うちは、ミコトさんと話し合った末に全部話すことにした。大好きな妹のことを監視してる、そんな負い目も感じとった。あかりにも悪いことをしたと思っとる。これで2人が付き合ってる証拠を見つけられたら、気持ちも高揚して申し訳ない気持ちなんてなくなっとったんやろうけど…
今のところ、勝手に言いがかりをつけてカメラを仕掛けて、妹とその恋人? の部屋を盗撮しとる、妹のことが好きすぎて独占欲に駆り立てられた姉みたいになっとるもん。
最近は帰りにミコトさんの家によって話し合うのが日課やったから、2人と一緒に帰るんは久しぶり。全部話そう、そのついでに上手く2人が付き合ってる言質もとろう。ここでなんにもわからんかったら、探るんはもうやめにする。今まで通り、2人とつきあっていく。つきあうって、恋人の話やないで。
そしてうちは、全部を話した。葵が必死に隠そうとしとったから、他の人に話すんは絶対にやめよう。でも、うちには隠さんでええって伝えた。ずっと隠しとると大変やろうし、家くらい楽にしてやらんと。逆にあかりがオープンなんも、あかりらしいなぁって思う。
それで一件落着、
「すまん、すまんなぁ。勝手に2人のこと嗅ぎ回ったりして」
「別にそんなことどうだって良いけどさ…」
「え、ええの?」
「良くはないよ、でもそこまで怒ってない。私が隠そうとして無茶苦茶のこと言ったり、急にあかりの口を塞いだりしたから。そりゃ、怪しいよね」
「あぁ、うん」
そのことやないんか… じゃ、じゃあなんなんや、もっと不安になってきた。つまみ食いの件とか、課題すっぽかした件とか、授業中に寝てた件ならええ。他のやったら、どないしよう…
「お姉ちゃん、最近の私をどう思う?」
「どう思うって、ずっと楽しそうやなぁ、恋人できて嬉しいんかなぁって思っとったで」
「そんなにわかりやすかったかな… それじゃあ、最近のあかり君のことは?」
「料理作ること増えたなぁ、急に新しい趣味に目覚めたんかなぁって思っとったよ」
「あかり君、恋人ができたって雰囲気なかったでしょ?」
「なかった気がする。葵は怪しさ満点やったのに。あかりは隠すんが上手なんやな」
確かに、葵は付き合ってるんだなぁってわかりやすかったけど、あかりは全然それっぽい様子なかった。付き合ってるのを隠す気もなさそうやったし、それで逆に上手く隠れてたんかな。
「話したいことってそれだけなん?」
「今のはただの前置き。本題は、あかり君の恋愛観の話かな」
「あかりの恋愛観? オープンなのは危険かもしれないけど、あかりの良いところだと思うで?」
「あれは隠す気がないからオープンなんじゃないよ。隠す理由がわからないからオープンなの」
「…その違いって重要なん?」
「大切だよ。あかり君は恋人っていうものを理解してない。あかり君は恋人と幼馴染を同じようなものだと思ってるんだよ? だから隠す必要がないと思ってるだけなの」
「はぁ…」
何を言ってるやうちの妹は。恋人と幼馴染が同じなわけないやろ? あかりはゲームだってするし、テレビだってよー見とる。恋人が出てくるゲームもアニメもドラマも、見てるはずやで? 流石にわかるやろ…
まぁ、うちも幼馴染から恋人に変わるとどうなるのか言語化しろって言われたら難しいけど。それでも、全然違うっていうのはわかるで。うちでもわかるんやからあかりもわかるやろ?
「それが本題なん?」
「うん。この問題の重さ、わかってくれた?」
「全くわからん」
「そっかぁ… でもね、これだけは覚えて。あかり君は恋人を肩書だけだと思ってるから。恋人とは何なのかそこらを歩いてる小学生よりもわかってない」
「あかりが、ねぇ?」
やっぱりイメージわかん。肩書だけって、本当なん? だとしたら、ちょっと面白いかもしれん。あかりが、なぁ? というか、それならなんで葵は付き合ってるんやろ? 相手から殆ど思われてないって、恋人になっても辛いだけちゃうんかな…
「葵は、あかりのこと好きなんやろ?」
「好きだよ、わかってるでしょ聞かないでよ。恥ずかしいから」
「また今度も聞くわ。それでな、あかりは葵に恋してるわけやないんやろ? それって、葵は辛くないん? うち、心配なんやけど…」
「辛くないよ。そりゃ、付き合った後にあかり君が『恋人って肩書だけでしょ?』って言った時は辛かったけど… でも、恋人って事実は変わらないから」
「辛かったらうちには言うんやで」
「大丈夫。それに今も良いことはあるんだよ。『恋人だから』、って言えばあかり君に何しても『恋人ってこういうのなんだ』としか言われない。それに、私が1番近くで恋人とは何たるかを教えれば、本当の恋人になれるのは私でしょ?」
凄いなぁ… 葵、そんなに策略家なんか。それならうちが何かするんはおかしいかもしれんけど、心配は心配や。葵のことはずっと気にかけて、辛そうやったらすぐに声かけれるようにせんとね! それが姉っていうもんやから。
「話したいことは話し終わったから、帰ろっか」
「おう、帰ろー。帰ったら料理作るから先に風呂入ってなー。あかりと2人で入ってもええよ!」
「入らない!」
「え、そうなん?」
「だって恥ずかしいし…」
…やっぱり葵もうぶいなぁ。葵とあかり、姉として2人共守ってやらんと。まだあかりの姉ではないけどな、未来の妹やから。ミコトさんにもヒメさんにもゆかりさんにも、あの2人の姉の座は渡さんからなぁ!