ーミコトSideー
朝は気持ちがいい。空気が澄みわたり、心を潤してくれる。植物が光合成を始め、人々は動き出す。夏の暑さを掻き消す緑のカーテンの中、木造りの家の温もりを感じる。
古時計が6時を指す。布団でぬくぬくするのはやめて、そろそろ私も動き始めよう。扉を開けて、庭に出る。草木に囲まれた庭、この空気が私の体を癒やしてくれるような気がする。
すくすく育ち、麗しく実った野菜を摘む。
野菜を切り、梅と合わせてサラダを作る。
一汁三菜ではないけれど、少し面倒だからいいかな。後で部長のお店に行って、なにか飲んだら良い。梅の栄養があれば、これでも健康的だと思うしね。
さて、ヒメにも食べてもらいたいんだが、今日は寝坊でもしているのかな? 7時になってもリビングに来ないなんて、珍しい。部屋まで行って、優しく起こしてあげようか。
「おーい、ヒメー、起きてる?」
『……』
「入るよ、ヒメ」
さ、
家出? なわけないか。私がずっと庭かキッチンに居たから、私に会わずに庭に出て梅を愛でることはできない… でも、家の中に居たら私が部屋に入る前にどこかから「入るなー!」って声が来ると思うし…
…私が起きる前に、いなくなってる? え、やっぱり家出? 夜逃げ? …メールだけ送ったら、
ーヒメsideー
「御馳走様でした、美味しかったです」
一言伝えて、お店を出る。ミコトの梅料理から逃げるため、朝早くから近くの焼肉店で食べ放題をした。うーん、美味い! 時間を忘れてた食べ続けちゃった。お陰で、もう朝8時。
5時に家を出たから、3時間も経ってるのか。この後学校に行かなきゃだし、一回家に帰って服とか変えようかな。焼肉の匂いが凄いし。って、メール来てる。ミコトからだ、なんだろ?
『ヒメェ…どこに行ったんだぃ…?』
『食べ放題だよ。書き置きしてあったでしょ?』
…既読だけ付けて、返信来ない。あ〜、家に帰ったら面倒そう。用事あるから、あんまりゆっくりしてられないんだけどな。
時間を節約するため、小走りで家に。門の前で待ち構えてるかと思ったけど、流石にいないか。玄関にも、リビングにもいない。どこだろ? 取り敢えず、服を変えよう。
さ〜て、ミコトはどこかな? 私の布団が荒らされてたし、リビングの書き置きも放置されてたし、だいぶパニックになってそう。恥ずかしくて部屋で泣いてるとか、ないかな?
「ミコト〜 いる〜?」
『……』
「入るよ〜」
おぉ、
ーミコトsideー
「なにやってんの、ミコト」
「ごめん、本当にごめん」
ヒメが見つかりました。食べ放題を食べて、今は学校らしい。家出なんてしてなくて、私の
…よくねぇ、他の人に頼んじゃった。
部長には喫茶マキで謝った。『見つかって良かったじゃん!』って言われたけど、申し訳なくて土下座したら冷たい目で見られた。
部長にはちゃんと伝えられたし、次はゆかりさん。公園で探すって言ってたから、多分この公園に… よし、いた。
「ゆかりさん、ごめんなさい」
「え、急にどうしたんですか?」
「ヒメ、普通に見つかりました。家に書き置きもありました」
「良かったじゃないですか。また何かあったら、言ってくださいね」
「ありがとうございます!」
土下座はしないでおいた。床が砂だし、ちょっと危険。それに、ゆかりさんも怒ってなさそうだし。皆、良い人達で良かった。
さ、蕾ちゃんと茜は多分家でしょ? 走って行こう。ここからそう遠くないし、2人がヒメを探しにどこか行く前に…
『ピンポーン』
「は〜い あ、ミコトさん。どうしたんですか?」
「茜と、蕾ちゃん、いる? 謝んなきゃいけなくて」
「ちょっと前に、どこか行きましたよ。私が伝えておきましょうか?」
「いや、大丈夫です。直接謝らないとなので」
「わかりました。2人共、喫茶マキの方に行きましたよ」
「ありがとう、葵ちゃん」
足痛い、でも走んないと。2人に迷惑かけちゃったし、すぐに伝えないと…
ー茜sideー
「そういうわけだから、ヒメちゃんは見つかったってよ」
「お〜、良かったなぁ。それじゃ、うちらは家に帰ろか」
「はい、葵と3人でゲームしましょ、ゲーム」
「せやな、ゲーム」
コーヒー飲みに喫茶マキに来たら、ヒメさんが見つかったって言われて安心したわ。せやけど、ミコト姉もおっちょこちょいやなぁ。書き置きに気付かないって、相当焦ってたんやろか。
まぁ、うちらも探し始める前に喫茶マキに寄って良かったわ。既に見つかった人を探す羽目になるとこやった。さ、帰ろ〜!
「あの、あっちにある鯛焼き、買って帰らない?」
「お、ええなぁ。ちょっと遠回りやけど、あっち通って、なんか葵に買ってやろ」
甘いもん食べながらゲーム、幸せやなぁ。 …昼、食べ放題やっけ。あんま食べんほうが良かったかもしれん。
ーミコトsideー
「部長、茜来た?」
「うん。さっき来て、ヒメちゃんのこと伝えたら帰ったよ」
「…茜の家まで、また走るのか…」
「いやぁ、私が伝えといたし、走らなくて良いんじゃない?」
「直接伝えたほうが良いと思うから、走るよ」
「…頑張れ〜」
茜の家から走ってきたのに、どこかですれ違った? まぁいいや、走って家に行こう。
…足がきつい。結構走ってるし、土下座もした。怪我だけは気を付けとかないと。
私が書き置きに気付かなかったのが原因だけど、災難だな…
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