「…」
心苦しい。3人とも、下を向いてしまった。嘘だけど、兄が妹を放置して学校ほっぽりだして海外旅行に行ってるわけだから。
「私も世界に行くべきか? どこかに、梅を育てる最適な土や水があるはず。あかりさんに連絡を取れたら、採取をお願いしたいな」
「なんで、私を置いていってしまうんですか。私、学校で誰と過ごせば良いんですか。あの子以外に学校に知り合いいないんですけど… 葵ちゃんはゲテモノ食べてますし」
「は? チョコミントをバカにしました?」
「蕾ちゃん、お兄さんがいなくて寂しかったよね。でも、大丈夫! ヒメお姉ちゃんがいるから、安心して、いっくらでも甘えてね!」
思ったよりも明るかった。何も言わずにずっと下を見てるから、驚きとか、色んな感情が混ざって、どうしようもない感じなのかと思っていた。
実際は植物のことを考えて悩んでいる人と、学校で独りぼっちになりたくない人と、真面目に心配してくれている優しい人だった。ミコトさんとゆかりねぇも、多少は心配してくれてると思いたい。多分、私が元気だと思ったから、変に心配しないほうが良いって思ったん、だよね? 心配する気がないとかじゃない、よね?
「ねぇ、蕾ちゃん。お兄さんに後で、メールで伝えて欲しい。旅行で巡った場所の土の写真を送って欲しいんだ」
「早く帰ってくるように伝えてください。私、耐えられません」
「お兄さんが帰ってくるまで、辛かったら、いつでも連絡してね。すぐ、蕾ちゃんに会いに行くから」
…心配されると、嘘をついている心がどんどん苦しくなるし、これぐらいの方が楽かもしれない。
「こほん、話を変えましょう。ゲームをしにきたんですよ、今日は。さぁ、何やります?」
「梅を育てるゲームがやりたいな」
「なんですかそのつまらなさそうなゲーム。チョコミントを作るゲームならありますよ」
「それも同列やろ。うちでも勝てるゲームがやりたいんやけど」
「私もゲームは苦手。チーム戦の遊びがいいな」
「…すみません、なにか食べ物ないですか? 話しているとお腹がすいてしまって」
「梅ケーキをあげよう」
「ありがとうございます」
梅ケーキ美味しいです。ゲームはゆかりねぇが詳しいので、ゲーム選びは任せておきます。おまけにもらったチョコミントケーキも美味しいです。好きな味ではないけど、お腹を満たせるなら何でも食べます。
結局、ゲームではなく運動をすることになりました。茜もヒメ姉も、ゲームより運動が得意なタイプ。葵とミコトさんは、ゲームも運動もどっちも出来るタイプ。ゆかりねぇは運動に決まった時、世界に絶望したような顔をしていました。
「じゃ〜ん、卓球台やで〜。これなら室内で出来るし、チーム戦も出来るで〜」
「家に卓球台、珍しいね」
「なんであるんですか、卓球台」
「中学の時に学校の卓球台捨てるってことになって、貰った」
「私は邪魔になるって反対したんだけど、お姉ちゃんがどうしても家で遊びたいって言うから。前は食卓代わりにしてたんだけど、結局邪魔で引き取り手を探してる」
「なんでぇ、ええやん、卓球台」
「本当に邪魔なの。畳んでも、スペース取るんだよ」
6人で卓球はできないから、二人一組になって総当たり戦。これからチーム分けをする。全員、組みたい相手と組めるといいけど…
「葵と組みたいな〜」
「私は誰でもいい。お姉ちゃんはやだ」
「なんでぇ!?」
「私も誰でもいいよ。できるなら、ヒメがいいけど」
「ミコトは絶対やだ。蕾ちゃん、一緒にやろ?」
「はい、ヒメ姉さん」
「…ふ〜ん、へぇ〜? ヒメ、絶対倒す。私が勝ったら、二人共、私をお姉ちゃんって呼んでよ」
「ミコトに負けたことないし、安心して、蕾ちゃん」
「あの、私は…」
「ゆかりさん、うちと組もう。あいつらに目にもの見せてやるんや」
「私は観客が良いんですけど…」
結果、僕とヒメ姉、ミコトさんと葵、ゆかりねぇと茜のチーム分けになった。この体で運動したことないから、ちょっと不安だな。
ミコトさんと葵との対戦。2人共、作戦も練って、体も俊敏で。ヒメ姉が頑張ってくれていたけど、スコアはどんどん離されていた。僕は、全く打てていなかった。
腕を振っても空振るし、位置を合わせようとするとタイミングがずれる。今までと目線の高さとか、体の筋力が違う。上手く動かせないまま、終盤だった。
「蕾ちゃん、当たるかわかんなくても、バンバン腕降ってたら多分あたるから!」
「は、はい」
適当に腕を振る。葵がサーブを打つと同時に、腕を振った。
「うぉっと」
「あ、当たりました」
正直、卓球をしてる感覚はなかった。前はもっと上手かったと思ったけど、今は当てるのすら苦戦する。だけど、体は変わっても、ツキはあるみたいだ。何も考えず、適当に腕を振り続ける。
当てればなにか起こる。ネットに当たり、エッジに当たり、そんな繰り返し。気付いたときには勝っていた。特に嬉しい感じはしなかったけど、勝ちは勝ち。
「2人をお姉ちゃんって呼ばせる計画が…」
「梅チョコミントケーキを食べてもらう予定が…」
凄い嬉しさが込み上げてきた。何はどうあれ勝ててよかった。ヒメ姉も心底嬉しそうな顔で、笑っていた。
その嬉しさの反面、思うことがある。こんなに幸運なら、性転換も早く治って欲しい。というか、起こらないで欲しい。謎の現象に襲われるのは、幸運とは程遠い、と思う。
梅チョコミントケーキ、食べたくないけどちょっと気になった。
どのキャラの話が気になりますか
-
あかり(黄色)
-
あおい(水色)
-
あかね(赤色)
-
マキ(黄土色)
-
ミコト(青色)
-
ヒメ(ピンク)
-
ゆかり(紫色)