「んぅ…」
朝…かな…? 暗くてよく見えないけど、多分朝だよね。あ〜、寝ちゃったんだな。ミコトさんに勉強を教えてもらって、そのまま机で… いや、今寝てるのはベッドか。温かいし、柔らかいし。運んでくれたのかな? ん〜、眠いけど起きなきゃな。
「よっ… ん? ん〜、あれ?」
起きようとしても体が動かない。足とか手は動くんだけど、お腹が抑えられてる感じがする。後ろに引っ張られているような感じかな? これは… 手? 見えないけど、触った感じ手だと思う。
「ふぅー! だめか…」
頑張って動こうとしても、がっちり固定されて動けない。というか、手って、もしかしなくともミコトさんだよね? 後ろを見てみると、すぐ近くに顔がある。ぐっすり寝ているみたいで、起きそうもない。
なんで僕、抱きしめられてるんだろう。ベッドに運んでくれたあと、そのままミコトさんも寝ちゃったのかな。それか、抱き枕のかわり? 確かに抱き枕くらいのサイズだけどさ。
って、そんなことはいいんだ。早く脱出しないと… 時々ミコトさんの足があたるし、体はぴったりくっついてるし、その… 胸もあたるし。恥ずかしいというか、なんというかって感じだから… ね。
ミコトさんの手を掴んで、外す… う〜ん、力が強くて外れないな。取り敢えず体を動かしてみたら、脱出… 出来ないや。無理矢理動こうとすると体が引っ張られて、また戻されちゃう。足を使って体を少し起こ… せないかぁ。
「あの、ミコトさん。手、離してもらえませんか?」
「んん〜?」
話しかけても駄目そう。どうしようかな… やっぱり、ミコトさんの手を何とかどかさないとだよね。力を込めて、ふんぬ…
「ん〜! だめか… ひゃっ!?」
ちょ、手が… どかそうと全力で引っ張ったら、ちょっと上がって… まずい、まずい。今の位置もちょっと危ないけど、これ以上上がったらもっとまずい! 何とか逃げるか、お腹に戻すか… って、またちょっと上がってきてる?
「んっ、ちょっ! み、ミコトさん!」
「んぅ〜、ん…」
「み、ミコトさん! ちょっと、ひぁっ!」
「おーい、どうしたー? 朝だから起こしに来たんだけど、なんか変な声聞こえたんだけどー!」
「ひ、ヒメさん! 助けてください! ミコトさんが、ミコトさんが! んっ!」
「開けるよ!」
ヒメ姉が扉をバンって勢いよく開けて入ってきた。
「蕾ちゃん、どうしたの!」
「あの、ミコトさんの手が、その… んっ えっと、私の胸に… っと」
「ミーコートー! んー! おらー! 手を離せー!」
「んっ… あ、動けるようになった…」
開放されて一息つく間もなく、どんっと大きな音がした。音の方を見ると、ミコトさんがベッドから床に落っこちていた。ヒメ姉に引っ張られて落ちたんだろうけど、痛そう…
「いっつ… な、なにごと?」
「ミコト、顔洗ってきな。その後お説教だから」
「え、え? ヒメがなんで私の部屋に… というかなぜ説教…?」
「いいから洗ってきて。蕾ちゃん、リビングの机の上に朝ご飯置いてあるから、食べてきな」
「はい…」
「葵さんが家から学校鞄と制服持ってきてくれるらしいから、食べ終わったら受け取って着替えちゃってね」
「わ、わかりました!」
走って部屋を出て、リビングに向かった。時計を見るともう朝7時で、少し急ぎながらご飯を食べる。ヒメさんが作ってくれた朝ご飯は白米に焼いた鮭と卵焼きとお味噌汁っていうオーソドックスな和食って感じだった。美味しかったけど、なんか気分がふわふわしちゃって、あんまり味わえなかったな… それからすぐに、ピンポンが鳴った。
「はい! どなたで… あ、葵!」
「はい、制服と鞄。荷物も確認してあるから。それと… 大丈夫だった? ちゃんと寝れてる?」
「うん、ぐっすりだよ」
「よかった」
「葵ちゃん! 入って入って、学校まで休んでって」
「それじゃあ、お邪魔します」
葵は制服を着て、自分の学校鞄もちゃんと持ってきてる。僕もちゃんと自分で… いや、急だったから仕方ないかな? でも、持ってきてくれてありがたいね。今からご飯食べて、帰って着替えてってすると間に合わなかったかも。
リビングに葵とヒメ姉をおいて、僕は脱衣所へ。恥ずかしいし、着替える場所があるなら使わないとね。ただ… 僕、3人共に裸見られたことあるんだよね。また見られたくないからちゃんと脱衣所で着替えるけどさ。
そういえば、ミコトさんはどこに居るんだろう? ヒメ姉にお説教されたまま部屋にいるのかな? まぁいいや、着替え終わったしリビングに戻ろっと。
リビングに戻るとヒメ姉と葵が話していて、ちょうどミコトさんもリビングに来たところだった。
「お〜、葵ちゃん。わざわざ来てくれてありがとう」
「こちらこそ、蕾がお世話になりました。何かご迷惑かけていませんでしたか?」
「全然! 逆に、ミコトが蕾ちゃんに色々迷惑かけちゃって… ほんと、蕾ちゃん、ごめんね」
「大丈夫ですよ。まぁ、そんなことも、ありますから…」
「…あの、何があったんですか?」
「ミコトが蕾ちゃんにセクハラした」
「えぇ… ミコトさん、嘘ですよね?」
「…本当に、申し訳ないと思っているよ」
「…ちょっと、見る目がかわりそうです」
ミコトさんを見る葵とヒメ姉の目が、どことなく同じように見えた。凄く、冷たい。
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