遂にその日がやってきた。男として生まれ、友達を作り、勉学に勤しみ、普通に過ごしてきた僕が、女として入学する日。
「準備できた?」
「うん、大丈夫」
「みんなバッチリやでー」
「じゃ、行こっか」
昨日何度も確認したし、忘れ物はないはず。確か、今日は高校の裏門で先生が待ってるんだよね。多分、他の人が教室に入った後に、「なんと転入生がいます! 入って下さい!」みたいな感じにやるんだろうね?
3人で、話しながら歩く。普段より早い時間に出てきたから、クラスメイトに会うこともなく高校の近くまで辿り着いた。正門に走って行く葵と茜を見送ってから、裏門に向かう。
「蕾ちゃん。私も一緒に行く」
「あ、ミコトさん。おはようございます」
「裏門で待ってる先生… あかり君の担任の先生だね。先生には、私が保護者の代わりに行くと伝えてある。前みたいに… 上手く、嘘をついてくれよ?」
「…はい」
「頼むよ。ここで変なことを言って、全部無駄になったら
「肝に、銘じておきます」
…そっか、クラスで挨拶する前に、先生とのお話をしないとなのか。大丈夫、‹設定›は頭に入ってる。ミコトさんも居るし、落ち着いていこう。担任の先生でも、初対面の気持ちで…
「先生、おはようございます」
「お、ミコトちゃん! と、言う事は… 隣りにいる君が、蕾ちゃんかな?」
「は、はい… 紲星、蕾、です!」
「緊張してるのかな? さ、入って入って。談話室を確保してあるので、GO!」
「蕾ちゃん、ちょっとテンションが高い先生だけど、いつものことだから気にしないで」
「わかりました」
先生に高校の中を案内されながら歩く。全部知ってる部屋だけど、知らないふうに話せたと思う。
「ここだよ〜。そこの椅子座って。プリント取ってくるから、リラックスして伸びでもしといて」
「わかりました」
「蕾ちゃん、リラックスして。みんな良い人だから」
「は、はい!」
…談話室、初めて入ったな。ちょっと日当たりが悪いのか、朝なのに暗い。椅子と机しかない部屋だし、壁も灰色一色だし、照明も… 照明は
「ミコトさん、談話室ってこんな部屋なんですね」
「こんなもんじゃないかな? 普段使わない部屋に、無駄に装飾しても意味ないしさ」
「使わないんですか?」
「お客人のもてなしは基本校長室だからね。
「詳しいんですね」
「別に、ちょっとお客人の後をつけただけだよ。蕾ちゃんも、今度どう?」
「いや、私は…」
「こら、変なことを吹き込まないの」
戻ってきた先生は、プリントを数枚持っていた。なんのプリントだろう? 地図とかクラス名簿かな?
「先ずはこれ。教科書のリストだね。このリストにある教科書は本屋さんでも売ってるんだ。学校でも売ってるんだけど、近くの本屋さんで買ったほうが安いよ」
「あ、教科書は兄から借りています」
「あかり君から? でも、2人共使うんだし、蕾ちゃん用に買っておいた方がいいと思うよ?」
「あ、えっと…」
「あ〜、先生。あかりさんは今、学校に来られない状況なんです」
「あら、そうなんだ。それじゃあ、あかり君が来れるようになったらでいいのか、教科書買うのも」
「はい…」
あかりとして学校に来れるようになったら、蕾として学校に行けないから、教科書を買うことはないんだけどね… ミコトさんが上手く話してくれるから、僕は静かにしてようかな。
「次は時間割だけど、あかり君から聞いてるかな?」
「はい、聞いています」
「それじゃあ、後は… 緊急連絡先か。家族が遠くに住んでるから、代わりにミコトちゃんの家が第1連絡先なんだっけ?」
「第1連絡先は、琴葉葵さんの家です。それで、私の携帯電話が第2、葵さんの携帯電話が第3です」
「あ、葵ちゃんの家なんだ。それなら電話番号も知ってるから… ミコトちゃんの電話番号もわかるし、特に書いてもらわなくても大丈夫だね」
「わかりました」
「それじゃ、ミコトちゃんは自分のクラスに向かっちゃいな〜 蕾ちゃんは、時間になったら呼びに来るから、待ってて」
1時間程経ってから、先生が談話室に戻って来た。これから、クラスで転入生として紹介されるらしい。 …よし、大丈夫。この1時間でちゃんと考えたから、出来るはず。
「は〜い。ホームルームの前に、なんと転入生が居ます」
「お! 誰や〜!」
「……」
「それじゃあ、入って自己紹介して下さい」
教室の扉を開けて、黒板に名前を書く。そして、教卓の前に立ち、頭を下げる。さぁ、自己紹介するぞ。
「はじめまして! きじゅ… 紲星蕾です! これから、よろしくお願いします!」
「よろしくな〜!」
「…ふっ」
やり直させてもらえませんか?
どのキャラの話が気になりますか
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