色の変わった星とパステルカラーの姉妹   作:緑雨

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蕾Side1 オープニング

 

 こほん、皆様はじめまして。 …はじめまして、はおかしいかもしれませんが、紲星蕾と申します。 …葵とか茜は僕のこと、あかりって呼ぶけどね。それでも、僕は紲星蕾として、これからは生きていく。 …あかりと蕾で何が違うのって言われたら名前だけだけど、それでも僕にとっては大きな変化だよ。少なくとも、心の中では。

 

 今までは、性転換が治って紲星あかりに戻る日のために生きていた。勉強も、何もかも。だけど、もうそんなことを考えはしない。紲星蕾として幸せに生きるために、僕は毎日を生きていく。だから、言うならば… ここからが本編、ここまでも本編だけどね。僕の行動とか、何かが劇的に変わるわけじゃないけど… 蕾として生きる覚悟を決めるためにも、今までの話とこれからの話は分けていこうと思うんだ。 …紲星蕾として生きる、まだ決意は浅いけど、蕾としての思い出を積み重ねていけば… いつかは、蕾として生きる自信もついて、本当に紲星蕾になれると思うんだ。 …もちろん、今までのあかりとしての自分を保ったままに蕾になるよ、僕は。

 

 …柄にもない話はやめにしよう。自分で言うのもなんだけど、心の中で色々考えたり、作戦を立てて将来を展望するのは僕に合わないよ。そういうのは、葵とかミコトさんの担当であって… 僕や茜はぽけーって毎日を楽しく、必死に生きれば良いんだよ。考えるに越したことはないと思うけど… 考えすぎて普段と違うことして失敗するでしょ、僕や茜だと。だから、そういうのはしない。

 

晩ごはん、僕が作ってもいい?」

ん、わかった。じゃあ暇だし私はデザートでも作ってようかな」

何作るの? パンケーキとか?」

あかり君は何作るの?」

オムライスにしようかなって思ってるよ。ゆかり(ねぇ)も、好きだと思うし」

それならクッキーにしようかな。フライパン使わないし」

…そうか、そういうのも考えてるのか」

 

 今は晩ご飯を作る時間。ゆかり(ねぇ)はお風呂に入ってます、泊まっていくらしいので。今日は料理部で色んな料理を見たので、作りたい欲が強いんですよね。凄いのは作れないですけど、料理は好きですから。もちろん、食べるのも含めて。

 

クッキーってどうやって作るの?」

私は素人だし、マキさんかミコトさんに聞いたほうがいいんじゃない?」

ん〜、今度あの2人にも聞くけど、葵の作るクッキーも聞きたいな」

…オムライス作りながら聞けるなら、説明しながら作るよ」

ありがと、ちゃんと聞くよ。時々見ながら聞くよ、気になるから」

…よそ見してオムライス焦がさないでよ?」

 

 前科… 片手分以上。マルチタスクってすごいなぁって、葵を見てると時々思うんだ。葵って、いつも僕とか茜と話しながら料理してるんだよ。それに、何か焼きながら切ったりもしてるし… 同時に2つ料理を作ったりするのってどうやるんだろうね? 味噌汁とおにぎりなら僕でもできるけど、葵は餃子と炒飯を作れるからね。 …多分。

 

あぶなっ」

ボーっとしながら包丁使わないで?」

ごめん、気をつける」

…本当に気をつけてよ?」

うん、気をつけるよ」

 

 危なかった… 本当に気をつけないとだね、指切ったら痛いし… 痛いのは嫌だもん、誰だって嫌か。それに、今切っちゃったら料理に血が混ざっちゃうかもだし… オムライスなのに切るだけやって炒めたり焼くのは葵任せ、じゃあ料理してる感じもしないですもん。

 

 

 

こっちはもうできたけど… まだかかりそう?」

後ちょっとだけ… まだ、もうちょっと焼いたほうが…」

満足いくまで、いくらだって待ちますよ」

…クッキー食べて待ってるね。ゆかりちゃんも食べる?」

ん、食べます」

 

 ん〜、まだ柔らかすぎるかなぁ? ふわっとしたタマゴで包みたいけど、柔らかすぎると ベチャつきそうだし… というか、プロじゃないし包めないよね。う〜ん、もうちょっと焼こう。もうちょっと形をしっかりさせて、それで… どうやって包むの? 確か、タマゴを広げて真ん中にチキンライスを乗せて… 気合いで包む!

 

…まぁいけるか」

本当に? こっちからは見えないけど、その反応はだめなやつだよね?」

大丈夫、ちょっと見た目は悪いけど… うん、オムライス。ほら」

よかった… 裂けてるのかと思ったよ」

上手じゃないですか。蕾ちゃん、凄いですよ」

 

 むむ… 2人の中で僕はどれだけ料理が下手だと思われてるんだ? オシャレな料理は無理ですけど、自炊してたんだからある程度は作れますよ、僕だって。というか、葵は僕が料理できること知ってるよね? もっと信頼してくれても…

 

…そんなに料理できないと思われてた?」

できるのは知ってるけど、レシピもなしに作り始めたから…」自炊してたのは知ってましたけど、オムライスって難しいですから」

…確かに、いつもレシピ見ながら簡単な料理しか作ってなかった気がする」

…なんでオムライスはレシピなしで作ったの?」

 

 …前に買ったレシピ本、どこやったっけ。あれ〜? 買って琴葉家で使って、それから… 我が家に持って帰ってきてない気がする、じゃあ葵の部屋か、今度取りに行こうっと。 …勝手に入っちゃだめかな? いや、前まであそこで寝てたんだし大丈夫だよね?

 

ちなみに… 美味しい?」

美味しいよ」自信持っていいですよ、美味しいです」

よかった… 僕も食べてみよ」

少しは味見してくれないかな?」

減っちゃうから…」

味見で食べすぎるのは気をつけてよ…」

 

 美味しい。柔らかくて甘いタマゴの味が口に広がるので、ケチャップの酸味は薄まって、逆に甘みが引き立てられるんです。そこにお米の甘さが加わって、口を優しく和ませてくれるんです。そこに2口目、今度はタマゴと共にケチャップライスに入ったお肉がやってきて、確かな食感と強い味で飽きがこない。全体は甘いのに、甘さの奥から旨みがくる、美味しいです。自分で作ったから美味しく感じるだけかもしれないですけど… 喫茶マキに出せないかな…

 

…おかわり作ろうかな」

…私が作ってもいい? 一味違う、私のオムライスを作りたくて」

葵のオムライス、食べたい!」

楽しみですね…」

ゆかり(ねぇ)は作らないの?」

自信がないのでやめておきます。 …さっきも思ったんですけど、蕾ちゃんにゆかり(ねぇ)って言われると… ちょっと、嬉しくなっちゃうな」

えぇ… 言うのやめるね」

えぇっ!? や、やめないでくださいよー!」

 

 …ふふ、楽しい。昨日から、色んなことを考えたけど… やっぱり、こうやって皆でふざけながら楽しく話すのが好きだな。紲星あかりから、紲星蕾に変わっても… 楽しんで生きていこう。これまで通りの、幸せを。

 

…あ、やば」

あ… とりあえずティッシュです」

ねぇ、その反応… 話しながら食べてたら服に落としたんだよね、染みるよ」

…どうしよ」

 

 

 

 

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