「葵〜。ミコトさんに誘われたから、外でご飯食べてくるね」
「…うん、わかった」
あかり君がそう言って家を出た。それから数分後、私も家を出た。ミコトさんの創作料理を食べるって話してたから、家に行ったんだろう。場所はなんとなくわかる。確か、学校のそばの草木が茂っている大きくて豪華そうな家。
登校してる時に思わず見てしまうくらい目立っていた家。表札を見てみると、『鳴花』って書かれてる。間違いない、この家だ。門を少しだけ開けて敷地に入る。そして、建物のそばに寄る。開いている窓の下で、聞き耳を立てる。
はっきりとは聞こえないけど、ステーキの話をしてる? 酸味とか、辛味とかそんな話をしてる気がする。 …本当に食べてるだけなのか。 …変に疑って悪かったかな。
仲の良い異性の先輩の家に遊びに行くって、なんか裏があるのかと思っちゃった。まぁ、よく考えたらあかり君が
完全な徒労だったわけだし、早く家に帰ろう。お姉ちゃんはまだ学校に居るみたいだから、晩ご飯を作って待ってようかな。 …あぁ、でも料理部で色々作るって言ってたし、お腹いっぱいかな? あかり君が居ないから、作り過ぎには気を付けないと。
そんな事を考えながら家に帰った。料理はお姉ちゃんが帰ってきてからで良さそうだし、ちょっと部屋で休んでよう。…折角だし、二段ベッドの下側で寝っ転がってよっと。
いい匂いするな、ここ。シャンプーとかは
少ししたら、お姉ちゃんが帰ってきた。あかり君のベッドにダイブしてる所を見られたら冷たい目で見られるだろうし、起き上がってリビングに戻ろう。
それから、お姉ちゃんとテレビを見ながら話していた。すると、お姉ちゃんのスマホに電話がかかってきた。
「はい、もしもし? あ、ヒメさん。 …え、はい、大丈夫ですよ! それじゃあ、今日は蕾をお願いします! 今から着替え持っていきますね」
「…お姉ちゃん? 何の電話?」
「あかりが鳴花さん
「…わかった、行ってらっしゃい」
「おぅ!」
…泊まりなんて聞いてないんだけど? ご飯を食べてくるだけ、日帰りじゃないの? …別に、泊まりでもいいんだけどさ。急に泊まることになったってことだよね、多分。
しかも、あかり君本人じゃなくてヒメさんからの電話… 何かあった? いや、でもヒメさん達があかり君に何かするとも思えないか。成り行きとか、そんな感じかな? …琴葉家より鳴花家の方が居心地が良かったとかだと、どうしようか。
深く考えても仕方ないし、今日は早めに休もう。取り敢えずお惣菜とかで晩ご飯は用意して、お風呂に入っちゃおう。お風呂は、体が綺麗に洗えたらあんまり長く浸からなくてもいいかな。
お風呂から上がると、お姉ちゃんが晩ご飯を食べていたから私も一緒に食べた。お惣菜で済ませちゃったけど、大丈夫だったかな。
「こういうのも美味しいんやなぁ」
「そうだね。こういうご飯もありでしょ?」
「せやけど、うちはやっぱり葵の手作りがええなー」
「明日は作るから、今日は勉強が忙しくてね…」
「…そんな課題大変なん。うちも頑張らんとな…」
後片付けはお姉ちゃんがやるって言ってくれたから、私は部屋に戻る。特に課題が多いわけじゃないから、簡単に全部終わらせちゃって、暇な時間。まだ眠くないけど、遊び相手もいないし… お姉ちゃんは課題だーって部屋から出てこないし、あかり君はそもそも家に居ないから。
…誰も部屋に入ってこないんだし、またベッドに飛び込んじゃおう。というか、折角なら今日はこっちで寝ようかな。ん〜、ふかふか。それにちょっと背徳感。でも、元は私のベッドだしね。
そうだ、ぬいぐるみも今度洗ってあげないと。あかり君、昔からこのぬいぐるみ可愛がってたからね。あんまり洗ってなさそうだし、今度洗い方調べて綺麗にしてあげないとね。なんか、黄ばんでる気がするから。
もう、ちょっとずつ秋になってきたし、布団も用意しないとかな。タンスの中にでも入ってるだろうし、気が向いたら探しとこう。今日はいいや。多分、明日も同じこと言ってる。
…なんか、全然落ち着かないな。あかり君が使ってたベッドと布団だからかな? 嫌な感じは全くしないんだけどね。いつもの場所に戻ったらすぐ眠れるかな? …でも、折角人がいないんだし、今日はここで寝たいよね…
そうだ、枕の匂いとか嗅いでみようかな。あかり君が使ってた布団からいい匂いがするんだから、枕も絶対いい匂いだよ! よし、頭を突っ込んで嗅いでみよう。
…うん、いい匂い。凄い気持ちいい匂いって感じ。今目を閉じたら、すぐに眠っちゃいそうな感じがする。でも、明日の準備とかしてないんだよね… いいや、眠っちゃおう!
私は目を閉じて、あかり君の香りに包まれながら眠った。夜にお姉ちゃんが部屋に入ってこないことを祈りながら。
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