朝早く、まだ5時という時間。
「ドタドタ」
…っ!? 何の音だ、廊下に誰かいるの? 昨日の盗撮犯、はお姉ちゃんだったから別のはず。だったら誰だ、お姉ちゃんがこんな早く起きるなんてありえない。あかり君は寝てる、私なわけはない。不審者か、目覚ましをかけてまで早起きしたお姉ちゃんかのどっちかだ。どっちだ、不審者だとまずいから絶対に扉は開けちゃだめだ、好奇心は猫を殺すんだぞ、私。
…音がしない、いなくなった? でも怖い。音がしないということは、扉の前で待ち構えてるのかもしれない。落ち着け、落ち着いて考えるんだ。考えなきゃいけないのは最悪のケース、つまり不審者が部屋の前にいるケース。隠れよう、でもどこに?
それにあかり君はまだ寝てる、起こしたら大きな声で『あさー?』とか言ってきそうだから起こせない! それなら私があかり君を隠さないと、顔を布団の中に入れちゃえば最低限オーケーだよね…? でもそれだと明らかに人が1人いるような形に布団が盛り上がっちゃう。
そうだ、私も布団に入ろう。布団はギリギリ入る、はず。2人で布団に入れば、少しは自然な形になるはず! 平らに見えれば、布団が積んであるだけにしか見えないだろうし、そうしよう。それに、あかり君に抱きつけるいいチャンスだから…
布団に潜り込んで、少ししてから私はハッとする。いくら私が『家に誰か入ってきてたかもしれないから』なんて言っても信じてもらえるわけがない。そしたら私が理由もなく抱きつきたくて抱きついたとしか思われない! まずいぞ、あかり君は気にしないだろうけどお姉ちゃんにバレると煽られかねない。
それに今も私の部屋にはミコトさんの盗撮カメラがあるのでは…? 回収した気もするけど、ミコトさんに返した覚えはない。それに盗撮カメラの話をされた時、帰ってきてすぐにあかり君とお風呂に入ってたからその時はカメラを回収してない。もしかして、今もカメラ回ってる? やばい、今から割ればなんとかなるか?
落ち着け私、落ち着いてあかり君を抱きしめよう。抱き枕はリラックスの為だと聞いたことがある、人は何かを抱きしめると幸せを感じるんだとか。だから今私があかり君を抱きしめてるのは考えるために必要なことなんだ…
いやだめでは!? カメラで見られてたらまずいからどうしようって考えてたのに、より見られたらまずい状況になっちゃったじゃんか!
…もういいか、割ったって映像は消えないでしょ。どんなカメラを仕掛けてるのか知らないけど、ミコトさんはお金持ちだしきっと質の良いカメラでしょ。そういうカメラはね、常に映像を送信しててね、しかも遠くのパソコンとかに保存してるんだよ。諦めるしかない、それかミコトさんを直接殴りに行くことを考えないとかな。
はぁ… 私ってなんであかり君の布団に入ったんだっけ? 疲れたし、このまま少し寝ちゃおう。あかり君は目覚めが悪いし、バレないバレない。バレても怒られない、二度寝起きの私がしっかり答えられたら。無理かもなぁ…
「んぁ〜」
…んぅ? 朝か、朝だよね? 眠いなぁ、でも起きな… あかり君の声が耳元からしたな? 私の隣であかり君が寝てる? え、なんで私はあかり君と寝てるんだ? …あれ?
昨日の夜は自分のベットで寝なかったっけ? あれー、あれー? あかり君がベットを降りた… 私に対してコメントなし、つまりバレてなーい? うーん、どうしてここにいるんだ? 一夜の過ちなら何かあかり君に言われてもおかしくない、でも何も言わないどころか私に気づいてない…?
でも私、あかり君の真後ろで寝てたんだよね。わかんない、なんでだ。寝相が悪かったって二段ベッドの上から落ちて下の段に入って更に背後に回るなんてありえないし、私寝相いいし。なんでだ、何があったんだっけ…?
取り敢えずあかり君を追いかけよう。のろのろしてるし、私と違って目覚めが悪そう。私は最高に意識がはっきりしてるからね、不安と困惑に包まれたせいでだけど。
静かに、あかり君の後ろについていこう。扉開けっぱで出てっちゃったし本当に目覚めが悪そうで心配にもなるよ。ボーっとしたまま階段を降りるのは危険だってよく話をするのに…
あ、またやってる。
「危なかった…」
「またやってるの?」
「あおいぃ!? きゅ、急に話しかけないでよ…」
はは、面白いなぁあかり君は。でもあかり君、私の顔見ても何とも思ってなさそう。つまり、私があかり君の隣で寝てたことを知らないのは間違いない。じゃあ私は自分の意志で潜り込んだのか… 昨日の夜に私は何を考えてたんだ? わからん…
まぁいいか、大切なことなら思い出すだろう。いつものように料理を作って食べて、学校に行けば良い。それに今日はあかり君も一緒に作ってくれるらしい。楽しみだね、上手くいきそうだよ。
完成した、だけどお姉ちゃんが起きてこない。早く食べたいんだけどな、起こしに行くか。さて、叩き起こしてやろう。声かけても意味ないだろうし扉開けて… やっぱり暗い、明かりをつけまして… あれ、いない? 布団めくったらいるはず… いない、ちょっと待って? どこに行った、おねーちゃーん!
本当にいないんだけど、でもスマホは置いてある。隠れてそうと思ってクローゼットを開けたけど流石にいない、というか制服がない。
そうだ思い出した、早朝に廊下を誰かが歩いてる音がしたんだ! お姉ちゃんが家出した、え、そういうことだよね? どうしてお姉ちゃん、私とあかり君の間に入るのが心苦しくなった? そんなわけないよね、そこまで気の弱いわけがない。
とりあえずあかり君に伝えて、他の人に何か知らないか聞いてみないと。お姉ちゃんがいそうな場所といえば喫茶マキかな、マキさんに電話しよう。早くご飯を食べたいのにお姉ちゃんが面倒なこと起こしてないといいなぁ…
電話したけど、喫茶マキにはいないんだとさ。でもお店の前を髪の赤い人が走ってたらしい。多分お姉ちゃんでしょ、他に赤髪の人を知らない。他に赤髪の人がいたとしても、この街では見たことないからね。
さ、早く見つけてお説教タイムといこうじゃないか…