Part1 性転換の朝
「はぁ…」
なぜ僕は、こんな目に合っているのだろう。
僕の名前は
男として生まれ、友だちを作り、勉学に
しかし、夏休みの初めに問題が起きた。明日は何をしようか、友だちと遊びに行こうか。そんなことを考えて、布団に入る。いつも通り眠りについた。その、翌日のことだった。
朝方、僕は目を覚ます。布団を
「やばい…」
遅刻は間違いない。すると、手にしていたスマホが鳴り出す。かかってきた電話の相手は、琴葉
「あかり〜?」
「ごめん! ちょっと寝坊しちゃって…」
「…あかりが寝坊って、珍しない?」
「急いで行くから、電話切るね!」
「あぁ、うん。でも体調大丈夫なん?」
「? 大丈夫だよ」
「そか。声がいつもと違うから、風邪やと思ったわ」
電話を切って、クローゼットを開けて服を取り出す。いつもの服を着ようと
寝ぼけているのかと思い、服を着たらすぐに洗面台で顔を洗った。鏡を見る。そこに写っていたのは、可愛らしい女の子だった。僕の動きに合わせて動く。そこに映る少女が僕だとは、到底思えなかった。思いたくなかった。
さっき、茜が声が変と言っていた。もしかして、と思い壁に話しかける。少し高い。それは確かに、女性の声質だった。
全力で、自分が女でない証拠を、今まで通りの男である証拠を探した。だけど、頭から足まで全てが僕が女性であると教えてくる。一息ついて、また鏡を見た。夢かもしれないと思い、
「はぁ〜!?」
落ち着けば落ち着くほど、何がなんだかわからなくなる。両親は仕事で当分家にいないから、頼れる人はいない。部屋に戻ってクローゼットの中から、女性でも着られるような服を探す。黒と白の、ワンピースような服。昔とある友人に押し付けられた服だけど、今だけはありがとう。
女性になって、僕の背は縮んだみたいだ。昔貰った服だけどサイズが合う。下着は母親の物を盗って着けた。恥ずかしいけど、ないよりはまし…かな。
服を着て、鏡を見る。うん、似合ってる。あの友人は、この時を見越していたのかもしれない。そんなことを思いながら、僕は家を飛び出して琴葉家に向かった。今は、1人になりたくない。誰でもいいから、人に会いたい。
走れば5分で行けるほど近いはずなのに、中々見えてこない。というか、体が上手く動かない。走りづらい。落ち着いて歩こう。このままだと、どこかで倒れてしまう。結局着いたのは、10分後だった。
『ピーンポーン』
「は〜い、あか…り…君? じゃないか、どなたですか?」
「う、うん。あかりだよ、紲星あかり」
「…え?」
出てきたのは水色の髪の少女、琴葉
「嘘でしょ!?」
「本当…」
「あ、あかり君、女の子になっちゃったの!? ゆ、夢だよね。 痛っ、夢じゃない… え?」
「あおい〜? どないしたん?」
「ちょっ、お姉ちゃん! 今は来ないで!」
「? は〜い、ほんなら、ご飯作って待っとるわ」
「…それじゃあ、あかり…君? 詳しく説明してもらってもいいかな? ちょっと信じられなくて…」
すんなりとは信じてもらえないと思ってた。だから、説明する覚悟で来ている。近くに住んでいて、頼れる人は琴葉姉妹しかいないから、頑張って説明しないと。この状態で1人街に放置されるわけにはいかないからね。
〜少女(?)説明中〜
「…起きたら、そうなってたんだ。それで、これからどうするの?」
「葵、信じてくれるの?」
「君の話し方、あかり君そっくりだから。それに、その服。昔、ゆかりちゃんに貰ったやつでしょ?」
「…よく覚えてるね」
「覚えてるよ。大事な友だちのこと、忘れるわけ無いでしょ」
「…ありがと。」
「なに照れてんの。早く家に上がって。茜姉にも話しておくから」
葵に信じてもらえて、良かった。1人信じてくれると、こんなに安心できるんだね。少なくとも、広い街に独りぼっちは避けられた。
玄関で靴を脱いで、リビングの扉に手をかけると部屋の中から姉妹の声が聞こえた。声というか、叫び声。多分茜の声だろうね。叫び声にびっくりして扉から手を離すと、中から開けられた。
「入って。
「…ほぉ、こんな感じなんかぁ。かわええなぁ。ほんまにあかりなんか?」
「うん、あかりだよ」
「…なぁ、あかり。あんな落ち着いた感じでも、葵凄い動揺してるんやで。さっきも「お姉ちゃん! そんな話いいからぁ!」
「ちぇっ」と言いながら席につく茜。その隣には葵も座っている。僕は反対側の椅子に座って目の前のご飯に目を輝かせる。寝起きで何も食べずに走ってきたから、なんでもいいからご飯を食べたかった。茜の作る料理は、素直に美味しい。
「それで、あかり君。これからどうするの?」
「…どうしようかな。原因もわかんないし、直し方もわかんないし、何をしたらいいのか…」
「わかんないことを考えても仕方ないし、服、買いに行かへん? いつ治るかわからないし、着替えは用意しとかんと」
「…じゃあ、ご飯食べたら近くのショッピングモールに行こう。あそこなら、色んな服があるから。」
「僕、女の子の服とかわかんないからさ、選ぶの、手伝ってね?」
「勿論やで〜」
「任せて」
そう言って僕たちは、ご飯を食べた後に家を出た。