青空の少女   作:ミスターK

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「大人しくするぶんには問題ないくらいには塞がったみたいね。一時期はどうなるかと思ったけど、なんとかなったわ。織斑先生に言い寄られて大変だったんだから」

 

「......すみません」

 

「いいのよー?自分の弟が大怪我をしたんだもの。当然の事じゃないの」

 

 

ーーー家族に心配をかけすぎじゃありませんか、貴方は。

 

不意にセシリアに言われた言葉を思い出してしまう。

あの時能力を使う他に方法が思い浮かばなかったし、他の方法があったとは思えない。

最後の予想外のアクシデントこそあったが、いくら考えてもいい答えは出ない。このまま、過ぎた事に囚われるのもよくないのかもしれないけど。

 

「それにしてもー」

 

「?」

 

「あなたって着痩せするタイプ?脱いだら筋肉凄いわね。触っていい?というか触らせて」

 

「いきなり何を言いだすんだ.....」

 

あまりの話の飛びように呆れが隠せない。さっきまでの真面目なのはどこに行ったのだろうか。

 

「いいじゃないのーん。ちょっとだけだから、ね?減るもんじゃないし」

 

目を怪しく光らせ両手をワキワキ動かしながら近づいてくるのは、シュールであり恐怖でもある。

お巡りさん助けて、変態がここにいるんです。

.......本当はそう言いたい所だけど、生憎IS学園にはお巡りさんはいない。

誰が言ったか現実は非情である。全くもってその通りだと思う。

 

「いや、減るもんじゃないとかそんなんじゃないと思う」

 

「はいはい分かってるわー。アメリカンジョークよ、ジョーク。本気にした?あっはっは」

 

「.......笑えないって」

 

本当にこの人が保険医の先生でいいのか心配になる。口ではそう言っているものの目だけは本気だった。

やばい、色々な意味で喰われそう。

 

「ていうかそんなに触りたいなら、彼氏でも作ればいいんじゃないか?」

 

「やーよ?」

 

.....即答だった。

 

「全員っていうわけじゃないけど、今時の男って顔だけのスッカスカのやつばかりじゃない?顔がいくら良くてもひょろひょろのクソもやしで、キモいくらいに白いんだもの。あんなのいざって時にボロられて終わりじゃない」

 

「........よくもまぁバッサリと。いざって言うときは考えすぎだとは思うけど」

 

「なーに言ってるの、私なんかどれだけあったが分からないわよ?昔は顔につられて付き合っていた男が居たんだけど、不良に絡まれたことがあって置いてけぼりにされたことがあったし」

 

「.....実際にあったんだ」

 

「まぁね。ちなみにその不良どもは全員まとめて病院に送ってあげたけどね。逃げた男は判別不能になるまでタコ殴りにしてゴミ箱に捨てたけど」

 

「...............」

 

まさかの展開に声が出なくなる。てっきり警察を呼んだのかと思ったらまさかの返り討ち。

普通の女よりは身体付きが違うのはなんとなく分かっていたけどまさかここまでとは。

何者だこの人。

 

「ふっふーん。空手で全日本5連覇した実力舐めんなよ?」

 

「舐めてないから.........」

 

「まぁ私のことはどうでもいいとして、あなたはとても強そうだし心配はないわよね。それにイケメンだし、中々の優良物件だと思うわよ。あなたと一緒になった子は幸せ者ね」

 

「腕っ節と顔とかで決められてもな.....」

 

まぁ、そんなにやわじゃないのは自覚しているし、たまに姉さんと組手をするくらいだから弱くはないとは思う。

でも、それは俺の考えでしかないから他人の意見は結構役に立つ。

まぁ、この先生のようにちょっとばかり危ない人だとしても。

 

「別に最初はそんなものでいいんじゃないの。恋愛なんてそんなもんでしょ?」

 

「........何故恋愛の話に飛ぶ?」

 

「いーの、黙って人生の先輩のアドバイスを聞いてなさい」

 

人生の先輩って言っても聞かされた話じゃ、顔だけの男に逃げられフルボッコにしたということくらいだから、まともな恋愛をしてなさそうだし、そもそも俺と10歳程度しか離れてないくせに先輩もクソもあるのだろうか。

 

「...............声に出てるわよ」

 

ちょっとばかりお怒り気味だった。

どうやら、触れてはいけないところに触れてしまったらしい。

 

「こほん。まぁ、最初のそんなもんよ。顔とかそんなもので惹かれあって一緒になる。そして一緒にいるうちに相手の内面を知るのよ。そこで受け入れられずに別れるか、もっと惹かれ合うかはそれぞれ。まぁ、顔が良いと女はホイホイ寄ってくるからかなり有理よ。金もあったら尚更良いわね」

 

「...........いいこと言っているようだけど、アンタが言うと対して説得力がない。しかも最後のって女の黒い部分だろ」

 

悪い男にとっ捕まった人だから特に。

しかも、顔だけのクソもやしとかボロクソ言ってるのも尚更で。

 

「...........やかましい」

 

ごつんと思いっきり拳骨を落とされる。流石全日本5連覇しただけあってめちゃくちゃ痛い。

 

「ま、高校生なんてあっという間なんだから、適当でもいいから彼女でも作って楽しむといいんじゃない?高校時代なんて遊んだ者勝ちよ」

 

あっはっは〜と笑いながら背中をバシバシ叩くのは、傷に響くからやめてもらいたいんだけども。まぁ、どうせ言っても無駄なだろうけど。

ため息をつくと暖かな日差しが差し込む窓の向こうに目線を向ける。

つい最近まで満開の桜はもうその面影がなかったかのように散った。

いつしか春は過ぎ去ろうとし、夏の訪れが感じる。

もう、6月に入ろうとしていた。

 

 

 

 

...........あ、やっべ。そろそろ家に帰らねば。マドカに1人がつまらないと電話越しに愚痴られたばかりなのすっかり忘れてた。

 

 

 

 

 

次の日。土曜日だったのを利用して外出届けを提出した。姉さんにもマドカから電話がかかってきていたらしく、私も顔を出すかなと苦笑していた。

マドカが1人なのは俺たちが原因だからいい案かなと思うし、喜んでくれるだろう。肝心の外出届けも何の問題もなく受理された。

電車に揺られながら、俺が住んでいる町の景色を眺めていると、どこからともなく懐かしいと感じる。

ただ、よくよく考えてみれば長いと感じる学園生活もまだ2ヶ月程度しか経っていなかった。

ここまで長く感じるのは色々なことがあったのからかもしれない。中学時代じゃ到底考えられないような出来事が多かったから。

今じゃ笑い話にできるけど、槍で突かれたなんてそうそうあるようなことじゃない。というかあるはずかないけど。

 

「...............」

 

気にしないようにしていたけど、やっぱりヒソヒソと噂をされていると居心地が悪い。

そういえばIS学園に入学した時もこんな風だったなーとデジャヴをかんじる。

IS学園内でこそ受け入れてもらえたものの、世間一般で言ってしまえば全くだった。やっぱり嫌われ者のレッテルは貼り付けられているままで、極一部では消えろと言う奴らもいるらしい。とは言え、直接嫌がらせをするような奴は今の所いない。

誰にも好かれようとなどは思っていないのもあるけど、俺からすれば今のままでも十分恵まれていると思う。だから、これ以上の事は望んではいない。

居心地の悪い電車を降り、バスを乗り継ぎやっと家に到着した。

大きいとも小さいとも言わないような特徴のない一軒家。それでも、住み慣れた家だから帰ってきたんだなと思う。

ただ。

 

「だぁぁらっしゃぁぁぁ!!」

 

「うおわっ!?」

 

ただ、家に入った途端飛び膝蹴りを容赦なくかましてくるマドカのせいで全て台無しになったのだけれど。とっさに反応できたおかげでどうにか避けることは出来たが。

てか、傷に響く........

 

「帰るのが遅すぎるぞ兄さんっ!!」

 

「いきなりそれか!?」

 

一応怪我してるから安静にしないといけないと伝えたはずなのだが。そんなことも御構い無しに仁王立ちのままマドカは見下ろしてくる。

心なしか背後に般若が見えた。

 

「私がどれだけ寂しい思いをしたと思っているんだっ!」

 

「...............いや、悪かった。忙しくてなかなか帰れなかったんだ。マドカの好きなプリンも買ってきたから」

 

「どうでもいい!!そんなもので私が釣られるとでも思ったか!」

 

「...............」

 

いや、いつもはすぐ釣られるくせによく言うな。まぁ、言い返したところで言いくるめられるから言わないが。

 

「うさぎちゃんはな!寂しいと死んじゃうんだよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「え、えぇぇ...............」

 

住宅地にマドカの声が響きわたった。

絶対に近所迷惑になるだろこれ。

昼間だとまだ人が少ないからマシだけど、夜に帰ってたら確実に苦情が来るに違いない。

昼間で本当に良かった.......

 

「分かった。分かったから取り敢えず家に入ろう。ここじゃまともに話もできない」

 

へたり込んだままで話すのはちょっとばかり恥ずかしいし。何しろ注目を集めかねない。

コクリと素直に頷いてくれたもののなぜか動こうとはせず、ただ無言で手を差し出された。

立ち上がるのに手を貸してくれるかと思ったけど、その手は何故かくれくれ。

 

「プリン寄越せ」

 

「...............結局貰うんかい」

 

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