葵Side陸 あかりちゃん
「んぅ…」
「あ、葵ちゃん! 急に寝ちゃうから心配したんだよ?」
「…あかり君?」
「? あかりだけど… 君呼びなんて珍しいね?」
「…そう? 普段からそうじゃない?」
「いや〜? 初めてじゃない?」
…目を覚ましたのは恐らく保健室のベッドの上。寝るのは初めてだけど、こんな部屋だったと思う。それで… あかり君はどうしたんだろ? まだ頭痛いし、ふざけるのは大概にしてほしいんだけど… あ、近くにヒメさんでもいるのかな? それなら誤魔化すのもわかる。
「…近くに誰もいない、か」
「うん、私と葵ちゃんだけ。ほんと、心配したんだからね? 屋上で話してたら、急に倒れちゃうんだから」
「…いつもの感じで喋らないの?」
「ほぇ? これがいつも通りだけど… 葵ちゃんこそ、なんか変だよ?」
「…近くに人が居ないんだから、芝居なんてしなくて大丈夫だよ、あかり君?」
「芝居なんてしてないんだけど… やっぱり葵ちゃん変だよ、いつもはあかりちゃんって呼んでくれるのに… 熱中症のせいかな、はい、お水だけど、取り敢えず飲んで」
「ん… ありがとう」
やっぱり、なんか変。私はいつも“あかり君”って呼んでるし、“あかりちゃん”なんて呼んだことない。それに、葵ちゃんって… あかり君にこう呼ばれるの初めてだよ。嫌ではないんだけど、なんか気持ちが悪いというか… 呼び捨てに慣れすぎて、あかり君にそう呼ばれると合わない。
ゆかりちゃんとかミコトさんに呼ばれる分には気にならないけど、あかり君にちゃん付けされると気になっちゃう。いつもと気分を変えるにしても、そこを変える必要はないし… 普通に考えたら夢、かな?
「…あかりちゃん、頬をつまんでもらえる?」
「? いいですけど… えい」
ちょっと痛い… でも、夢の中でも痛みは感じるって聞いたこともあるし、これは現実だって根拠にはならない… 非現実的な事が起こせれば夢だってわかるんだけど、何かできる気はしないな。 …まぁ、あかり君の悪ふざけか夢のどっちかでしょ、多分。
「ありがとう、あかりちゃん」
「どういたしまして? あの、葵ちゃん。まだ体調悪そうだけど、先生に連絡して早退する?」
「…お願い」
「わかった。ちょっと待っててね、鞄とか持ってくるから」
「うん、待ってる」
この反応、悪ふざけじゃなさそう。ってことは、夢か。いわゆる
だって私、熱中症で倒れたから、近いうちに叩き起こされるでしょ? お姉ちゃんとあかり君が「起きてよー!」って私の腕をペチペチ叩いてるのが想像できるもん。まぁ、折角の明晰夢だし楽しむけどさ。
夢の中だし、何をしても良いんだよね… 現実だとできないことをやっちゃおう。 …あ、あかりちゃんが鞄持って帰ってきた。
「鞄、持ってきたよ。葵ちゃんが心配だから私も一緒に帰るね」
「ありがとう、あかりちゃん」
「えへへ、どういたしまして」
いつ夢が覚めるかわからないし… 今、仕掛けちゃおっか。ベッドの上で体を起こして、上履き履いて、ベッドに座る感じにして… よし、準備完了。
「あかりちゃん、立ち上がるの不安だから、近くに来てもらえる?」
「はい! 両手持って引っ張り上げればいいですかね?」
「うん。正面から、引っ張っちゃって」
「わかりました。行きますよー ほいっ …んっ、ふぇぁっ!?」
「ご、ごめん! 勢い余っちゃって…」
ふむ… 弾力はしっかり感じるね。現実のあかり君も今はこんな感じなのかな。お風呂で見たことはあるけど触ったことはないし… 今度、試してみたいけど… ミコトさんは許されたけど、故意でやったら許してもらえないよね。
まぁ、夢の中で触れたし今はいっか。夢の中をもっと楽しまないとだしね! 次に明晰夢を見れるのがいつかわからないし、今のうちに出来ることはやらないとね。
「…あかりちゃん、私の事って背負える? 歩くのが思ったより大変で」
「え、流石に無理だと思うけど… でも、葵ちゃんが大変なんだもんね」
そう言って、あかりちゃんは私の目の前で屈んでくれる。鞄を両手に持ちながら、大変そう…
「はい、のってみて」
「ほ、本当に大丈夫? 自分で言っておいてなんだけど、無理しないでね?」
「大丈夫! 無理だったらすぐに言うから、のってみて」
「う、うん」
「ふ〜 よいしょー! お、何とか、なりそう…」
あかりちゃんの背中にのせてもらった。あかりちゃんの両手は塞がってるから、私が手を肩に、足を腰のあたりに乗せてる感じ。あかりちゃん、ちょっときつそうだし… やりたいこと済ませて早く降りちゃおう。夢の中とはいえ、可哀想だし。
…うん、いい匂い。あかりちゃんの髪と私の鼻が同じくらいの高さだから、ちょうど嗅ぎやすい。これも現実でやったら怒られるじゃすまないだろうし…
…あ、腕が痛い。これ、しがみついてるのに疲れた痛みじゃなくて、叩かれたような痛み。 ってことは、もう夢覚めちゃうな。
「…あかりちゃん、大好きだよ」
「ふぇっ!? ああ、葵ちゃん!?」
う、腕が痛い… あ、落ちそ… う…
ーーー
「あおい〜! いつまで寝てるんやー!」
「あおい… 目、覚ましてよ…」
「…痛いんだけど、ねぇ」
「あおい!」
「よかった… 起きた…」
「ちょっと体調崩しただけなんだから、心配しすぎだよ。まぁ… 嬉しいけどさ」
うんうん、やっぱりこんな反応だよね。現実に帰ってきたって感じがする。 …そうだ、この流れでちょっと試してみよ。近くに他の人は… 先生がいるか。
「…体痛くて起き上がれないから、蕾ちゃん、手、引っ張ってもらえる?」
「うん、わかった。それじゃ、いくよ。よっと… んぅっ!」
「あ、ごめん…」
「だ、大丈夫。事故だから、大丈夫だよ」
うん、同じ感触。あの夢、忠実に再現されてたんだなぁ…
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