幸せな夢のおかげか、気持ちの良い目覚めだった。今ならなんだって出来るんじゃないか、そう思える。目覚ましのアラームが鳴るよりも早い時間、鳴る前に起きて停止ボタンを押せると妙な嬉しさがある。今日は一昨日や昨日よりも楽しい日になるといいな。
でも、大変な2日間だったけど夢を見れたのは良いことだったね。次に見れる時のためにやりたいこととか決めたほうが良いのかな。ま、そんなことを考えてたら見れなくなるんだけど。物欲センサーってやつだね。
気分がいいし
明かりをつけたらあかり君が起きちゃうだろうし、静かにリビングに向かわないとね。寝てるあかり君にいたずらしようとも思ったけど、起こしちゃったら良くないからやめようかな。まだ朝も早いし、ちゃんと布団をかけてそうだし触らないでおこう。それに暗いとよく見えないって学んだからね、夢の中で。
「ふんふふ〜ん、おぉー美味しそう!」
え、廊下に出たらあかり君の声が聞こえてきたんだけど。それに何か炒めてるような匂い。もしかして私、まだ夢見てる? ちょ、さっきの布団めくってこよう。
…いない、布団が整ってるとは思ったけど中身いなかったのか。起きてから直したから整ってたってわけね、なるほど。日曜の朝に早起きだなんて珍しい、ちゃんと寝れてるのかな。
「おはよう、あかり君。何作ってるの?」
「おはよう葵。作ってるのはチャーハンだよ、美味しそうでしょ?」
「廊下までいい匂いがしてたよ。朝ご飯を作ってくれてたの?」
「うん、早く起きちゃったから作ってたんだ。もうできるから顔でも洗って待っててよ」
「楽しみにしてるね」
「任せて、料理は好きだから」
食べる専門じゃなかったんだ… そりゃそうか、少し前まで1人暮らしだったんだから作れるよね。顔は軽く洗っとけばいいかな、水を浴びると目って覚めるけどもうぱっちりだし。さーて、炒飯をいただこうか。
「はい、これだよ。美味しくなかったらごめんね、残しても良いから」
「残さないよ、あかり君が折角作ってくれたのに残して捨てたらもったいないでしょ?」
「残ったら全部食べるから捨てることはないけどね」
「確かにね。それじゃ、あかり君が太らないようにしっかりと全部食べさせてもらうよ」
「僕も食べようっと。いただきます!」
「いただきまーす」
うん、美味しい。このお米、昨晩私が炊いといたお米じゃないな。このパラパラとした食感は私が適当に冷やしたお米を温めたらできない。朝にお米まで炊くって、本当に早起きだったんだね。6時には起きてたのかな?
それにしても美味しいなぁ、出来立ての
初めは塩とコショウが効いた少しピリッとした辛さが舌を震わせ、お米と卵の自然な甘さが舌を癒やして喉を流れていく。噛みごたえのあるゴロッとした叉焼はアクセントとなって、食べる人の意識を炒飯から逃さない。他のことを考える余裕のないほど、私はこの炒飯に魅了されてるのかも知れない。
「美味しいよ、あかり君。おかわり欲しいな、ある?」
「ありますよ。おかわりされると僕がおかわりする分が減っちゃうけど、葵に喜んでもらえて嬉しいな」
今日は本当に気分がいい。幸せな気持ちでスッキリと目覚め、最高の朝食を食べたんだから当たり前かもしれないけど。
「朝から美味しいご飯が食べられて幸せだよ」
「そんなに褒められても何にも出ないよ?」
折角だし、あかり君をからかったりしちゃおうかな。夢の中ではあかりちゃんの恥ずかしがってる顔が見れなかったし、現実であかり君の恥ずかしがってる顔を拝もうってね。
「毎日あかり君の料理が食べられたら幸せだろうなぁ。あかり君、私のために毎日味噌汁を作ってよ」
「いいよ? 味噌汁じゃなくても、幾らでも作るよ」
「…あかり君には通じない、か」
「え、僕なにか間違えてた?」
「そんな大したことじゃないよ」
「そう言われても気になるよ、教えてほしいな」
…こう言うのって説明しろって言われるとキツイな。軽く振られて冗談だよって言って終わらせようと思ってたのに。なんか恥ずかしいよね、こう言う遠回しな表現を説明するのって。
「毎日味噌汁を作って欲しい、って言うのは告白に使われるフレーズなんだよ」
「そうだったんだ…」
「突然会話に混ぜたらあかり君がええっ!? って感じで恥ずかしがってくれるかなって思っただけだから、本当に大したことじゃないんだよ」
「僕でいいなら幾らでも付き合うよ?」
「え? はっ、え?」
え、あかり君? ほ、本当? もしかして今日って何をしても上手くいく最高の1日なの? もしかして、昨日メモを張り替えた必要とか何もなかった? あかり君って私のこと好きだったの? ちょ、ちょっと落ち着こう。
「そういうことじゃないの?」
「そういうことではあるんだけど、え、いいの? 私、あかり君のことをからかおうとして言っただけだったんだけど…」
「うん、いいよ。だって肩書が変わるだけでしょ? 今も一緒に住んでるし、2人で買い物にも行くし。恋人ってそういうことするんでしょ?」
「あぁ、うん…」
「恋人ができると青春ってイメージがあって憧れてたんだけど、よく考えたら肩書だけだよね」
「…そう思ってるのはあかり君だけじゃないかな」
「え、なんて? 声が小さくて…」
「なんでもないよ」
そっかぁ… そりゃそうだよね、うん。告白の返事にしては普通なテンションだったし、恥ずかしいとか嬉しいとか言葉からあんまり感じなかったけどさ。あかり君の中での恋人ってそういう感じか、そっかぁ…
あかり君が恋愛とか知らないような
…いやでも、それで恋人のことをよく知って、『やっぱり別れよう』って言われたらどうする? そうなるくらいなら今はあかり君の認識は変えずに、私があかり君のそばで少しずつ恋を教えていったほうがいいね。
それに、恋人が同じ家に住んだり2人で買い物に出かけるのはあながち間違ってはないし。子供の頃から一緒に遊んで学んで生きてきたんだ、あかり君が恋を理解してないだけで私のことが大好きって可能性もある! ちょっと刺激したら急に意識しちゃって恥ずかしくなるとか、ゆかりちゃんに借りた同人誌にはあった! そういうパターンだと信じよう。
「そう言えば、なんで毎日味噌汁を作って欲しいって言うだけで告白になるの?」
「それは… 自分で考えてみてよ」
「え、そんなこと言われても…」
それわかんないなら、本当に恋とか愛とかわかってなさそうだな…