色の変わった星とパステルカラーの姉妹   作:緑雨

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Part20 暴れ馬

 

 自己紹介の後は、いつもどおりに授業を受けた。休み時間に、「よろしく!」とか「お兄さんはどうしてるの?」とか言われたけど、特別なことはなかった。

 

 強いて言えば、隣の席が葵でよかった。数学とか、わからなくても聞いたら教えてもらえるから助かった。それに、授業中に他の人に話しかけられないのも。急に話しかけられたら、びっくりしちゃうし。

 

 何か起こったのは… お昼のことだった。4限目が終わって、お弁当でも食べようかと立ち上がった時、廊下からドタドタと走ってくる音がした。それから、教室の前側と後ろ側の両方の扉が一気に空いた。

 

あかね! お弁当を一緒に食べよう!」

蕾ちゃん! 来て〜!」

…はぁ」

元気なのは良いことだけど、廊下は走らないでね? それと、扉も丁寧に扱って下さい」

あ、すみません」

申し訳ない」

 

 教室中の視線が、ミコトさんとヒメ姉に集まる。それから、名前を呼ばれた僕が見られる。恥ずかしい… というか、初日からやめてほしいという気持ちだった。

 

それじゃあ茜、屋上で待ってるよ」

蕾ちゃんも、待ってるからね!」

行くで〜! うぉ〜!」

…蕾ちゃんはどうする?」

…行ってきます」

はぁ… 私も行くよ。あの人らを叱りたい気分だし」

走らないでねー」

 

 走って行ってしまった茜の後をゆっくり追いかける。屋上… どこの階段を登ればいいんだっけ?

 

こっち。そこの階段登っても、3階までしか行けないよ」

あ、そうなんだ。教えてくれてありがとう、葵さん」

…普通に話して大丈夫だと思うよ」

…じゃあ、ありがとう、葵」

はい、どういたしまして」

 

 話しながら、廊下を進む。窓からちらっと外を見たら、校庭でベンチに座りながら食べている人が見える。そこから上に視線を向けたら、空を飛ぶ飛行機が見える。そして、明るい太陽が見える。

 

 教室から、楽しげに笑う声がする。廊下を前から走ってくる人もいる。トイレに向かう人も、水道で手を洗う人も。いつもの学校の光景だけど、懐かしくて、なんだか楽しくなってくる。

 

 階段を登る。屋上に着いたときには、もう足が痛かった。扉を開けて、屋上の空気を吸う。廊下と違うのかわかんないけど、気持ちいい気がする。

 

お、葵〜! 蕾〜! こっちや〜!」

そんなに呼ばれなくても、わかってるよ」

葵ちゃん、蕾ちゃん。2人にも、私が丁寧にお弁当を作ってきたから、食べてほしいな」

私も作ったよ!」

…あの、私、自分で作って来ちゃったんですけど…」

私もです」

…茜? もしかして、伝えてないのかい?」

…? あ〜、あー、あー! 忘れとったわぁ…」

 

 

 …ミコトさん達、気合を入れて5人分お弁当作るから、僕達には作らないでって茜に伝えてたんだって。でも、茜が僕達にそれを伝え忘れてたから、自分の分を作ってきちゃった。どうしよっか、お弁当が沢山あるよ。

 

…余りそうなら、ゆかりさんとか呼んでくる?」

そやなぁ、うちが走って呼んで来るで?」

余らないから大丈夫だよ」

…この数だよ? この後も授業があるし、無茶はできない」

あ〜、美味しいです」

お、蕾ちゃん、美味しい? 沢山あるから、好きなだけ食べちゃっていいよ」

ほんとですか!」

ミコトさん、蕾に食べられる前に自分の分は食べたほうがいいですよ」

…そうだね、気を抜くと全部食べられてしまいそうだ」

 

 …そんなに食べないよ。そこまで食い意地はってないもん。自分の分しか食べないよ。ほんとだよ? 僕より、茜に気を付けた方が良いんじゃないかな。だって、今も葵のお弁当からエビフライを盗ろうとしてるもん。あ、バレた。

 

…帰ったらお説教ね」

う、うちは悪くないで〜? …そう! エビフライが美味しすぎるのが悪いんや!」

正座でお説教ね」

い、いや〜? そんな、お説教しなくても良いんじゃないですか、葵様。そ、そう思うやろ、蕾」

え? う〜ん… 私にはわかんないかな」

反省文も追加ね。それと蕾ちゃんも真面目に答えなくていいから」

反省文… ミ、ミコトお姉ちゃん、助けて欲しいなぁ」

然るべき時にしっかりと叱るのも、年上の責任だよ」

そ、そんな…」

 

 …そんな助けて欲しそうな、うるっとした目で見られても助けないよ。茜が悪いもん。助け舟なんて出したら、僕も沈んじゃうよ。茜の後ろから、ニコって小さく笑いながら葵が見てきてるもん。無理だよ。

 

 他のほう… ミコトさんとヒメ姉の方に行こう。床に正座しながら、背筋を伸ばして、綺麗に食べてる。静かに、茜と葵を微笑みながら見てる。これが、年上の余裕かぁ… 僕も、こんな大人になりたいな。

 

ヒメ、ちゃんと梅も食べたかい? ほら、梅干しも梅ジュースもあるよ」

…食べたよ。ほら、朝にお米に乗せて」

それなら、もっと食べたほうがいい。1個だけだと、十分じゃないからね」

あ〜、そういえば、登校前にもう1個食べたかも」

そう? 沢山食べて損はないから、はい、梅干しおにぎり」

…絶対に食べさせる気じゃん」

うん。あ、蕾ちゃんも食べる?」

1つだけいただきます」

じゃあ、私は優しいから、2つあげよう」

要らないです」

そんなこと言わずにさ要らないです」

 

 もっと、他の人に憧れよう。

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