やっと簪さん登場として鈴さんも登場です。
目次の方にもありますがTwitterを始めたので宜しくお願いします。
いやぁ、時間があるとスイスイ執筆できますね。
「お待たせしました。こちらが貴方の専用機になる打鉄二式です」
やっとここまで来れた。
長い道のりだったと、今まで歩んできた道を振り返り純粋に思う。
でも、それは逆にスタートラインにやっとたったということでしかない。
完璧な姉と常に比べ続けられた今までの日々。母親だけが味方でありそれを支えに今まで頑張ってきた。それでも、姉が出来るのだからと当たり前のように言われ続けた。
姉のように才能があるわけじゃない。天才と言われる頭脳があるわけでもない。大人を圧倒するほどの実力があるわけでもない。
精々ちまちまと努力することしか取り柄がない自分。
こんな程度で満足などしていられない。そうでないと姉に追いつくことなど到底出来ないのだから。
「こちらが詳細なスペックデータです。何か気になるところがあれば、何なりと申し上げください」
電子パネルに映し出されるデータに目を通していく。
気になるところも、調整不足だと思う場所はない。
全てにおいて文句のつけようがないくらいの出来上がりだった。
「事前におっしゃっていた通り、山嵐で使用するマルチロックオンシステムについては一切の手をつけていないのでご注意ください」
「はい、大丈夫です」
言われた通りマルチロックオンシステムの部分だけは何一つとしてプログラムが書き込まれてはいない。自分でここだけは完成させると決めたのだから問題はない。
自分の手でこのISを完成させる。そう決めたのだから。
「では、問題がないようなので帰らせていただきます。これからも倉持技研をよろしくお願いします」
口調こそ丁寧だが明らかに怒気がかすかに含みながらいう技術者は、返事も待たずに踵を返して行ってしまう。
「..............................」
予想はついていたが、こうもあからさまに態度に出されると怒る以前に呆れてしまった。
やはりあの事を根に持っているのだろう。
脳裏にあの日の出来事が思い出されてく。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「う、打鉄二式の開発を取りやめる?どうして....!?」
「政府からの通達がありました。至急織斑一夏氏に使用するためのIS開発に取りかかれ、その他進行中のプロジェクトに関わる人員全てを動員し今すぐに始めろ、とね」
「だからって..........」
「これは重要なことなのですよ。織斑氏に我が社の製品を使っていただけること、それがどれだけ我が社に利益をもたらすかお分かりですか?それからでもいいでしょう?名の知れた我が社製という輝かしい名前が着いてからのほうか貴方にとってもいいのでは?」
「...............はい」
つまり、この開発主任は自社の名前を得ることを優先したのだ。
お前のISを作るより織斑氏のISを作る方がはるかに名が売れるから諦めろと遠回しに言っているもの。
何も言えずに、涙だけがにじむ。
どうしてこんなことになってしまったのか。うなづくことしかできない自分が恨めしい。
向かい合うように座る織斑一夏をキッと睨む。この人がいなければこんなことにならなかったはずなのに。
「では織斑氏、本人の同意も取れましたのでこれから貴方のIS開発を始めさせていただきます。ご希望の戦闘スタイル等ございましたら何なりとお申し付けください。我が社総出でご満足の行ける出来に仕上げてみせます」
「....本気でそれを言ってるのか?」
今まで黙っていた織斑一夏という人が口を開く。
「え、えぇ。ここで嘘を言っても意味ないですから」
今すぐにでも帰りたい気分だった。開発を取り止められた今、この倉持技研にはもう用事などない。
開発主任が困惑しているみたいだったがどうでもよかった。
「悪いけどさ、あんた達が作ったISには乗りたくない。作ってもらう身で偉そうかも知れないけど」
「な、何を言いだすんです!?貴方に専用機を作るのは国直々の命令なんですよ!?分かっているんですか?」
「それくらい分かってるつもりだよ」
「それなら.........!」
「俺はそれを分かった上で乗らない、そう言ったんだ。可哀想だろ?そこの女子が。さっきからずっと、泣いてるじゃないかよ」
「...............え?」
自分のことだと理解するのに時間がかかった。
可哀想?
自分が?
母以外から言ってもらえなかった自分に?
「俺はそこの女子のことは全く知らない。でも、専用機をもらえるってことは相当努力したってことで間違いいはずだ。それこそ常人じゃあ考えられないくらい。それを俺みたいなド素人のためにバッサリと切り捨てるのはどうかと思うよ」
「で、ですが本人の同意もありますし....」
「同意ねぇ?無理矢理ハイと言わせておいて何言ってんだ。そんなの同意もクソもないだろうに。作ってやれよ。打鉄二式だっけか?そこの女子の専用機を」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
彼がああ言ってくれなかったら、今頃は途方に暮れていたことだろうと思う。
結局あの後まともにお礼を言うことはできないままお開きになってしまった。
でも彼はこの学園の生徒だからお礼をしようと思えばいつでもできるし、少し前の試合だって飛びつくように見に行った。
でも、行くなら完成させてからにしようと思っている。胸を張って完成できたのは貴方のおかげだと、ありがとうと伝えたい。
「頑張って完成させないと」
だから今はこの目標に向かおう。ずっとこうして頑張ってきたのだから。
マルチロックオンシステムは作り上げるのはかなり難しいと聞いている。そもそもそのシステムを搭載した事のあるIS自体が存在しないため参考にできるものはない。
あるのは自分の頼りない知識だけ。
それでも完成させるのだ。
彼にお礼を言うために。
「.........転入生だって?こんな時期にか?」
1年2組に転入生が来る。その話をクラスに着くなり隣のクラスメイトが言ってきた。
「まーね。なんか色々と手違いがあったみたいで入学が遅れたみたいだね」
ここIS学園は、転入することは並大抵のことじゃない。入学試験をはるかに超える知識及び技能を求められるし、大前提として国からの推薦が必要になる。
だけど、手違いが原因なら入学試験に合格してさえいれば入学できるから問題はないのだろうと思う。
というかーーー
「てかさ?どこからそのこと知ったんだ?昨日までは転入生のての字もなかっただろ?」
「ふっふっふ!女子の情報網を舐めちゃいけないよ」
「いやナメてないです。むしろ超怖い」
女子の情報網の怖さはここに入学してから嫌という程味わった。その速さは光通信を越えてんじゃなかろうか。
「あ、そういえば転入生って代表候補生らしいんだよね。これはさっき聞いたばかりだけど」
「代表候補生か......そりゃ随分とすごい奴が来るんだな。どこの候補生?」
「んーと、確か中国だったかな?」
「......中国か」
「転入生とやらが気になるのか?一夏」
鞄を机に置いてきた箒から質問が投げかけられた。その顔が心なしかニヤついてるのには気がつかないでおく。
.......そう言ってる時点で気づいてるんだけども。
「違うって。中国に帰ってった奴を思い出しただけだよ」
超という言葉が生温いと感じるほど料理がド下手くそな素直じゃない奴を。本当に家が中華料理店かと疑うほとにド下手くそだった。
元気にしているといいけど。
ご飯くらいまともに炊けるようになっている事を願いたい。
「まぁこれでお前のライバルは増えたわけだな。半年フリーパスがかかっているから責任重大だな?」
「期待してるよー織斑くん」
半年フリーパス。
一ヶ月ごにあるクラス対抗戦の優勝賞のこと。聞くには学食のデサートが半年も無料になるのだとか。俺はあんまり興味ないけど、クラスメイトたちはそれがどうしても欲しいようだ。
買えばいいだけじゃないか?とうっかり言ってクラスメイト全員から説教されたのは記憶に新しい。
「ははは、そこまで期待しないでくれよ。俺はISの操縦技術は大した差はないんだからな?本当は専用機持ちのセシリアに出てもらいたかったんだけど」
「何言っているのですが一夏さん。他のクラスの方も訓練機で出場するのですから、ご自分が専用機を持っていないからわたくしが出場するというのはダメですわよ。それ以前にわたくしはクラス代表じゃないのですから」
セシリアに苦笑いされながら注意される。俺は自信がなかったから代わりに出てもらおうと思ったけど、本人に拒否されたから何もできないし。
「分かってるって。まぁ、やるからには頑張るさ」
セシリアからあの日の夜に問いかけられた問いは今でも出ていないままだ。それを伝えるまでは関わることなどなかったが、素直に答えが出ていないと伝えたら満足そうにうなづいていた。
それを機に俺たちは仲直りををして今に至るわけだが、なんで満足そうにしていたのかは本人が話してくれないから分かんないけども。
「その通りですわ。勝ち負け以前に努力することが大事ですから」
「こればかりはセシリアに賛成だな。まぁ、クラスメイトたちが何言うかはわからないがな」
「..........怖いこと言うなよ」
本当に何か起こりそうだから笑って済ませないんだよな。今ですら目が少し怖いくらいだから。
「いどもーっ!!」
突然クラス中にやけに甲高い声が響く。どうやら声は入り口から聞こえたらしい。懐かしさを感じながら目線をそこに移す。
クラスメイトたちはいきなり響いた声に困惑していたが。
「あ、いたいた。久しぶりね一夏。元気にしてた?」
目が合ったのに気付いたのかニィッと笑い、白い歯が唇の隙間から微かに覗く。
「あぁ、おかげさまでな」
鳳鈴音。
さっきまで話題にしていた中国に帰ってしまった、俺の数少ない親友の1人。
そいつが、何から何まで変わらない姿のまま、決して友好的には見えない獰猛なこいつらしい笑みを浮かべ立っていた。
「大体1年ぶりくらいか」
「そうね。まぁ、あたしはこの1年でかなりの成長したんだから。料理の腕も、ISの実力もね」
自信があるかのように二の腕をポンポンと叩く。
相変わらずチビのままだが。
「で?それだけ自信ありげに言うってことは、少しはまともになったって期待していいんだろ?」
「まぁね。なんせあたしはこの1年で
卵を割れるようになったんだから!!(ドヤァ)」
「「「「「それって自慢する事!!!???」」」」」
堂々とした威厳すら感じるその姿。
..........ただ、言ってることで全部台無しなんだけども。
鈴、1年かけてやっとそこかい。
いやまぁ、まだ進歩した方だとは思うけどさ...............