色の変わった星とパステルカラーの姉妹   作:緑雨

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勇敢な少女の章
蕾Side3 作戦なし


 

「前に行(おこな)ったアンケートの結果ですが…球技大会の種目は雪合戦に決まりました!」

「おぉ!」「嘘でしょ?」「…他の球技はなにがあったんだろう?」

 

 皆に性転換症の話をしてから、そこそこ経ちました。1週間くらいです。それで、今日はホームルームで球技大会の話だったんですが… 雪合戦が多数決を制したようです。悪ふざけで書いた人がそんなに多かったのかな…?

 

「静かに、説明するから。定番の球技が票を分け合った結果、1位に梅合戦、2位に雪合戦が入りました。 …梅合戦は票を複製して100票入れた犯人が見つかりましたので、2位の雪合戦が繰り上がりで球技大会の種目になりました〜!」

「何票入ったんですか?」

「70票くらい。その下も混戦だよ、世紀の大混戦」

「…梅合戦は?」

「不正票のみです」

 

 …この高校、生徒何人だったかな。でも、70って結構だよね? 適当に書いて入れた、にしては票が多い気がするし… もしかして、本気で雪合戦を大会の種目にしようとしてる人が多かったのかな。 …僕、何に投票したんだっけ。蹴鞠だったかな…?

 

「ただ、雪は準備できません! なので、玉入れとかに使うあの玉でやります。練習も、本番も。ルールはこれから詰めるので、決まっていませんが… 障害物とかも用意して、隠れながら投げ合う形になると思いますので、その前提で練習してください。以上です」

「…そういうことか」

「葵、何かわかったの?」

「ゆかりちゃんみたいな、FPSゲームがやりたかった人達が雪合戦に投票したんだ。ゲームを書いても除外されるのはわかりきってたから、近い形式になる雪合戦にしたんだよ」

「な、なるほど…」

 

 …あんまよくわかんなかったけど、いっか。雪合戦なんだから、雪をぶつければいいんでしょ? 雪じゃなくて玉なんだっけ? どっちでもいいか、やることは同じだもんね。 …雪合戦ってコツとかあるのかな?

 

「……えー、これで、ホームルームを終わります。今日も1日頑張ろう!」

「蕾! なぁ、うちらの雪合戦やで!」

「私雪合戦に投票してないと思うよ?」

「えぇっ!? そうなん?」

「うん、確か蹴鞠にした」

「…あれ、本当だったの?」

 

 茜は雪合戦、好きそうだよね。心の中でガッツポーズ作って、本番に向けて必殺技でも考えてるんじゃない?

 

「せや、3人で何か凄い技でも編み出して、相手を一網打尽にせんか?」

「言うと思った」「言うと思ったよ」

「お、おぉ… うちの心の扉そんなにパカパカしとったか?」

「皆合鍵持ってるよ」

「誰でもわかるほど単純やない! …よな?」

「さぁ?」

 

 結構な付き合いだからね。子供の頃からずっと遊んでるんだよ、そりゃあわかるよ。まぁ… 葵が何を考えてるのかは欠片もわかんないけどね。ゆかり姉(ねぇ)と茜は単純だから、顔と口調で全部わかる。今も、話しかけに来たときから何か企んでるような顔だったもん。ニヤァって笑っててさ、何か言いたいことがありげな話し方だったらわかるよ。茜も僕みたいに、隠せるようになったほうがいいよ、ねぇ?

 

「蕾ちゃんも同じだと思うけど」

「えぇっ、単純じゃないよ!」

「今、自分は茜と違うって考えてたんじゃないの?」

「考えてたけど…」

「そんなこと考えとったん! 蕾もこっち側にようこそ、歓迎するで〜」

「…茜にバレてなかったなら、私の方が上じゃない?」

「うん」「ちゃう!」

 

 …多数決で僕の勝ちってことで。別に大したことじゃないんだけどね。それに、嘘が苦手で裏表がないって考えたら凄い名誉な負けだし。 …今から僕が負けたことにできないかな、なぜか羨ましくなってきた。

 

「もうその話は終いや! なぁ、必殺技… 作らへん?」

「ご遠慮させていただきます♪」

「そんなニコニコで丁寧に言わんでや、なぁ蕾。うちとやろうや」

「…玉入れの玉でやるんだよね? それなら、もう必殺技あるから大丈夫」

「必殺技持ってるんか!?」

「…どうせ、同時に2つ投げるとか、そんなのでしょ?」

「3つ投げる必殺技だよっ!」

「はぁ…」「凄いやん!」

 

 どう? 凄いでしょ? 昔、玉入れの練習中に友達と遊んだ時に編み出した、伝説の必殺技、トリプルショット! …茜驚いてるけど、アレ食らってたの茜じゃん。というか、茜と一緒に編み出したような…?

 

「腕って2本しかないんに、どうやるん?」

「3つ握りしめて投げただけでしょ」

「はっ! そうすれば楽だった!」

「え、違うの?」

「…腕に3つ乗せて全力で振ってた」

「あれかっ!」

「……子供の頃の話とはいえ、凄いね。 …必殺技と言えるほどの物じゃないでしょ」

 

 …今、貶(けな)されたね? 凄いって言葉に騙されないよ、今のは絶対に僕を小馬鹿にしてた。 …子供の頃の話だから、笑われるくらいが丁度いいのかもしれないけどね。でも、僕と茜のトリプルショットを笑うのは許せないよ。今でも、アレに勝(まさ)る技はないと思ってるから。

 

「うちも必殺技見てもらおうと思って考えてきたんやけど、腕に乗せて振ろうかなぁなんて思っとったん! やっぱ、うちらの考えは昔から変わらんみたいやな」

「…成長してないってこと?」

「んなっ!?」「ちょっと!」

「蕾はそうでもうちはちゃう!」「成長してないのは茜だけだよ!」

「…子供の頃と欠片も変わってないじゃん」

 

 ぐぐぐぐぐ… こうなったら、必殺技の話なんてしてられない! 葵に、僕は茜と違って成長してるって証明しないと。童心を忘れないのは僕らのいいところだと自負してるけど、子供っぽいって言われるのは嫌だから! 何か… 起死回生の一手は…

 

 そうだ、葵があっと驚くような必殺技を編み出せばいいんだ! …結局必殺技の話じゃんって馬鹿にされるかもだけど、ここから凄いのを出せば僕は発明家になれるかもしれない! 子供の頃は思いつかなかった、画期的な必殺技…

 

「…茜に突撃させて、そこを敵が狙った瞬間に私が倒す… これならどう?」

「代わってくれや」

「…遮蔽を使って、蕾ちゃんに見られないように戦うだけじゃない?」

「そこは、ほら… 良い位置を取れば…」

「相手も自分にとって有利なポジションを狙うから、その作戦は難しいと思うよ。何より、お姉ちゃんが無駄になる」

「無駄ってなんや人のことを」

「確かに、茜を上手く駒として使わないと…」

「駒ってなんや人のことを」

 

 葵をあっと言わせる作戦、何か… でも、茜を犠牲にするのは良い作戦だと思うんだよ。フィジカルは強そうだし、相手の投げた玉を見切って避けれるかもしれないし、突撃させるなら絶対に茜だよね。葵がやられると頭脳がなくなるし、僕は避けたりできないし… というか、球技大会の時って何人でチームなんだろう。それに、僕達がチームになるのかな? くじ引きとかかも知れないよね… それなら、僕1人でできる作戦を考えたほうがいいのかな?

 

「まず山なりに凄い高く投げて、落ちてくる時に突撃したら上手くいったりしないかな。ほら、上に気を取られてたら当てやすいし、こっちを見てきたら上から落ちてきてあたるかも」

「…曲射って狙った場所に落とすの難しいよ? それに、誉れもない」

「ほまれ…」

「球技大会やからな、スポーツマンシップに則り、正々堂々とやらんと。奇襲はまだしも、高く投げて一か八かってのはだめよ」

「むぅ、それならスピンをかけてブーメランみたいに壁の反対にぶつけるのは?」

「玉入れの玉でそれができるなら、どうぞ」

 

 むむむむ… 煽られている気がする。葵に、僕が子供の頃よりも良い技を思いつけるって証明しないとなのに、子供っぽい技しか浮かばない…

 

「…幼子(おさなご)みたいに騒ぐのもいいけど、勝つための必殺技… 切り札を考えたいんでしょ? ほら、紙とペン持って。考えるよ」

「葵、一緒に考えてくれるの?」

「優しい妹を持って幸せや…」

「…私が手伝わないと、その… トリプルショットだっけ? ヘンテコな技が採用されそうだから。 …恥ずかしい姿は見たくないし、手伝うよ」

「トリプルショットを恥ずかしいって言わない(ん)で!」

「想像してみなよ、腕に玉3つ乗せて振りかぶって、その瞬間を狙われる姿を。 …恥かくよ」

 

 …確かに。トリプルショット、構えるまでに時間かかるし、構えてから撃つのにも時間かかるし、なんなら玉も遅いし、方向も制御できないんだよね。 …恥ずかしくなってきた。

 

「…葵先生、お願いします!」

「先生… こほん、蕾ちゃん、葵先生に任せなさい」

「先生、うちにも良いの教えてください」

「皆で考えるんだよ? 私は必殺技なんて考えてないからね?」

 

 よし、頑張ろう。僕と茜は戦力外なので、葵に考えてもらうつもりだけど… 何か、葵が閃くのに使えそうなものを書いてようっと。

 

 障害物があるらしいから、壁書いて… 校庭でやるのかな、それとも校舎内? …うちの学校、アウトローというか、常識外れなことをするの好きだし、校舎内全部使いそう。だって雪合戦やるんだよ? マトモじゃないよね。

 

 校舎なら、机とか窓とか扉とか、なんでもできそうだよね。校舎全体でやるとしたら、要塞を作れるかも… でも、全員参加だからなぁ。3人で1部屋使って要塞作ってたら、他の部屋がミチミチになっちゃう。となると… 校庭と校舎、全部使うとか? …後でわかることだし、とりあえず地図書いておこうかな。学校全体の。

 

「…それ借りるね」

「はーい、また書いとくね」

「よければ、次は部屋の中も書いてもらえる?」

「あい、わかったー」

「葵、もう授業やから失礼するな」

「…そうだね。この続きは後でにしよう」

 

 …葵は何か思いついたのかな。よーっし、授業は適当に流してバレないように地図書こうっと。雪合戦、絶対勝つぞー!

 

 

 

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