準備は終わった。根回しも済んだし、書類も完成した。蕾ちゃんに名前とか連絡先を記入してもらえば、いつでも転入できる。そろそろ、蕾ちゃんを家に呼ぼうか。
茜にメールを送ったし、近い内に来てくれるだろう。全く話してくれないかもしれないけど… 少しでも、しっかりと話が聞けるといいな。
面白い話だったら最高だよね。何かを隠してるんじゃなくて、話の流れで私だけが間違えてる
『今から連れてくでー』
おっと、今日来るのか。待たされるのも緊張するから嫌だけど、すぐっていうのも心の準備がね。茜のことだし、伝えてから3日は後だと思ったんだけど。
『わかった、待ってるよ』
心を落ち着かせよう。梅ジュースは… 丁度切らしてるのか。梅ケーキも昨日食べきってしまった。部長に貰ったコーヒー豆も植えちゃったし、仕方ない。牛乳でも飲むか。
「ミコト、梅ジュースじゃないんだ」
「飲み干しちゃったみたいでね。今度作るよ」
「いや、要らない」
「そう… あ、そうだ。今から茜と蕾ちゃんが来るんだけど、おもてなし用のクッキーってどこにあるんだっけ?」
「…もしかして、転入の件? え、私まだパジャマなんだけど。ちょ、クッキーはそこにあるから! 急いで着替えてくる!」
「…蕾ちゃんと色んな話をしたいから、出来ればヒメには外で食べ放題にでも行ってもらいたかったんだけどな。蕾ちゃんを部屋に連れ込めばいいか」
それから、程なくして茜と蕾ちゃんが来た。蕾ちゃんはやっぱり転入したいみたいだね。私の部屋にも来てくれるみたいだし、ここからは気合を入れないとね。 …ちょっと緊張しちゃうな。蕾ちゃんとの、真剣なお話だから。
蕾ちゃん改め、あかりさんはすんなり話してくれた。誤魔化したりせず、はっきりと話してくれて助かったよ。不思議な話ではあったけど、嘘をついた理由も包み隠さず教えてくれたし、あかりさんは心の綺麗な人なんだろう。
ただ… あの話をどう考えるか。突然の性転換なんて、聞いたこともない。現実的に考えて、そんなことが起こるとは到底思えない。でも、あの状況であかりさんが嘘を重ねたとも思えない。
それに、教えてもらった個人情報は全てあかりさんの戸籍情報と一致している。だから、性転換は本当なんだと思う。納得できる説明は全くできないけど、そう考えるしかないだろう。
…すっごく面白いじゃないか。あかりさんには悪いけど、私はとても興奮しているよ。理解できない超常現象を、私の手で解き明かしたい。答えの見えない問題ほど、面白いものはない。
と言っても、今は何もできないんだけどね。ツテを頼っても何もわからないだろうし、何か起こるのを待つしかないか。私を『ミコトお姉ちゃん』と
「全部書き終わったよ。あかりさん、お疲れ様」
「ミコトさん、ありがとうございました」
「ミコトお姉ちゃん、ね」
「それじゃあ、先にリビングに降りてます」
「私もすぐに行くよ」
そうだ、話してる時に、ちょっと気になったんだよね。梅の枝がさ、少し伸びてきてる気がする。梅はちゃんと切らないとね。 …ふぅ、終わった。私もリビングに行こう。
「ねぇねぇ、一緒に登校する?」
「お、ええなー! 葵とミコトさんも入れて、5人で行こうやー!」
「ヒメ姉とミコトさんの家から学校まですぐだし、一緒に登校しても話す時間とかないんじゃないかな…」
「…確かに」
「せやった…」
「休み時間にも話せるんだし、登校は別々で良いんじゃない?」
「それもそっか」
もう学校の話で盛り上がってるのか。まぁ、夏休みが終わったら今みたいに遊び回る暇はなくなると思うし、話せる時に話したい気持ちはわかるけどさ。
それから、皆でわいわいテーブルゲームをして遊んだ。少し日が陰ってきた頃、2人は家に帰って行った。リビングでヒメと2人、晩御飯を食べる。
「いやー、良かった。楽しみだね、ミコト」
「そうだね。蕾ちゃんも嬉しそうで良かったよ」
「ねー。いつからだっけ?」
「来週じゃないかな?」
「そうだった気がする」
2人で適当に話しながらご飯を食べて、お風呂にも入って、眠る時間。最近は忙しかったけど、やることは終わったし、後はのんびり夏休みを満喫しようかな。
そうだ、新しい花でも植えようか。秋から冬にかけて咲く花を、今のうちから育てておこう。あ、梅ジュースも作らないとなんだった。明日起きたらすぐに作ろう。
ふぁ〜、眠いな。今日はいい夢が見られそうだ。おやすみなさい。
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