、ハリー。何かわしに言っておきたいことはあるかの?」

 

 ハリーの目線はその剣に吸い込まれていた。鍔の下に刻まれているのはまさしくゴドリック・グリフィンドールの名だった。脳裏に組み分けの儀式のことが蘇る。

 

「僕、組み分けでスリザリンが向いていると言われました。それに蛇語も話せるし、それに――」

「わしが思うに」

 

 ダンブルドアがハリーの言葉を遮った。

 

「ヴォルデモートは君に傷を負わせたあの夜にその力の一部を君に遺した。それに君はスリザリンではなくグリフィンドールにおる。それはなぜじゃ?」

「僕が組み分け帽子に頼んだからです」

「そう。そこが一番肝心じゃ。能力ではない。どうあろうとするかが人を何者かを決める。それに君の友人たちは君がグリフィンドールであることをちっとも疑っておらんようじゃが?」

 

 はっ、と剣を注視していた顔を上げる。そこには笑顔のロンとハーマイオニーとマミがいる。かこはハリーと目が合うとしっかりと頷いてみせた。

 

「グリフィンドールの剣を引き抜いた私が保証してあげる、って言ったら安心する?」

「マミの保証? そりゃ大安心さ。でも君は剣を引き抜いてたっけ?」

「もうっ! 比喩よ。あのときあなたに被せてたら同じようにノックアウトされてたわよ!」

 

 

 ロンドンのクラパム・ジャンクション駅の近くのアパートの室内で、二人は今年一年を振り返っていた。ダンブルドアとのすべての話が終わった後にマルフォイ・シニアがやってきたこと。その屋敷しもべ妖精がドビーで、ハリーが彼をうまく解雇させたこと。そして秘密の部屋での出来事である。

 

「じゃあ、本当に何も覚えていないのね?」

「はい。私は回収されるほんの少しの回復力を賭けに三回目のマギアを放ちましたが、やはり穢れは満ちてしまいました。その段階でほとんど意識はなく、夢を見ていたようにふわふわしていました。意識が戻ってきたとき、バジリスクの状態をみてどんなに驚いたことか」

 

 それはマミが見た魔女のことであり、かこのソウルジェムが完全に回復していたことだ。もし、この本の中でソウルジェムに穢れが溜まり切っても死なないのであれば、それは来年以降の力となる。しかしマミだけが目撃した謎に満ちた魔女のことを考えると楽観視はできない。

 マミが立ち上がる。

 

「実験するわけにはいかないし――とりあえず帰りに買ってきたケーキでも食べましょう。紅茶を淹れるわ」

「そうですね。それじゃあ――三人分お願いしますね」

 

 かこは予兆もなく現れた少女が床で眠っているのを見て答えた。彼女はかこと同じ神浜市立大附属学校の制服を着ている。第三の少女だった。

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