結局葵がなんで怒ってたのか、なんで機嫌が良くなったのか分からないままお昼休みは終わり、教室に戻って残りの授業を受けました。今から下校なのですが、久し振りに茜も一緒に下校するみたいです。一緒に帰るかどうかは茜の自由なので僕は何も言いませんけど、みんなで帰るのが楽しいから好きです。
持って帰るものを鞄に詰めて、さぁ帰ろう! 葵も茜も、先に門を出て待ってると言ってたので走っていこう。いやでも、走ったら葵に怒られるかな? 早歩きにしましょう、見られてるかもしれませんし。
「お、つぼみ〜! 息上がっとるけど走ったんか?」
「待たせちゃうと悪いかなと思って少しだけね」
「待ってないから歩いてきて」
早歩きでも結構息って上がっちゃうんですね。運動不足かな… 沢山食べてますし、距離は歩いてると思うんですけどね。もっと運動しないとかぁ、大変だな…
「それじゃあ帰るでー」
「帰るぞー!」
「帰るのは当然なんだけど、お姉ちゃんと帰るのは久し振りだね」
「せやなー、忙しかったからなー」
そうだよね、忙しそうだったもん。気付いたら家にいないし、学校でも休み時間になるとどっか行ってたし。でも良かった、忙しかっただけで。最近家にいないのが僕や葵を嫌いになったりしたわけじゃないって安心した。そんなことないとは思ってたけどさ。
「忙しいって何してたの?」
「えぇ? 別に、大したことやあらへんよ」
「どんなこと?」
「えっと… そ、そうやなぁ…」
「言えないんだ。まぁ別にお姉ちゃんがミコトさんと何をしてようと自由だけどさ。人に迷惑かけたり、勝手に居なくなったりしなければだけど」
「あ〜、そやな。どっか行くときはちゃんと伝えてからにするわ」
メモ書きはあったけど『遊び行ってくる!』しか書いてなかったもんね。ミコトさんの家か喫茶マキのどっちかだろうから書いてなくても問題はないんだけど、どっちなのかわかると家で何かあったとしても連絡しやすくて助かる。僕も葵も、熱中症で倒れた前科があるし…
流石にないと思うけど、2人共倒れちゃう可能性はあるし。ちゃんと気をつけてるからないとは思うけどね、もしもは考えないとだから。それに、倒れたときだって気を付けてたからね。今だって普通に歩いて帰ってるけど、急にクラっとしてくるかもしれない。
「そうや、2人に聞きたいことあるんやけどええかな?」
「別に何でも答えるけど、そんな改まってどうしたの?」
「あかりもええ?」
「うん、もちろん。気になることがあるなら、何だって聞いて」
でも、いつもは『そういえば〇〇ってどうしたん?』って感じになんの脈絡もなく突然聞いてくるのにどうしたんだろ? 最近忙しかったって言ってたけど、それと関係してるのかな?
ミコトさんと2人で開発したすっごく美味しい料理会の日程を決めるために暇な日を聞いてるとか、開発中の料理の試食会とか!
「じゃあ聞くんやけどさ… ちゃんと答えてよな?」
「そんなにもったいぶって、そんなに重大なことなの?」
「…まぁ、そうやな」
「じゅ、重大なこと、なんだ…」
「どうせ20キロ太ったからランニングに付き合ってとかそんなことでしょ?」
「ちゃう! 太っとらん! というか、話の腰を折らんで〜な」
太ってないよ、茜も僕も。ちょっとドキッとしちゃうけど、この前測ったら殆ど増えてなかったから大丈夫。性転換してから山盛りに食べてる気がするけど、重くなってないし丸くもなってない。最初に着てた服も着れたもん。
「それじゃあ聞くで、嘘はつかんでな?」
「うん、嘘なんてつかないよ」
それから茜は、大きく深呼吸した。
「最近、うちがちょこまかと動き回っとるせいで2人の時間を邪魔してもうてるんやないかって思ってな」
「別に邪魔なんてされてないけど」
「でも2人、全然いちゃついてないやろ?」
「ん゙ぅ゙!? いぃぃ゙、いちゃつくってそんなわけないでしょ!?」
「そ、そうですよ。僕と葵は別に…」
「でも2人は付き合っとるやろ?」
「んぇ!?」
「違うん?」
「付き合ってるけど、それだけだよ?」
「あかり君! それ、言っちゃだめ…」
「いや、もうバレてるのに隠さんでええよ」
茜も知ってたんですね、でも葵はなんで隠そうとするんだろう? 2人の時間を邪魔されてる、なんて感じたこともないです。そりゃあ、話してる途中で周りを走られでもしたら邪魔されたって思いますけど、そんなこと微塵もありませんでしたし。
「本当は2人から言うのを待とう思ってたんやけど、うちが邪魔してるのかと思って聞いてしもうたわ」
「聞かれるのは、別に、いいんだけど…」
「隠すことでもないですもんね」
「それは人によるんちゃう? あかりはオープンな考えかもしれんけど、家族や友達には黙ってるって場合も多いと思うで」
「そうなの? 付き合ってるだけなのに、そんな隠したがる人が多いんだ」
「付き合ってるだけって、そんなふうに考えられる人はあかりくらいやろうなぁ」
「…お姉ちゃん、ちょっと来て。話がある、あかり君は先に帰ってて」
「え、急にどしたん?」
「良いから早く。ごめんだけど、あかり君は先に帰って」
「あ、はい」
葵、どうしたんだろう… さっき僕が付き合ってること言っちゃったから、怒ってるのかな。葵は隠したがってたのに、僕が躊躇いもせずに言っちゃったから… ごめん、葵。先に帰って料理作っておくね。
毎日味噌汁作ってって言われたし。