「むむむむむ…」
「また悩んでる… 今度は何? 晩ごはん? 刺身だよ」
「この前と同じ! マキさんの卒業メモリアル祝い会の内容を考えてるの」
「えっ、そんなダサい名前に決まったの…? 卒業祝いの真ん中にメモリアルって挟むの、やめよ?」
「顧問にこの名前で提案して通ったから、決まりだよ。卒業メモリアル祝い会」
「…本当?」
「本当だけど… えっ、そんなにダメ?」
「うん」
そんなに…? 確かに、全部日本語か英語に揃えちゃったほうが良いのかなって思ったけど、分かりやすさとカッコよさのハイブリッドを目指した結果だったんだけど… ほら、卒業祝いで意味がしっかりわかるし、メモリアルってちょっとカッコイイ上に意味も良い感じじゃん。だから、混ぜたんだけど…
「………」
「えっ、そんなに気にしてる? ダサいのはダサいけど、祝いたいって気持ちのほうが大事だから、名前なんて誰も気にしないよ?」
「またダサいって…」
「…ダサいもん」
「うぅ…」
「うちもダサいと思うわ。グラデュエーションパーティーの方がかっこええ」
「英語にしたら何でもカッコイイと思わないで。それと、カッコよさを求めて分かりやすさを捨てないで」
「うちにも葵の刃が飛んできおった…」
グラデュエーション、卒業って意味だっけ。確かに、ちょっと響きがカッコイイかも… グラデュエーションメモリアルパーティー、カッコよさのハーモニー… 葵には不評だけど、僕は好きだよ。茜とは感性が合うのかも…
「…まぁ、名前は何でもいいよ。大事なのは中身、どんな物でもね」
「それが決まらないから困ってるんだよ。案は沢山出てきたんだけど、決めきれなくて…」
「ほんなら、うちらに見せてみーや」
「そうだね、私達も手伝うよ」
「それじゃあ、これ」
「…字が汚い」
「思いついた時に急いで書いた走り書きだから汚いだけだから!」
「必死やな…」
「字が汚いって思われたくないもん!」
字は、汚くない! …本当に、汚くないよ、綺麗だよ。
…2人とも、字に文句言ってた割にはすぐに読み始めてるし。 ってことは、読めるくらいにはちゃんとした字ってことだよね。だから、僕の字は汚くない!
「プレゼントだけで良いんじゃない?」
「うぇぇ!? 他のは、全部ダメ!?」
「うちは全部ええと思うんやけどなぁ…」
「いや、お祝い会って言っても、ようは卒業式の後の集まりだし、マキさんだって同級生と集まったりするでしょ? それなら時間を取るのも悪いし、プレゼント以外ないよ」
「ほんなら、別の日にするっちゅーのはどうや?」
「それなら料理とかもできるけど、卒業の熱は落ち着いてきてるし、後から卒業祝い会を何時間もされたら反応に困ると思うけど…」
「…たし、かに…!」
僕は、1番大事なことを失念してたのかもしれない…! そうだ、長く沢山お祝いしたいけど、マキさんはそんなに時間なんてかけられないかも。と、なると…
「…全部、白紙!」
「プレゼントも?」
「プレゼントは、その… 買ったものとかだとミコトさん達とは僕らで差ができちゃうから…」
「はーい、頑張って考え直そうか」
「さっ、頑張るでー」
…頑張ろ。全部考え直さないとだけど、時間が縛られたから考えやすいかも。短い時間でできて、感謝とかを伝えられて、お祝いって感じのもの! やっぱり寄せ書きとかになっちゃうのかな…
ん〜、時間かけて考えてみよう。何か、料理部らしくて良い案があるはず。葵の言うとおり、プレゼントは短い時間でもできるし、それを軸に何か… お金がかからない何かを考えよう!
「ふふんっふふ〜んふ〜ん♪」
「ご機嫌だね、やっぱり笑ってるのが似合うね」
「葵っ、思いついたんだ! さいっこうの、かんっぺきな案が!」
「…案って、何の話?」
「マキさんのお見送りの話だけど… 一緒に考えてくれてたんじゃないの!? 酷いっ!」
「あっ、あぁ、考えてたよ! うん、考えてた! 私がそんな大切なこと、忘れるわけないでしょ、ねぇ?」
「………」
「…ははっ」
週末の土曜日の夜、完璧な案が思いついたんだよ! お金がかからなくて、マキさんの時間を奪わないで、僕らでもできて、おめでとうの想いが伝わるもの! そして、マキさんの新たな門出を祝えるもの!
「葵、みんなで看板を作ろう!」
「…看板? 何の?」
「喫茶マキの看板を作ってプレゼントしようよ!」
「…私達が?」
「そう! だってマキさん、卒業したら喫茶マキで働くんでしょ? それなら、マキさんの感じが伝わる看板をプレゼントしようよ!」
「今の看板も良い感じだし… 私達が作っても、邪魔に思われるだけじゃないかな?」
「今のよりももっと良い看板を作るんだよ! …頑張って作ったら、使ってもらえなくても、卒業おめでとうの想いは伝わると思うからさ」
「…わかった、私はそれで良いよ。明日にでもミコトさん達に相談しよう」
よしっ、葵の審査を通過したぞ〜! 葵が良いって言ってくれたってことは、多分、相当良いんだと思う! これならきっと、最高の卒業プレゼントになるぞ〜!
さっ、やると決めたからには色々調べてみないと! 材料とか何も知らないし、作り方も全くわからないし、規模もわかんないし。でも、やると決めたら絶対にやり通すよ。それが紲星の流儀ですから…! …今決めた、良い流儀なんて何個あっても良いでしょ。
「だいたい理解したよ、なるほどね…」
「どう、ですか!」
「ん〜… 難しいと思うけど、ミコトは?」
「確かに、プロが作った看板に対してずぶの素人が挑むというのは、勝ち目のある戦とは言えないな」
あ、あれ? 思ったよりも不評… でも、葵と同じ事を言ってるのか。今の看板だって良いんだから、それを超えるのは難しいって話だもんね。 …そっかぁ、むりかぁ…
「難しいかぁ…」
「私はその勝負に乗ろう、戦う前から負けを認めたくはないのでね」
「…え?」
「私も! 蕾ちゃん、みんなで頑張ろうね♪」
「っ! ありがとうございます!」
やった… いや、これで喜んじゃダメだよね。難しいって話なんだし、こっから気合入れて頑張らないと。えっと、喫茶マキの看板を作るんだったら、先ずはデザインを決めないとだよね。それと、使う素材! 後は… サイズとかも調べないと。
「…喫茶マキの看板って、どれくらいのサイズなんだろう」
「大きいとか小さい、みたいな漠然的な表現じゃなくて、センチメートル単位で調べないとだよ」
「そういうのは私に任せてくれ、君はどんな看板にするかだけを考えればいいよ」
「そうそう、面倒なのは私達に任せて♪」
「わかりました! 葵、頑張ろっ!」
「私は一度家に帰るよ、お姉ちゃんを連れてくる」
「…確かに、茜のこと忘れてた」
…茜が妙案を閃いてたらどうしよ。