葵から肩透かしな話をされた後、言われた通りにぬいぐるみを廊下に出した。エビ太とエビ子、綺麗になってくるんやで。お前らは揚げへんから、ちゃんと帰ってくるんやで〜!
別れを済ませたらゲームの続きをして、ご飯を食べてお風呂に浸かって、ベッドに飛び込んだ。結局、あの2人が隠しとることはわからないまま。でもうちは待つで、2人から話してくれるまで。
「お姉ちゃん、話があるんだ」
「んぇ…? ここ、どこや…?」
「ふざけないでよ、家のリビングだよ。話があるからって、私が呼んだんじゃん」
「そ、そうやったなぁ…」
そうやったか…? いや、そんなわけあらへんよな。うちは確かに部屋のベッドで寝たし、葵に呼び出された覚えはあらへん。もしかしてうち、寝ながら返事して寝ながら歩いたんかな。凄いなうち、新しい才能やん。今は要らん才能やけど。
というか窓の外が明るいし、もう結構な時間なんかな。うち、何時間寝ちゃったんやろ。もしかして半日寝てた? いやでも、寝ながら動いてたんなら起きてたってことになるんかな? う〜ん、難しいことはわからへんしええか。
「それで、何の話なん?」
「お姉ちゃんに、会わせたい人がいるんだ」
「あ、会わせたい人ぉ…?」
この流れ、昨日感じてたやつのまんまやん。会わせたい人って絶対あかりやろ? この後のセリフ予想できるで、『実は僕、葵と付き合ってたんだ。茜、僕達の交際を認めてください!』やろ?
「…わかった、連れてきてくれんか?」
「うん、扉の前で待ってもらってるから連れてくるね」
そう言って葵は玄関に歩いてく。扉の向こうが見たいけど我慢や、うちは椅子に座って待つんや。玄関から遠い席に移っとこう。こういう話する時って家主は上座にズシッと座って待つんやろ? 玄関から遠い席が上座、のはず。
席を移った時にチラッと視界の端で見えてもうた。玄関の方に
「お姉ちゃん、この人は紲星あかり君だよ」
「茜さん、こんにちは」
『あかり君だよ』って言われなくともわかるで? なんせ昨日も会っとるからなぁ… この微妙に芝居臭い話に乗ったほうがええんよな? わざわざこんなやり方するって、うちにも上手く合わせろってことよな?
「あかりさん、こんにちは。今日は何用でしょうか?」
「茜さん… 言い慣れないからこの呼び方やめていい?」
「おう、ええで」
「茜。実は僕、葵と付き合ってたんだ。僕達の交際を認めてください」
セリフちょっと間違えとったあぁぁぁ! 絶対に当てれると思ってたから悔しい。いや、そんなことはどうでもええんや。ちょっと焦らすために少し間を空けてから返事したろう。この時間、うちが
2人がわっかりやすく緊張しながらうちを見とる。目を殆ど閉じて腕も組んで悩んでるふりをしとるんやけど、少しずつあかりの目が潤んでいっとる。葵も目を閉じて祈っとるし、本当の本当に、本気なんやなぁ。
答えは決まっとるんやけど、今しか聞けへんこともあるやろうしちゃんと聞いとくかぁ。惚気話は今後は幾らでも聞けるけど、馴れ初め話とかは今聞くべきやろ? いつ出会ったとか知ってるけどさ。
「あかりは葵のどんなところが好きなん?」
「…1番は優しくて、いつも僕の背中を押してくれて、こんな性転換した僕をずっと支えてくれて。それに、時折見える笑顔が可愛くて。葵と話してると、心が軽やかに楽しくなって。優しくて、甘えん坊で、健気で。そんな葵が好きなんです!」
「ほぉん… 葵はあかりのどんなところが好きなん?」
「全てかな。子供の頃からずっと一緒に遊んでたけど、元気なところも優しいところも、流されやすいところも嘘が苦手なところも。笑顔で沢山ご飯を食べるところも、楽しそうにゲームをしてるところも。全部好きだよ、上も下もないかな」
「なぁるほどなぁ。そうなんか…」
あんまり長く焦らしてもしゃあないし、そろそろ言うかぁ。2人が何と言おうと答えはもう昨日には決めとったんやけどね。うちは2人のことをよー知っとるから。迷う要素があらへん。
「あかりがうちの弟かぁ、こき使ったるから覚悟せぇよ?」
「…! それって」
「おぅ、駄目やなんて言うわけないやん。あかり、葵をちゃんと幸せにしたれよ?」
「もちろん! 茜お
「その呼び方やめてぇや。なんかむず痒くなってくる」
は〜、今日からどうしよ。今まで通り3人で暮らすわけやけど、2人の甘々なところとか見たらどうしよう。そうゆうのは部屋でやってくれるとは思うけど、リビングでいちゃついとったら見て見ぬふりをすればええんかな。
後、買い物とかも2人とは別で行くかー。登下校もちょっと後ろから追いかけてこう。手を繋ぐくらいならええけど、外で抱きついたりしとったら叱ってやらんと。他の人に見られたら高校でイジられるで? 他の人は今のあかりのことを蕾やと思っとるからなぁ。
ふぁー、疲れたし眠くなってきた。まだ昼間やけど寝よう。2人には疲れたから寝るって言って、部屋に戻ってベッドにダイブ! おやすみなさいやでー
「お姉ちゃん、いつまで寝てるの?」
「ん… 葵〜?」
「そう! 12時になっても起きてこないから起こしに来たの」
「あれ、さっき起きてたんやけど」
「夢でもみてたんじゃない?」
…あぁ、あれ夢だったんか。鮮明に覚えてるけど、夢、だったんかぁ。
「寝る」
「いや、起きてよ」
「寝る! 不貞寝や不貞寝!」
「え、何があったの?」
「いい夢見てたんや!」
「はぁ… 今なら課題教えてあげようと思ったのに」
「いや〜、いい朝やなぁ。葵、全部教えてくれ」
「わかりやす…」
課題を終わらせてくれるんならすぐ起きたる!