「それでは、ホームルームを始めまーす。頭が休みに取り残されてる人、現実に帰ってきてますかー」
「ゲームしたいでーす」
「現実見てくださーい、もう高校でーす」
「…登校してきてるんだから、現実は見てるんじゃ…」
「はいそこ! 細かいことは気にしない!」
…僕のクラスは、初日から元気です。先生も、茜も葵も、他の生徒も。寒いのにすごいですよね。そういえば、僕は結局マフラーも手袋も着けずに、寒さ対策は何一つしませんでした。いけるかなーって。結果は言うまでもないですよね。
「……」
「…大丈夫?」
「…寒い」
「カイロいる?」
「大丈夫、なんとかなる」
「気をつけてよ、何かあってからじゃ遅いからね?」
「わかってる…」
寒いです。昨日の自分を殴りたいですよ、どうして冬の寒さを軽く見てしまったんでしょう。なので皆が楽しそうにキャッキャしてる中で僕だけ縮こまってます。時代に乗り遅れたような、寂しさと虚しさが僕に満ちてます。助けて。
「……それでは、ホームルームはおしまい! 1日頑張ってねー」
「頑張りたない〜」
「お姉ちゃんは後でちょっとシメとくか…」
「あ、あはは…」
寒さに耐えながら、1日頑張るとしましょう。葵が茜の方に歩いていきましたけど、それは気にしないでおきましょうね。というか、気にするほどの余裕もないです。初日ですけど、授業は易しくなったりしませんからね。気合入れないと、おいてかれちゃいます。ただでさえ寒いのに気が抜けてたら、夜な夜な勉強しないといけなくなりますからね…
「ん〜! 疲れたー!」
「お疲れ、大変だった?」
「葵はよく楽な顔してられるね… 話が長くて疲れちゃったよ」
今はお昼休み、屋上に葵と2人で来ています。ホームルームの後は授業だけだと思ってたんですけど、実際は学年集会とか先生の思い出話を聞く時間でした。冬休みに何があったとか言われてもわかんないよ、家で寝てただけだもん。
「おーい、誰かいるー?」
「はーい! いまーす!」
「早いね、そんなに私の作った梅弁当が食べたかったのかな?」
「久し振りですね、皆で屋上に集まるのも」
「せやなぁ、ちょいと寒いけど…」
「明日からは羽織るものを持ってきたほうがいいですよ、この時期の屋上は凍えちゃいますから」
ゆかり
「久し振りとは言っても、普段から色んな場所で出会うって話すから、懐かしさとかはないね」
「別に、休みの日に遊びに来なくてもいいんですよ」
「皆で遊んだほうが楽しいよ。1人用のゲームをやるのだって、ワイワイ話しながらそれぞれでやったほうが楽しいでしょ?」
「ヒメさんはそんな経験があるんですか? 私はないですけど」
「私もないよ、皆で集まったら一緒に何かするほうが好きだもん」
「結局、騒いで遊ぶのが性に合っとるよな。皆で話してたら寒さも飛んできそうや」
「良い感じのこと言いながら私の玉子焼き取らないで。梅干しからあげるから、私の返してもらうよ」
「茜、沢山食べたいなら幾らだってあげるよ。ほら梅の玉子焼き」
「…寒さ、帰ってきたなぁ」
それぞれ自前のお弁当を食べながら、おかずを交換するのって青春な感じがしますよね。交換ですよ、取っちゃったら茜みたいになります。
…ミコトさんとだけは交換しないようにしましょう。何倍にもなって返ってきそうなので。
「そういえば、先生から聞いた? 今度の球技大会の話」
「聞いてません!」
「結構大切な話なのに、聞かされてないんですね」
「どんな話なんですか?」
「来月、クラス対抗で球技をする大会があるんだよ、全校生徒参加でね。それで、大会でやる球技を投票で決めるんだってよ。勿論、全員投票が必須だって」
球技大会… 球技って球を使うスポーツのことですよね、クラス対抗ならチーム戦? 野球とかサッカーとか、ラグビーとか? ラグビーの球って綺麗な丸じゃないですけど多分球技ですよね。バスケットとかバレーもチーム戦の球技か、でも人数が少ないかな?
「梅の大食い大会に清き一票をお願いするよ」「FPSとかどうです、あれもタマを使いますよ。弾ですけど」「
「……ふむぅ」
「多数決で決めるなら、私達の票があってもその3つは無理でしょうね」
…多数決云々の前に、あの3つは球技ではないのでは? 蹴鞠って球技なのかな、詳しくないけど違いそう。梅とゲームは間違いなく球技ではないので、投票の段階にさえ辿り着けずに失格だと思いますけどね…
特に好きなものもないですし、葵か茜に合わせましょうかね。ミコトさんも本当は梅じゃない何かに投票してるでしょうし、それを聞いて合わせるのも… いや、聞いても教えてくれないですよね。あの人は、本当は違っても梅としか言わない人だと思います。
「なぁなぁ、雪合戦はどうや? 楽しいし、準備とかもいらんで」
「雪、降らないよ」
「それなら、降雪機とか…」
「一発ネタの為に降雪機を買うほどの資金は余ってないと思いますよ、この学校」
「それを言うならゲーム大会も無理じゃない?」
「そういう点では梅が1番だよ、私が全て用意する」
「…それぞれで考えて、投票してみませんか? 6票じゃ何も変わらないと思いますし、好きなものにしましょうよ」
「梅にするよ」「私の心は揺れませんから」「私は蹴鞠に拘りないからね?」
え、僕も蹴鞠に投票しようと思ってたのに… まぁまだ時間はあるでしょうし、ゆっくり考えますか。何も浮かばなかったら、『上に同じ』とか書いておいたらいいでしょう。記名制だったら真面目に考えますけどね…
「もうすぐ次の授業なので私は失礼しますね」
「授業は全員同じ時間に始まるんだから、私達もお開きにしようか」
「もうそんな時間かぁ。そいじゃ、また今度」
「さよならー」
お昼休みも終わり、教室に戻って次の授業です。と、思っていたのですが、球技大会の話をされました。それで、各自考えて投票する、と。まだ後の話だと思っていたので、何にするかまだ決めてないですね… こだわりもないですから、適当に書いて終わらせますか。
「え〜、全員分集まったのでこれは提出しておきます。それじゃ、授業はじめよっか。この時間私の授業でよかった~、って思いながら寝ようとしてる人は起きてねー?」
「…お姉ちゃんさぁ」
「あぁ、茜か…」
茜は寝たままでしたが、授業は進んで、僕達は帰路についています。今日は葵と2人で帰ってますけど、明日からは茜と途中までは一緒なはずです。今日茜がいないのは、居残りで先生とお話をしているだけなので…
「…球技大会、蕾ちゃんは何に投票したの?」
「ん〜? 蹴鞠にしたよ」
「え、ほんと?」
「うん」
「あかり君さぁ…」
「つーぼーみー!」
「あー、ごめん」
特に何事もなく、家に着きました。葵がご飯を作ってくれるようなので、僕はお風呂の準備でもしておこうかな。準備って言っても半分以上は放置ですけどね。あ、蹴鞠に投票したのは本当です。なんでもいいかなって思ったので。
「はい、軽く作ったよ」
「おー、美味しそう」
「美味しいと思うよ、美味しくなくても食べてもらうけどね」
「いただきまーす!」
「早いな… いただきます」
あたりまえのように美味しい炒飯を食べて、ちょっとぬるいお風呂に入って、明日の準備をして、前に積んでたゲームをやって、そろそろ寝ようかな。高校が始まっても、琴葉家に泊まってた時と殆ど生活は変わらないものですね。
「そういえば、さっき郵便受け見たら封筒あったからそこに置いといたよ。私が見ていいものか分かんなかったから開けてないんだけど、チェックしといてね」
「ん、はーい」
…茶封筒? 何だろ、うちの住所は書いてるけど差出人書いてないや。眠いけど、早めに見たほうがいいよね、多分。部屋に戻って開けようっと。
「…手紙と写真と、何かのファイル? あ、手紙に名前書いてある… お母さん!? 急にどうしたんだろ…」
差出人に『母親』って書いてあるんですけど、多分僕のお母さんだよね…?