一巻の分は完結です。
ちなみに私は不二家でバイトしているのですが
今日面白いお客さんが来ました。
以下、その内容です。
私「いらっしゃいませー」
おじいちゃん「にいちゃん、にいちゃん。ケーキ頂戴!」
私「(・ω・) えーと、どの種類のケーキをお求めですか?」
おじいちゃん「モンブランがいいかな!」
私「(・ω・) ......どのモンブランになさいますか?」
おじいちゃん「マロンモンブランかな」
私「かしこまりました(最初からマロンモンブランと言って欲しかった)」
おじいちゃん、確かにケーキは売ってるんだけどね?
ケーキって言っても不二家で販売してるのだけで30種類近く
あるし、モンブランだけでも4種類あるのですよ...............
逃げなきゃ。
そんなことは分かっているのに、身体がどうしても動いてくれない。
怖くてどうしようもなくて。
ただ、ただ震えることしかできなかった。
突然現れたそれは容赦なく攻撃をして来ると同時に悟ってしまった。
ここでエネルギー切れを起こしたら死んでしまうと。
「あ、ああぁ........」
それを理解してしまった時、とてつもない恐怖感に襲われてしまった。
「 」
鈴さんが必死に私へ呼びかけてくる。でも、なんで言っているか聞き取れない。
それほどまでに私には余裕が無かった。
次々と飛んでくる敵のエネルギー弾。避けることも出来ずに何度も被弾する。
ガリガリと減っていくエネルギー、そして刻一刻と近づく死。
私に向けられた左腕の銃口はいつしか光り輝き、膨大なエネルギーが溢れかえっていた。きっとあれを食らったらこの打鉄二式ごと私を吹き飛ばしてしまうほどの威力があってもおかしくない。
でも、恐怖を抑えようとするのに精一杯で逃げようと考えることすらできなかった。
何もかもがスローモーションのように見えてくる。
目を固く閉じる。今の私にはこうすることしか方法はなかった。
ただ、いつまでたっても衝撃がこない。
恐る恐る目を開けてみれば左腕がなくなっている敵のISの姿が飛び込んできた。
「...............え?」
「更識さん!」
そして私の名前を呼ぶ織斑君の姿。
ただ、見慣れない赤い髪に紅い瞳。
それは何故か、真っ赤な血塗られた色を連想させた。
ピットにたどり着くとすぐさま青水晶の刀を作り出し、更識さんに狙いを定めているISの左腕の空間座標を斬りとばした。
ルシの力を解放させているせいで身体が悲鳴をあげる。それは今までにないくらいの激痛で、少しでも気を抜いてしまえば意識が飛んでしまいかねない。
だけどそれを歯を食いしばって耐える。ここまで来てそんなことになってはいけない。
「更識さん!」
出来る限りの大声で名前を呼ぶ。
振り向いたのを確認して続ける。
「逃げろ!」
「逃げろって、逃げるところがないのに何言ってんのよ!こんの馬鹿野郎ッ!」
更識さんではなく鈴がありったけの声で言い返してくる。もしかしたらとは思っていたがここまで声を出せるなら心配はしなくていいだろう。
馬鹿野郎は余計だと言い返して、ピットの床を蹴った。
数百メートルはあった距離を一瞬で詰め、更識さんとそのISの間に割って入る。
「織斑、君?」
震えている更識さんに軽く微笑み、すぐさま敵ISと向き会う。
「..........な、無人ISだと?」
思わずそう呟いてしまう。
さっきは遠かったから気付けなかったがこのIS、もっといってしまえば左腕からは無数のコードが飛び出ていた。
フルスキン装甲だった時点で疑うべきだったのかもしれないが、今更考えても遅い。
エネルギーをチャージ中に腕を切り落としたために、行き場を失ったエネルギーが爆発を起こしたお陰でこのISはまともに動いてはいない。
止めをさす為に思いっきり頭部を踏み潰す。シールドバリアーがどうとかそんなことは今の俺には関係ない。あって無いようなものなのだから。
たったそれだけでこのISは行動を停止した。しばらく身構えるものの再起動する気配もなかった。
それを確認すると気持ちを落ち着かせルシの力も抑えた。
「全く、助けに来るのが遅すぎなのよ。危なかったんだから」
終わったのを理解したのかISを解除した鈴が文句を垂れてきた。どんな時でも口数が減らねーやつだ事。
「うるせぇよ。そんだけ言えてるんだ、なんも問題はないだろ」
「なんですってぇ!」
こんな事があってもここまで言えるあたり、やっぱり心配する必要はなかったらしい。まぁ、鈴に関してはしぶといからそこまでじゃなかったけども。
「大丈夫?更識さん。怪我とかはしてない?」
「あたしにはそんなこと言ってくれないくせにー」
「黙れ」
鈴を一喝すると、自力でISを解除してへたり込んだままの更識さんと同じ目線になるようしゃがむ。
「大丈夫?立てそう?」
不安げに揺れるその瞳が、どれだけ恐怖感に襲われていたかを物語っている。死と隣り合わせの戦闘をしたことがない更識さんには辛かったのだろう。大人しい性格なのだから尚更に。
「おっと」
突然抱きつかれ体勢を崩しかけるもなんとか耐える。少しばかり慌てるものの更識さんの肩が震えているのに気づく。
微かに聞こえる嗚咽。俺の制服をつかんでいる手は固く閉じられていた。
こんな時ぐらい我慢しなくてもいいのにと思う。でも、何故かそういってあげることはできなくて。だから、代わりに頭を優しく撫でることしかしてあげれない。
こんなことしかしてあげられなかったけど、少しだけ震えが収まったように思えた。
空気を読んだのか鈴も茶化してくることはなく、今はそれがありがたかった。
“怪我人は1人も居ない。ありがとう、お前のおかけだ”
しばらくたち更識さんも立てるようになった時、姉さんから通信が入った。
「.....あのさ、姉さん?怒ってる?」
何故かインカム越しに聞こえる声には怒気か少しばかり含まれているような気がした。
“まぁな。今回の件を鎮めてくれたのは感謝しているが、ルシの力を使ったのは別件だ。最後にすると言ったのに破ったからな、まぁ、反省文で許してやる”
そう言い終わると一方的に切られた。
反省文は仕方ないかなと思う。姉さんが言っていたように最後にすると俺が約束したのだから。どれくらい書かされるか分からないけど甘んじて受け入れようと思う。
「千冬さんは何て?」
「反省文だとさ。割とお怒りだったよ」
「ふーん。まぁ自業自得なんじゃない?でも、助けられたのは確かだから打診してみるけどね」
「頼むよ」
「...........頑張ってね?」
そんな他愛のないことを話しながらピットに戻っていく。
ハッキングの影響で閉められていたドアや障壁も元に戻り、もう全てが終わったんだと思った。アリーナこそ被害を被り修理しなければならないだろうけど、怪我人がいなかったから特に問題はないはずだろう。
ルシの力を解放したせいで疲労がとてつもなくて、ちょっとばかり足元がおぼつかないような気もする。
早く帰って休みたいな、そう思ったその時。
ドスリと腹を何かに貫かれる感覚が俺を襲った。
「一夏!?」
「織斑君!?」
焼けつけるかのような猛烈な痛み。ルシの力を解放したとしてもここまでならないくらいで、到底言葉で表せるような代物じゃなかった。
あまりの痛みに絶叫するが、せりあげてくる血がそれを邪魔する。
気道の方に流れ込んだせいでむせてしまい、まともに呼吸ができなくなってしまう。
体から力が抜けて膝から崩れ落ちた。腹に刺さった何かが地面とぶつかり抉れるもののどうすることも出来ない。
「悪く思うなよ」
微かにそんな声が聞こえたと同時にどさっと言う音も二つ同時に聞こえた。
視界の端には崩れ落ちた二人の姿が。ただ、息の根を止められてしまったのか、それとも気絶させられただけなのか。それを確かめるすべはない。
「このままでいられると都合が悪いのでな。未来の為だ、受け入れてくれ」
思いっきり背中を踏みつけられ、腹に刺さっていた何かを強引に引き抜かれた。
「あ、があああっ!!??」
「ふん、流石はルシ殺しの武器なだけあってひと突きで虫の息か。まぁ安心しろ、殺しはしない」
遠のいていく意識の中、黒いスーツを着た男の手に持っていたものが目につく。
先端が二又に分かれた巨大な槍。
(どうしてこいつがそれを!?)
意識が朦朧としているとかそんな事と関係なく驚愕する。
あれは4年前に壊したはず。確かに目の前で修復不可能な状態になるまで見届けたはずだ。なのにどうして。
「どうして?そんな顔をしているな。そう思うのも無理はないだろう」
だんだんと遠のいていく意識。あの槍で貫かれた腹からはとめどなく血が溢れ出す。本来なら刺された程度の傷ならすぐ癒える。だけど、その回復力をあの槍の力で阻害された。
抵抗しようにも体に力が入らず、指の一本すら動かすことが出来ない。
「だが、必ず知ることになるだろう。お前の意志関係無く、な。だから今は寝ていろ」
首筋に走った鈍い痛み。
意識はそこで途切れた。
IS学園の地下には限られたごく一部の者しか存在すら知らない極秘エリアがある。
網膜、ID、指紋、果てはDNAをスキャンさせる高度なセキュリティをいくつも経て入ることを許されるその部屋。
そこには織斑千冬、そしてその後輩である山田真耶の姿があった。
「結果は?」
「予想どおり未登録のコアでした。織斑君が独立した制御系統だけを攻撃していたおかけで苦労することなく検査することが出来ました」
真耶が調べた昼間襲撃してきたISのコアはどの国コアでもなかった。
これだけで戦争の火種になりかねないほどの物。
なぜならISのコアは篠ノ之束以外の者には作ることができない、そう世間には認識されている。
そしてその篠ノ之束は現在失踪していて誰も行方が分からないまま。
未登録という存在しないコアがあるという事実。
「このことは一切公表しないほうがいいな。何が起こるか何て想像がつく。しかし、な」
「えぇ、無人機という事実も見過ごせないです」
そしてそれ以上に問題だったのが、このISは無人機だったということ。
ISは人が乗らなければ動かない。しかし、現にそれは実際に起きてしまった。
どこのの国も第三世代機の開発に手間取る程度の技術力しかない以上、無人機というものに余力を裂くことは出来ない。
胃ってしまえば机上の空論と言っても差し支えないだろう。
しかし、それを実現させかねない人物をたった一人千冬は知っている。
(お前なのか、束.....?)
もう何年も声すらかわしてすらいない幼馴染みの姿が脳裏に浮かぶ。
溢れ出す疑念が千冬の中に渦巻いていた。
「今回の事ってあんたは関わっているのか?」
電話越しに聞きたかったことを単刀直入に聞く。
挨拶とかそんなことを聞いて入れるような場合じゃないのだから。
「うぅん、私じゃない。疑われるのも仕方ないかなと思うけど、信じて」
「..........疑っちゃいないんだ。ただ、確かめたかった」
「うん」
分かっていたはずだった。でも、ISを作れるのは束さん以外には知らない。だから、疑ってしまった。
後悔の念が溢れ出す。
しばらく沈黙の後、俺から切りだす。
「......なぁ、束さん。なんであいつがあの槍を持っていたんだろうな?壊したはずなのに」
「壊したはずなのに存在する。実際に見ていたわけじゃないから正しいか分からないけど、偽物をつかまされたとしか言いようがないよ」
「...............」
ルシ殺しの槍、ロンギヌス。
磔にされたイエス・キリストの生死を確かめるために脇腹を突き刺したと呼ばれる槍からあやかってつけられな槍。
いろいろな創作物で神殺しの武器としてあるように、あの槍もルシ殺しとして存在する。
能力を持たない人間が兵器を使わずにルシを殺せる唯一の手段であり、その槍を持った人間は槍に埋め込まれたクリスタルの力でルシの一切の攻撃を無力化してしまう。
ルシを作った奴らが、ルシに抵抗させないために作ったもの。
だからこそ、4年前に壊したのだが意味なかった。
「なぁ、あいつは一体何者なんだろうな。未来とか、いずれ知ることになるとか、訳分からないこと言ってたんだ」
「.........あのね?もしかしたら知ってるかもしれない」
「ッ!?ど、どういうことだよ束さん?」
一瞬束さんの言ったことが信じられなかった。
「10年以上前、ISを開発するのを手伝ってくれた人がいたの」
「........本当なのか?」
「今嘘ついたって意味ないよ。でね、名前は頑なに教えてくれなかったから知らない。でも、彼がいなかったら絶対ISは完成しなかったと思うよ。私が言うのもアレだけど変わった人だった。学校には通ってないみたいで一日中手伝ってくれてた。あのね、ちーちゃんはその人のこと知らないんだよ?あの人が避けていたように見えたけど本当かは分からない」
「今はその人どうしてる?」
「......お墓の下に眠ってるよ。ISが完成してすぐの時だったかな?居眠り運転のトラックにはねられて即死だったみたい。あまりにもあっけない最後だったよ。お葬式にも参列したし、棺に納められた遺体もきちんと見た。だから、人違いかもしれないけど、そうは思えないほど似ていたんだ」
「そっか。ごめん、思い出させて」
「大丈夫。もう気持ちの整理もついたしね。それじゃ、怪我早く治るといいね」
そう束さんが言うと一方的に切られてしまう。今までよくあったことだから今更なんとも思わないし、束さんらしいから気にすることもない。
でも、それより亡くなったと言っていた人のほうがひどく気になった。
殆ど他人に興味を示さない人だから余計かもしれない。
「その人がいなければISは完成しなかった、か」
思わず口に出してしまったもののそこが気がかりだった。その時点でただ者じゃないが、もう生きていない。
だから、言っていたように人違いだろう。死んだ人間が生き返ることなどないし、そもそも墓の下とも言っていたから火葬されているのは確実だ。なら、絶対ありえないことだから。
大きなため息を吐くと考えるのをやめた。
今の俺にするべきことは、早くても完治に1ヶ月はかかる腹の傷を治すために、極力安静にしていなけない事。
一般生徒に怪我人はいないし、更識さんと鈴も目立つような怪我はしていないと、保険医の先生は言っていた。怪我を負ったのは俺だけになるが、誰かがこうなるよりよっぽどいい。
あの襲撃の後処理は姉さん達がやってくれるはず。
今はこれでよしとしよう。
どうにか切り抜けることが出来たのだから。