「それじゃ、ホームルームをはじめまーす」
「はーい」
葵の恋人になってから1週間くらいが経ちました。あれから変わったことがあるとすれば、2人で居る時間が増えたくらいです。葵が買い物に行くときは毎回誘われるようになったので行きますし、茜が忙しいみたいで3人で外出することが減ったのもあります。
後、高校でお弁当を食べるのも2人でになりました。葵に2人で食べようって言われたわけじゃないんですけど、1日だけ一緒に食べてた茜とミコトさんとヒメ姉さんの3人が屋上に来なくて、それで2人で食べてたら葵がいつもよりも嬉しそうに笑顔で食べてたんです。葵は2人で食べたいのかなって思ったので、それからは2人で食べてます。葵は口に出さないだけで、騒ぎながら
教室で席に座って2人で食べてるんですけど、もしかしたら僕も居ない方が良いのかな。今日のお昼になったら聞いてみよう。
「…ホームルーム終わり、授業の準備しててね〜」
「はい」
「は〜い」
「う〜い」
…寝ようかな。上手く教科書立てたら先生にバレないとかないかな。隣の席の葵にバレるのが一番怖いしすぐバレちゃいそうだけど、葵も最近集中できてなさそうだしなんとかなるかも? 怖いけど、眠いんだ、僕は…
『ガン』
うおっと、机が急に揺れた。今の音なんだろ、何かがぶつかったのかな。葵はだいじょ… 凄い近い、もしかして今の音って机がぶつかった音? 葵の机が僕の机にピタって付いてるんだけど、今机をぶつけてきたんだよね…?
「な〜に寝ようとしてるのかな?」
「え、あ、あはは… 寝ようとなんてしてないよ〜?」
「そう? 私には目を閉じて寝ようとしてるように見えたけど」
「いやぁ、違うよ〜? というか葵ちゃん、急に大きな音を出したから皆驚いてるよ?」
「そっか、寝ようとしてなかったんだ。それならいいよ、ごめんね」
「あ、はい…」
見張られてるぅ… これじゃあ
ちょっと視線をずらしたら、茜がこっちを見ながら何か書いてる。何してるんだろ、今のことをメモしてるのかな。う〜ん、最近の茜は何を考えてるのかよくわからないや。家にいないことも増えてきたし、何かあったのかな。実は葵と喧嘩してるとか。
僕は別に何もしてない、と思う。皆に変なことをされることは多いけど、僕はしてないと思うし思いたいな。というか、茜はどこに行ってるんだろう? 最近は気付いたら家から居なくなってるし、行き先のメモも残さずに『遊んでくる!』しか書いてないんだよね。登下校の時も居ないし、お昼休みもすぐにどっかに行ってる気がする。
後は、ミコトさんとも会ってないなぁ。ヒメ姉はこの前の休みにご飯に誘ってもらって、葵と3人でしゃぶしゃぶを食べに行ったんだけど。美味しかったなぁ、また今度も行こう。ゆかりねぇはよく会う。寂しいからなのか暇だからなのかわかんないけど、いつも遊びに来るんだよね。
「ほら、授業始まるよ。教科書立てたまま受けるの?」
「ちょっと気分転換になるかなって」
「そう。1時間それで試してみたら? 見づらかったら私の見てもいいし、立てたままってのも面白いんじゃない?」
「うん、そうしてみるよ」
これで授業始まったら教科書を寝かせるって言ったら、『 じゃあなんで今は立ててたの?』って言われるじゃん。教科書が邪魔で先生の顔も見づらいけど、なんとか頑張んないと。
…なんとか終わった。教科書も読みづらいし先生が何をしてるのかも分かりづらいし、本当に大変だったよ。もうこんなことはやめよう、葵に隠れて寝れる気がしないや。
「本当に立てたまま最後まで受けるとは思わなかったよ」
「やってみてわかりましたけど、やらないほうがいいですね。見づらいですし、いいことが何もありませんでした」
「だろうね。やる前からそう思ってたよ」
「なら
「いやぁ、試してみるのも大事でしょ?」
「それはそうですけど…」
反論できないのが悔しいです。だって、僕もやる前から絶対に見づらいだろうなって思ってましたもん。そりゃ大変だよねって感じですし。
それから、僕は目立たないように特に何もせずに普通に授業を受けました。チラチラと葵がこっちを見てきてましたし、茜も時折僕らの方を見てきてました。そんな中で寝れるほど僕は図太くないです。
お昼の時間になると、クラスの皆が散り散りになっていきます。教室で食べる人は席を移動し、人によっては校庭に走って行ったり、別の教室に走ったり。僕は今日も教室で食べようかな。あ、でも葵が1人で食べたいかもしれないし… よし、久し振りに屋上に行こう。
「ん、どこ行くの?」
「久し振りに、屋上に行こうと思って」
「それなら私も行く」
「あ、わかりました」
別に1人で食べたいわけじゃなかったんだ。それなら、また皆で食べようかな? 2人で食べるのも楽しいですけど、皆で食べるのも楽しいですからね。
「…屋上行くん?」
「うん。お姉ちゃんは?」
「あ〜、あ〜… うちはちょっと用事があるから、他の場所で食べてくるわ!」
「…なんか怪しい。やましいことでもあるの?」
「ないないない! そんなことあらへんよ〜?」
「そっか。それじゃ蕾ちゃん、2人で食べに行こっか」
「はい!」
茜、やっぱり僕らを避けてるのかな。葵が喧嘩してるならご飯に誘ったりしないだろうし、僕が何かしちゃったのかな。今度、聞いてみよう。何か直したほうがいいこととかあったら、聞いといたほうが絶対にいいもん。
屋上に向かう途中、葵が後ろを何度も振り返ってましたね。葵が振り返るたびに僕も振り返ってたんですけど、何にもわかんなかったなぁ。屋上に着いたら、葵が静かに扉を開けました。
「お、2人〜!」
「ヒメさん、こんにちは。今日は1人なんですね?」
「うん。ミコトも茜ちゃんも、来るって言ってたんだけどさっき急にメール来てさ。やっぱ行けへんくなった! ってさ。何かクラスであった?」
「特に何もなかったです」
そう言うと、ヒメ姉は少し悩んだ素振りを見せてからぼそっと呟きました。
「ミコト、茜ちゃんを妹にしようとしてるのかな。そしたら私が琴葉家に行くか」
「お断りさせていただきます」
「うぇ!? 断るのぉ!?」
かわいそう…