Part48 ただいま我が家!
「ただいまー!」
「…お邪魔します」
「誰もいないよ?」
「だよね」
誰も家にはいませんし、返事がないのもわかってます。でも言いたいんです、ただいまって。何度か帰ってきてはいますけど、あれは少し寄ったって感じでしたから。今回は“帰ってきた”って感じです。どれくらいの間になるかは分かりませんけど、寝泊まりするわけですからね。
「荷物、どこに置けばいい?」
「どこでもいいよ、お父さんの部屋以外でね。僕の部屋でも、お母さんの部屋でも、大丈夫」
「じゃあ、あかり君の部屋に置かさてもらうね。案内して」
「わかった。まぁ、わかってると思うけど」
秋にばったり会いましたし、葵もわかってるとは思いますけど、案内しますか。玄関からちょっと歩いたらリビング、キッチンもついてますしご飯もここで食べるのでLDKですね、多分。リビング・ダイニング・キッチン、だよね?
えーっと、そこから右に行くと廊下と階段があります。階段を登るとそれぞれの部屋になってます。廊下の左右にはお風呂とトイレがあります。で、色んな場所に収納もあります。玄関とリビングの間の廊下とか、階段下とか、階段
「葵、空き部屋もあるけどどうする?」
「………空き部屋にする、その方がいいでしょ?」
「一応、その方がいいかなって」
「じゃあそうしよう。寝具ってある? 敷布団でも
「僕のベッドを使ってよ。僕が親のベッドで寝るからさ」
「…わかった」
あまり僕のベッドを使って欲しくはないですけど、床で寝かすわけにはいきませんから。葵は香水とか使ってないと思いますし、ベッドでスナック菓子を食べるようなこともしないと思うので僕のベッドが荒らされることはないと思いますよ。でも、ベッドに僕の匂いが付いてるかもしれませんし、不安な気持ちはあります… 葵は嫌だったりしないのかな、嫌じゃないなら良いけど…
親のベッドで寝てもらったほうが良かったのかな。でも、親がいない間に勝手に使っていいかわからないし、やめたほうがいいよね。僕も親のベッドは使いませんよ、あぁは言いましたけど床で寝るつもりなので。確かタンスに布団が少し入ってたと思うので、それを敷いて寝ます。冬用は葵が使うだろうから、夏用布団で寝ますかね。
「荷物置いてくる。階段下に置かせてもらうね、あそこって物置になってたでしょ?」
「うん、そうだよ。前はお父さんが色々置いてたけど、今は殆どないはずだから、荷物は全部置けると思う」
「じゃ、置いてくる」
「冷蔵庫とかチェックしとくねー」
さぁ、怖い怖い冷蔵庫チェックのお時間です。何回か家に帰ってきてたのに、冷蔵庫の確認は忘れてたんですよね。髪飾りを取りに来た時も、葵と鉢合わせた時も、気にもしませんでしたから…
…あれ、何も入ってない。夏から開けてないので怖かったんですけど、全部使い切ってたんですね。冷凍庫も野菜室も空です、そんな事あるんですかね。まぁ、夏休み前に買い出しに行った覚えはないですし、丁度使い切ってたんでしょうね。面倒だからって翌日の朝ごはんすら買いに行かなかったんでしょうけど、今だけはそれがラッキーですね。普段そんなことをしてたら、朝の僕が怒りますけど。
「戻ったよ、何かあった?」
「何もなかったから買いに行かないとって感じかな。行ってくるよ」
「わかった、私は待ってるね」
「…うん、行ってきます」
ついてきてほしかったな、とも少しだけ思いました。でも無理強いはよくないですから、1人で行きますよ。葵も家の探索がしたいんでしょう、多分ですけど。僕も家族と旅行に行くと、ホテルの中を歩き回って迷子になるタイプの人ですから。僕の家、探索するほど広くないですけどね。
「ただいまー」
…誰もリビングにいないのかな、葵は部屋かな? 茜も遊びに来てないんだね、お昼前だし居ると思ってたよ。今は買い物を済ませて帰ってきたところ、自転車にお米と野菜とお肉を乗せて帰ってきたので、冷蔵庫に運ぶのを手伝って欲しかったんですけどね… 仕方ない、何往復か頑張ろう。
これはここ、あれはそこ、それでこれは… どこに入れてたか覚えてないし、適当に入れよう。昔は野菜室の中のどこに何を置くか、全部覚えてたんですけどね。習慣になってたって言ったほうがいいのかな、自然と配置できたんですよ。アイスは… この段だった気がする、冬だからそこまで溶けないとは思いますけど、溶けたら嫌ですし。
一通り家に運び込んで、仕舞えたのでテレビでも観ようかな。年末年始だし特番とかやってそうじゃない? そんな時、玄関から扉を開ける音がしました。
「ただいま、食材の買い出しありがとね」
「おかえりー、冷蔵庫にしまうの大変だったよ。葵はどこ行ってたの?」
「ちょっと周りを歩いてただけだよ。近くの人に挨拶したりとか、そんなところ」
「ふ〜ん、呼び戻して手伝ってもらえばよかったよ」
「あはは、呼んでもらえたら聞こえたかもね」
挨拶かぁ、僕も行かないとかな? ずっと家を開けてたし、ご近所さんに心配かけちゃったかもしれないしさ。それで葵が代わりに行ってくれたのかな? そう思っておこう、今から行くのは嫌だし。疲れてるからね、行きたくない。
「ねぇ、お昼は何食べる? 適当に色々買ってきたから、何でも作れるとは思うよ?」
「私がやるよ、疲れてるでしょ? 座って休んでて」
「は〜い。っと、こんな柔らかかったっけ。久し振りに座るとソファーが柔らかい気がしてくるや」
「…うちのソファーが硬くてすみませんねぇ」
「そういうわけじゃないよ!」
少し、休もう。半年前の暮らしに戻っただけなのに、思ったよりも疲れてしまったみたいなんだ。もう少し頑張ろうと思ってたんだけどね、葵がご飯を作ってくれるみたいだから、ね。おやすみなさい。
「えぇ… ここで寝るのか…」