色の変わった星とパステルカラーの姉妹   作:緑雨

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Part17 あかりさん

 

 机に綺麗に置かれた書類に目を向ける。〝転入〟や〝編入〟と書かれている書類を見て、僕は首を傾げる。隣に座る茜も、不思議そうに書類を読んでいた。

 

蕾ちゃんは今は高校に通っていないんだろう? それで、私達… 茜や葵ちゃんとも同じ高校に、転入するのはどうかな?」

おぉ! えぇやん!」

…できるんですか? この時期に高校に入学って出来ないと思うんですけど」

 

 だって、受験とか、夏にないよね? 転入とか編入も、どっか別の高校に通っている人向けの制度だったと思うし。

 

 それに、元々僕は高校生だしさ。体が元に戻ったら、普通に通えるから、この体で高校に通わなくても… いつか、戻るよね? 戻らなかった時のために、通えるなら通いたいけど、無理… だと思うんだけど。

 

…蕾ちゃん。この時期からでも高校には通えるよ。まぁ、蕾ちゃんが高校に通いたいならって前提だけどね」

…はい。通えるなら、通いたいです」

蕾ぃ、楽しみやな!」

それじゃあ蕾ちゃん。私の部屋で作業をしよう。転入書類を書くために、幾つか教えてもらわないといけないからね。 …別に、そんなに難しい質問をするつもりはないよ」

…はい」

 

 なんで転入なんだろう? 何か秋学期から入学する、僕が知らない制度があるわけじゃないのかな? …じゃあ、どうやって転入するつもりなんだろう。

 

 転入書類を書く作業って、名前とか、住所とか、電話番号とか、そういうのかな。 …中学校とか聞かれたら、どうしよう。紲星蕾として通ったことはない、んだよね。

 

 ミコトさんの後ろを歩いて、部屋に入る。綺麗に整った部屋で、タンスやベッド、勉強机に絨毯、それに植木鉢だけが置かれたシンプルな内装。これ、梅の木が植えてあるのか。いい匂い。

 

 でも、そんな香りで癒やされるような空気感じゃない。部屋の扉を閉めた途端、ミコトさんが急に(こわ)張った表情に変わった。突然深呼吸をして、覚悟を決めたように僕を見つめる。絨毯に座って、ミコトさんが喋るのを待った。

 

…まわりくどく説明するのと、短く(まと)めるの、どっちがいい? 紲星蕾さん」

わかりやすいほうが、嬉しいです」

じゃあ、単刀直入に聞くね。名前はなんていうの?」

はい? 紲星、蕾です」

 

 ミコトさん、急に何で名前を聞くんだろう。ずっと、蕾ちゃんって呼んでくれてるのに。

 

わかってなさそうだから説明するね」

あ、お願いします」

蕾さんには、過去に高校に在籍した記録がない。だから、普通には転入はできないでしょ?」

はい、わかります」

だから、私がツテを頼ってなんとかしようと思うんだ」

…どんなツテを?」

まぁ、色々ね。蕾さんは知らなくていいよ」

 

 …どんなツテなんだろう。言えないようなやつなのかな…

 

それでね、蕾さん。無理にとは言わないけど、教えてもらいたいんだ」

…名前を、ですか?」

名前とか、色々ね。まぁ、教えてくれなくても、適当に転入させられるんだけど、教えてもらえたほうがやりやすいからさ。よければ、教えてくれないかなって」

…あんまり、何を答えればいいのかわからないんですけど」

 

 ミコトさんの喋り方がいつもと違う。それに、蕾って何度も呼びながら、名前を聞いてくる。 …なんとなく、なんでなのかなってわかる。多分、蕾が偽名って、疑われてるんだよね。

 

 僕のために色々と頑張ってくれるみたいだし、ちゃんと答えたいけど… 性転換のこととか信じてもらえないと思うし、どうしようかな…。疑われてるだけなら、うまく誤魔化せないかな?

 

…本当に、申し訳ないことをしたと思ってるよ。ごめん、本当にごめんね、蕾さん」

きゅ、急にどうしたんですか。そんな、謝らないで下さい」

私は、調べてしまったんだよ。君のことをね」

…私の、何を?」

わかりやすく言えば、存在。気になって、ツテを頼って調べたんだ。そしたら、紲星蕾は存在しないって言われたよ」

……」

言いたくないなら、無理に言わなくてもいい。でも、良ければ。私に、君のことを、教えてくれないかな」

…嘘をついて、すみません。聞かれたことには、答えます」

 

 …もう、誤魔化しようがないよね… 信じてもらえなくても、話してみるしかないか。これ以上嘘ついても、全部バレちゃうんだろうし。正直に話して、信じてもらえなくてもいいから。

 

 正直に話したら、男子高校生が女子高校生の部屋に居るってことになるのか。嫌われなければいいなぁ…

 

じゃあ、先ずは名前を教えてもらえないかな? 君さえ良ければ、本当の名前で呼びたいんだ」

… 紲星あかり です」

…え? あかりさんって、男の人って聞いたけど…」

前までは男、でした」

…どういうことかな?」

信じてもらえないと思いますけど… わた、僕は、元々は男だったんです。でも、今年の7月に、気付いたら女になっていて…」

…へぇ、面白い。性転換ってやつ? 現実で起こるんだねぇ、そういうことって」

信じてもらえますか?」

信じるよ? あかりさんが、勇気を出して話してくれたんだ。ミコトお姉ちゃんが信じないわけがないだろう」

…ありがとう、ございます」

 

 …優しいんだね、ミコトさんって。葵もだけど、普通信じないよ。僕、急に友達が性転換したって言い出しても、信じられる気がしないもん。

 

名前は聞いたし、次は… そうだ、あかりさん。今の話、茜は知ってるの?」

茜と葵には、全部話してます」

…成程。知ったうえで、蕾ちゃんって呼んでるんだ。じゃあ、私も外では蕾ちゃんって呼んだほうがいいのかな?」

はい、お願いします」

わかった、任せて欲しい。それで次の質問は… 性転換がいつ治るのか、わかる?」

わからないです」

だよね。私も性転換の情報はないな… 夢とか、そういうのでは聞くんだけどね」

ですよね…」

 

 それから、色んなことを聞かれた。誕生日とか、好きな食べ物とか、そんなこと。梅って答えるまで、何回も聞かれたりした。 …それと、お姉ちゃんって呼んでって何度も頼まれたから、一度だけ呼んだ。

 

どのキャラの話が気になりますか

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