おはよう。
いつものように朝が来る。そして僕は起きる。ぼーっと、テキトーに部屋を出る。毎日同じことの繰り返しだから、ぽけーっとしてても勝手に体が動いてくれる。下を見ずに階段を下ってるときに、ふっと意識がしっかりとする。怖い。それだけ。
「危なかった…」
「またやってるの?」
「あおいぃ!? きゅ、急に話しかけないでよ…」
本当に、危なかった。足が浮いちゃってたから、危なかったって思ってたら急に話しかけるんだもん。びっくりしたー、後ろにいるなら言っといてよ。いや、言われたらびっくりしちゃうんだから何も言わないでっていうのが正解かな?
「ごめん」
「いいよ、大丈夫だったから」
怪我しなかったから大丈夫だよ。何も考えないで階段降りてた僕も悪いから、後ろに人がいるのに気付かないのは僕が悪いし。気配を察知、はできなくても足音もするし僕の後に扉開けてるんだからその音だってしてるはずだもん。
僕、目覚め悪いのかな。でも、寝ぼけててもちゃんと歩いてるんだから良いのかな。葵みたいに、起きてすぐにいつも通りに話したり、歩いたりできるようになりたいなぁ。なんで葵はそんなに目覚めがいいんだろう?
「気をつけないと、いつか落ちちゃいそうだな…」
「大丈夫だよ、私が見てるから。落ちそうになったら支えるから」
「今日みたいに一緒に起きることのほうが少ないから無理じゃない?」
「…大丈夫、見てるから」
同じことしか言わなくなっちゃった… 葵も実は寝ぼけてるのかな。お互いに、頭使わないで思ったことそのまま言ってる気がする。楽だけど、楽なだけだね。まぁいっか、疲れないしそういう会話も必要だよね。
リビングに降りたら真っ暗です。とりあえず明かりをつけまして、最初に起きたのが僕なら料理も作っちゃおうかな? 茜が暗いリビングで1人静かに料理を食べてる、なんてありえないでしょう。朝ではありますけど、茜が先に起きてることなんて滅多にないですし… たまにありますけど、何かから逃げるときとかですからね。
「軽く作っちゃうから、休んでていいよ」
「僕もなにか作ろうか? 休むこともないし」
「じゃあ汁物をお願いしていい? あかり君が美味しいと思えるものなら何でも良いから」
「難しいこと言うね… でも、頑張るよ」
それから、頑張って作りましたよ。味噌がいつもと違う場所にあったりしてちょっと大変だったけど、いつもどおりの美味しい味噌汁が作れたと思います。使ったものをちゃんと直さない人がいると大変だよね、多分茜だけど。
…でも昨日の晩ごはん、作ったの葵だったような? じゃあ冷蔵庫の中を荒らしたのは葵かー。何も言いませんけどね、違ったら申し訳ないですし。心のなかに留めときます。
「お姉ちゃん遅いな… 起こしてくる、先に食べてていいよ」
「待つよ、少し待ったって冷めないから」
葵が階段を上っていって、僕は律儀に待ってました。香りを楽しみながら、早く食べたいなぁって考えて。そんな時でした。葵が階段を駆け下りてきて、スマホを連打し始めました。変に呼吸も乱れてますし、顔に汗もかいてます。どうしたんだろう?
「葵、どうしたの?」
「お姉ちゃんが消えた! あかり君はミコトさんに連絡お願い! マキさんには私が連絡するから!」
「えっ、わかった!」
茜が消えた? 部屋にいなかったってこと、なのかな? 茜が家出なんてするとは思わなかったな… とりあえず、ミコトさんに連絡しないと。ミコトさんの所に居たら良いなぁ。ミコトさんの所にもマキさんの所にも居なかったら、本当にまずいんだけどさ。
「もしもし、あかりです」
『ミコトだよ、どんな御用かな?』
「茜が行方不明でして、何か知らないかなと思って…」
『茜が、あー、えー、うん。うちには来てないけど、少し散歩してるだけじゃないかな?』
「わかりました。何かわかったら連絡ください」
『はーい、ばいばーい』
ミコトさん、茜のことを欠片も心配してなかったな… それだけ信頼してるんだろうけど、今はそうも言ってられないよ。葵はまだマキさんと電話中だし、ゆかり
「ゆかりさん、蕾です」
『あ、蕾ちゃん。もしかしてあかりが帰ってきたんですか?』
「え? 帰ってきてませんよ」
『あれ? あかりの携帯からかかってきたのかと思ったんですが、勘違いですかね』
あかりの携帯? …あっ!
「…! 電話番号ですよね、兄のおさがりなんです」
『やっぱりあかりの番号で合ってたんですね、勘違いじゃなくてよかったー。すいませんね、話の腰を折っちゃって。何か用事があるんですよね?』
ふー、よかった。忘れてたけどこのスマホ、数年前からずっと使ってるんだった。僕の番号、電話帳に登録してるよね… 危ない危ない、ごまかせてよかった。
「はい。朝起きたら茜がいなくて、もし会ったら教えてほしいと思って」
『茜さんですか? わかりました、探しに行きましょうか?』
「急に帰ってくるかもしれないので、今は大丈夫です。お昼になってもいなかったらお願いします」
『わかりました、続報待ってますね』
ゆかり
「ありがとうございます… あかり君、電話終わった。走れる?」
「うん、行けるよ。どこに行くの?」
「マキさんが、お店の前を通った気がするって言ってたから、その辺りを探す。カバンと制服も持ってくよ、お店に置かせてもらう」
「わかった、コーヒー飲んで頑張ろう」
よし、頑張ろう。倒れないそうになってもお店に駆け込んでラザニアでも食べれば元気になれるからね!