「チーム分けはこうなりました! 先輩達とも仲良くね、喧嘩はダメだよ。 …それでは、ホームルーム終わり! 先生忙しいからバイバイ!」
「最高だね…」
「…え、どこが?」
「マキさんと味方なんだよ、最高でしょ」
「ゆかり
「ヒメさんとは一緒が良かったなぁ」
「…ゆかり
「…ミコトさんもかわいそうだよ」
今は金曜日なんだけど、雪合戦のチーム分けが発表されたんだ。クラス単位だから、僕と葵と茜が同じチームなのは確定だったんだけど… ゆかり
「でも安心して、蕾ちゃん。私が守るから」
「私も守る側になりたいなぁ…?」
「うちと蕾には無理や…」
「あ、茜!? そんな、一緒にスーパーハイパーエースになろうって…」
「そんな約束してなかったでしょ」
「うちは痛感したんや、スポーツはフィジカルだけじゃ勝てん」
「フィジカルもそこまで…」
「そんな…」
茜がここまで弱気になっているなんて、明日は雪が降るかもしれません。 …雪降ったら良いなぁ、本物の雪合戦したい。でも、寒いの嫌だな。 …あ、茜とスーパーハイパーエースになる約束はしてないよ。なんか、そんな雰囲気だったから適当に言っちゃった。
「…これ、チームトレーニングとかあるんだっけ」
「確か来週の水曜にあったはずやで」
「…学校の半分が同じチームなのに、チーム単位で練習、というか話し合いってできるの?」
「できたら凄いよね」
「クラスでも大変やのに…」
…これ、チーム分けとか特にどうだっていい奴だな? 気づいちゃったよ、チームで何かするとか無理だもん。学校全体で雪合戦やるんだよ、統率も作戦も何もないよ。個人で動いて、沢山当てた人の勝ち。 …だとしたら、僕も攻めれるようにならないと。隠れて勝てるルールじゃないと思うし…
「葵… どうやったら相手に当てられるようになるかな」
「トリプルショットを見限るところからかな」
「…やっぱりダメかな」
「腕に乗せるのをやめて、3つ握るのならいいと思うよ?」
「…わかった」
「素直やん、アレに拘らないん?」
「思い入れもないし…」
「うちは思い入れあるよ?」
腕に3つ玉乗せて全力で振ることによって相手に向けて飛ばす… 思ったんだ、絶対に弱いしダサいって。 …さよなら、子供の頃に僕と茜が生み出した必殺技。もう二度と思い出さないことにするね。
「…
「…何かあるん? うち、何も聞いてへんよ」
「…2人で出かけるの」
「…ほ〜ん」
「…お姉ちゃんには関係ないでしょ?」
「…そか」
…うん。出かけるん、だよね…
「どうして、私と蕾ちゃんが別のチームなんですか…?」
「徳が足りなかったんじゃない?」
「運だから、偶然だから、へこまないで…」
「うぅ…」
「私も皆と一緒が良かったなぁ。もちろん、ゆかりさんと一緒は嬉しいけど…」
「私は?」
「別に…」
お昼、皆で屋上でお昼だよ。 …雪合戦のチームは別れちゃったけど、プライベートで一緒にいるのは問題ないよね? 一緒にご飯食べたり、一緒に遊んだり… 球技大会では敵同士ってだけで、何か決別しなきゃいけないわけじゃない… よね?
「徳の積み方を教えてください…」
「一緒にゴミ拾いにでも行くかい?」
「今からじゃ意味ないんじゃ…」
「いえ、行きます。徳はいくら積んでも損はありません…!」
「皆もどうだい、明日明後日、どう?」
「ええな、手伝うわ」「私も行くー」
「私は蕾と出かけるので遠慮します」
「また今度、お願いします」
「わかった、じゃあ明日の朝6時私の家に」
「はや…」
…ゆかり
…明日は葵と出かけるんだ。行き先とかは全部葵に委ねてるから、何も知らない。服装とか、荷物とか、全部指定されてるから、何となくはわかるけど… 完全に、山に行く装備なんだよね。まだ寒い季節に、山。どこの山かはわからないけど、山。 …絶対、寒いよね。今から足が重いよ… 凍ってるわけじゃないよ。
「もうすぐ昼休みも終わり! 解散!」
「また来週」「また今度〜」
…山なんだよね。山…
「あかり君は気楽にね、荷物はもう全部準備できてるから」
「う、うん…」
夜… 明日の話をしたら、気楽にとか、安心してとしか言われません。大丈夫? って聞いても、絶対に大丈夫としか返ってきません… 怖いよぉ… 冬の山だよ…? 荷物も重そうだし…
「…もしかして、登山だと思ってる?」
「え、違うの?」
「うん、キャンプだよ。荷物… というか身体も車で運んで貰えることになってるから、安心して」
「それなら言ってよぉ…!」
「聞かなかったじゃん…」
き、聞かなかったって言われても…… いや、僕が悪いね。ちゃんと話を聞く、大切だね… 今度からはガンガンと聞くようにしよう。
…キャンプ、どこでするんだろう? 結局、防寒着とか着てくなら山だよね… 登山からキャンプって、あんまり中身は変わってないんじゃ…? テント張っても、あったかくはならない… よね? …あったかくないのはこの街で遊んでても同じか。寒すぎなければいい… そんな思いでいよう。凍っちゃいませんように。
「ちなみに、誰が車で送ってくれるの?」
「ミコトさんの知り合いの方だよ。キャンプセットを買うって話をミコトさんとしたら、車を出そうかって言われたの。ご厚意だよ、今度お礼しようね」
「…凄い人だったりしないよね?」
「流石に違うと思うけど… ミコトさんの知り合いだと、そんな気もしちゃうのが怖いね…」
「…気をつけよっか」
「相手が誰でも、失礼ないようにね」
「うん」
そりゃ、失礼なのはいけないからね。そのくらいは僕だってわかってるよ。 …こんなことを威張っちゃいけないか。わかって当然だもんね。 …でも、ちょっと怖いね。だって、ミコトさんの知り合いだよ? ミコトさんがどれぐらい凄い人なのか具体的なことは全然わかってないけど、僕を蕾として高校に入れられるくらいの人だからなぁ… 本当に、失礼したら首を飛ばされるような相手かもしれない。比喩じゃなくて、物理で。
「…変に身構えるのも失礼だからね」
「それじゃあどうすれば…」
「基本は自然体で、それでいて丁寧に話す。タメ語は私と2人きりの時以外控える。 …まぁ、運転手さんの言うことを守れば問題はないよ。何かあったら、スマホで文字で伝えるから」
「…信じるからね」
僕と葵は一蓮托生… 登山じゃなくて良かったけど、気楽にとはいかなそうだね…
「リラックスしててな」
「どうも、あリがとうございます」
「あリがとうございます」
「ほんなら、いくでー」
当日、迎えの人が来たんだけど… 関西弁ってやつだよね。もしかして、ミコトさんも関西の方の人なのかな…? 今度聞いてみよう、ちょっと気になる。でも… 茜みたいな喋り方の人、出会うと思わなかったな。本場ってみんなこんな感じなのかな。
「…あの、お名前って伺ってもいいですか?」
「ん〜、秘密。運転手さんって呼んで」
不思議な方だな… でも、ミコトさんも同じことを言いそう。ペットは飼い主に似るってやつかな… ごめん、とても失礼なことを言ったね、僕。ごめんなさい、本当に。絶対に口に出しちゃダメだね、今の。 …心で思うのも最低では?
「ねぇ! なんでこんな時期にこんな場所でキャンプしようと思ったの!?」
「ほら、テントの中なら暖かいよ?」
「テント出れないじゃん…」
寒いよぉ…… 来たのはどこかの山! 辺り一面雪景色の山! 助けて… 運転手さんは近くの山小屋に待機してるらしいから、今すぐにでも帰りますって伝えたいくらいだよ。でも、せっかくキャンプ場まで来て何もせず帰るのも… っていうのが今の僕の状態。2人でテント作りは終えたんだけど、寒すぎるよぉ…
テントは広くて、暖房もあって、家みたいな環境なんだけどね… 如何せん、外が別世界すぎる…
「あ〜、あったかいよぉ〜」
「良かった良かった、こんな寒さの中で外に出るなんて正気じゃないからね」
「冬の雪山でキャンプすること自体、正気の沙汰ではないと思うけど…?」
「冬山キャンプは普通のことだよ? 勧めてるキャンプ場もあるし」
「ここは! キャンプ場ですらない!」
「それは私も知らなかったから…」
そうなんだよ、1番の問題は雪山に来たことじゃないんだよね。冬の山でキャンプ、それ自体は聞いたことあるから。人も少なくて、良く晴れてて、雪で遊べて、寒いこと以外は最高のキャンプができるってネットにも書いてあったから! でもそれはちゃんと整備されたキャンプ場の話であって、ここは謎の山の謎の場所なんだよ!
「でも、ミコトさんが用意してくれたんだよ? きっといい場所だよ」
「うぅ… もう来ちゃったからにはキャンプするけどさ…」
…ほどほどに暖まったら、また外に出てみようかな。ずっとテントの中にいるんじゃ、家にいるのと同じだし… 外に出たところで雪と雪しかないんだけど、普段雪に囲まれることなんて滅多にないし、雪遊びするチャンスでしょ? …素手で触るのは嫌だけどね。寒いから。
「…ご飯、食べる?」
「食べる…」
「じゃあこの鍋でおでん作るから。電池式のIHだから安心して、テントの中でも燃えないよ」
「よかった… この寒さの中で、外に出て火起こしとか言われたら帰るところだったよ」
「そのつもりの用意もあったんだけどね…」
葵が、外で料理できない可能性を考慮してIHを持ってきてくれる、先が読める人で良かったよ… …いや、そこまで読めるならなんで初キャンプで雪山なんて選んだんだろう。素直にほどほどの寒さで、ほどほどに過ごしやすい場所ならよかったのに…
「…葵。なんで雪山に来たかったの?」
「…聞きたい?」
「ここまで連れてこられたからには聞きたいかな…」
「…こういう場所なら、2人きりって感じがするかなって。ほら、雪って逃げ場ないでしょ? …まぁ、そういうこと」
「そっかぁ…」
そっっかぁぁ…