お姉ちゃんは学校で見つかった。ちゃんと報告することを覚えさせるためにも、泣かせてでも記憶に植え付けてやろうかと思ったけど理由が理由だったから怒れなかった。いつもなら言い訳したって許さないけど、モノを見せられちゃったし貰っちゃったし… 買収されちゃったから怒れないよね。
その後はヒメさんとあかり君を呼んで5人で昼食をとったんだけど、1つだけ気になることがあった。ヒメさんが来週の土曜日、私がお姉ちゃんからもらったチケットの日に遊ぼうと誘ってきた時に、お姉ちゃんだけでなくミコトさんまでわかりやすく日付を変えようとしてたんだよね。
ミコトさんにも用事があった、のかもしれないからなんとも言えないけどさ。チケットのことを言うわけにもいかないし、お姉ちゃんと一緒に土曜から日曜にずらしてくれたのは助かったから追及するのはやめるけどさ? なーんか、私とあかり君が遊園地に行くことを知ってそうだよね。
まぁいいけど、別に知られてるならそれはそれで得もあるから。私とあかり君のデートが邪魔されないように便宜を図ってくれそうだからね、ミコトさんなら。お姉ちゃんやあかり君よりも役に立つし。
昼食を食べきって、授業を真面目に受けて下校時間。本当に真面目に受けてたかは諸説あるかもしれない、心は浮ついてたからね。それでも、ノートに落書きしてる人とか昼寝してる人よりは真面目だよ。あの2人は本当にさ…
下校中、そう言えばあかり君にチケットの話をしてなかったと気付いたから正式にお誘い。お姉ちゃんからチケットを貰ったって言うよりも、私があかり君と行きたくてチケットを用意したって言ったほうがかっこいいし惚れるよね。お姉ちゃん、間違っても『うちが買ってきたんやでー!』とか言わないでね。
「嬉しいな、僕も行きたかったんだよね、その遊園地。久し振りに観覧車に乗りたいなぁ」
「ジェットコースターにお化け屋敷もあるよ、確かね」
「うっ… あんまり得意じゃないんだよね、絶叫系」
「せやろなぁ、そんな気がするわ」
「ふむ…」
何が何でも乗せよう、私は決意した。絶叫系が苦手っていう人が、叫んでいるのを見るのは愉快だよ。少しかわいそうとも思うけれど、それ以上に見たいし感じたい。怯えるのも、泣くのも、見てみたい。それに、怖かったよーって泣きながら甘えてくるかもしれないでしょ? 見たいねぇ、とても見たい。
家について、私は部屋に服を見に行く。夏休みにあかり君とショッピングした時に買った水色のシャツにボアコート、後はお姉ちゃんから貰ったフレアパンツでいいか。盗んだわけじゃないからお姉ちゃんの目を気にせずに着れるのもいいね。盗んだ服は、まぁ、ね。今度返しておこう、もういらないからね。
楽しみな思いを胸に、それから日付はどんどんと進んでいった。そして、デートの前日の夜。私はスマホで遊園地のホームページを開いてずっと見ていた。ニヤニヤしてしまっていたようで、お姉ちゃんに指摘される。
「そんなに楽しみなん?」
「そりゃあそうでしょ、デートとして準備までして2人で外出するのは初めてだよ?」
「楽しんでくるんやでー? 帰ってきたら色んな思い出話をしてもらうからなー! ちゃんとやることやってくるんやでー!」
「…そうだね。あかり君は観覧車に乗りたいって言ってたけど、他はどうしようか悩んでてさ。お姉ちゃんは何がいいと思う?」
「わからん! とりあえず真ん中を目指したらええんやないかな? 色々見えるし、あかりからあそこ行きたいとか言ってくるんちゃう?」
「…良い案だね、中央広場に行ってから考えるか」
お姉ちゃんは時々、完璧な案を出すんだよね。まぁ、出た時は良かったけど実行したらだめだったことも多かったけどさ。でも今回はいける気がする、自分に関係ないときほどお姉ちゃんの案は的確なんだ。自分のことになると、欲が出るからね、お姉ちゃんは。私は出ないよ。
金曜の夜、私は眠りについた。あかり君はデートのことなんて欠片も気にせずに眠っているようだけど、私が忘れられないデートにしてあげないとね。しっかりとエスコートしてみせよう。
「おーい、葵ー? 今日は開門に合わせて早起きするんじゃなかったのー?」
「…ほぇー?」
「起きてよー! 7時だよー!」
「むぅ… おはよー、しちじ… 7時!?」
「おぅ、7時やで。朝ごはんは作っといたから、
「リビングで待ってるから、できるだけ早く来てね!」
やっばいなぁ… いつもの癖で目覚ましをかけ忘れてたよ… 土日は好きなだけ寝たいからってかけない癖がついちゃったんだろうね、まずいな… それでも普段は起きれるのに、興奮して寝れなかったからかな。自己分析は止めよう、早く着替えなきゃ。
「ごめん、本当にごめん! 急いで食べるから、走っても開門に間に合わないかもだけど、できるだけ頑張るから!」
「大丈夫だよ、別に最初に観覧車乗りたかっただけだから」
「…ほぉ、そんな服なんかぁ。葵、あかりを見てみぃ。うちが見繕ったんやでー!」
頬張りながら私はあかり君の姿を見て、思わず声を出そうとしてすぐに口を閉じた。少し大きめの白ニットに、ベージュの肩紐付きロングスカート。キャスケット帽までかぶって、すっかりおしゃれに着飾っていた。可愛い、似合ってる。そう言うために急いで飲み込んだ。
「どうかな? 僕にはいいのかわかんないんだけど、茜が着ろっていうからさ…」
「凄い似合ってる、あかり君のためにあるんじゃないかってぐらいぴったりだよ。色合いも、白い髪が映えるしさ。あかり君の可愛さが引き立ってる、自信を持っていいよ」
「そう、かな、ありがとう。葵も似合ってるよ」
「ふ、ありがと」
かきこんで飲み込んで、すぐに歯を磨いて鞄を掴んで肩にかけて。昨日の夜に準備したから問題はないはず、行こう! あかり君を待たせてしまった分、予定よりも何倍も楽しませてあげないとね!
「……………、行きます」
…お姉ちゃん、誰と電話してるだろう? まぁいいか、急ごう。